田舎の喫茶店   作:紳爾零士

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後半ゼイユ視点


泊まり

コンロの上の飯盒が泡を吹く。

その横には油の入った鍋。

 

「ゼイユ、片栗粉、纏わせておいて。」

 

「はぁい。」

 

ゼイユはボールの中で醤油とおろしニンニク、料理酒などに漬け込んだ一口台にきった鶏肉をバットの上の白い片栗粉に纏わせていく。

 

俺はその横でキャベツを千切り、水に晒し、トマトをくし切りしていく。彩のためだ。

 

「出来たわよ。」

 

途中から纏わせるのがめんどくさくなったのか、ポリ袋に具材を入れて入れてシャカシャカしていたゼイユがそう言った。まぁ、やってくれるだけいいだろう。バットの上に乗っている片栗粉を纏った味付き鶏肉を油の中へとゆっくり入れる。

 

するとじゅわ〜と言う音ともに黄金色の油が泡立ち、鶏肉がカラッと上がる。それを皿の上に均等に乗せていく。金の衣を纏った鶏肉から食欲をそそるいい匂いが立ち込めていた。

 

それを数分繰り返し、キャベツ、くし切りトマトを乗せて、飯盒のご飯を器に盛る。キタカミの米は柔らかく、甘い。俺は好きだ。

 

「わやじゃあ…!!肉が輝いとるぅ…!!」

 

「…もはや、カフェじゃなくてレストランね…。」

 

目を輝かせるスグリとエプロンを畳み、纏めていた髪を解くためゴムを外すゼイユ。定食処としても運営していくことも視野に入れてもいいかもな。

 

「温かいうちにどうぞ。」

 

ポットデスとキュウコンに食事を置き、たまにはということで俺もスグリとゼイユと共に食卓を囲む。

 

『頂きます。』

 

…人と一緒に同じ目線で食べるのは何年振りだろうか。

 

衣を纏った鶏肉…もとい、唐揚げを一つ箸で掴み、口の中に放り込む。歯を通せば、サクッという軽快な音とともに口の中で肉汁が溢れ出んばかりに流れ出る。満たされたその味に米をかき込む箸が止まらない。

 

我ながら美味い。

 

「普通ね。」

 

「姉ちゃん…。」

 

…今、鼻頭をへし折られた気がした。

それでもぺろりと綺麗に食べている点でゼイユの口にも合っているのだろう。因みにスグリはすでに食べ終わっていた。育ち盛りとは怖いものだ。

 

「ゼイユ、食い終わったら。」

 

「わかってるって。五月蝿いわね。皿洗いまですればいいんでしょ?全く、私がここまでやってるんだから、何かして欲しいわねぇ。ご馳走様。」

 

そう言って食べ終わった食器を自分の分だけ持っていくゼイユ。食べるのが早いと思われそうだが、男勢よりゼイユの量は少ない。そもそもがあんまり食えないらしい。

 

「ねぇ〜。飲み物飲んでいい〜?」

 

「いいぞ…って、もう飲んでるじゃねえか。」

 

「別にいいんでしょ?一応聞いただけ。ほら、スグの分。」

 

そう言ってキンキンに冷えた麦茶を持ってくるゼイユ。弟の分も込みだ。俺はない。と思ってたら少し遅れて俺の目の前にも生えたガラスコップが置かれた。中には黄金色の飲み物が注がれている。

 

「ありがとう。」

 

「別に?アンタのためじゃないわよ。ただ恩を売っておくのも悪くないと思ってねえ?」

 

…この場合の売った恩とはなんだ。

勝ち誇った笑みで飲み物を飲むゼイユの横でスグリも少し呆れたように笑っていた。

 

「そういや、林間学校ってそろそろだろ?管理人さんからどうせ、飯を頼まれるから何人来るか聞きたいんだが。」

 

「あのおっちゃん、全部、ヤブ兄に任せっきりね。腹立つわ。」

 

「そう言うな。あっちもあっちで大変なんだよ。依頼料は毎年貰ってるから。」

 

「それも里のお金でしょ?ヤブ兄とお祭り、巡れないなんてやだかんね。」

 

先程の笑みはどこへやら、むすっとした顔のゼイユ。ゼイユなら管理人さんを殴り倒しそうで怖い。できるだけ刺激しないようにしよう。この件に関しては。

 

「お前らも友達できるといいな。」

 

「よそ者の友達なんてヤブ兄だけでいいわ。」

 

「俺は…欲しいけんども…。」

 

ゼイユの里の外の人間嫌いもここまで来ると凄いものだな。勿論、それだけキタカミを愛していることを忘れては行けないんだけど。

 

「じゃあ、皿洗いと仕込み済ますから、スグリは風呂入っておきな。ゼイユは後でいいだろ。」

 

