【ポケモンエメラルド】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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ジムリーダーって人がいるんだけど、ポケモントレーナーの中でも強さを求める人達はこのジムリーダーって人に挑んでいくのよね。どうやら勝ったらバッジが貰えるらしくて、そのバッジを8つ集めると今度はチャンピオンロードっていうところに行って更に強い人たちと戦って、それでチャンピオンってのになるらしいのよ。
なんでそんな事するのかしらね?でもそれは多分……生き物、というか人間の本能。
きっと人間っていう種族の半分くらいは強さに憧れて強くなろうとする。ポケモンだって種族によってはただただ強くなるために進化したとしか思えない形のやつがたっくさんいるものね。そりゃあより強いほうが生きていくのには有利だけれども、それにしてもちょっとやりすぎな進化は多いわ。
そして人間も……きっとそういう強さに憧れるのね。特にゆるちゃんのような男の子は。
ワタシは生きていくだけの食べ物さえ食べられればそれで満足。それ以外は何も求めないんだけど、でもまぁゆるちゃんがそうしたいっていうなら仕方ないわね。
そんなこんなでそのジムリーダー戦なわけよ。ツツジっていう女の子なんだけど、多分人間という種で戦えばこんな細い腕じゃ全く強くない、それどころか弱い。けれどこれはポケモンバトル。トレーナーはワタシ達に戦いの指示を出すわけだから、必要なのは筋力じゃないものね。洞察、推察、読みの総合力。
その点においてはウチのゆるちゃんはどうなのかしら?まだまだ成長過程ではあるけども悪くは無いのかしら。
何なら今も私の目の前でリンリンと、ジムリーダーツツジのイシツブテが戦ってるんだけれども、リンリンは相手を牽制するように素早い動きで牽制している。けれどもイシツブテはその名のように石のように硬い皮膚をしてるからリンリンの牽制的な攻撃は全然効いてないみたいみたいなのよね。さらにある程度良い攻撃も上手い具合に急所だけ的確にガードしてダメージが入るのを防いでるみたい。恐らくツツジが毎日の訓練で防御の練習を大事にしているんでしょうね。流石はジムリーダーだわ。
恐らくは指示なしの戦いならばこの勝負は千日手、いや、攻め手の方が体力の消耗が多い分リンリンの方が不利かな。けれどもそこはウチのトレーナーゆるちゃんよね。
イシツブテのガードが少し開いた隙を狙って的確に「すいとる」の指示を出したわ。あのタイミングなら絶対に躱せない。誰もの予想通りただの一撃でイシツブテはすべてを吸いつくされて戦闘不能になったわ。
二匹目のイシツブテも同じような展開。正直このまま突破できちゃうんじゃない?そう思ってたんだけど、やっぱりそこはジムリーダーってやつよねぇ。とっておきの隠し玉を用意していたみたい。
岩のような体に真っ赤な鼻。相手への警戒を示しているのかしら?野生で会ったらまず間違いなく……逃げるわね。
「行きなさい、ノズパス」
ツヅジの声は緊張感と高揚感を孕んでいた。間違いなく、この女は戦いを楽しんでいると同時にここがクライマックスなのだろう。
最初の一撃はリンリンの接敵からの「すいとる」。流石にあの岩のような体は素早く動くことはできないから、リンリンよりも先に動くことはできないようね。
草の芽吹きは岩をも持ち上げる。岩ポケモンに取っては草の攻撃は天敵なのよね。もしかしたらこれで終わるかしら。
リンリンから伸びた蔦がノズパスの体を絡め取る。あとはこの蔦の一本一本から相手の体力を吸い取るっていうリンリンの十八番の技。なんだけど、相手のノズパスのあの顔は何なのかしら。天敵の技を今から食らうっていうのに余裕がある、いや、それどころか笑ってないアイツ……?
