田舎の喫茶店   作:紳爾零士

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今回も後半ゼイユ視点。
…割と賛否あるかも。注意です。

赤評価つきましたっ!!
ありがとうっ!!


暗雲

「…ふぅ。」

 

昨日の大雨によって随分と畑がぬかるんでる。

水分多量で成長に悪影響しなければいいが。

 

「…あのさ。」

 

「…げ。」

 

…つい癖で畑の方に来てしまった。

そういえば、家にはまだこいつらがいることを忘れていた。鬼の形相のゼイユが俺の後ろに立っている。

 

「私言ったよね?ヤブ兄、今日お休みって…。」

 

ハイライトを失った金色の目は俺の方へと刺さる。

 

そういやぁ、承諾した記憶がある。いや、うん…。今回に関しては紛れもなく俺が悪い。

 

「今日は私とッ!!お散歩ねッ!!監視役いないと、直ぐ働いちゃうからッ!!」

 

「…わかった、わかった。…全く。」

 

姉貴だからか、案外世話好きなんだよな。

とはいえ、今の俺は長靴だし、偉く汚れている。一旦風呂にでも入るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャワーを浴びて、土埃を落とす。

今日は畑仕事らしい畑仕事をしてないため、ただ洗うのみ。

 

その後、バスケットに三角に切ったサンドウィッチとその他諸々のおかずを入れる。

 

服装もよそ行きの服装。下駄ではなくちゃんとしたスニーカー。

 

ゼイユはいつもの青い服。

スグリは…まだ寝てる。書き置きは置いてきたのだが、少し心配のため、ファイアローを残しておいた。スグリ用のランチも置いて。

 

「ヤブ兄、そんな格好できたの?」

 

「ん?あぁ。」

 

確かに今は仕事着ではない。

ゼイユの驚く顔も最もだ。俺に似合うかなと思い、通販で買ったのだが、どうせ着ないと箪笥の中で眠っていたもの。そのうち、スグリにでもやろうかと思ったが、流石にデカすぎる。上下黒だが、割とウケたようだ。半袖で通気性がいい。

 

「似合わないか?」

 

わや…かっこいい…じゃなくってッ!!わ、私の横を歩くには上等?なんじゃないのっ!?」

 

「そうかい。」

 

…一瞬呆然としていたような気もするが、普段のゼイユだ。陽光は柔らかい暖かさと光を放っている。少しだけ残った水溜まりがキラキラと輝いている。澄んだ空気が喉や鼻を通って、美味い。

 

「んで?どこ行くんだ?」

 

「へ?あ、あぁ…。ともっこプラザで良いんじゃない?それ、どうせ、ピクニックするつもりでしょ?」

 

「ふふっ。バレたか。」

 

「バレたかじゃないわよ。私のルートが台無しじゃない。なぁに?エスコートしてくれちゃったり?」

 

流し目で微笑みながら俺を見るゼイユ。

確かに、何かルートを考えてくれてたなら台無しだな。

 

「まぁ、ともっこプラザでバトルぐらいしか思いついてないけど。こんな可愛い私と1日入れるんだから、幸せよねぇ。」

 

「まぁた、バトルか。」

 

「私と戦えるのなんてアンタくらいだからねぇ。今日こそアンタに勝つから。」

 

そう言ってゼイユは胸を張って笑う。

まぁ、負けるんだろうなぁと思いながら、ともっこプラザまで歩いていく。

 

「まっ、今から負ける自分を楽しみにしておくことね。」

 

「どうせお前負け…ん?」

 

…ともっこプラザまでもう少しといったところで肩ポケットの電話がけたたましくなる。直前までゼイユと話していたせいで、それを遮られたとゼイユはぷるぷると震えている。

 

「…あぁ、ちょっとすまん。」

 

「ちょっとぉっ!!私との話よりそんな電話の方が大事なわけぇ?」

 

「あ、もしもし。…あの話は再三お断りしましたよね。()()()()さん。」

 

…面倒な話を子どもに聞かせちゃうな。

電話の相手はパルデアポケモンリーグの委員長で、グレープアカデミーの理事長…オモダカさん。

 

『そうは言わずに、どうか、考えてもらえませんか?』

 

「…女の声…?」

 

…やっぱりゼイユにも聞かれている。

やだなぁ。この話は随分ときな臭い。

 

