原作知識を駆使してシロナさんを釣ろうとする前に全然違うヤツが釣れる話   作:鹿頭

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ネームドの性格はゲーム本編やポケマス、アニメなんかから良い感じに取ってます。


三話

 

 

「飯もでる…寝床はある……」

 

 金と自由はないが。

 一文無しからのスタートと考えたら、贅沢なのではないだろうか。

 

 いいや、待て待て。

 

 折角のポケモン世界をこんな所で過ごしていいのだろうか。

 シロナさんのヒモになると言う目標があった*1のではなかったのか?

 

 腕組みをつつ自分の未来をウンウンと唸りながら考えていると、コツコツと革靴が床を叩く音が自分の檻の前で止まった。

 

「おい、取調べだ。出ろ」

 

 制服を着た屈強な男が鍵を開け、同行する様に促す。

 

「はい……」

 

 歯向かう理由も力も無いので、素直に後を着いていく。

 暫く歩くと、取調べ室なのだろうか。

 男は部屋の前で立ち止まると、ドアを開け、入る様に指示をする。

 

 中には、見覚えのあるカーキ色のコートを羽織った男が座っていた。

 

「どうぞこちらに」

 

 促されるままに椅子に座った。

 

「わたしは国際警察のハンサムだ」

 

 国際警察。

 悪の組織を主に捜査している、プラチナ以降に本格的に登場する警察組織。

 その一員である彼が来るという事は、ギンガ団関係者か何かと思われているか、それとも。

 

「時間も無いので単刀直入に。……この写真に写る存在に見覚えは?」

 

 そう言ってハンサムが提示するのは二枚の写真。

 クラゲと帽子が組み合わさった様な半透明の生物。

───マッスル。

 二体の──ウルトラビースト(UB)の写真だった。

 

「これは……?」

 

 即ち──Fallの疑いが掛けられている、という事に他ならない。

 そう言う事なのか?

 本当はウルトラホールから飛ばされたのか?

 

 ここに来たのはアルセウスか、もしかしたらフーパ辺りの仕業かと思っていたのだが。

 

 それに、記憶は明瞭だ。

 ここに来る前何をしていたかも思い出せるし、そうでなければシロナさんのヒモになると言う野望は達成できない。

 

 でも…大天使リーリエがいる……

 クソッ!どうすれば良いんだ!!!

 どっちかなんて選べない!!!*2

 

「……見覚えが無いならいいんだ」

 

 そういうと、ハンサムは写真を懐にしまった。

 それでいいのか、国際警察。

 何かしらの反応を検知したから聞いてきたんじゃないのか。

 

「えー」

 コホン、とハンサムは咳払いをすると、姿勢を軽く正した。

 

「トレーナーとしての登録無しのポケモンの捕獲は違法です。ですが……違法に捕獲していたキャモメのなつき度を鑑みて、講習を受けた後に()()()()図鑑を発行し、短期間の社会奉仕活動に従事してもらう事になります。*3……何か質問は?」

 

「ありません」

 

 あるはずも無い。

 取り敢えず身分証が手に入るのだ。

 それで良いのかポケモン司法とも思うが、やはり全体的に民度が良いんだろうな、たぶん。

 

「……以上です。独り言だが……ギンガ団には近づかない様に。ではこれで」

 

 そういうとハンサムは足早に部屋から出ていった。

 部屋から出るのを見送ると、「講習はこちらです」と別の職員がついてくる様に促してきた。

 

「その歳になっても図鑑を貰いに行くの忘れるなんてバカな事を……」

 

 道中、口を開いたと思えば、そんな事を言った。

 10歳で旅立てる世界だと、一回り以上離れるとそういう扱いになるみたいだ。

 

「はい、すみませんでした」

 

 全く心にも思っていないが、ポーズとして反省の意を示す。

 社会とはそうやって回っているのだ。

 

「では、講習はこちらの会場です。終了したらポケモンをお返ししますので。」

 

「あ、はい。わかりました」

 

◆◆◆

 

 

