【ポケモンエメラルド】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】   作:null cedar

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#2【リンリン】

youtube:https://www.youtube.com/watch?v=iMcGYYD2KiE

ニコニコ:https://www.nicovideo.jp/watch/sm42765030

 

仲間ができた。

ポチエナのポチとジグザグマのひよりさん。

これからは私がこの二人を守り導いて行かなければならない。

ポチは慎重な性格なようで、ポケモンバトルの際にも相手の行動をしっかりと観察している。もしかしたらこのチームの司令塔になってくれるかもしれない。

ひよりさんは少しお転婆なところがある。一緒に歩いていても手が空いていればつい道端のものを拾ってきてしまう。好奇心の強さは良いのだが、それが取り返しのつかないことにならなければ良いのだが……。

 

と、心配していたのだが、まさか私の方が迂闊さから大事に至るとはこの時思いもしなかった。

ポケモントレーナーたちは目があったらポケモンバトルを挑み、勝者は敗者より賞金をもらうことで日銭を稼いでいるようだ。

その日もマスターは何人ものトレーナーと勝負をしていた。対戦相手のトレーナーは丈の短いスカートを履き、足を見せることで男の視線を誘導しようと盤外戦術を仕掛けてくる。マスターはこの手の攻撃に弱い。

私の後輩である、ポチとひよりさんも育成を兼ねて何度か戦ってはいたが度重なる戦闘のためすでに疲弊しきっていた。

以上の2つの理由でここは私だけでなんとかしなければならない。あわよくばここはバシっと決めてマスターに褒めてもらいたい。

私は先方に出されたジグザグマを難なくいなし勝利を収めた。

そして次に出されたポケモン。野生の頃は見たことがなかった。体からは湿った土……腐葉土のような匂いがし、二足で歩く植物のようだった。マスター曰く、名をキノココ。

見たことが無い体に驚くがマスターが言うには私の半分のレベルらしい。

それを聞いて安心した私はマスターをちらりと見る。私に勝負を預け、信頼してくれるのその瞳。それさえあれば私は戦える。

足は地面をしっかりと捉え、全力でその地面を蹴る。大地から伝わる反作用を体に伝え、それを推進力としキノココへと接近する。キノココもそれに応えるかのようにその体を私へとぶつけて来ようとする。腕が無いため攻撃手段は自ずと限られてくる。キノココの足は短く、それを戦闘に用いるのには適していないことは明らかだ。つまり相手はその全身をぶつけてくる体当たり。これを狙っていることだろう。ならば私はその攻撃に先んじてこの腕を相手の急所に叩きつける。

私の右手は相手の眉間めがけて伸びる。お互いの全速をぶつけ合うような初撃。私の腕はキノココを捉え確実にその衝撃は体内にまで伝わっただろう。キノココの体当たりを逆手に取りこちらの攻撃力の足しにさせてもらった。

そう考えていたのが甘かった。キノココの狙いはそうして相手に触れさせることだったのだ。私の攻撃によりキノココの頭から大量の粉が舞い上がっていた。キノココ、という名前を聞いた時に推察するべきだった。恐らくこれは胞子だ。自然の植物であればその胞子は繁殖のために用いられるためそこまで警戒する必要は無い。だが、こと戦闘用に進化したポケモンから繰り出される胞子は外敵に異常をもたらすとオダマキ博士のラボの本で読んだことがある。

だが、気づいた時には遅かった。攻撃後の無呼吸からの解放により私は酸素を取り込むための行為をしてしまった。ごく少量ではあるだろうがその胞子を吸ってしまった。

体の筋肉がしびれて来るのが感じる。恐らく呼吸器の筋肉にも作用しているのだろう、上手く呼吸ができない。

交代?

いや……ポチもひよりさんも戦えるような体力は残っては居ない。なによりも、こんな危険な敵を……後輩に任せるのはお姉ちゃんらしくないものね。

幸い、先程の攻撃はキノココにダメージを与えていないわけではなかった。残る体力でも十分に倒せる相手だ。

私の予想通り数度の攻撃でキノココは地に伏せた。

だが、相手を倒したからと言ってこの体内の毒が浄化されるわけではない。解毒の必要がある。

 

マスターは戦闘が終わるやいなやその足をポケセンへと向かわせた。

私のためにそんなにも必死になってくれるという事実が、嬉しかった。今まで自他共に命というのは消耗品として扱ってきた自分にはこんなにも必死に守ろうとしてくれることがあまりにも意外だった。

だが、今までに歩いてきた距離と自分の残った体力を考えると、恐らくは間に合わないだろう。

数秒ごとに体の痺れが広がってくるのがわかる。毒が血管に到達したのだろうか。少しずつ体組織が破壊されていくのを感じ取ることができる。意識が遠のく。

もっとたくさんマスターと旅をしたかった。でも、最後にこんなに一生懸命に、私の命を救おうとしてくれて嬉しい。私を抱える両手の温もり。それだけで私は救われた。頭にも毒が回ってきたようだ。意思とは関係なく私の意識は闇へと落ちていく。

次に目が覚めるとしたら……また新しい命なのだろうか。また……マスターのポケモンになれるかな。そうだと良いな……。

 

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