原作知識を駆使してシロナさんを釣ろうとする前に全然違うヤツが釣れる話   作:鹿頭

13 / 16
十三話

 

 

 

「───潜入します」

 

 トバリシティに着くなり、リラさんはそう言った。

 

「はぁ……でも、どうやってです?」

 

「ここに鍵があります」

 

「あ、あるんですね鍵」

 

「はい。部下のハンサムさんが手に入れてくれました。コレを使って忍び込みます」

 

「なるほど……それで間に合うんですか?」

 

「コウキさん、派手に正面から行っても全員を相手取る事になるだけですから。ここは、少ない人数で叩くのが良いです」

 

「………わかりました、行きましょう」

 

 実は余り納得はしていないけど。

 先生なら、こういう時どうしたのだろう。

 近づいていくギンガ団のビルを眺めながら、そう思った。

 

「入り口のヤツらはどうするんですか?」

 

「それはもちろん、バトルで───」

 

「それじゃあ遅い!エンペルトっ!」

 

 ボクがそう言うとエンペルトは【バブルこうせん】で相手を吹き飛ばしていく。

 

「うわぁ!人に向かってポケモンのわざを使ってきたぞコイツ!!!」

 

 下っ端が喚く。

 煩い、どうせお前らだって散々やってきたんだろう?

 返ってきただけじゃないか、全く。

 

「コウキさんっ!?あなた何をするんですか!?」

 

「死んでないからヨシ! です!」

 

「ダメですよ!?」

 

 ボクの行動を咎めるリラさん。

 だからそれじゃあ、遅いんだって。

 先生だって、緊急事態にはポケモンのわざを使っていたし。

 

「えっ、でもジョウトじゃチャンピオンが人に向かってはかいこうせん撃ったって聞きましたけど……」

 

「その話もうそんなに広まってるんですか!? ううっ…頭がいたくなる……」

 

 ボクは知らなかったけど、先生は知っていた話。

 やっぱり、本当だったんだ。

 なら、良いじゃないか。

 

「どうせ相手は自分たちの都合のいい世界を創ろうとする悪人共です。容赦する必要がありますか?」

 

「………せめて壁を壊すとか、そういうのにして下さ───」

 

「やっちまえ!相手はやべー奴だ!!当てちまっても構わん!」

 

 わらわらと湧いてきたギンガ団がこちらに向かってわざを使ってくる。

 ────ほら見ろ。

 

「ああ!もう!ボーマンダ!」

 

 リラさんがボーマンダを出すと、ボーマンダが羽ばたいた風圧で、ギンガ団のポケモンがしたっぱ諸共吹き飛んでいく。

 

「今のは正当防衛です。……行きましょう」

 

 ボクたちは倒れ臥すしたっぱ達を乗り越えて、先に進んだ。

 

 道中、階段が無いことに気づいて、近くに倒れるしたっぱをエンペルトに締め上げさせると、ワープして移動していると答えが返ってきた。

 

「……大した科学力ですね」とは、リラさんの談だ。

 他にも、ボクは知りたい事があったから、進む先にいるしたっぱを隙を見ては締め上げていた。

「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど?」

 

「ひぃ…!殺さないでくれ!」

 

「返答次第かな。せん…リッシ湖の近くで、捕まえた人とか居ない?」

 

「し、しらない!そんな話聞いたことない!」

 

「じゃあサターンはどこ?」

 

「さ、サターンさまは今も連れ去られたまま行方不明だ!!!」

 

「本当?」

 

「本当だ!だから殺さないでくれ…!」

 

 みんなみんな、同じことの繰り返し。

 先生は知らないし、サターンも知らない。

 全く、一体どう言うことなんだろう。

 

 ───先生、どこに居るのかな。

 

「コウキさん。ここには居ないかもしれません。今は、湖のポケモンを優先しましょう」

 

「………わかりました」

 

 そうして、仕方なくギンガ団の基地を進んでいると、とうとうボクらはたどり着いたらしい。

 

「ふひゃひゃ、アカギはもうここにはおらんよ」

 

 その部屋に居たのは一人の老博士。

 アカギは、居ないらしい。

 

「───!」

 

「……遅かったか」

 