「もう悪い事はしてはいけませんよ。ほら、キャモメをお返しします」

 

 講習自体は実に簡単だった。

 殆ど自動車講習の様な感覚で受講できた。

 曰くポケモンスクールで習う事でもあるらしい。

 

「きゃー」

 

 渡されたボールを受けとると、キャモメをボールから出した。

 出てきたキャモメは直様肩に飛び乗った。

 

「おぉ……」

 

 本当に懐いてんのか知らないが、コイツのおかげでまぁまぁ良い感じに収まったのだ。

 感謝の意は湧くというもの。

 

「はい。では、社会奉仕活動……言ってしまえばボランティアですね。こちらに関しては、ジムリーダーのヒョウタさんの監督のもと、クロガネ炭鉱で働いてもらいます」

 

「石炭を」

 

 それは……とんでもない重労働ではないだろうか。

 ワンリキーとかが活躍するレベルの。

 

「はい。と言っても…一週間程ですので。では、迎えのトラックが来るまでお待ち下さい」

 

「は、はい」

 

 そう言えばあったな、車。

 シンオウ地方だと引っ越しの時にしか見ないし、誰が何処でどうやって造ってるのか判らないけど。

 アーマーガアタクシーとかポケモンに乗った方が早いんだろうな、うん。

 

 暫く待つと、トラックが着いたので荷台に乗り込んでいく。

 期せずしてゲーム冒頭みたいな感覚を味わいながら、暫く揺られていると、着いたのか、降りる様に言われた。

 

 降りると、鉄と油の臭いと言うのだろうか。

 独特の臭いを嗅ぎながら、ここがクロガネシティなのだと思った。

 

「───やあ、キミが噂の世捨て人だね? その歳になるまで図鑑を貰い忘れてたっていう」

 

「お世話になります」

 

「ああ、気を悪くしたら済まない。聞いてると思うけど、ボクはジムリーダーのヒョウタ。普段はここでも働いているんだ。一週間よろしく頼むよ」

 

 おぉ…ジムリーダーだ…ちゃんと居るんだ…。

 

 この高揚は、芸能人に会えた様な感覚に近い。

 実際、ちゃんとこの目で見るまでは未だ信じ難いものがあるから、霧が晴れていく様なこの感覚はなんとも心地よい。

 

「なに、ツルハシを持ってひたすら掘って、化石や、珍しい石。ついでに石炭を掘る。化石や珍しい石を見つけたら必ずボクに教えてくれ」

 

「はい」

 

 ──ついでで良いんだ、石炭。

 それで良いのかジムリーダー。

 ……良いんだろうな。

 

「作業自体は簡単だけど、肉体的にはかなり辛いから無理をしないように。ああ、ところでキミは石は好きかな?」

 

 キラリと眼鏡が光った。

 

「人並みには浪漫は感じますけど…神話や遺跡の方が好きですね、すみません」

 

 好きですなんて言おうものなら、ここで就職する羽目になりそうな。

 ───そんな予感がした。

 

 こんな所で人生終えてたまるか!

 シロナに会いに行くんだよ馬鹿野郎!

 

 

「おや、そうなのかい。うーん、少し時期がズレてたら、ズイの遺跡の発掘調査が出来たんだけど……残念だったね」

 

「へぇ、そうだったんですか。そりゃ残念です」

 

 本当にな。

 もしかしたらシロナさんだって来てたかも知れないだろ!!!*4

 

「さ! 早速やっていこうか。基本は、先輩に教わりながら───」

 

 この後めちゃめちゃ化石掘った。

*1
助手からランクダウン

*2
選べる権利もない

*3
プラチナだとサターンが再出発できるレベルのガバガバ司法

*4
正解





ハンサム
一文無しをFallだと疑っているが、ギンガ団でそれどころじゃない。
シンオウ地方から出て行く事があれば……?
やっぱり何も起きないかも。

ヒョウタさん
クロガネシティのジムリーダー。
彼の下で炭鉱業に従事すれば一文無しから脱出出来る。
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