【ポケモンエメラルド】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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フエンでのジムリーダー戦の前、ココ姉たちとポケセンで準備をしていた時の話だ。
以前もらった卵が孵った。
卵から新しい命が確かに産まれた。知識として知ってはいたが、実際に見るのは初めてだった。
「こうして新しい命が産まれると、アタシたちの命がつながっていくことを感じるね。この子たちを守るために戦うのなら、確かに自分の命も惜しくないよ」
「かわいい~。この子の名前、こうていですっけ?私としょうぐんさんは今回のジム戦はお留守番ですからしっかりとこの子の面倒見ておきますね」
「頼んだよ。アタシたちの新しい皇帝になるかもしれないんだからしっかり頼むよ!それとアーティス、こうていだけじゃなくしょうぐんのことも頼んだよ」
僕はそんなに頼りないのだろうか?
そりゃあ最近は落ち込んでばかりだけど、それでも誰かに面倒見てもらうほどではないと思うんだけど。
「え?しょうぐんさんは流石に私に面倒見てもらう程では」
「あららら~、面倒見るってわけじゃなくてねぇ~。アンタさぁ、もしかしてまだ自分の気持に気づけてないの?ハハっ、こりゃ傑作だ。あんたらの行末も楽しみだねぇ」
そう言ってココ姉は元気に出発した。
思えばそれが最後の会話だった。
そして、現在111番道路。
僕たちはゴーゴーゴーグルを装着し、行軍している。
辺りには絶えず砂嵐が吹き荒び、ゴーグルを付けているとは言え、なんとか目が開けていられるだけで視界の悪さは数メートル先すら自由でない。
場所によっては足元の砂が柔らかく足を取られる。
こんな中僕たちはゆるすぎさんが見たと言う塔を探している。
だが、そんな塔は一向に見えなかった。そもそも数メートル先すら視界が取れない中で見えた塔なのだ。或いはその塔は蜃気楼で見えただけで、この辺りには無いのでは無いだろうか。
無いものを探すなんて流石に無理だろう。
半ば諦めながら砂を踏みしめていくと足元に硬い感触が伝わってくる。
もしかしたら、塔が砂に埋まっているのか?という期待をしてしまう。
足元の砂を急いでかき分け、自分の足が踏んだものを確認しようとする。
そこで現れたのは土偶のような形の……ポケモン?
後から知ったが、それはヤジロンという名前だったらしい。
そのヤジロンの目が光り、その体の中に異様な熱量を集めていく。
これは何度も見た事がある。自爆の予兆だ。
いつもなら体の外側の硬い外皮で受けることでその威力を大幅に削ぐことができる。
だが今、足元から自爆されたら柔らかい腹の部分に直撃してしまう。
体の血が一瞬にして引く。
恐怖している。恐怖……している?
半ばいつだって死んでもいいと思っていた僕が今この瞬間になって死にたくないと思っている。
生きていたい。皆ともっと一緒に居たい。優しくしたい。
いろんな思いが同時にこみ上げてくる。
しかし足元の爆発は今まさに起きようとしており、それを止める手段は無い。
強烈な閃光は視界を一瞬にして白に染め上げた。
だが、そこで起きた爆発は僕を傷つけることはなかった。
爆発の直前僕は別の衝撃を受け、近くの地面に転がった。
爆発の後その爆心地に居たのはアーティスだった。
「アー……ティス……さん?」
「あはは、失敗……しちゃった。とっさに体当たりして、私も一緒に転がれば助かるかな、って思ったんだけどさ、直撃しちゃったよ」
「そんなことより早く治療しないと」
「しょうぐんさん、分かってるでしょ。何匹も見送ったあなたなら。これはもう駄目だよ」
アーティスさんの言うとおりだった。
この傷はもう助かることはない。即死でないのが奇跡な程の攻撃だった。
爆発を抑え込むことで最も威力の出る距離よりも大幅に近くで衝撃を受けたことが幸いしたのか。だがその為、その際に発生する熱の殆どは受けてしまっている。
いや、今はそんなことを冷静に考えている場合ではない。
「あのさ、しょうぐんさん。今こんなになってやった分かったことがあるの。聞いて」
迫りくる別れをなんとか否定したかった。だけど、何度もそれを見てきた僕は……それができないことは分かっている。
残される僕らにできることは……。
コクリ、と首を縦に振った。
「あのね、私は今から死んじゃうけど、だけどしょうぐんさんは私のこと覚えていてくれるよね?」
「当たり前じゃ……ないですか」
「そう、ありがとう。だったらさ、私はそこで生きてるんだよ。しょうぐんさんが忘れない限り、私も……ココさんもそこで生き続けてる」
アーティスさんのボロボロの腕は僕の胸を指差している。
あまりにも痛々しい動きに思わずその手を支え、僕の手のひらで包み込む。
「ふふ、ありがとう。その優しさをさ、皆に分け与えてあげて。あなたは……今の団でリーダーになるべきだよ。あなたに守られるたび、胸が暖かかった。私はどんどんあなたに惹かれた。
そして今、最後の最後にさ、気づいたんだ。
ごめんね、しょうぐん。あなたに呪いをかけちゃうけど、でも私は後悔なく逝きたいんだ。思いを秘めたままなんて嫌なの。私って……いじっぱりだかさ。意地になっちゃうんだ」
「大丈夫です、アーティスさん。僕は……どんな遺言でも聞くし……あなたの思いは叶えてあげます。僕の命がある限り」
「あ~、そんなこと言っちゃうんだ……。嫌だな、どんどん死にたくなくなっちゃうじゃん。でももう多分時間も無い。
一回しか言わないよ、ちゃんと聞いて」
アーティスさんは息を吸い込み、その息を吐き出す。
「スー」
っと声を出しながら。
そしてその広角が広がり、その顔は笑っているように見える。
僕が握っているアーティスの手にはもう力は無い。
「き」
そう聞こえた。
もしそうだとしたら、確かに僕にとっては呪いだ。
だけど、ありがとう。僕のことを思ってくれて……ありがとう。