【ポケモンエメラルド】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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エスパージムのジムリーダー、フウとラン。
どうやらこのジムではタッグでのバトルのようだ。
ならば、サイカさんとメガロニアさんのタッグで余裕だろう。
相手のメイン火力であろうエスパー技は彼女たちのタイプ特性によって無効化できる。
相手の火力がない状態でのタッグバトル、今までの戦いに比べて随分と余裕だ。
そう思っていた。
だがしかし、現実はうまく行かない。さすがのジムリーダーである。
相手の繰り出してきたポケモンはネンドールとネイティオ。
「あなた達の先方が悪タイプであることは我らのマスターはすでに予知済みでした。驚くことはありません。私達はいつもどおりマスターを信じ、その支持を忠実に実行するのみです」
そしてネイティオは目をつぶり深く瞑想をし始めた。
戦闘中に瞑想をするというのは一見隙を晒すだけの行為に思える。だが、極限の状態で瞑想、つまり周りのすべての状況をありのまま受け入れることで精神を高める事ができる。それにより精神の力による攻撃力防御力を上げる事ができるという。
そしてその瞑想の隙を潰すように相方のネンドールはその念動力により地面を揺らしてきた。地震だ。
じめん技の中でも最高峰の一撃である。地面の揺れの中接敵するのは難しく、悪タイプである利点も活かすことはできない。
また、サイカさんとメガロニアさんはその俊足さと引き換えに防御を捨てている為、地震により手痛いダメージを受けていた。
ダブルバトルのためダメージを分散することができていたが、もしこれがシングルバトルであったのなら恐らくは命はなかったであろう。それほどの威力だった。
だが、その揺れのダメージを喰らいながらも両名はネイティオに己が牙と爪を届かせていた。勝利への執念なのか、相棒への信頼なのか。
その傷は浅いものではなく、ジムリーダーはキズぐすりによりネイティオの治療を始めた。
その隙に、こちらも私とジョニーさんのタッグに交代した。
交代のタイミングでネンドールの地震を食らうことにはなるだろうが、私は空を飛ぶことができるので地震は当たることはない。
「ジョニーさん、耐えられますか?」
「分からないかなぁ。でも、耐えるしか無いよ。戦いは結果が全てだ。メガロニア君に前にそう教えてもらった」
根性論というのは私はあまり好きでは無かった、というか信じることはできなかったが、今なら分かる。
仲間と語り合った日々は、お互いの心にお互いの言葉を刻み、その心を根性という柱で強固にしていく。心は時に体を凌駕する。
そして今、ネンドールの放つ地震はジョニーさんを貫ききることはなかった。
確かに直撃を受けたのだが今彼はそこにまだ立っている。
渾身の地震をただ独りで受けきったのだ。
この事実はおそらく相手に取って脅威だろう。自らの必殺技とまで昇華させた絶対の一撃をただ単身で受け切る。
おそらくジョニーさんは今は肉体的ダメージで倒れる事は無い。
「では、精神ならどうでしょうか?」
私の心を聞いていたかのようにネイティオは目を開き。そしてジョニーの方を見つめた。
ネイティオの目からは「何か」が出ている。
これは……サイコキネシス!?
