【ポケモンエメラルド】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】   作:null cedar

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ある日の野営にて

満月が木々の隙間から覗く深夜、焚き火を囲んで談笑しているポケモンたちがいた。

キモリ、ジグザグマ、ポチエナというおおよそ自然で一緒にいるところは見られない三匹である。

「さ、あんた達ちょっとそこら辺の木の実取ってきたから一緒に食べましょ食べましょ。」

「わ、沢山。ひよりさんこんなに沢山どこから拾ってきたんですか?」

ジグザグマのひよりさんは3匹で食べるには多すぎる程の木の実を抱えている。

「せっかくのガールズトークなんだし食べ物は沢山無いとね。」

「いやいや、ボクは雄ですよ。」

「あぁそういえばそうだったわね。でもまぁ顔は可愛いから雌でも通せるんじゃない?ほらほら、人間の世界でも最近はやってるらしいじゃない。男の娘。」

「そんな事言われても嬉しくないですよ!ボクはかっこよくなりたいんですっ!」

ポチは文句を言いながらも、ひよりさんの持ってきた木の実を齧る。

ひよりさんはそれを優しく見つつ木の実の一つをキモリのリンリンに渡す。

「ほら、成長期なんだから沢山食べないと。」

「ありがとう。そうね、もっともっと強くなって皆を守らないといけないものね」

渡された木の実を齧り、口に広がる味が自分の好きな味であることに気づいた。

ガサツなように見えて各々が好きな味の木の実拾って来ているようだ。

「強くってあんた……そんなに深く考えなくてもいいのよ。美味しいから食べる。それで良いのよ。私もあんたも、幸せになる権利があるの。」

「幸せ?」

「そう、野生の頃の私達は死を意識してなかった、というか当たり前のように受け入れていた。けれど今はどう?死んでもいいと思う?特にリンリン~、あんたは死んじゃったらもう愛しのマスタぁには会えなくなっちゃうわよぉ?」

「なっ!愛しのって、別にそういうのじゃなくてマスターは私のマスターだから」

そう言いながらリンリンはそのもしもの事を頭の中に思い描いたのか、目に涙を浮かべている。

「そうだね、ボクも今までだったら他のポケモンに襲われて死んでもそれが自然だから仕方ないって思っていたかも。今は、こうやって美味しいものも知ったし、家族がいることの嬉しさも知ったから確かに死にたくは無いかも。」

「でしょ、今はこうして前にはなかった死の恐怖を知ってしまった。だから私達は幸せを享受する権利がある。死ぬの怖いもん、それくらいの見返りくらいはもらってもバチは当たらないわ。」

「確かに、そうかもね。でも本来は全ての命は幸福に生きる権利っていうのはあるのかも。野生に生きるポケモンも、ポケセンのお姉さんも、マスターも、皆少なからず自分の幸せのために生きているはず。皆、少なからずやりたいことをしているはず。誰もが自分の幸せのために生きている、そういう側面もあるかもね。でも野生のポケモンの場合は大体は空腹を満たす幸福の為に他の生命を食らう。幸福は受け取る権利と同時に死の必然性も突きつけられる、か。」

「そりゃあそうだよね、どんな生き物も時間に等しく緩やかに死を与えられてるんだものね。でもボクたちの場合はもしかしたら野生よりももっと短命かもしれない。それは覚悟しとかないとね。そっか、だからより一層の幸せを今のうちに?」

「もう!」

ひよりさんが大きな声をあげる。

「私から振った話題だけどあんた達ちょっとしんみりし過ぎよ!もっと気楽に生きなさいよ。ポチの言う通りどうせ安全に生きてたっていずれ死ぬんだし、深く考えてもダメダメ。むしろ死んだ後のことでも楽しみにしてみたら?あんた達生まれ変わったら何になりたい?私は今度は大きなポケモンになりたいわねぇ。そうすれば捕食される心配無いものね。」

「ボクは男の子だしやっぱり強いポケモンになりたいな。噂でしか聞いたこと無いけど、ルギアとかそういう強いやつになりたいな。」

「私は……鱗があるポケモンになりたい。」

「鱗?あんた魚にでもなりたいの?ヒンバスとかそういう?」

「ヒンバスか、それも良いかもね。この地方でも見かけるし。」

「え?リンリンさん生まれ変わってもこの辺りに産まれたいんですか?」

「ええ、そうね。鱗を持ったポケモンに生まれ変わって、それでもまた見つけてもらって……また私を呼んで欲しい。」

「あんたさぁ、本当にゆるちゃん好きっての隠すつもりある?」

ポチだけは不思議そうな顔をしていた。

リンリンの顔が赤いのは焚き火の明かりの照り返しなのか。それにしては赤の色が強すぎた。

月の明るい夜だった。

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