「最初のイシツブテであなたの得意技は見せてもらったわ。さぁ足が止まった今よ!がんせきふうじ!!」
しまった。完全に誘いに乗ったわねゆるちゃん。
蔦はブチブチとちぎれてリンリンの体は大きく後ろへと弾かれる。
相手のノズパスは速く動けない。だったらどうやって攻撃を当てるかなんて……そりゃあそうね。相手から近寄ったところに懇親の一撃を決めれば良いわけよ。
リンリンは、どうやらガードはできたみたいだけど両手には大小様々な石が刺さっている。あの岩、随分と深く突き刺さって……あれじゃ自慢の速度も殺されるわね。もしかしたら次の一手は相手の方が速いかも。それにダメージ自体も大分深刻だわ。あんな攻撃、あの子の体じゃ2発耐えれてやっとってとこじゃない。下手したら次の一撃で……。
ゆるちゃん、このまま戦わせちゃ駄目!リンリンを一旦引かせてお願い!!
次の一撃をお互いのトレーナーが長考しているのが伝わる。ポケモンたちは隙を晒すまいと牽制とフェイントを織り交ぜ、そして自分のトレーナーからの指示を待っていた。
ノズパスの攻撃の”起こり”を読みゆるすぎはポケモンの交換に成功する。
ナイスゆるちゃん!上手いわ。そしてシュシュ。仲間になったばっかで悪いけどいきなりの大一番!頑張って頂戴。
だけど、相手のノズパスはもうリンリンを撃つために放ったがんせきふうじが。お願い!耐えてシュシュ!!
轟音の後、砂埃が収まり視界を取れるようになった時シュシュの全身には岩が突き刺さっていた。リンリンと比べて一回り小さいキノココのシュシュにとっては同じ攻撃でも体に対する攻撃範囲が広い。
先ほどと同じ攻撃は、しかしそのダメージの深さが先程よりも大きいことを伝えてくる。
シュシュはうまかった。ダメージの瞬間にしびれごなを放っていたわね。だけど……嘘でしょ……全く浴びてないってどういうことよ、あのタイミング、あの間合いであの粉を避けるの……?
あのダメージじゃ間違いなく二発目は耐えられないわ。どうするのゆるちゃん。
足へも石が刺さってるからスピードもある程度殺されてる。いつもと同じ速度では動けない。そもそもシュシュってばどれくらいの速さで動けるのかしら……?
一度引きさえすれば刺さった石は自分で処置してスピードもいつもと同じように動けるけれども、問題は交換するとしたら私達のメンバーの中で誰と交換するかよね。
交換のタイミングは大きな隙になるから相手の攻撃を甘んじて一撃受ける必要があるわ。だからなるべく硬く、2~3発は踏ん張れる一番硬いのはかくしごだけど、問題はタイプ相性ね。
だけど可能性があるとしたらかくしご、あんたしか居ないわ。
ゆるすぎも同じ考えだったか、或いはそうでないのか。だがとにかく、交換先はひよりさんの考えと一致し、かくしごが戦の場に繰り出される。
当然その僅かな時間にノズパスのがんせきふうじがかくしごを襲う。
だが、本来シュシュのとどめを刺す為に放たれたそれは先程のものより確実に大きな石を先程のそれよりも確実に速く打ち出していた。
その石はかくしごの体を貫通し石からはやがて羽化して出てくるであろう成体の体液が伝っていた。
その事実が意味する所、それを理解し本来は冷静にならなければならないトレーナーは焦りのあまり最も最悪の一手を打ってしまう。
即ち、傷ついたポケモン、シュシュを再び投げ込むことである。
当然それを許すほどの相手ではない。刹那に放たれた岩の塊はシュシュを押しつぶした。
駄目だわ、ゆるちゃんがパニクってる。落ち着いて!って言ってもダメそうね。……今傷ついたリンリンが出ても恐らく同じことの繰り返しよね。だとしたら私のなきごえで少しでも相手の火力を削ぎ落として行くのが得策かしら。2~3回鳴いてる間にゆるちゃんも落ち着きを取り戻すでしょ。んじゃまぁ、悪いけど勝手に出ちゃうわよ。
それにね……私の後輩を痛めつけたアイツに一矢報いたいって気持ちもあるのよ!