ジョニーさんは今肉体の傷を精神がなんとか食い止めている状況だ。この状態で今その支えとなる精神にダメージを負ってしまっては肉体を支える事ができない。
「頑張っては……みたんだけどね……。あぁ、駄目だったみたい。ごめんさみだれ君……ごめん皆……」
瞑想により研ぎ澄まされたネイティオの精神から放たれたサイコキネシスは、やはりジョニーさんの心を一撃で砕き、今までなんとか耐えていた傷口がすべて開きそのすべてから血が流れていた。その目はすでに瞳孔が開かれ虚空を見つめている。
もとより致命傷に近い傷を負っていた肉体に対し、執拗なまでの精神攻撃まで食らったのだ。
「謝るなんてやめてください。私はジョニーさんに感謝しかしていません……」
そっと呟く。聞こえていないのは分かっている。これは私が私に言ったものだ。
ジョニーさんだけではない、皆さんのおかげで私はここまで来ることができた。
とはいえ、まずい状況ですね……。
続いて出てきたなむあびさんも、強化されたサイコキネシスにより成仏した。
だが、攻撃の隙にメガロニアさんを出すことができる。一度決めた攻撃を途中で変更する事はできない。
そして私となむあびさんを相手に地震を打つという選択肢は無いはずなので、メガロニアさんは無償降臨できるはずだ。
この場で無傷で出てこられるのであれば十分に勝機はある。あなたの命が我々を勝利に結びつけたのです。なむあびさん。
「次にあなた達はメガロニアを出してきますね」
そうネイティオは宣言した。背骨を氷の手で掴まれた気分だった。だがここで行動を当てられたことで動揺するような答えをしてはいけない。
「おそらくそうでしょうね。もうこれ以上あなたの好き勝手にさせるわけにはいかない。こちらの最大火力を持ってあなたを倒します。あなた達はおそらくメガロニアさんが出てくることを読んで……博打まがいの地震を打ったのでしょう?残念でしたね。私の計算ではその地震は命を取るには至らない」
「なるほど確かにこちらのネンドールは地震を打ちますよ。読んでいましたからね。未来を。あなたのメガロニアをの命にはほんの少しだけ届かない。良い判断です。ですが、忘れましたか?私達のマスターはエスパー。ほんの少し超能力で地面に小細工をね」
そう言うとネイティオは翼を大きく広げ、空へ祈った。
「どうしました。瞑想の次は祈祷ですか?戦闘中だというのに信仰心を見せつけるのは感心しませんよ」
「ふふ、これはあなたへの冥土の土産のための前奏曲ですよ。どうです?このように晴れた空の下で死ねるのであれば本望でしょう?」
先程から日差しが強くなってきているのは感じていたが、まさかネイティオの技……なのか?
ネイティオの動きに気を取られている間にネンドールはまた再び地震を放とうとしていた。
「メガロニアさん、大丈夫です。今までの火力から計算するとあなたならなんとか一撃耐える事ができます。耐えたら即反撃で相手の息の根を絶ちましょう」
「あぁ!言われなくても分かっているぜ!!」
それが、メガロニアさんの最後の言葉だった。
ズガン
という大きな揺れが地震によりたまたま隆起した岩の塊を弾き、たまたまメガロニアさんの体を貫いた。
客観的に見ればそういったたまたまが積み重なった事象なのだろう。
だが、事実メガロニアさんはその岩の貫きにより即死していた。
そしてそのたまたまは果たしてたまたまなのか。
「言ったでしょう、私のマスターは未来を視ていると。そして、あなたの死も既に見えている。どうです?今ならまだ逃げることでその運命からも逃れられますよ」
私の死が、確実?
この話術こそが一つの戦法なのかもしれない。先程のじしんによる急所の貫きも未来を視ていたわけでなく、本当に偶然なのかもしれない。だが、そうとは思えない圧力があった。
正直言って今までの私ならば確実性の無いこの勝負は一目散に撤退していたことでしょう。
「ありがたい提案です。ですがね、私は絆(ほだ)されてしまったのですよ。この方々との友情に。さぁ、行きましょう!こうていさん」
私の横には既に次のポケモンであるこうていさんが出ていた。
「仕方ありません。やはりあなたも運命のもと散ってもらうしかありませんね」
ネンドールはやはり地震を打ってくる。
こうていさんはその地震を受けながら見事なカウンターでネンドールを倒した。
しかし、私の背筋はそこでゾクリ、という寒気が走った。
このエスパージムでこうていさん、つまりソーナンスの戦い方を熟知していないわけがいない。
だとすれば今の地震はなんなのだ。わざわざ負けるために?
もしカウンターを未来予知しているのであれば答えは簡単だ。特殊攻撃を仕掛ければ良い。
なのにそれをせずにわざわざ負けるために攻撃を。その理由は?
そう考えている間に出てきたのはソルロック。
ジムに降り注ぐ強い日差しはまるで太陽が2つになったかと思わせる。
「これが、私達の目的です。そして今、あなたの命は終わりました」
ネイティオは目をつぶり瞑想を始める。
「せめてあなたの死を私が受け止めましょう。敵とは言え天晴でした」
その言葉も終わらないうちにソルロックはその身を赤くたぎらせ炎をまとい、その炎を私に浴びせかけてきた。
太陽の日差しでより激しく燃える炎は私の肉体だけでなく、魂すら浄化するのに十分な火力を有し、そして私を焼き尽くす。
「良いか!皆!ここで私が負けるのは……私の負けではない!皆が、皆が生きてさえいれば私達は負けてないんだ!」
冷静な私らしくもない最後の言葉を残して。