八葉を継ぐ者──A2──   作:クラウンドッグ

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4日目、騎神vs騎神

 

 

 

カシウスの見立て通り、開戦3日目にハーケン門に派遣された帝国軍は少ない戦力であった。

 

開戦初日と2日目の戦果を考えれば当然ではある。しかし3日目のハーケン門は《緋の騎神》も王国軍特務兵マスク・ド・ジャックも出現せず、少ない戦力ながら帝国軍は善戦した。

加えて3日目はルーアン地方で《緋の騎神》が暴れた事により“あれ、これ4日目いけんじゃね?”という思考が帝国軍に芽生えていた。

 

仮に《緋の騎神》やら王国軍特務兵が現れたとしても、帝国軍にも頼もしい助っ人がいる。4日目にはハーケン門も突破し、最低でも商業都市ボースを占拠。残存戦力次第ではそのままヴァレリア湖を越えて王都グランセルにまで攻め込む計画を立てていた。

 

 

 

カシウス・ブライトは読んでいる。この4日目がリベールにとって最初の天王山になると。しかし国内の戦力をいくらかき集めようと想定される帝国軍には勝てない。

4日目ともなると帝国軍も噂の英雄とやらを投入してくる可能性はある。そうなれば破格過ぎる戦力であるナギトも抑え込まれ、純粋に王国軍と帝国軍の戦闘となる。敗北必至の戦争だ。

 

いくら策謀を張り巡らそうと、すでに戦力という面において帝国は王国を上回っている。純粋に国力の差だ。いかに急な開戦で軍内や国内からの反発があるとは言えその差は歴然。すでに各国からの非難は帝国には届いているが、帝国はそれに対して何も反応を見せていない。今はまだ開戦4日目であり各国の動きも鈍いが、近いうちに共和国をはじめとする勢力も動き出す。形成されるのは“対エレボニア連合”だ。十全のエレボニア帝国の戦力であるなら迎撃も可能だろうが、リベールで想定以上の戦力を削られた帝国では世界同盟には敗北してしまう。

 

今のエレボニア帝国の───帝国宰相ギリアス・オズボーンの采配はそれでも構わないと言うような在り方だ。

 

そこにどんな深謀遠慮があるのか、カシウスには見通せない。ただ長期的な視点で見るなら、オズボーンの思考が雑であると断じる事はできた。

 

 

 

「まるで─────」

 

 

つぶやく。深夜、開戦以来はじめての静かな夜。仮眠のために訪れた部屋のベッドの上で。

 

やがて思考は結実する。ただの仮定が積み重なって朧な憶測へと果てる。微睡みに落ちるカシウスが最後に夢想したのはナギトの顔であった。

 

 

 

ナギト・ウィル・カーファイはキーマンである。このリベール王国対エレボニア帝国の戦争において。

それは戦力として、だけではない。

 

この戦争そのものの、鍵となるのがナギトという存在なのだ。

 

 

 

☆★

 

 

 

「よう、こりゃあサプライズだな。……どういうつもりだ?」

 

 

翌日。開戦4日目。帝国軍の大艦隊がハーケン門に殺到していた。

ガルガンチュア級20隻。飛空艇に至ってはゆうに200を超える数。対する王国軍は昨夜の内に必要最低限の戦力を現地に残してハーケン門に戦力を集結させたが、その半分にも満たない。

 

それだけではない。帝国の大艦隊の先槍の如く佇む二騎がいた。ヴァリマール(リィン)オルディーネ(クロウ)である。

 

 

「悪ぃなナギト……かかし野郎に誑かされちまった」

 

 

得物の双刃剣を肩に担いで、オルディーネの中からクロウが言う。《かかし男》レクター・アランドールを通した政府の要請だと。

 

 

「躱せっつったよな。それがどうして帝国軍率いるみてーなポジにいんだ。お前もだぞリィン」

 

 

「…………………」

 

 

 

「なんか言えやコラ」

 

 

