遊戯王GX 霊術使いに使われて。   作:どるねお

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TURN2 アカデミアへ

「……ごちそうさま」

「あら? またなの? 最近食べる量少なくない?」

 

最近ご飯の残しがちな僕を案じて母さんが声をかける。

 

「うん……ちょっと試験の結果が気になって。大丈夫だよ」

「そう? ならいいのだけど……」

 

心配そうな母さんを今に残し残飯を処理……するかと見せかけて

お盆の上に乗せる。この時、食べかけだとばれない様に工夫をするのを忘れない。

 

「でもお腹空いたら食べるから、二階に持っていくね?」

「いいけど、こぼしちゃだめだからね? Gが来るから……」

「うん」

 

今、我が自室にはGちゃんより怖いものが生息しているんだけど……

 

 

『遅い! お腹空いた! 飯!』

「………はぁ」

 

自室に戻るとうちの女王が暴れていた。知り合って5日。この精霊さんには

困ったもので、普通にご飯は食べる、暴れる、そのくせよく寝るでまるで猫みたいだ。

気まぐれでなつかないところも猫とよく似ている。

 

『おい。今変な事思ったろ』

「思ってないよ。ここ置くからね」

 

僕は勉強机にご飯を置くと部屋の隅のサブデスクでデッキ調整を始める。

後ろではガツガツとご飯を食べる音が聞こえていた。

なんだかこうして隠れてご飯をあげてると、捨て猫でも拾ってきた気分になって来るよ。

 

『相変わらず美味いな! これを作ってるお前の母さんは天才だな!

しかしアレだな。何もせずに食う飯はいいな! 最高! ただ飯最高!』

「考えが最低だな……」

 

僕はそんな姿を眺めながら考えていた。

 

予定だと明日デュエル・アカデミアの合格通知が来る。僕は合否自体は心配して無いけど、

学園でやっていけるかがとても心配だ。きっとアカデミアには僕なんかよりも

ずっとずっと強い人たちが居るに違いない。そして目下最大の不安は―――――

 

「はぁ……」

 

『おい、今私を問題児みたいな目で見ただろ?』

「いや全くそんなことは無いよ」

 

この女王様なんだよね……

 

『ふぁああ……食った食った。じゃ、私寝るから片付けよろ』

「………はぁ」

 

そのままヒータは食べてすぐなのにベッドにダイブイン。ずぼら過ぎる……

 

 

「拓、忘れ物は無い?」

 

あれからさらに数週間後。無事アカデミアに合格した僕は、いよいよ出立の時を

迎えていた。アカデミアでは寮生活となるので、暫くはこの家ともお別れとなる。

 

「うん、無いよ母さん」

 

そう言って僕は黄色い制服の襟元を正す。僕はラーイエローに配属となった。

 

「そう。じゃあ頑張ってね。母さんも父さんも応援してるわ」

 

僕は大きく頷くと家のドアを開ける。

 

「じゃあ、行ってきます」

「はい。行ってらっしゃい」

 

家から出ると暫く家を眺める。この家から長期間離れるのはこれが初めてだ。

恐らくしばらくは戻ってこれないだろう。長年(15年)親しんだ家。いつも帰って来る

場所だった。そう思うと―――――

 

『拓。早く行くぞ! 早く!』

「………」

 

ムードぶち壊しだ。僕は短くため息をつくと、鞄を背負い直した。

 

「今行くよ……」

『駅行く前にコンビニで肉まん食ってこうぜ』

「えぇ! ご飯食べたじゃない!? まだ食べる気なの! 嘘でしょう!?」

『そんなつまらねぇ嘘つくわけねぇだろ? 私を誰だと思ってんの?』

 

「あぁ、そうでしたね……」

 

荷物以上に重く大きな不安を抱えつつも僕はアカデミアを目指した。

本当に先が心配でならないよ。

 

 

デュエル・アカデミアは離島なので船か飛行機で行く必要がある。

 

