【ポケモンエメラルド】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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「なぁなぁしっぽぉ」
「どうした頭」
俺のしっぽには俺とは別の脳を持っている。だからこうして暇なときに喋ったりする。
ただしっぽの脳は本体の俺のと比べると小さくあまり賢くは無い。基本的にはなにかに反応して吠えたり噛み付いたり、というためのものだ。
だが、こうして辛抱強く何度も何度も語っていた為か俺のしっぽはかんたんな喋り相手くらいにはなった。
「今日も……暇だよなぁ」
「そりゃあな」
そう、暇だからこうしてしっぽに話しかけている。
ここはサファリゾーン。大自然と違って勝手に餌が出てくる。
客はポロックっていうポケモン用のお菓子を投げてくれたりもする。
たまに捕まえようとボールを投げられたりもする。だけど自然と違って俺たちは弱っていない。
体力がある状態だとよほど虚をつかれない限り捕まらない。
そして俺の虚を突くのは不可能に近い。
「そりゃあ、ボール投げられても基本的に前はお前で後ろは俺だろ。そりゃ気づかずにボールに当たることなんて無いわな」
しっぽが俺の思考を読み取って返事をしてくる。
俺の思考が強くなると、しっぽ側の脳にもそれが伝わるらしい。
恐らくは危険の際に尻尾側にも迅速に緊急事態を伝えるためなのだろう。
「なぁしっぽ」
「なんだ頭」
「いい加減外の世界に行ってみたくないか?」
「まぁそれもいいかもなあ」
「飼育員の話を聞くに、人間に捕まったらポケモンバトルってのはしないといけないけど、それ以外はここよりも良い待遇らしいぜ」
「へぇ、なら良いんじゃね?」
「しかもバトルつっても本気じゃないらしいぜ」
「あぁ~、そういえば負けても食われたりしないんだっけ」
「そうそう、ボロボロになってもポケセンってところで治療してもらえるらしいぜ」
それになぁ、外の世界が気になるってのもあるけど何よりもなぁ。
「よぉ頭、思考が強いぞ。アイツが嫌いってのがビンビン伝わってくる」
そう、俺は嫌いなのだ。このサファリゾーンでの俺の上司。この部署の課長のピカチュウが。
ピカチュウはポケモンの強さ的には全然強くない。むしろ弱い部類なのだが、どうやら人間に人気があるらしくどうにも特別扱いされる。
このサファリゾーンでもピカチュウ目当てで訪れる客がいるほどで稼ぎ頭となっている。そのため、いつの間にか飼育員が配る餌などはピカチュウから選ぶ権利が与えられていた。
俺達の配置もピカチュウ課長が決めているという噂もある。
だから俺達下々の部下はアイツを影でピカチュウ課長を揶揄ってポカチョウと呼んでいる。
「んじゃあまぁ、いっちょわざと捕まってみるかぁ?」
「そうだな、お、ちょうどあそこに白い帽子かぶった兄ちゃんがいるぜ」
俺の視線の先には白い帽子をかぶった男が先程から草むらを東奔西走している。しっぽ側からは見えない為か抗議の言葉が飛んできた。
「兄ちゃん?いや声から察するにおっさんじゃないか?」
「ん~?どっちでも良いだろ。アイツラについて行ってみようぜ!」
「オッケー。んじゃ行こうか。アバヨ!ポカチョウ!こんにちは無限の未来ってな」