ナギトはキレていた。頭に血が登っているわけではない。何故リィンたちがリベール侵攻の手伝いをしてるのか思考している。

まさか人質でも取られたか、とも考えるがそれはレクターの、ひいてはオズボーンのやり方ではない。

 

 

「………レクターさんから言われたんだ。嫌な予感がすると。今すぐナギトを帝国に連れ戻さなければすべてが終わる──そんな予感がするんだってな」

 

 

「………不足だな」

 

 

レクターのカンはよく当たる。だがそれだけではリィンやクロウを動かす理由にはならない。もちろんナギトを帝国に連れ戻す理由にも。

 

 

「誑かされたって言ったろ。他にも色々言われたさ。尤もらしい理由なんかもな。……だが、結局のところはリィンが言ったのがすべてだ。短い時間じゃあるが仲間たちとも連携した結果、アランドールの言う嫌な予感は俺たちも感じてる」

 

 

クロウのセリフにナギトは多少以上の違和感を覚えている。それが何かはまだわからない。ゆっくり考えたいところだが時間もなさそうだった。

 

 

「お前らを信じたい気持ちもあるが…………悪いな、退けねえ」

 

 

だから衝突は避けられない。

 

 

「オズボーンがこの戦争を引き起こした理由がリベールにはあるはずだ。その理由がわからない限り、俺は帝国に戻る気はねえ。お前らには俺がいない帝国で踏ん張ってほしかったんだがな」

 

 

魔剣プロパトールを実体化させて構えた。

 

 

「やれやれ。リィン……あの馬鹿、もう決めてやがるみたいだぜ」

 

 

「そうだな、クロウ。もう俺にも何が正しくて何が間違ってるのかわからない………。だからナギト、俺は俺の信じる正しさのために剣を振るわせてもらうぞ!」

 

 

ヴァリマールもオルディーネも起動者の意思に応じてそれぞれの得物を構えた。

 

 

「俺も俺の正義のために戦ってんだ。来いよ2人とも……ここまで来りゃ後はエゴの張り合いだ!」

 

 

開戦4日目。ハーケン門の空に灰と蒼と緋の軌跡が描かれる。

それが両軍の戦闘開始の合図となっていた。

 

 

 

☆★

 

 

 

本意ではない。こんな場で、こんな形で、こんな心境で、交える刃は本意ではない。

 

苦渋を呑んでリベール侵攻に手を貸す事になったリィンはヴァリマールの中で険しい顔をしていた。

 

 

「馬鹿だねえ!」

 

 

対するナギトの声は楽しげだ。この望まぬ戦いに愉悦を見出している。

 

心に不満がある?当然だ。ナギトだってこんなところでリィンたちと戦いたくはない。だが、そんなもの戦いが始まってしまえばどうでもいい。

心境の善し悪しで振るう刃の重さは変わらない。ナギトは今やそんな境地に立っている。

 

だがリィンやクロウはそうではない。あの煌魔城の決戦で魅せてくれた2人の強さはこんなものではなかった。

 

 

「チッ……化け物かよ………!?」

 

「くそっ……こんな………」

 

 

それがあまりにも不甲斐なくて。

 

 

「どうしたお前ら!気ぃ抜けてんのか馬鹿どもがよ!何やっても俺を連れ戻すんだろうが!!?」

 

 

敵に対して檄を飛ばすなんて真似をしてしまう。

 

 

「何をやっても、なんて言ってねえが………」

 

「いや…その通りだ。これは俺たちの選択の結果……その決断を正解にするために俺たちはここに来たはずだ……!」

 

 

2人はようやく奮起した。戦闘が激化していく。

それでもナギトは2人を上回っていた。

 

生身ならナギトに、騎神戦ではリィンとクロウに分がある。

騎神の性能が同一であるならヴァリマールとオルディーネの二騎掛かりなら倒せると踏んでいた。

だが、届かない。確かに騎神の起動者としてリィンとクロウはナギトを上回っている。しかし剣士としてナギトは格が違っていた。

 

 

「………まぁーだ甘いな」

 

 

