八葉を継ぐ者──A2──   作:クラウンドッグ

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短め!
界の軌跡発売前最後の更新になると思います。

それに当たって、しばらく更新停止します!(いつものこと


さようなら、平穏なるエレボニア

 

 

 

「よーす、ナギト」

 

 

「おー、クロウ。おつかれ」

 

 

 

ナギトとクロウはジュライで合流していた。

ナギトは何度かクロウへの通信を試みたが繋がらず、またぞろ政府からの要請を躱すためにそうしているのかと思ったが、実際のところは政府のオーダーにより帝国北西部を巡回していたようで、それで拡張されつつある通信網でも連絡が取れなかったのだ。

 

今回の合流は教会から提供されたアーティファクトで連絡を取ったためのものだった。

 

 

宿酒場のテーブルにナギトと向かいになるように座ったクロウは「はああ」と大仰にため息を吐いた。

 

 

「おつかれみたいだな」

 

 

「……まあな。“北西部を巡回し脅威に備えよ”なんてオーダー……テキトーにも程があるだろ」

 

 

クロウはクロスベルから戻った後に受けた帝国政府からの要請はそれだった。《蒼の騎神》を用いた巡回は確かに胎動する犯罪者の抑止力にはなるかもしれない。

 

 

「……期間は?」

 

 

「次の要請が下るまでだと」

 

 

終わりのない仕事ほど気が滅入るものはない。明確な目的がないならなおさらだ。

 

クロウは背もたれに預けていた体重を前傾にして、ひそひそ話でもするようにナギトに顔を近づけた。

 

 

「何が狙いだと思う?」

 

 

「知るか」

 

 

クロウにそんな要請を下した帝国政府の狙い。それについての考察材料は少な過ぎる。

予断はナギトの得意分野だが、知恵者のクロウの前で荒唐無稽な考察を披露するのも腰が引ける。

 

「まあ落ち着け、食えよ」と言ってナギトはテーブルにあるフィッシュ&チップスを指す。クロウが来る以前に注文していたものだ。

 

クロウがそれを摘み、ドリンクで流し込む間にナギトは言う。

 

 

「お前を疲弊させておくのが目的かもな」

 

 

ごくん、と嚥下したクロウは、

 

 

「疲弊ね。まあ現状でもそこそこ疲れちゃいるが」

 

 

「あとは変に動かれないように縛り付けておく意味とか?」

 

 

「北西部にか?……ちょいときな臭いな」

 

 

ナギトとの会話でクロウは何かに勘付いたようだ。そこまで見越しての発言ではなかったが、ナギトも一瞬遅れてクロウと同じ懸念に至った。

 

 

「オルディスも巡回範囲だよな?」

 

 

「ああ、大口の客だな」

 

 

皮肉全開でクロウは言った。

確かに海都オルディスは大都市だ。その分犯罪も絶えないだろう。

 

 

「あそこはカイエン公の本拠地だ。内戦を主導したクロワール・ド・カイエンは逮捕されたとは言え、そこに足繁く通ってれば邪推されかねない」

 

 

内戦以前、クロウの《帝国解放戦線》とカイエン公は繋がっていた。スポンサーとか言っていたか。内戦終結と同時に切れた縁を結び直そうとしている──そんな状況証拠になりそうだ。

 

 

「それは俺も思ったけどよ、さすがにねぇんじゃねえか?一応、巡回は政府からのオーダーなんだしよ」

 

 

「わからねーぞ。オーダーなんてなかった事にしてお前を反逆者に仕立て上げる気かも!」

 

 

わあ、と冗談混じりに哄笑したナギトにクロウも失笑する。この場が級友との再会の場である事を思い出していた。

 

 

「ま、杞憂だろうな。実際のところは知らん、わからん。最初に言った通り」

 

 

「そうかよ。……じゃあ気を取り直して…今日は飲むぞ!」

 

 

ナギトより早い変わり身。道化らしい佇まいになったクロウが酒を注文する。

ナギトもそれに追従しじゃんじゃか酒を飲み宿酒場の売上に貢献した。

 

そして酔い潰れた2人は、宿酒場に差し込む朝日によって目が覚めたという。

 

 

 

 

「あ、やっべ。忘れるところだったわ」

 

 

ナギトはクロウとの別れ際に同窓会の招待状を手渡した。

 

 

「あー、ユーシスん家でやるっていう同窓会の。そういや今回はこれが本題だったな」

 

 

クロウはそれを受け取りつつ表裏を確認し、懐に仕舞い込んだ。

 

 

「んじゃ、今日の巡回に行ってくるわ」

 

 

「がんば。……それじゃあなクロウ。次は同窓会で」

 

 

「おう、次も飲み比べしようぜ」

 

 

笑い合って2人は別れる。次の再会を約束して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、Ⅶ組の同窓会が開かれる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★

 

 

「ほう、カシウス・ブライトの休暇」

 

 

2月上旬、アルゼイド子爵邸で午睡に微睡むナギトを覚醒させたのは教会からの秘匿通信によるものだった。

 

 

「そうそう。教会の情報網に引っかかってなあ」

 

 

通信の相手はケビン・グラハム。以前、トマスに立ち会ってもらう形で面識を得た。その際にリベール──カシウスへの伝手としての立場も要求したが、今回の通信はまさしくそれだった。

 

 

「なるほど、さすがの情報収集能力ですね。一国の将軍の予定を知り得る事ができるとは」

 

 

「はは、そこまでやないよ。リベールは今、平和やし、ある程度裏に通じてるモンなら掴んでるはずや」

 

 

しかし掴んでいなかったナギト。間接的にディスられている気がしたがスルーしておく。

 

 

「ともかくありがとうございます、ケビン神父。これでようやく───」

 

 

「──念願の兄弟子に会える、か?八葉一刀流を継いだ事を伝えに行くんやったっけ?」

 

 

「はい。たぶん老師から伝わってはいるでしょうけどね。一回くらいは顔を合わせて挨拶したいと思ってまして」

 

 

「そか。なら急ぐとええわ。平和とは言え一国の指揮官や、休暇もそう長くはないやろ」

 

 

ケビンの忠告に重ねて礼を言い、通信を切る。それからナギトはリベール入りするための準備を整えた。

 

 

 

そして翌日、アルゼイド子爵邸を出る。

 

 

 

「んじゃ行ってくるわ!同窓会には間に合うようにすっから」

 

 

「うむ、行って来るが良い。土産話を楽しみにしているぞ」

 

 

 

ラウラとも挨拶を交わしてナギトは出発した。

 

 

行き先はリベール王国。

これからいくつもの選択を迫られる事になる、戦乱の地だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

The End

 

to be continued in『八葉を継ぐ者──A2──第三部:選尽のリベール

 

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