原作知識を駆使してシロナさんを釣ろうとする前に全然違うヤツが釣れる話 作:鹿頭
あきらめなければ おもいは いつかかなえることができる
そんな事を神様も言ってるセウスね〜頑張るセウスよ〜
────労働最終日。
「よし、今日で最終日だね!お疲れ様!」
「ありがとうございました!」
大変な日々だった。
ひたすらピッケルやスコップを持って、掘って掘ってまた掘って。
石を担いで担いでまた掘って。
たまに化石や石が出たらヒョウタさんに渡して。
そんな事を延々と繰り返していた日々が、漸く終わりを迎えた。
「きみの働きっぷりは評判が良くてね。どうだい?ここで働くこともできるけど?」
「有難いお話ですが……シンオウ地方を見て回りたいので」
「……そうか。残念だけど、気が変わったらいつでも言ってくれ。ああ、ジム戦に来る時も大歓迎さ!」
「ありがとうございます。機会があれば、是非」
こんな所で人生決めてたまるか!
シロナさんの
ま、まぁ?確かにヒョウタさんは石が絡まなければ良い人だし?
職場のみんなもガテン系だけど良い人ばかりだから?悪くはないけど?
───夢の前には止まれないんだ!
そうして、手を振って炭鉱の奥へ去っていくヒョウタさんに別れを告げ。
反対方向に向きを変えて炭鉱から出て行こうとした、矢先だった。
「やー、どうも! また会いましたね!」
ミオ図書館で会った男が立っていた。
「どうも。こんな所でお会いするとは」
「奇遇ですね! こちらには化石を掘りに来たのですか?」
「いえ…ちょっとボランティアを」
「は?ボランティア?」
これまでの経緯を哲学者にざっと話した。
「ワタクシ、色んなヒトを見てきましたけど、そんな事で捕まったのは初めてです」
男は眉間にシワを寄せながら、こめかみを揉んだ。
「そうですか?」
「ええ!ワタクシだって……こほん」
男は咳払いをすると、指を立てた。
「ご存知ですか?この辺、昔は原野でして」
「は、はぁ」
「キッサキの方から流れてきた河が海まで貫く、それはそれは雄大な大地でしたが……地形の変化やギンガ団の開拓に伴い、今ではその面影もありません」
その話は、知識としては当然知っていた。
目の前の彼が何処か遠い場所を見つめる様な目で語る、そんな理由も。
「ああ……今あるギンガ団はその開拓団にあやかった組織でしてね。宇宙の新エネルギーを研究する事で世界の平和をもたらす……」
哲学者は僅かに口篭ってから、目を見開いた。
「なんとそれは仮の姿!実は宇宙の支配を目論む悪の組織である! なんて噂がありましてね。そのために、ディアルガとパルキアを呼び出そうとしているらしく。シマボシさんも浮かばれませんね」
その噂は本当なんだよな、と気が遠くなるが……問題なし!
この世界にはヒカリちゃんがいる事を確認している!!!
その内ギンガ団は壊滅する……とその前にシロナさんに会わないとシロヒカ百合展開になりかねん。
クッ…早くシロナさんを見つけねばっ!
「───ああ、そうです」
適当に話を聞き流していると、男は思い出したかの様に声を上げると、鞄を漁る。
「先程良いものを手に入れましてね。出所祝いに差し上げます」
そうして取り出したのは、一枚の板だった。
「………コレはジブンより、アナタが持っていた方が良いでしょう」
ひのたまプレート を てにいれた!
《プレートに あたえた ちから たおした きょじんたちの ちから》
「プレート!?」
いや、確かに哲学者からプレートを貰うイベントはあったけれども。
でもそれはアルセウス所持の時じゃなかったっけ?
「ええ!そうですプレートです。やはりご存知でしたか」
ニヤリと笑みを浮かべると、再び指を立てた。
「ジブンがかつて見たプレートには《プレート にぎりしもの さまざまに へんげし ちからふるう》とありましてね。
《にぎりしもの》と言うのが、この世界を造った存在……アルセウスだと睨んでいるんですね───アナタはどう思いますか?」
話を振った男は、品定めする様な目つきだった。
「このプレートには……《たおした きょじんたち》とあるけど。本当に創造神サマなら、わざわざ倒されるような巨人を造る理由がわからない」
実際わからない。
子どもを拉致って危険地帯に放流する邪神アルセウスに対して、戦いを挑んだと思われるレジギガス真の英雄説なんて半分ネタの様な話がされたくらいだ。
尤も、我々の世界の神話の中に、地母神の身体を引き裂いて大地と成した例や、贖罪の為に死んだ男の話があるから、殺される役目が産み出されると言う考えは然程不自然ではないが。
問題は創造神アルセウスがどうも本当に創造神と言うか、そもそもポケモンなのかどうかも怪しい存在だったってとこなんだけども。
「ほう! このプレートの文字を読めるとは流石ですね!」
────え?
それは、ないだろう。
だって、主人公達はプレートの字を読んでいただろうに。
まさか読めない字、だったって───
「なるほどなるほど……巨人達ですか。確かに創造神が居るのならば、対立する存在が居たのは不思議な話です」
呆然とするのも無視して、男は語り続ける。
「ですが 被造物が創造主に叛旗を翻す例は他にもありますからね。おかしくはないですよ」
そう言えば、コイツ別に悪の組織のヤツとかじゃなかったわ、うん。
気にする心配、もしかしてあんまり無いのではなかろうか。
「今日伝わるシンオウ神話には彼の存在がすっぽり抜けています。
暴れ者ゆえ世界の裏側に潜みアルセウスに挑んだ三つめの分身、ギラティナが!
……まあ、ギラティナはいくじのないヤツだったのですが」
───なさそうだな、ヨシ!
「ギラティナが?」
「だから伝説が伝わっていないのではないか?と考えたんですよ」
確かに、あの野郎は主人公に敗北した後戻りの洞窟に引き篭もる。
……意気地なしと言えば確かにそうかもしれない。
「───ああ!長々と引き留めてしまいましたね。そろそろジブンはこれで」
立ち話はしんどいから、ちょうど良いと言えばちょうど良いタイミングで切り上げたものだ。
「ジブン、シンオウ地方に暫くは留まりますので、また会う機会があれば、神話について語らせてください」
語り合うじゃなくなった。
一方的に話すつもりだ、コイツ。
「では、また」
そう言うと、哲学者は去っていった。
「………プレート、集めてみようかね」
後ろ姿を眺めながら、ほんの少し。
そんな事を思った。
しゅじんこう
クロガネ炭鉱で優しい心に触れた。
一文無しには変わりない。
炭鉱に就職すれば幸せに暮らしましたとさめでたしめでたしで終わったかもしれない。
哲学者
ミオ図書館にプレートに刻まれている文字をノートに書き起こしたのを寄贈したアイツ。
彼ではきっとすべてのプレートを集めてもダメだったのだろう。
まだ主人公の存在を知らない。
カンナギタウンには近づきたくないらしい。