しかしナギトもまた攻めきれていなかった。剣士として2人を上回っていても相手は騎神戦のプロだ。連携もしっかりしている。

戦いを互角に押し留めているのはシンプルに出力差だった。ナギトはテスタ=ロッサを自身の闘気で援護している。それによって増した攻防力でリィンとオルディーネの連携をいなしているのだ。

 

 

2人の連携にはまだ甘いところがあった。しかしそれは僅かな隙で剣を差し込める余地はない。だったらその隙に別の事をしてしまおうと考えるのがナギトの性悪であった。

 

 

宙空が揺らぎ緋い波紋から魔槍が射出された。それは近くで戦闘していた帝国軍の飛空艇を刺し貫き爆散させる。

 

 

「ッ────ナギトぉ!」

 

 

「落ち着けリィン!優先順位を間違えるんじゃねえ!俺たちの目的は帝国軍人の奴らを助ける事じゃねえだろうが!」

 

 

激しかけたリィンを抑えるクロウ。リィンの激昂は人として正しく、クロウの抑止は仲間として正しかった。

 

そんな正しさを嘲笑うようにテスタ=ロッサは上空へ飛翔した。太陽を背に数多の武具を鋳造する。

 

 

「さあ……千の武器を持つ魔人(テスタ=ロッサ)───本領発揮といこうか!」

 

 

テスタ=ロッサが手を振り下ろす。それを合図に無数の武器がリィンたちを、そして背後の帝国軍を襲った。

 

 

「……この野郎!」

 

 

クロウはナギトの狙いを看破した。リィンの気性からして、周りを戦いに巻き込むのは本意ではない。それが侵略国の軍兵でもだ。だからナギトはリィンを挑発するために周りを巻き込んでいる。

 

《紅き終焉の魔王》と戦った時と似て非なる状況。あの時、千の武器はヴァリマールとオルディーネしか狙っていなかった。だから多少の無茶をしてでも道を切り拓けたが、今は背後に守るべきものがある。

だから動けない。撃ち放たれる千の武器を2人がかりで凌ぐしかない。そして2人からの攻撃がなければナギトはいつまでも千の武器を撃ち続ける。

 

 

「リィ────」

 

 

クロウがリィンに選択を迫ろうとした瞬間であった。

 

 

「───神気合一!」

 

 

リィンはすでに決断していた。

解き放たれる霊力の奔流が斬撃を纏って飛来する千の武器を撃ち落としていく。

 

 

「おし、あげてくぜ!」

 

 

リィンに呼応してクロウもオルディーネの奥の手を解放した。装甲が展開し霊力が溢れ出す。

 

 

「ハッ、いいじゃねえか。第二ラウンドと洒落込むか」

 

 

そんな二騎を見てナギトも口角を吊り上げる。愉しくなってきた。このままいつまでも2人との剣舞に興じていたい気持ちもあったがそうもいかない。この戦争はリベールだけでなく帝国の運命さえもを左右する一戦なのだ。

手早く戦争を終わらせるためにも、今この場を早めに終わらせなくては。

 

 

だが、そのためにあと一手、ナギトには足りていなかった。

 

 

 

☆★

 

 

バルフレア・ムタタユー軍曹は端的に言って馬鹿である。

 

日曜学校を卒業した彼はそのまま王国軍に所属した。いたって普通の剣の腕前、いたって普通の座学の成績。

人並み以上の野心なんてものもあるわけがなく、給料をもらうために働いているような状況。だが後輩のオサカズナ軍曹とタイガ軍曹と同じ部隊に配属させてからは“後輩の前でカッコつけてえ”と思うほどには男であった。

 

精密な作業が得意なオサカズナ。勤勉実直なタイガ。後輩2人からの期待(プレッシャー)は篤く、つい冒険してミスし、曹長から降格させられたりもした。

 

後悔したし、反省もした。それでもムタタユーは馬鹿であった。勤務態度に難あり、とモルガン将軍に引っ叩かれてはトイレ掃除の常連になっていた。トイレでサボってまた怒られた。

