【ポケモンエメラルド】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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最初の記憶は多くの兄妹たちの顔だった。
定期的に増えてくる兄妹たち。
私の入れられていた箱はどんどんと狭くなってきた。
そして唐突に私達は
野に放たれた。
私達はどうやら望まれた命ではなかったらしい。
保護者の居ない命が生きていくにはこの世界は過酷すぎた。
共に捨てられた兄妹たちは一日一日と数を減らしていく。
私が生き延びられたのは幸運に過ぎない。
たまたまそこを通りすがった今のマスター、オダマキ博士が私達を捕獲してくれた。
抵抗はしなかった。
私は死んでいないだけの命。
生きてはいなかった。
誰からの愛も知らず、認識もされない命。
今更無くなったところで誰も悲しまない。
当事者たる私すらこの命がどうなろうと興味はない。
そんな命が欲しいなら、いくらでもくれてやる。
だが、雑に消費されると思っていた命はその予想を裏切り丁重に扱われた。
博士のラボには種々の書物があり、私は人間のことについても詳しくなった。
言葉もある程度理解はできるようになった。
だが、言うことは分かっても私の声帯では人間の理解する音を出すことはできずこちらからの意思の疎通は図れない。
ある日、オダマキのフィールドワークに連れて行かれた。
野生のポケモンに襲われた時にはオダマキが私達のうちのいずれかを出し戦っていたのだが…
今日は突然表れた野生のポケモンに驚きバッグを落としてしまった。
相手はジグザグマ。落ち着いて対処すれば私ならばどうということはないが、人間にとってポケモンの力は驚異となる。
モンスターボールは中から開くことができない。
私は野生のポケモンに襲われるオダマキをただ見ることしかできなかった。
それは在りし日の兄妹達の命が散っていったあの日々の光景を思い出させる。
あんな思いはもう沢山だ。
オダマキは私と違って必要な命だ。
私の命ならいくらでも捧げよう。
本に書かれていた。人間はこういうときに神というものに願いを託すらしい。
神よ、どうか奇跡を。
そして軌跡は起きた。
私は外へと放たれた。
一人の男が私のモンスターボールを持ち、放ってくれたようだ。
ならば博士を助けることができる。
ジグザグマの動きを見切り二三度はたくことで撃退する。
博士はその男(少年にも見える見た目だがそこから出てくる声は中年に近いもので不思議な印象を受ける男だった)にお礼をし、ラボへと戻った。
後に、その男がラボへとやってきた。
博士との会話の結果、私はお礼の意味も込めてその男へ託されるらしい。
少しさびしいが…博士が望むならそれで良いだろう。
私の命は元より無いものと同じだ。
博士がそれで良いというのならどのような命令でも従う。
そしてその男は数分何かを考えていた。
「お前は、リンリンだ」
リンリン…
私はキモリだが…?
「鱗のリンに森林のリンでリンリン」
もしかして…私の名前なのだろうか。
ニックネーム…愛玩として飼われるポケモンにはつけられることが多いという。
それが…私にも?
心の奥に不思議な温もりが灯った。
そして私は産まれた。
私の新しいマスター ゆるすぎ
私はあなたのために戦います