 三体のポケモンが何かの装置に入れられて、苦しそうに呻いていた。

 きっと、この三体が湖の三体なのだろう。

 

「湖のポケモンを解放したいなら好きにするといい、わしにはもう用済みのポケモンじゃからな」

 

「そうですか。ではポケモンの虐待及び違法な研究の疑いで現行犯で逮捕します」

 

「へ? お前さん達───」

 

「国際警察です!」

 

「なんと!? いや違う!わしは知らんぞ! それにわしはギンガ団の幹部でも一番の下っ端じゃし!」

 

「言い訳は後で聞きます」

 

 あっという間もなく、リラさんはその男を締め上げると、手錠をかける。

 うん、何と言うか。

 しまらない、って言うのはこのことなんだろうな。

 

「くそっ…くそぉぉぉ…わしもテンガン山の頂上までついて行けば良かった!!!」

 

「テンガン山の頂上……《やりのはしら》!」

 

 こいつの話によると、アカギはそこにいるらしい。

 ───となれば。

 

「リラさん先に行ってます! エンペルトっ!天井ぶち抜いて! トゲキッス! テンガン山までお願い!」

 

「コウキさん!?」

 

 驚くリラさん。

 本当なら時間がないから、待ってる時間はない。

 一人でも、行かねばならない。

 ギンガ団を止めて。

 先生の居場所を探す為にも。

 

 

「ああ…もう!フーディン!この人を拘置所までテレポート!」

 

 リラさんの声が遠ざかるのを聞きながら、空へと飛び立った。

 

 

◆◆◆

 

 

 

「………来たか」

 

「アカギ!!!!」

 

テンガン山の中腹から、ギンガ団を蹴散らしつつ槍の柱に辿り着くと、そこに居たのはアカギと───壁画で見た、二つの姿。

 

「きみは…カンナギタウンで見たな。あの学者はどうした」

 

「………お前達が知ってるんじゃないのか」

 

「生憎だが知らん。だがどうでも良い。新しい宇宙を造る用意は全て整った」

 

 ディアルガとパルキアを見上げるアカギ。

 

「今、全てが終わり全てが始まる。湖の3匹の結晶から作り出した赤い鎖と科学により作り出したもう一本の赤い鎖により時間を操るディアルガ……空間を操るパルキアは我が手中に収まった」

 

「────!」

 

 正直、怖いと思った。

 

 赤い鎖に縛られ呻くディアルガとパルキアからでも、十分に存在の格の違いが肌にヒリヒリと伝わってくる。

 

「アレがディアルガとパルキアですか……!」

 

「リラさん!」

 

「すみません、遅くなりました。警官隊を呼ぶのに遅れまして」

 

 そういうリラさんの表情は、強張っていた。

 

 

「何人来ようと同じ事。今の不完全で醜い世界は消える。全てをリセットする。究極の世界、完全な世界を作るためこころといった曖昧で不完全なものなど無くなれ」

 

 そういうとアカギは手を翳す。

 その途端、ちょうどアカギの後ろの方の空間に、亀裂が入っていく。

 

「……やはりな。シンオウを護るため哀れなポケモンたちが───何?」

 

 亀裂が割れて、まるで空間が破れたような、その先から、よいしょっと人が出て───せん……せい?

 

「言っただろう? アカギの考えてる事なんてそんなもんだって」

 

「アカギさま……!」

 

 え? 何で先生と一緒にサターンが出てくるの? 意味が、わからなくて。

 

「や、久しぶりコウキく───ん???」

 

「せん…せい? なんで、サターンなんかと……? 一体どう言う───」

 

「心の無い世界など一体誰が望むというのです!? アカギさまの理想の世界とはそんなものだったのですか!?」

 

 ボクの言葉はサターンの叫ぶ様な声にかき消された。

 正直、イラっとしたけど。

 少しだけ、先生がサターンと一緒に出てきた理由が、わかった様な気がした。

 

「そうだ。心の無い世界。それこそがわたしの望む世界だ」

 

「そ、んな───」

 

「だ、そうだよ。とりあえず下がってなサターン」

 

 そう言うと先生はアカギに正対する。

 

「ほう…わたしを阻むか。学者風情が」

 