 

ムタタユーの男はそれでも廃れなかった。剣も座学も普通──否、人一倍努力してようやく人並みに至った非才。腹が立つ現実を睨み続けて得たのは、本質を見抜く眼であった。

それからはその眼を使って以前の評価を覆しては、またサボって減点されたりした。

 

 

そんな普通に馬鹿な男、バルフレア・ムタタユーは剣も座学も普通だが、飛空艇パイロットとしてはやや優秀な方に分類された。頭のおかしい変態的な動きをするエースパイロットにこそ敵わないものの、準エースパイロット級の実力を保持していた。自信がついてきた矢先、今回の戦争が起きた。

華々しい戦果を挙げてモテモテになる──なんて非現実的な夢を見て。戦争の悲惨さを知って。それゆえに彼の本質を見抜く眼は発揮された。

 

 

 

 

 

それはまさに聖域であった。

 

灰と蒼と緋が空を彩る3本の軌跡。

それに見惚れて被弾──なんて事はない。周囲の確認を怠ってはいない。ただ目を奪われただけ。

致命的にはならないから大丈夫……とまた上司に言ったら怒られそうだ。

 

ともかくそこは余人の立ち入る事の許されぬ聖域であった。迂闊に手を出せば一瞬で二階級特進してしまう絶死の領域だ。

 

 

ムタタユーの目から見てナギトは《灰》と《蒼》に互角以上に渡り合っていた。戦闘開始前の会話を盗み聞きした感じ、あれに乗る2人のパイロットはお友達なのだろう。

だからと言って手加減しているわけでもなさそうだが、攻め切れていない。

 

それにナギトの駆る《緋》から時折こちらに援護が飛んでくる。飛空艇を刺し貫く威力と大きさを兼ねた物騒な武具だ。役目を果たしたら消えるし、もうそういうものだという理解だけした。

 

 

 

「…………これ、そういうことだよなあ」

 

 

戦闘は激化している。空に描く3色の軌跡も彩りを増し、地面に墜落した飛空艇が積み重なっている。

 

そんな中、ムタタユーは納得と妥協の後、後輩たちに通信を繋げた。

 

 

「カズ、タイガ、ここ任せる」

 

 

「え、先輩!?」

 

「また独断すか、怒られますよ!?」

 

 

「はっはー、出来たら骨は拾ってね」

 

 

通信を切る。

貼り付けた笑みは挑戦的集中状態に突入した証。ムタタユーは気を見計らって特攻をした。

 

 

 

「なっ!?」

 

 

それが生半可な攻撃じゃダメージを与えられない事はわかっている。だからやるのはこの先の命と幸運を全賭けした大博打。

 

 

《緋》によって《灰》が体勢を崩し、《蒼》がカバーに入る刹那。

バルフレア・ムタタユーの駆る飛空艇がオルディーネに突っ込んだ。

 

 

 

☆★

 

 

「なっ!?」

 

 

クロウがそれを認めたのはすでに反応できないタイミングだった。

オルディーネ目掛けて突っ込んでくる飛空艇。王国軍の兵士が騎神戦に割り込んできたのだ。

避けられない。

 

ただの機銃なら鬱陶しいくらい。ミサイルでも耐えられる。ただ機体丸ごとは騎神でも────

 

 

「ぐっ────おおおおあああああ!?」

 

 

飛空艇は爆散。オルディーネは巻き込まれて墜落していった。

 

 

「クロウ───!」

 

 

「やるじゃねえかムタタユー!」

 

 

それに気を取られたリィンに切り掛かるナギト。テスタ=ロッサの握る魔剣プロパトールに熱がこもる。

 

 

「ナギト、クロウが……!」

 

 

鍔迫り合いの中でリィンは懇願している。

 

 

「あの程度じゃ死なねえよ!それより気ぃ抜くなよリィン…ここからがクライマックスだぜぇ!!」

 

 