「うわぁ……船旅は初めてだけど、凄いなぁ。ほら見てごらん」

 

僕はアカデミア行きの船の上で嬉々としていた。生まれてこの方船旅は

初めてのことで舞い上がっている。だが、

 

『うぇ……気持ち悪。お前よくそんなはしゃげるな……』

「まだ慣れない?」

『慣れるわけないだろ? なんで飛行機にしなかったんだよ……』

 

そもそも精霊が船酔いするとか思いもしないからだよ。それに船の方が渡航費安いし。

 

『あ、もう無理だ。これ吐くから。もう吐くからなこれ』

「え、精霊はリバースしないでしょう?」

 

しないよね? 

 

『そうだった……じゃあこのむかむかを何処に吐けばいいんだよぉ』

 

こんなに弱ったヒータは初めて見た。何というか、逆に落ち着かないなぁ。

 

「部屋に行って休もうか?」

『うん……カードに戻るわ』

 

瞬間、ヒータの身体が消える。恐らく腰のデッキケースの中に戻ったのだろう。

ならずっと姿で居ればいいじゃないか?と思うけど、どうもカードの中というのは

手狭で肩が凝るらしい。

 

「僕も部屋で一休みしようかな」

 

 

それから数時間。船はデュエル・アカデミアへと到着していた。

 

『やっと、解放された……もう船はこりごりだ』

 

カードから出てきたヒータは恨めしそうに船を睨む。僕としては静かで

助かったくらいなんだけど……

 

『拓。次戻る時は飛行機な! 絶対だからな!』

「分かった、分かった」

 

『皆さんようこそなの~ネ。新入生はこれから大講堂に移動するノ~ネ!』

 

「大講堂か……よし」

 

僕はバッグから一冊の本を取り出す。その伏せんが貼ってあるページを開く。

 

『拓。何やってんだよ。早く移動しないと遅れるんじゃないの?』

「ちょっと待ってて」

 

その本は所謂恋愛バイブルだ。女神に願いを3つを言い転生した僕だけど、

未だに3つ目の願いが達せられていない。つまり、彼女が欲しい!

ならどうするべきか? 自分で行動するしかない! 

だから僕はこの日の為に勉強と研鑽を重ねてきた。やるぞ。僕。この学園で

リア充ライフを送るんだ! そのための第一歩だ。まずは……何々。

 

「女子に何気なく接触する。か……よ、よし! やるぞ……やるぞ!」

 

僕は周りを見る。幸い、ちらほら人が残っている。さて、誰に話しかける?

僕はきょろきょろして考える。端から見たら、ヤバい人だろうか?

 

『拓、私お腹空いた。飯は?』

「え……気持ち悪かったんじゃないの?」

 

小さい声で返事を返す。なにこの精霊……よく気分が悪くなった後に食べる気に

なれるなぁ……どんだけ食い気にあふれてるんだろうか? 取り合えず今は無視。

 

目線の先、長身でスタイルがいい女子を発見する。けど、僕風情があんな綺麗な

人に話しかけてもいいのだろうか……いや、ハードルは高く設計するべきでは?

大丈夫、話しかける内容は10通りは用意してきた。行ける!

 

『聞いてんの? なぁ?』

「……はい。これ食べて待ってて」

『またこれかよ。これぱさぱさしててなぁ……美味いけどさ』

 

僕は、駄々っ子に非常食のカロリーメイト(チーズ)を渡して黙らせる。

この紅い女王は大概食料で黙るのだ。むしろそれ以外で黙らない。

ちなみにこのままじゃカロリーメイトが浮いてる!?みたいな珍事になるかと

思われるが、そうはならない。彼女が持つと物が消えるのだ。何故だか知らないけど。

まぁ、深く突っ込んだらキリが無い。世の中不思議が沢山だからね。

 

よし行くぞ!

 

僕は意を決して先ほど狙いをつけた女子生徒に声をかける。狙いをつけるって表現は

どうかと思うけど……まぁ、なんでもいいよ! 

