【ポケモンエメラルド】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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「空はこんなにも綺麗だったなんて……やっぱり私は、この世界のことをまだまだ何も知らなかったんだな」
重力が私を地面に誘う中、私は空の美しさに思わずつぶやく。
何も、何も後悔は無い。
それどころか私の望む全てが成された。
1つは、ゆるすぎ……マスターの汚名を晴らすこと。
マスターがやらせをしていないことなんて分かっていた。けれど、世間にそれを認めさせるには、私達が一度大衆の目の前でマスターのポケモンを完膚なきまでに倒す必要があった。
もちろんそれは彼らの死に繋がる。
でも、それは……本当に申し訳ないが、私にとっての一番はマスターだから、ごめんなさい。
そして、一度私達チャンピオンが完璧に勝つことでやらせ疑惑を完全に排除できる。
その上で、マスターは決して折れない。実力で私達を倒せるようになって帰ってくる。
そう信じていた。そして、それは成された。
私の仲間のホエルオーの潮吹きの威力によりバトルフィールドは原型を留めないほどに無茶苦茶になった。
壁という壁に穴は空き天井も残っている場所のほうが少ない。これほどの火力を見て我々チャンピオンが手を抜いていると思うものはいないだろう。それどころか、いつもに増して殺意が増している。そう考えるものがほとんどだったのではないだろうか。
実際いつもの防衛戦はエンタメ性を考え相手の体も気遣っていた。しかし、今日の戦いだけは違った。相手を殺すつもりで戦った。
それでも、私以外は相手のチリーンの限界まで研ぎ澄まされたサイコキネシスの前に倒れた。
だけど……私だけは倒れるわけにはいかなかった。
私だけは……私だけは、サイコキネシスの火力だけで倒れるわけにはいかなかった。
最後の仕上げのために、私はサイコキネシスで命を落とす必要があった。
チャンピオンの切り札としてのポケモン。それが命を落とすことがあれば、もはやそこに八百長の疑いを賭ける者はいない。
相手のチリーンも幾度のサイコキネシスの末、私がダメージで倒れないことを察し、このチャンピオン防衛戦のバトルフィールドの空いた壁から叩き落とすことを選択した。
こうして私は今重力を感じながら落下している。
私の望みの2つ目。マスターの旅はリンリンから始まった。かつての私から始まった。
だから……私で終わらせたかった。それだけ。たったそれだけ。
私で始めて私で終わり。
ごめんなさい、ミクリ。あなたは立派なトレーナー。何も悪くない。
悪いのは私。どうか他の皆を責めないであげてください。
落ちていく。
あと数秒で地面にぶつかるだろう。
空に一条の光が見えた。
流れ星?……こんな私にも最後のお願い聞いてもらえる権利はあるかな?
もう一度、もう一度生まれ変わって出会えたなら……今度は貴方の一番星になれますように。
目を閉じ、願う。
しかし、その流れ星は願い事を叶える気は無かったようだ。
流れ星はまたたく間に大きくなり私に向かって突っ込んでくる。
「ったく、テレビ中継で見て確信したぞ!キモリ、いや今はリンリンだったか?いや、更に生まれ変わってるから今はなんだ!?」
ペリッパーに乗ってきた赤い鳥のようなポケモンが私に向かって叫びつける。
「見た目はミロカロスだけど、戦闘中の動きはまんまだよなぁ!」
言いながらペリッパーから乗り出し私のしっぽを手で掴み取る。
「貴方は?誰?」
本当に知らなかった。けれどその手の暖かさは覚えがあった。
「もしかして……博士の所の……アチャモ?」
「そうだよ!俺も進化したんだ!」
なんで?いろんななんでがこみ上げてくる。
なんで私って分かったの?なんでここに?なんで私を助けたの?
「何年一緒にいたと思ってんだよ。オメェの考えてることなんて分かるっての。全部説明してやろうか?いや、いらねぇか、テレビ中継で見てオメェって分かったからハルカ引っ張ってここまで来たんだよ。間一髪だったな!」
そして、照れくさそうに鼻の頭をかきながら
「本当は、オメェがさ……あの男、ゆるすぎに連れて行かれて嫌だったんだ。理由は……どうでも良いだろ。けど、こうしてまた出会えたそれだけで良いんだ」
そうだね、また出会えた。それは私も嬉しい。
「ねぇアチャモ。空……綺麗だね」
「あぁ綺麗だ。だからさ、なんだ、生きていこうな」
私は死ぬことで全てを終わらせようとしていた。
けれど、まさか最後の最後でこんな単純な事を、アチャモに教えてもらえるなんて。
生きている事は、こんなにも美しい。
私という命を救ったその姿はなんと美しい。
命をつなぐのは、なにも死によって繋ぐことは無い。
生が生を繋ぐ。なんて美しいんだろう。
ありがとう、みんな。