「いらっしゃい!お、ヤブサくんじゃないか。」
…りんご飴。キタカミのりんごは特別甘い。りんご飴なんかにしたら犯罪だと思っている。
「とりあえず二つ。」
「オッケー。…って、おやおや。」
屋台の店主は俺とゼイユを見るなりそう言った。直後、ゼイユがバッと俺から手を離す。胸まで手を持ってきて、ゼイユは横をプイッと向いていた。耳しか見えないが、りんご飴と同じぐらい真っ赤だ。
「ヤブサくんもやり手だねぇ。」
「うぅ〜!!揶揄うなッ!!おっちゃん!!」
「はいはい。」
ぷるぷると震えるゼイユの声に店主は微笑みながらりんご飴を作ってくれた。今更ながらゼイユとスグリは村のみんなと仲がいい。腐れ縁なんていう人も居そうだが、若者が減ってきている田舎町ではゼイユもスグリも可愛いもんだ。
「はいよ。りんご飴、お二つ。楽しんでおいで。」
そう言われ、二つのりんご飴とお金を交換する。
色艶はまさしく宝石のようだと言っても差し支えないほど。綺麗なもんだと思う。うちのもこれくらいしっかり出来たらな。
「ほら。」
「ありがと。…あむっ。やっぱキタカミのりんごは最高だわ。」
花より団子とはこれのことか。
見ることもせず、つけられた歯形から黄色とも金色とも取れる蜜の色が見える。
しかし、怒っていたかと思えばりんご飴を食べて笑みをこぼす。表情がコロコロ変わるから一緒にいて楽しい。
「ねぇ!!次、焼きそば食べましょっ!!」
「へいへい。」
柄にも無くはしゃいでいるゼイユを見てこっちも嬉しくなる。こういうところを見ると子どもなんだと感じてしまう。りんご飴を一口飾り、ゼイユへと歩いていく。
「はむっ。やっぱ良いわね。お祭りの焼きそば。」
「そんなに食べて大丈夫か?」
「なによ。私が日頃の美貌磨きに抜け目があるとでも?お祭りを楽しまないストレスはお肌に悪いんだから。あむっ。」
境内に移動し、焼きそばを啜るゼイユ。俺はその横で膝にキュウコンを乗せて、撫でながら話をしていた。
「…ねぇ。一口あげよっか?」
「ん?なんだ。やっぱり太るってか。」
「そうじゃないわよ。ヤブ兄にお金払ってもらって私ばっかズルズル食べてるのもなんか私が気分悪いから。ほら、あーん。」
割り箸に掴まれた茶色の麺からはソースのほのかな香りが鼻に通る。言葉に甘えて彼女の手ずからソースの絡められた面を頂く。…舌の上に乗るソースの甘じょっぱさと肉や野菜の甘み。
「美味しいでしょっ。」
…はにかむゼイユが可愛い。
だが、何故だか胸が少し痛くなる。あぁ、そっか。俺の飯じゃないからだ。
「……あぁ。美味い。」
「何その間。」
「別に。」
困惑した様子でずるずると焼きそばを食べるゼイユ。口ではなんとでも言えるが、こんな姿も様になるんだから凄いとは思う。
「…しかし、奥は鬼が山か。」
「あ、あれね…。ヤブ兄が私とスグにブチ切れた日。」
…誤解を生むが、ゼイユとスグリが悪いのだ。主にスグリだが。
「夜の山は危ねえんだ。命があっただけ儲けもんさ。」
「…ま、そうよね。あの時は私も子どもだったし。」
今もだがなんて言ったら引っ叩かれるな。
…鬼に会いたいだなんてスグリが夜の鬼が山に入ってったことがあった。ゼイユを含め、村の人間は血眼になって探した。真っ暗な山岳道はとにかく危なくて。さすが姉というべきか、ゼイユがスグリを見つけた。それでめでたしめでたし…なら、良かったんだが。
「俺が行かなかったら、二人とも怪我してた。」
「…ヤブ兄が怪我したじゃない。私たちのせいで。」
…山にも勿論、ポケモンがいる。
ランタンの光と二人の声に興奮した鳥ポケモンが襲ってきた。その直前に二人を見つけていた俺が間に入っていった。そのせいで傷だらけにはなったが。
「ポケモンを出すのも忘れて…。」
「間に合わなかったからな。」
その時の傷はまだ肩に残ってる。結構深くやられたから。一生傷ってやつだろう。…どうでもいいか。
「少なくともお前らが無事でよかったよ。」
「…そ、そう。」
心なしか、ゼイユの顔が浮かないようで。
楽しくないのだろうか。それともどこか悪いのか。悪かったら祭りなんて来ないだろう。
「…これってさ。」
少しの間、無言だった二人。それを消すようにゼイユが呟く。
「…デート…よね…。」
「二人っきりならこの前もしたじゃないか。」
「違っ…!!…違わないけど…なんか…違う…。」
「…なぁ、ゼイユ。」
周りは祭りに夢中。
サザレさん達も先ほど見た。境内を見るような奴はいない。ゼイユの名前を呼ぶと彼女も此方を見る。若干、熱の帯びたような目。瞳は潤んでいる。
「…ヤブ兄。」
「…ごめんな。ずっと。待たせた。」