 アカギが手を動かすと、ディアルガとパルキアも連動する様に先生に殺意を向ける。

 

「まぁ、この時のために全力で頑張って来たからな。本当に苦労したんだぜ?」

 

 不敵に笑う先生。

 こういう時の先生だ。

 何か、秘策でもあるんだろう。

 

「そうか。ディアルガとパルキアを従えたわたしを止めるか。新世界の邪魔をするなら──」

 

 そういうと、辺り一面が凄まじい気配に包まれる。

 なにか、おそろしいものがちかづいてくるような───

 

「何だこの気配…何者かが怒り狂ってる…?」

 

「先生!?」

 

 先生は大丈夫なのか、と駆け寄ろうとする。

 

「近づいてはダメですコウキさん!」

 

 けど、リラさんに腕を掴まれる。

 

「離して下さいリラさん!!!」

 

「あなたの先生は、本当にあなたの知ってる先生なんですか!? あんな禍々しい気配を従えるような人なんですか!!?」

 

 リラさんのいうことも、一理あった。

 

「この気配の主に操られている可能性も考慮しなければいけません!」

 

 あんな、恐ろしい気配。

 今まで、知らない────!

 

「先生!!!」

 

「ふ、ふふ…ふはははははは!!! 感じないか? 心胆を寒からしめる異様な気配を!」

 

「────来るか」

 

 

 先生の背後に現れた黒いモヤが次第にカタチを成していく。

 歪な夜の様に黒い翼。

 普通の生物にはありえない数の、脚───!

 

「ギラティナ 打破せよ!」

 

 先生が命じると、ギラティナが先生を一瞬向いてから、応える様に咆哮した。

 

「阻ませはせん!」

 

 アカギが手を振る。

 それに呼応し、ディアルガとパルキアがそのギラティナ、と呼ばれたモノに光弾を吐いていく。

 

「ギラティナ!!!」

 

 先生が叫ぶとギラティナは二発の光弾を放ち、諸共掻き消す。

 

「っ───!」

 

「なんて力──!」

 

「【シャドーダイブ】」

 

 ギラティナの姿が消えたかと思うと、ディアルガの背後から空間を食い破る様に現れたギラティナが《あかいくさり》を食い破った。

 

「次!」

 

 そのまま返す刀でパルキアに纏わりつく鎖を黒々と光る翼で爪の様に引き裂いた!

 

「コレで新宇宙創世とやらは終わったわけだ。ま、そもそも無理な話なんだけど」

 

 解放されたディアルガとパルキアが辺りを暫く見わたすと、光弾の様に光ってどこかへと飛び去っていった。

 

 それを見届けたギラティナは先生の背後に舞い降りる。

 その巨体が地に降りた衝撃は、軽く大地を揺らしていた。

 

「────認めるか!」

 

 その光景を目の当たりにしていたアカギが叫ぶ。

 

「あり得るか! ようやくここまで来たのだ!」

 

 激昂するアカギが、ポケモンを繰り出す。

 それを見た先生は、ニヤリと笑うとゆっくりとポケットから図鑑を出して───え

 

「漸くここまで来たのだ!新しい世界!新しいギンガ!見果てぬ夢だと────!」

 

「ロト〜?」

 

「────」

 

 図鑑から飛び出たロトムを見たアカギが、信じられないものを見る目をしたまま、固まっていた。

 ────どういうこと?

 

「ロト〜!!!」

 

 飛び出したロトムはアカギに飛びつくと擦り寄るようにアカギの周りをぐるぐる飛び回った。

 

「まさ、か………」

 

「ロト!」

 

「……そんな、こと……」

 

「ロト?」

 

「まだ、持ってんの? ボール」

 

 先生の言葉を聞いたアカギは、震える手で懐から古びたモンスターボールを取り出すと、ロトムがボールにしまわれていった。

 

 呆然とボールを見つめていたアカギの手元から、少ししてから、ロトムが飛び出した。

 

「ロトロト〜!」

 

「きみ……なのか…?」

 

「ロト!」

 

 その声を聞いたアカギはロトムを抱えてうずくまった。

 

 ここまで来れば、あのロトムの本当の持ち主は、あのアカギだったと、察する事ができた。

 