 

「すいません! あの……」

「何かしら?」

 

女子にしては長身の娘だ。僕は、少しドキッとしてしまう。今までの人生、一度目も

含めて周りにこんな美人な人が居ただろうか? いや居なかっただろう。

それでも僕は何とか言葉を紡ぐ。ここで一歩先へ進むんだ!

 

「大講堂って何処ですか? 僕、ちょっと把握して無くて……」

 

触りは完璧だ。後は、「え? そうなの? なら一緒に行きましょう」展開に持ちこんで、

さらに道中おしゃべりに洒落こむ。そしてアドレスGETの運びまで見えた。なんだ、

余裕じゃないか。

 

「そうなの? けど、あそこに看板が……」

「え?」

 

僕は彼女の指さす先を見る。そこには《新入生はこちら》というプラカードを

持った男性教師が居た。なんてこった!

 

「あはは……本当だ。教えてくれてありがとうございます」

「いえ、それじゃあ」

 

その生徒はそのまま言ってしまった。失敗だ……あゝ僕の青春はいつ始まるのだろうか。

 

『お前、さっきから女のケツ追っかけてなにやってんの?』

 

口をもぐもぐしながらヒータが尋ねてきた。何その言い方!?

まるでケツしか見てないような言い方じゃないか!

 

「いや、ちょっとね……」

『ふ~ん。ま、けどそんなに必死こいて女見てると引かれるぞ?』

「そ、そうなの!? 僕、そんなに必死に見えたの!?」

 

自分では気づかなかった……

 

『あぁ。まるで獣が獲物を品定めしつつ狙っているかのような眼光、そして

息荒かったし。もう、一言で言えば変態だ。これだから童貞は……。まぁ、ムリも無いよな。

お前のようなモテない男君は、こういう節目で頑張っちゃったりするんだろ? えと、

なんていうんだっけ……この間てれびで見た……あ、高校デビューだっけ? それだろ?」

「………」

 

なんでこの精霊は、主をここまで貶めるのに余念がないんだろうか? なに? 

そういう使命でも与えられてるの? 主を自殺に追い込むのが精霊の仕事なの?

 

『まぁまぁ、落ち込むなって。お前は幸せものだろ?』

「え? 何処が?」

『きまってんだろ。24時間こんな美女がついてるんだぜ?』

 

そう言いつつドヤ顔でサムズアップ。

 

「……はぁ。行こ」

 

 

その後、校長先生から話があったりした後、ようやく僕はイエロー尞へと入る。

その頃には丁度太陽が傾いていて、もうじき夕飯といった頃合いの時刻となる。

普段ならもう母さんがキッチンで夕飯の用意を始めている頃だろうか……今日は

何を作っているんだろう。なんて考えが出る辺り、僕は早くもホームシックになって

いるのかもしれない。けど、プロになるためにここに居るんだ。と、自分に言い聞かせ

首を振ることで考えを消す。

 

校舎から出て、イエロー尞を目指す。

 

『これからどーすんの?』

「ん? 尞に行くんだよ』

 

僕は小声でそう答えた。ヒータはもう早期から飽きているようで、歩ける範囲で

フラフラしたり、僕の脛を蹴って遊んだりしていた。もはや、おもちゃ扱いですよ……

後凄く痛い。

 

『尞ってなんだ?』

「ん~平たくえ言えば、これから三年間の僕らの家だね」

『ふ~ん。ま、飯が美味くてベッドがありゃどこでもいいわ』

 

そう言ってつまらなそうに斜めを見る女王。

こうしてみると少しいじわるの一つでもしたくなる。

 

「じゃあ、船でもいいの? あの船もベッドあったしご飯美味しかったよ?」

『嫌だ。船はもう無理! つまらないこと言って無いでさっさと歩けよ。腹減った!』

「はいはい」

 

僕は首をすくめると尞を目指して歩き出した。

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