…ゼイユの肩に両手を置く。ビクッと少し震えるゼイユに口元が緩む。
「え…あ…うぇ…えっと…。」
夜の社は幸い、人の目を気にしない。
そんな場所で二人でだべってたのだから、何をしようと勝手だ。
ゼイユも戸惑っている。酷いようにはしない。
…ずっとただの女友達程度に思っていた。年も少し離れてて、殆ど一緒にいた。最初はよそ者扱いで嫌味な態度取られてたけども。
「だって、そんな…え…?」
「俺さ。ずっと考えてたんだよ。…ゼイユが俺のこと好きだって言ってくれたのに俺はどうなんだって。…だから。」
……言葉が出てこない。
初めてのことでこんな恥ずかしいなんて思わなかった。顔が熱い。キュウコンも心配そうな目でこっち見てる。
「…俺も好きだよ。」
「……っ…!!」
ついて出た言葉は考えていたよりもシンプルだった。
ドクンドクンと心臓がうるさくて、口から出ていってしまいそうで。世の中の青少年はこんなものをずっと体験しているのか。…知らないままで大人になっていった。
ゼイユも言葉に詰まっているのか、下を向いてぱくぱくと口を動かしている。ぷるぷると震える身体は抱きしめたら折れるぐらいには細かった。
「…あ…あ…私でよけりゃ…つつつ…付き合ってあげても…いい…けど…?」
「…ん?」
「え…あ…う…付き合って…ください…。」
…言葉が最後に行くにつれてだんだんと声が小さくなっていく。か細く出された言葉と共に、ゼイユの頭がぼすっと俺の胸に預けられる。その頭を俺は優しく撫でていた。
「…で、付き合うってなにすんの?」
社の上に尻を預け、二人でフルーツ飴を食べているとゼイユからそんな言葉が聞こえる。
「お前の方が知ってるんじゃねえの?花のブルーベリーアカデミー生。」
「知ってたら聞かないわよ。なぁに。ヤブ兄、無駄に私より生きてんの?」
「…お前が初めてだよ。」
「…あ、う…あっそ…。」
プイッと横を向くゼイユ。
でも、握られた手が離されていないところを見るにまんざらでもないんだろう。
「父親について従ってたからな。女の子にかまけてる時間なんて作ってたら次の街にもう行ってたよ。友達なんてできなかった。」
「その話ばっかね〜。まぁ、安心しなさい。私がその分だけ骨抜きにしてあげるから。」
「…変わんねえだろ。」
笑顔を見るだけで、心臓が跳ねる。
…ゼイユの顔が見れなかった。顔が熱い。
「なぁに?照れてんの?」
コロコロと鈴が鳴るような声が聞こえる。これは馬鹿にされてんのかな。
「五月蝿え。」
「あははっ♪…ん?あれ、アオイ?」
…そのゼイユの声を聞いてゼイユの言っている方角を向く。そこには留学生であるアオイちゃんと…もう一人。何か子どもみたいな大きさの何かが見えた。ここからではよくわからない。
「行くわよ。」
「…あぁ。」
いくら彼女がゼイユに勝てるくらい強いからと言って、夜の鬼が山は危険すぎる。立ち上がり、ゼイユと一緒にアオイちゃんの方へと走る。
「ちょっと。なにやってんのよ。」
「ゼイユっ!!…とヤブサさん?」
小首を傾げるアオイちゃんに笑って手を振る。そこは鬼が山へ行く階段で、止めておかねば入っていってしまうだろう。
「さっきの子も、おーい!!」
ゼイユが階段の上の子供に声をかける。
緑のちゃんちゃんこ?のようなものを着たスグリのつけていたお面のようなものをつけた子どもが階段の踊り場のところに立っていた。
カランコロンという音を立てて、ふらついたように動いている。そんなことをしていたせいか、顔からお面が外れ、此方へと転がってくる。階段で弾け、透明な水晶のようなものが飛び散ったような気がした。
星のような目をしたその子は…人間というよりもポケモンに近かった。逃げ帰るように鬼が山へと走っていく。一瞬、仮面を悔いるように見て逃げていったのだ。
「なによ。あれ。」
「…人間じゃないかも。」
「…ポケモンか?」
俺の声にアオイちゃんが首を縦に振る。
少なくとも人間ではないことは確かだ。だが…。
「これ…返しに行かないと。」
「はぁ?アンタ、こんな夜更けに鬼が山に入る気?ダメよ。そんなこと。危ないじゃない。」
…こればっかりはゼイユに同感だ。
夜の山道はガタガタで危ない。足元もおぼつかないし、崩落の危険だってある。一度落ちれば怪我じゃ済まない。
「これを返しにいくのは明日にしよう。」
その言葉にアオイちゃんは頷いた。
やっと円盤クリアしました。
ゼイユの株はこれ以上上がらんよ…。ブライア先生がやべえ女だけど個人的には好きなものにきゃっきゃっしててちょっと可愛かった…w
勿論、やったこともやべえし、なんでお前もってへんねんってなったけど。
円盤まで書くかなぁ。怪しい。では。