ひよりさんはゆるすぎの指示を待たずにボールから飛び出る。
出てきた瞬間にノズパスの岩がひよりさんを襲うが、それを紙一重でかわす。
「アイツラがあんたの手の内を見せてくれたからね!悪いけど予習済みの攻撃にそんなに簡単にはあたってやれないのよ」
その声は甲高く、ノズパスの鼓膜を突く。その不快感は攻撃の集中を欠くのに仕事をしている。
自分の攻撃が十全に発揮できないと察したノズパスは攻撃の手を止め、その巨体をゆるすぎとひよりさんの間に位置するように動く。
「なるほどとおせんぼってわけ?私はいい女だもんね。気持ちは分かるわ~。でもそんな強引な手段は頂けないわね。」
さて、ヤバイわね。まさか退路を絶たれるなんて思ってなかったわ。アイツがここにいる限り私がボールに帰る手段は恐らく無い。私にできるこうげき手段は精々たいあたりかぁ……。戦力差は絶望的ね。
………………あ~あ、もう少しあんたの恋路も見てみたかったけど、どうやら駄目みたいね。ま、アイツらも命を賭けてくれたんだし先輩だけ生き延びるってのもカッコ悪すぎるからね、しょうがないちょっと待ってなさいよ。私がそっちでリーダーになってあげる!
「リンリン!あんたにバトンつなげるわ!大丈夫、限界まで相手の力を削ぎ落としてあげる」
その後の試合は凄惨たるものであった。
ノズパスのがんせきふうじを直撃しないように躱すが、その度に体のどこかを負傷し、技の度にひよりさんの体には一つ二つと傷が増えていく。
その技の合間を縫って少しずつではあるが、その傷ついた体をノズパスにぶつけていく。傷を追った体でのたいあたりはもはやノズパスよりもそれを放つひよりさんのダメージの方が大きいように見える。
だがそれにも関わらずひよりさんはたいあたりを緩めることはなかった。また、たいあたりの接敵の際に耳元で叫ぶことで相手の攻撃の力を削いで行った。その声を出すことですら今は傷口を開く原因となる。声をあげる度に血の流れは速くなり傷口からは絶えず鮮血が流れてくる。
ノズパスは一度は膝をついたが隠し持っていた木の実を食べることで一絞りの体力を回復させる。
あはは……。もしかしたら行けると思ったけど甘くなかったわね。もしかしたら生きて戻れるかもって思ったけど、まぁしょうがないわね。あれだけの啖呵きっちゃったんだもの。ここで散らなきゃフラグクラッシャー、ってやつよね……。
「ノズパスがんせきふうじ!全力でよ!!」
今までのがんせきよりも二周りは大きい岩が持ち上げられる。質量が大きい分投げるまでのモーションはゆっくりであり、傷を負っていない状態のひよりさんであればその軌道を見てから避けるには十分なものであった。だが、今は足はもう言うことを効かず歩くことにすら苦痛を伴う。
死にたくは無い。野生で生きていればもう少し生きられたかな。あぁ嫌だ、美味しい木の実をたくさん食べたかったよ。リンリン今の状態ならあんたでも勝てるわ、感謝してよね。あと、さっさとワタシのことは忘れてよね。ワタシなんかずっと引きずられても……嘘、本当はずっと覚えておいて欲しい。でもやっぱり一緒にいた時間が短すぎるよね。
「ゆるちゃん……。「ぷ。」って流石に面白くなかったよ」
うん、これも嘘。本当は……ちょっと笑っちゃった。
じゃあね、みん−−−−−−−−