「一件落着かな」

 

 ギラティナが翼で空間を引き裂くと、その中に入っていく。

 

 それを見届けた先生がそう呟いた。

 

「おい、何が起こってる?」

 

 そこに馴れ馴れしく近づくサターン。

 いや、本当に先生とアイツの間に何があったのさ。

 

「幼い頃に別れた親友らしいよ、あのロトム」

 

「だから、アカギさまは心の無い世界を………」

 

「ま、そういう事だね」

 

 ふっ、と先生が笑った後に、うずくまっていたアカギがゆっくりと起き上がった。

 

「…………きみが、見つけてくれたのか」

 

「貴方のとは思いませんでしたがね」

 

「…………そう、か」

 

「ロトロト!」

 

「良かったなロトム」

 

 アカギの周りを飛び回るロトムに微笑む先生。

 

「さて、と」

 

 一息ついた先生が、ボクの元に近寄ってきた。

 

「改めて久しぶりだねコウキくん」

 

「せんせい……えっと」

 

 言いたい事がたくさんある。

 どこで何してたのか、とか。

 サターンと何があったのか、とか。

 ギラティナはどうしたのか、とか。

 

 たくさん聞きたい事があったけど、一つもボクの口からは出てこなかった。

 

 

「ちょ、呼び方。あー、たぶん聞きたい事は色々あるだろうけど……一言で言うなら、うん、ちょっとテンション上がってて」

 

 たぶん、ギラティナが出てくる時になんか格好よく決めてたやつのことだろう。

 

「あ、あはは…それなら仕方ない、ですね」

 

 まあ、あの状況なら、仕方ないだろう。

 きっとボクでも似た様なことはする……かも?

 

「いや、しっかし国際警察のリラさんが来るとは想像してなかったなぁ、本当に」

 

「……わたしを知っているのですか」

 

 ………まさかリラさんの事まで知っているとは、驚きだった。

 

「まあね。ところで、仕事はしなくて良いのかい?」

 

 そういうと、呆然としているギンガ団員──おそらく幹部だろう──を指さす先生。

 

「え、ああ、はい!」

 

 ハッとしたリラさんはギンガ団の幹部に駆け寄ると、手錠を嵌めていった。

 さして抵抗もしなかったので、手錠のはまる音だけが、辺りに大人しく響いた。

 

「アカギさん、署まで同行願います。そのポケモンと一緒で構いませんから」

 

 アカギを逮捕するのは最後だった。

 

「…………ああ」

 

 そう言うとアカギもその手に大人しく手錠を受け入れて、リラさんに連れられロトムと共に移動していく。

 捕まってもなおその表情は、どこか晴れやかだった。

 

「考古学者」

 

 アカギが槍の柱から降りる階段に差し掛かった時、先生に声をかけた。

 

「何かな?」

 

「……………礼を言う」

 

「そりゃどうも。ギンガ団の名前、これ以上汚すんじゃないぞ」

 

「………ああ」

 

 そういうと、アカギ達はリラさんに連れられてテンガン山を降りて行った。

 

「あの、本当は知ってたんですよね、ロトムの事」

 

「うん、知ってたよ」

 

 やっぱり。

 先生は、何でも知っている。

 

「どうして…アカギのために、あんな事」

 

 でもどうしてわざわざアカギのためにそんなことをしたんだろうか?

 アカギと先生は、カンナギタウンが初対面だったと思うんだけどな。

 

「まさか。機会があったからさ」

 

「………そういうことにしときます」

 

 わからなくても良い。

 あのロトムの持ち主が見つかって、ギンガ団が捕まった。

 だからきっとコレで良いんだ。

 

「───さて、コウキくん」

 

「なんですか?」

 

「プレート入れてた鞄、あるかい?」

 

「はい!肌身離さず!」

 

 そういうと先生に鞄を返す。

 先生はプレートを数えると、懐から取り出した《もののけプレート》をしまうと、背負った。

 

「うん、全部あるね。よし、コウキくんテンガン山にもプレートはあるからね。取りに行こうか」

 

「はい!」

 

 こうして、ボクらの旅が、また始まった。




次は先生とサターンの裏側。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。