【ポケモンエメラルド】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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チャンピオンになって何度目の防衛になる。
ジムトレーナーからチャンピオンになって……最初は色々言われたっけな。
どこかの地方では元四天王のトレーナーがチャンピオンになって、チャンピオンに相応しくない強さだとバッシングされていたこともあった。
タイプ統一だから対策できるのはチャンピオンに相応しくないとも言われたか。
そんな評価も今では180度ひっくり返っている。
我らのトレーナーミクリがきらびやかな見た目に反し、地道な努力と泥臭い戦いができること、そして何より誰が見ても分かる圧倒的な戦闘力。
それはマスコミがいくら落とすための記事を書こうとも響きはしない。誰が見ても、それこそ初心者が見ても圧倒的なのだ。私達の強さは。
そして、今では立派にミクリの側近と言っても過言ではない存在。ミロカロス。彼は別格だ。
その美しさは誰が見ても視線を外すことができないほどだ。そしていざ戦闘になると圧倒的な観察力で相手の戦い方を観察する。
もちろんただの一匹のポケモンであるから、対戦相手の全てを倒すことは難しい。しかし、彼は戦う相手の動き、癖を見抜き、結論を我々に伝えてくれる。
彼には戦いの着地地点までのロードマップが見えているかのようだ。彼が伝えてくれた指示に従えば負けることは無かった。
そんな彼は今、見たこともないポケモン、おおあなと呼ばれているポケモンと対峙している。
相手の出す技を1つ1つ観察するだけではない。後方に控えているポケモンの種類、視線から技、戦術を推測している。彼のいつもの眼力だ。
そして、トレーナーを見る。その瞳にはいつだって悲しみを携えていた。ここに来るトレーナーは、強くなるためにあらゆる事を犠牲にしてきた。青春、恋愛、地位、娯楽、それら全てを強くなるただ一点に注ぎ込んできた。その、全てを注ぎ込んできた結果をこの後に全て砕く。その行為に彼はいつだって心を痛めていた。
だが、彼の今の目は悲しみだけでなく……他の様々な感情が混じっているようだ。
彼は、相手のトレーナーの事を知っているのか?
そのせいか、あまりにも後方の観察に気を取られすぎている。いつもの彼らしくも無い。そのためか、攻撃もいつもの正確無比な相手の急所のみを撃ち抜く冷徹さはなく、ためらいを感じる。
自分の不調を悟ったのか、相手のギガドレインをわざと喰らい退場してきた。
「皆様すみません……ちょっと不甲斐なさ過ぎました。お察しの通り勝てなくは無かったのですが……。ですが分析は完了しました。結論から言えば、ドククラゲさん。あなたが出ればこの試合は完封できます。マス……相手トレーナーの性格を考えると搦手による戦闘を好みますがあなたならそれを封殺でき、毒により逆に相手を陥れることができます。そして、搦手を補うための火力役は相手の後方のトドゼルガとカイロスの遺体があることを確認しました。彼らが火力を担っていたようです。フライゴンが怖いですが、あなたの冷凍ビームであれば一撃で倒す事ができます。残りもあなたの敵ではありません。いつもどおりやってください。
しかし、ただ一点。
あのチームは……ポケモンセンターで仮死状態からの蘇生はしてもらえません。つまり、ここで彼らを倒すということは……殺すということです。すみません、ドククラゲさん。あなたにこのような重責を押し付けてしまって」
俺の触手の一本をミロカロスの頭にポンポンと乗せてやる。
こいつは私より後輩なのに先輩に頼ろうともしない。全てを自分で背負い込もうとする。
まったく、私たちを支えてくれるのは本当に助かってはいるが、私達だってお前を支えられるんだ。
「任せろ」
それだけ言って俺は戦場へ赴く。
後ろで彼の小さな小さな声の独り言が聞こえてきた。
「ごめんなさい、ドククラゲさん。ごめんなさい、マスター……」
マスターというのが誰のことかは分からないが、少なくとも私には謝らなくていい。
むしろ私は感謝しているのだ。私達にこの高みを見せてくれて。
それにしても、普段は凛としているのに、今の彼はどうしたのだろうか。まるで触れば散ってしまう花のような儚さを思わせる。
いや、今はそんな事を気にする時間ではない。
殺意が必要なのだ。相手は全力で私を倒しに来る。文字通り命を賭けて。
命を賭けて挑む相手を止めるには……こちらも命を賭ける必要がある。後があるという油断は負けを誘う。一期一会。これが彼ら、彼女らへの最初で最後の死合。
私は……俺は今からアイツラを殺す!