力任せに押し切った。千の武器で追撃───視界の端で飛空艇から緊急脱出したらしいムタタユーがパラシュートで降下しながらこちらにサムズアップしている。抜け目ないしなんならユーモアも感じた──。無数の武具がヴァリマールに殺到する。

 

 

「くっ……ナギトぉ!!」

 

 

「そうだよな熱くなっちまうもんだ剣士って生き物は!でも俺だってそうさ!俺より弱いやつが男見せたんだ、こっちも張り切らなきゃ割に合わねえよな!」

 

 

拮抗していたテスタ=ロッサvsヴァリマール&オルディーネの戦況。それを覆すピースを期待半分諦め半分で王国軍に求めていたが、それにはムタタユーが応えてくれた。

だったら彼がつくったチャンスをものにしなければ男が廃る。

 

 

千の武器の雨を掻い潜りヴァリマールがテスタ=ロッサに肉薄する。

 

 

「無想───」

 

 

「無想覇斬」

 

 

「───づっ!?」

 

 

ヴァリマールが太刀を振るうより速くテスタ=ロッサが技を放っていた。

それでも負けじとリィンは挑むが、そのすべてを巧く躱され反撃をもらう。

 

 

「さぁーてさてさてお立ち会い!ここに見せるは八葉を超えた我が八葉……すなわち八葉刀神流、その第三の型なれば。畏敬、刃、敵意に闘志…そのすべてを跳ね返してご覧にいれよう!恐れぬならばかかってこい、我が師弟リィン・シュバルツァーよ!」

 

 

ナギトは今、このリベールに来て一番テンションが上がっている。こんなシチュエーションであろうとリィンやクロウと剣を高め合えた事、ムタタユーの覚悟もそれに薪を焚べて。

 

興が乗って芝居掛かったセリフの前にリィンも最後の毒気を抜かれて全霊で挑む。

 

 

「応えてみせようその誘い!我が師兄、我が義兄弟、我が目標ナギト!我が太刀筋、刮目して見るがいい───!」

 

 

もはや“それ”以外はすべて蚊帳の外。お互いしか目に入らぬ戦場での暴挙。

 

 

「刻焔戴天────!」

 

 

ヴァリマールから放たれていた光のオーラが黒い焔に変質した。

それはリィンがクロスベルで発現させ、そして弛まぬ修練の末に時間制限付きでコントロール可能になった秘奥の業。

 

黒焔が宿る。火球、斬撃そのすべてに。悉くを一瞬で灰にする黒き焔が。

 

 

「────碧の型」

 

 

 

ああ、やはり理合が心地好い。

 

 

「───────」

 

 

リィンの胸中に生じたのは憧憬であった。刻焔を前に微塵も怯まず反撃するナギト。

 

迫る刃も焔も完璧に見切りカウンターを放つその様。

 

 

なす術がないとはこの事だ。

ナギトは八葉を超えた八葉と言ったが、それはまったく過大評価ではない。剣術剣技そのものに優劣はあれど、それらはジャンケンのようなもの。

だが八葉刀神流は剣術として優れている。他の誰にも扱えないような剣技だからとても流派は名乗れないだろうが。

 

 

ともあれナギトのこれは相手に勝利を許さぬ超反撃技にして超反則技。

後出しジャンケンを先に出して相手に敗北を叩きつける無法であった。

 

 

先の先を獲るカウンター。相手の闘気が、鋒が、呼吸が、意識が攻撃に向いた刹那に必中不可避の斬撃を叩き込む───これはそういった技だった。

 

 

ヴァリマールが墜落する。

 

 

「ご覧に入れましたのは八葉刀神流が碧の太刀。不可避の斬撃にて斬り捨て御免、“先鏡反転・応剣真授”でした」

 

 

やはり芝居掛かった様子で紡ぐナギトにヴァリマールの核の中でリィンは微苦笑した。

 

 

こうして騎神戦は勝敗が決し、残ったテスタ=ロッサは霊力の限り戦い抜こうとしたが、不利を悟った帝国軍が早期撤退を決め込み、4日目の戦は終わりを迎えるのだった。

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