遊戯王GX 霊術使いに使われて。   作:どるねお

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TURN1 試験

「母さん、行ってきます………」

「はいはい、行ってらっしゃ―――――あんた大丈夫なのその顔?」

「うん……じゃあ」

 

僕はふっと笑うと玄関を閉めた。昨日の夜の疲れが抜けない。

だが今日はデュエル・アカデミアの実技試験の日だ。けど……

 

『こんな朝早くなんて聞いてねぇ……ふぁ、眠』

「………」

 

僕は傍らの少女に目を向けため息を吐く。

 

『オイ拓。人の顔見てため息とは……随分偉くなったじゃんかよ』

「あの……まだ知り合って10時間程くらいしか経ってないんだけど」

『細かい男だなぁお前。ほら、さっさと行くぞ。あ、行きにコンビニな。

私、朝飯抜きだったから何か買ってよ』

 

おかしい。いや、何がおかしいのか分からないけどおかしい。精霊って飯食うの?

そもそも僕が養うべきなの? 昨日の夜、僕が主って言ってたのに……

 

「はぁ……」

『おいおい、ため息ばっかだと幸せ逃げんぞ? 幸薄そうな顔してんのにこれ以上

幸せ逃がしてどうすんだよ。それとも、そのテスト?とかいうのが怖いのか?』

「いや、テストは大丈夫だけど……」

 

原因は君なんだよね……って言ったらまた前歯が危機にさらされるだろうか。

今もまだぐらぐらしてるし。言うのやめよ……

 

 

大体精霊とか言うのが騙されたよ。ゲームとかの精霊とかって優しくて、サポート

キャラってイメージばっかあったけどさ! 今のこの現状よ! なにこれ!

何か言えば殴られるし、蹴られるし、おまけに養えとか……

大体普通の精霊ってさ! なんか空気中のマナ食ってますみたいなイメージあるじゃん!

なのに目の前の精霊と来たら……

 

『うまいなコレ! 人間って奴らは贅沢だよなぁ』

 

バクバクと肉まん食べてるし……

 

『ん? なんだよ拓。食いたいのか? やらないけどな!』

「……もういやだ。なにこれ」

 

『ふー食った。うっし。じゃあ行くぞ! そのテストとやらに!』

「……はいはい」

 

僕は再び試験会場の海馬ランドへ足を向けた。

 

 

「はい。確かに受理しました。幸運を!」

「は、はい! 頑張ります!」

 

僕は受験票を見せ、確認を取ると施設へ進む。

 

『ふ~ん。随分でかい建物だなぁ』

「僕も初めて来るけど……こんな時じゃなきゃ観光したいけど今は……」

 

試験ってことで頭がいっぱいだ。

 

『んだよ、ビビっちゃってよ。だらしないなぁ』

「しょうがないだろ……」

 

『受験番号、86番の生徒は受験会場へ――――――』

 

「あ、僕だ。ど、どうしよう……トイレに行った方がいいかな」

『何焦ってんだよ。さっさと行くぞ?』

 

ヒータは僕の服を掴むとずんずん進んでいく。恐らく他の人から見ればおかしな

歩き方をしているように見えているはずだ。恥ずかしい。

 

「って待ってよ! 行くから服離して!」

 

 

「君が86番の生徒で間違いないね?」

「はい! お願いします!」

 

僕は腕のデュエル・ディスクを起動させると展開する。そしてそこに腰の

デッキケースのデッキをセットインする。この日のための自信作にヒータを入れたデッキだ。

……脅されて入れる羽目になった。けど不本意だけどいいコンボが出来た。

 

『よし。一丁かましてやるか!』

 

試験官の先生を睨むヒータ。

 

「……実際のデュエルじゃ攻撃力500じゃないも出来ないだろ?」

『あ?』

「なんでもないです!」

 

「それでは試験を開始する。用意が出来たら始め給え。君が先行だ」

「は、はい! それでは―――――」

 

「「デュエル!」」

 

「僕のターン! ドロー!! 《ジュラック・グアイバ》を召喚! 

カードを二枚セットしてターンエンドです」

 

僕の場に赤い恐竜が召喚される。

 

『もっと攻めてけ!』

「無茶苦茶だよ……」

 

「私のターンだ! 《ゴブリンエリート部隊》を召喚。グアイバに攻撃だ!」

「くッ……」

 

拓真:3500LP

 

「エリート部隊は守備表示になる。ターン終了だ。さて、君の戦術を見せてくれ」

「はい! 僕のターン! 僕は試験官さんの場のゴブリンを生贄に、あなたの場に

《ヴォルカニック・クイーン》を特殊召喚します!」

「私の場に上級モンスターを? 一体……」

 

『馬鹿野郎。相手の場に強いモンスター出してどうすんだよ』

 

僕のプレイを奇行と取ったのかヒータが頭にチョップを入れる。

 

「痛い! ……これでいいんだよ。僕はカードを一枚伏せてエンドです」

「なら私のターンだ! ……悪いが君のモンスターを悪用させてもらうよ?

プレイヤーにダイレクト・アタックだ!」

「うぐッ……」

 

拓真:1000LP

 

「私はターン終了だ」

「……この時、あなたは自分の場のクイーン以外のモンスターを破壊するか、

1000LPのダメージを受ける。1000LPダメージ受けてください」

「くッ……だが、このままのダメージレースなら君の負けは濃厚だぞ?」

 

試験官は渋面の中に勝利を確信したような口調で言う。

 

「大丈夫です。問題ありませんよ。僕のターン! モンスターをセット!

