【ポケモンエメラルド】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】   作:null cedar

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#23【アーティス】

youtube:https://www.youtube.com/watch?v=weQuwDvMgsQ

ニコニコ:https://www.nicovideo.jp/watch/sm42960333

 

「は~、温泉って良いですねぇ~」

温かいお湯が体の疲れを溶かしさってくれてるかのようだ。

普段の野宿ではお湯は貴重なのでこんな大きなお風呂に入れることはない。

そもそも大体はお湯なんて使わず砂で体の汚れを落とすことがほとんどだった。

「そうだねぇ……心まで洗われていくようだ」

「ところでココさん」

「ん?なんだい?」

「結局つきのいし?は使ってないんですか?」

「使われなかったねぇ……悩み損だったよ……」

そう、先日そのことで確かにココさんは心底悩んでいた。

外的要因による進化してしまったらそこにココさんの心は残るのだろうか。

確かにそうだ、成長というよりは体組織の組み直し。まったく別物になっても仕方ない。

だけど、ココさんは腹を決めた。本当に尊敬できる。

自分という個よりも私達全員を選んだ。本当に尊敬できるリーダー、船長だ。

 

そして今に至るまでつきのいしを使われることはなかった。

ゆるすぎさんは貴重なアイテムを使えない主義なんだろうか。

人間の間ではエリクサー症候群という病気を患っている人も少なくないらしい。

でも、油断のゆるすぎさんを見ると貴重品もバンバン使っていく、というか、使ってはいけないお金までバンバン使っていくように見る。

きっと何か深い考えがあるんだろう。

そう思っている。

そしてその当のゆるすぎさんなのだが、今温泉に一緒に入っている。

服を着て。

旅に出ているとどうしても選択のチャンスが少ないから着たまま入っているのだろうか。

それとも……脱ぐのを忘れてる?

「案外裸を見られるのが恥ずかしいのかもねぇ。小さすぎてみっともないからとか、逆に腹が出すぎて恥ずかしいからとか?」

とはいってもゆるすぎさんの荷物にはさっきの話題の月の石や隕石とかの大事なものが入っている。

万が一にも盗まれないようにしているんだろうか?

う~ん、どうなんだろう。

 

 

私とココさん以外はというと、新しく仲間になったバネブーのスブタンさんは止まったら心臓のポンプが止まるそうなので湯船に浸かりながらゆるすぎさんにバネ部分をビヨンビヨンと伸び縮みさせてもらっている。

おかげで湯が柔らかくなって肌に良さそうだ。

 

よしはるさんは湯船をスイスイと泳いでいる。案外気持ちよさそうに泳いでいるように見える。この辺りに生息しているだけあって温泉との馴染みもあるのだろう。

 

しょうぐんさんはというと、温泉の縁の石で座って寛いでいた。

いつだってそうやって私達と距離をおいて……でも、私達のことを嫌いじゃないというのは分かる。彼はいつだって私達を文字通り命をかけて守ってくれる。

今日だって皆が命からがらの瀕死の時に率先して前に出て戦ってくれた。

だけど……だから……私はしょうぐんさんと仲良くしたい。

 

気付かれないようにそっとしょうぐんさんの後ろに回り込む。

しょうぐんさんの背中は金属のように固く、特有の光沢を放っていた。

見た目だけで分かるその硬さ、強固さは戦闘で対峙する相手への威嚇効果はかなりのものだろう。

しかしこうして近づいてみると大小様々な傷も目立つ。この内のいくつが本来背負う必要の無い傷だったのだろう。

「しょうぐんさん……」

思わずその傷の一つに触れてしまった。

「な、アーティスさん。どうしたんですか?僕は外の監視をしていますから、湯船を楽しんできてください」

「あなたは……どうしてそんなに自分を責め続けるんですか。もう良いじゃないですか。自分を許してあげても」

しょうぐんさんの視線が足元に移される。

「リンリンさんが生きてれば……きっとこの温泉でゆるすぎさんのそばで一緒に入ったんだろうな。R・Tさんとジャックさんは、仲良く水かけしたり、ツッパリさんは水の不可を利用して訓練したりしてたのかな」

そうか、しょうぐんさんは膨大な過去に囚われて。

「いくつもの未来を奪ってそれでも僕だけが生き延びて、そんな僕に幸せを受け取る権利なんて」

「ある!」

思わずしょうぐんさんの背中に覆いかぶさってしまう。

「あなたは、どんなに苦しくたって、幸せにならなきゃいけない」

傷の一つの跡を指先でツツ……と優しく撫でる。

「だって、その皆は……後に繋がる皆の、私達の為に戦ったんでしょ……だったら、私達は……生きなきゃ。いつかその皆に会う時に、しっかりとお礼と幸せを報告できるために」

しょうぐんさんは押し黙って足元をじっと見ている。

その視線がスッと上に、上空に向けられ

「そう……なのかもしれません。けど、僕は強くないから急には変われません。時間が、かかります」

「大丈夫、私は待つわ。本当のあなたを見たい。あなたは本当に優しくて……仲間思いで……そんなあなたの本来の姿を見てみたい」

両方の手でしょうぐんさんの背中を包み込む。

ひんやりとした体の中に、確かな温かい体温を感じる。

そう、あなたは温かいポケモンなの。体も、心も。

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