「さっき入ったからね。普段なら一番風呂はスグなんかにやらないけど、今回は譲ってやるわ。」

 

「着替えは後で持ってってやる。」

 

そう言って立ち上がる俺とゼイユ。スグリはコックリと頷くと階段近くの方へと歩いていく。

 

「てか、ゼイユ。また入るのか?」

 

「なによ?…あぁ。お風呂に入らなくても溢れ出る美貌は廃れないからね。ヤブ兄ももっとちやほやしていいのよ?」

 

「しないが?…まぁ、100歩譲ってお前らが可愛いのは認める。」

 

1人っ子だし、学校も行ってはいたが、親父について行っていたから全然、同級生と会わなかったしな。ゼイユやスグリみたいな妹弟なんて居なかったし…。まぁ、これは本人には口が裂けても言えないな。誰が妹だってキレてくるだろ。

 

「…か、かわ…?そ、そそ…そうねっ!!よくわかってるじゃない。可愛いって言われた…可愛いって言われた…。

 

…?

 

「顔赤いぞ。」

 

「う、五月蝿いっ!!ヤブ兄の馬鹿っ!!」

 

なんでそうなった。

真っ赤になった顔でプルプルと震え、此方を睨むゼイユをよそに皿を洗っていく。割られなければ、こっちはどうでもいいし。

 

「風邪引いてないだろな?」

 

「はぁ?…あぁ。全然大丈夫よ。」

 

あの雨の中、走ってきたんだ。

それに顔の赤さといい…。熱がなければいいんだが。

 

「あ、そうそう。布団一枚しかないから、スグリと一緒に上手に使えよ?」

 

「……へ?」

 

「だから、布団一枚しかないんだって。俺は下で寝るから。」

 

「なんで布団が一枚しかないのよッ!!」

 

…おおう。左耳がキーンってなった。

 

「仕方ないだろ。俺以外にここに住んでる奴はいないし、ポケモンたちはどこでも寝るし。」

 

「そ、そうじゃなくて…!!」

 

「俺が一緒に寝なきゃいいだけだ。」

 

スグリとなら一緒に寝たことあるだろう。

俺は…ゴザ並べて適当に横になる程度でいいか。

 

「…そ、そうだ。なら、3人で寝ればいいじゃない。ヤブ兄、どうせまともに寝てないんでしょ。酷いクマよ。」

 

「…。」

 

確かに最近はあまり寝れてない。

というのも、普段からあまり寝ない。仕込みやら農作業やらで夜遅くか、朝早く出ることが多いし、キュウコンやファイアローなどのブラッシングもある。ゼイユたちの世話以外にやることなんてたらふくあるし、昼過ぎは普通に開店。やることが多すぎて減らすのは睡眠ぐらいしかないわけで。

 

「明日もお休みにして、一緒に寝ればいいのよ。そろそろ林間学校でご飯いっぱい作るわけだし。」

 

「…まぁ、それもいいか。」

 

「決まりね。男なら言った言葉に責任持ちなさいよっ!!」

 

…なぜこうなった。

硬い床の上で寝ると体痛めるし、悪くはないけど。そんなに布団がデカくないのが懸念点か。何か考えねば。

 

「てか、スグに早く服持っててあげてよ。アイツ、結構、早い方よ?」

 

「あ、あぁ。わかった。」

 

…てか、スグリの服、ゼイユみたいに今の俺のやつだとでかいよなぁ。昔のあったかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ヤブ兄は馬鹿だ。

 

昔、私を守ろうとして、シザリガーの攻撃を喰らって大怪我を負っていた。

 

あれは足を踏み外した私のせいなのに。

 

よそ者だと邪険にしていたのに。

 

「…。」

 

今も隣で眠るヤブ兄が気になって気になって仕方ない。スグもヤブ兄の隣で寝たいと言うので仕方なくヤブ兄を真ん中に寝ている。ひどく疲れているのか、ヤブ兄はすぐに眠ってしまった。スグもおこちゃまだから、すぐに寝てしまった。…眠れないのは私だけ。

 

…胸がドキドキして仕方ない。

 

田舎の女の子が都会の男の人に憧れるなんて漫画だけの話だと思ってた。

 

「…ちょろいのはどっちだってのよ…。」

 

…2人が起きないように少し小さな声で言う。

 

会いたいから、一緒に居たいから…口実を見つけてるだけなのに。

 

優しいから、さらに。でも、この気持ちは隠しておこう。…恥ずかしいから。どうせ、面を向かったら嫌なように言っちゃうから。

 

…なんでこういう時だけ…素直になれないんだろう。




結局こうなるのは病気。ハーレムになったりはしないので。久しぶりに特定の相手のこういうのを書きます。そんな急に接近はしません。つかず離れず。
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