そしてセットしていた速攻魔法《太陽の書》を発動! この効果で裏側のこのモンスター

を表側攻撃表示にします!」

 

『やっと出番だな。待ちくたびれたっての』

 

「《火霊術つかいヒータ》のリバース効果発動! 相手の場の炎属性モンスターの

コントロールを得ます! 僕はこの効果で、《ヴォルカニック・クイーン》を選択!」

「なッ!」

 

『へ、デカい獲物だぜ……』

 

いやそれ仲間だから。これで試験官の場はがら空きだ!

 

「クイーンでダイレクト・アタック! “ヴォルカニック・フレイム”!」

「ぐぁああああッ!」

 

試験官:1500LP

 

「さらに罠発動! 《火霊術‐「紅」》! 自分の炎属性モンスター1体を

生贄にして、その攻撃力分のダメージを相手に与える! ヒータ!」

『命令すんなっての!』

 

この時くらい従ってよ……ノリでさ……

 

『行くぜぇ!』

 

ヒータはヴォルカニック・クイーンの炎エネルギー的なものを吸収し杖に貯める。

 

『充填120%ッ! 喰らえ、「紅」!』

 

杖から焔が迸り、試験官を撃つ。うわ……凄い爆発だ。いくらホログラフィックでも

ド派手過ぎだと思うんだよね……

 

試験官:0LP

 

『最高だぜ!』

 

 

「おめでとう。君の合格は濃厚だろう。期待するといい。いいカードプレイだった」

「あ、ありがとうございます!」

 

僕は試験官にお辞儀をする。やった……うまく出来た。

 

『ま、95%くらいは私のお陰だな』

 

傍らでドヤるヒータ。

 

「しかし君は凄いな。《火霊術使いヒータ》か。そのような、口が悪いが……

所謂、ファンカードやアイドルカードを入れたデッキで入試に挑み、あまつさえ

活躍させて見せるとは……大したものだ」

「はは……まぐれですよ」

 

『あ? 誰がファンカードだよ! 拓、何か言い返せ! こっちはガチなんだよ!』

 

そんなことできる訳ないだろ。だが、試験官はさらに爆弾を落とす。

 

「はは―――――ヒータのカードが強く見えたぞ」

 

あ……

 

『へぇ、こいつ面白いこと言うなぁ……』

「あの、ありがとうございました!」

 

僕はその場を後にする。これ以上うちの女王が機嫌を損ねると厄介だ。

付き合いは短いけどそれくらいなら分かる。

 

 

『おい、何逃げてんだ! てめぇの精霊を馬鹿にされて悲しくねぇのか?

お前それでも【ピー】ついてんのかよ!』

 

精霊は主と一定以上離れられないようで、ヒータは渋々ついて来た。

 

「お、おい……女の子がそんなこと言うんじゃない」

 

なんて奴だ。公共の面前で……精霊だからいいものの、こいつが人間だったら

と思うと大変だ。

 

『はぁ? お前は女子が皆綺麗だと思ってんのか? 馬鹿だろ、童貞だろ?』

「どどど、童貞ちゃうわ!」

 

実は2度目の人生もまだです。ってうるさいわ!

 

「と、兎に角少しは落ち着いてよね?」

『無理。それより喉か湧いたんだけど? さっきの試合で疲れたし? ん?』

「はいはい……買えばいいんでしょう」

 

僕は君の財布じゃないんだけどなぁ……

 

『しかし凄い人数だな』

「ねぇ、この中に精霊は居たりしないの? 一人くらいヒータの仲間がいそうだけど」

『そうだなぁ……お、あそこの奴の後ろ。面白い奴が憑いてんな』

 

ヒータが指さす一角では、一人の受験生がデュエルしていた。使っているデッキは

HEROみたいだな。

 

「へぇ……居るもんだなぁ」

『んなことはいいんだよ。早くなんか買ってこいよ』

「はいはい……」

 

あの人の精霊はこんな感じで主を尻に敷かないんだろうなぁ……

 

 

『ふぁ……ねむ。おい、拓。いつまで居るんだ? 帰って寝たい』

「駄々っ子かよ……こうして他の受験生も参考にしているんだよ」

 

何か食いたいだとか、眠いだとか……子供みたいだな。いや見た目まんま子供だけど。

 

『今、失礼なこと考えたろ? 暇つぶしにレスリングごっこでもするか? ん?』

「一方的に蹴り飛ばすのをレスリングとは言わない。スポーツに失礼だろ……」

『だいたい女々しいんだよ。なんで入る前から敵情視察してんの? セコイ男だなお前』

 

敵情視察って……

 

「ただ参考にしているだけだろ? 今後のさ」

 

同年代と言えど、他の人のプレイは参考になるしね。

 

『んなの来るやつは倒せばいいんだろ? 今日みたいに』

「はぁ、ヒータは性格が男みたいだね……」

『お前が女みたいなだけだろ? ほら、帰んぞ』

「あ、服を引っ張るのやめてって! 分かったよ。帰るよ……」

 

『じゃあ、帰りにまた肉まんな。今日のファイトマネーだからな』

「え、じゃあさっきのジュースは……僕、今月ピンチで」

 

中学生の小遣いは思った以上に少ない。オマケにカードも買えばすぐに

底が尽きるのだ。だから買い食いはめったにしないのに……

だがそんなこと露せれず女王様は、

 

『そんなの知るか。早くしろ』

 

彼女はそのまま僕の袖を引っ張っていく。試験は無事終わったけど、

この生活は始まったばかりのようだった。

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