『リーグの四天王にならないかと。父上にはお断りされましたので父上の戦闘技術を受け継いだ貴方になら任せられますので。』

 

「ですから、俺はキタカミの里から出るつもりはありません。バトルもそこまで上手くありませんし、バトル一筋になるには色々と今の生活を捨てなくちゃいけません。それは無理ですので。」

 

『ですが、そのままでは貴方の力が腐ってしまいます。ポケモンリーグなら、貴方の力を最大限まで…。』

 

「何を言われようが、俺はここに残るつもりです。アオキさんには悪いですが、ここに居ないといけないんですよ。」

 

『…そうですか。ですが、私は諦めませんよ?…貴方が今、とても欲しいのです。』

 

…不気味だ。

電話越しの声は偉く澄んでいて、穏やかで…裏がありそうな雰囲気が漂っている。相手はリーグの大物。…普段相手にするお年寄りや子どもたちなんぞの雰囲気とはまるで違う。

 

『諦める気はありませんので、いつでもコチラへ来てもらってもいいんですよ。』

 

「…しつこいですよ。オモダカさん。俺は行かない。」

 

『…今はやめておきましょう。そうですね。そちらにウチの生徒がもうすぐ行くはずです。仲良くしてあげてくださいね。…ヤブサさん。』

 

…落ち着いた声で結局終わってしまった。

一年ぐらい老けた感じがする。胸の空気がため息として口に出る。なんか、何にもしてないのに疲れてしまった。

 

「…すまねえな。ゼイユ、おっしゃ。じゃあ、行こうか。」

 

「…誰よ。…あの女。」

 

…なんでキレてる。

いつものぷるぷるなんて奴じゃなく、なんか…メチャクチャ沈んだような怒り顔だ。目のハイライトは勿論、バイバイしている。

 

「ん?いや…。」

 

…待てよ。仕事の話はこいつに言わない方が良いか。

 

「…なんでもないよ。あの人はただの「こっちがどういう気持ちか知らないで、バカなのッ!?アンタッ!!」…ゼイユ?」

 

激しく声を張り上げるゼイユ。

微かに見えたその目には少し何かが光ったような気がしていた。

 

「悪かったって。1人にしたことは…!!」

 

「そんなことどうだって良いッ!!」

 

「…じゃあなんだって…。」

 

今回ばかりはわからない。

ゼイユは誰が見ても泣いていて、怒っている。…いや、1人にされただけでそこまで激昂することはない。…何があった。何をしでかした。…わからない。

 

「私はあの日から…ずっと…!!」

 

「あの日から……っておいっ!!」

 

…急にゼイユは走り出してしまった。

あっちの方向は…スイリョクタウンの方向だ。

 

「…しゃあねえなぁ!!ウインディッ!!」

 

特別なウインディ。普通のウインディとは違う。親父からもらったヒスイの時代に生きたウインディらしい。

 

そんなことは今はどうでもいい。ゼイユを追いかけねえと…早く追いかけて…何があったか聞かねえと。

 

「ウインディ。頼むッ!!」

 

ウインディに跨り、走らせる。

少し無理をさせるが、仕方ない。何が気に障ったであれ、俺がしでかしたことだ。…俺がけじめをつけねえと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ムカつく。

 

ムカつく、ムカつくッ!!

 

なんであれだけでムカついたのかわからない。でも、そんな自分にムカつく。結局、何にも変わらない。素直になれなくて逃げてきただけ。ふざけるな。

 

「はっ…はっ…はぁ…っ…はっ…。」

 

自分の知らないヤブ兄が居るのは知ってるのに。

 

ヤブ兄に自分以外の友達が居るのは知ってるのに…!!

 

それが女の人でも変わらないのにッ!!

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!!」

 

…いつのまにか、鬼が山まで来てしまった。

足がすごく痛い。別にいつものと変わらないのに。ヤブ兄がせっかくお洒落してきてくれたのに…。

 

「…嫌だ。…嫌だよ…。なんで…。」

 

隠しておくって決めたのに。

…この泣き顔も…お面でも被れば…隠せるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ちょっとだけ、昔の話を思い出す。ヤブ兄が、入院していた時の話。




ゼイユはまだまだ子どもです。
スグリにとってのオーガポンがゼイユにとってのヤブサです。なんでそこまでなったのか、過去編でわかるかな。
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