入学して程なく経ったある日、その日はデュエルの実技の授業だった。
『実技ってのはワクワクするよな! さぁてさて、今日はどいつをぶっ倒すんだ?』
「その言い方はどうかと思うよ。もっと穏やかにね……」
相変わらず血の気の多い精霊を引き連れた僕は、今日の相手を探す。この授業は
学年合同で行われるので、相手を探すのに悩む。普通は同じ尞同士でやるのだけど、
やはり色々な人とやりたいのだ。参考になるしね。
「なぁ、お前。面白いの連れてるな!」
「え?」
きょろきょろと周りを見渡していると、後ろから声が掛かった。
見れば赤い制服。つまりオシリス・レッドの生徒だった。問題は彼の背後のに
浮遊している生物。《ハネクリボー》。
『クリクリ~』
「それは……もしかして、精霊?」
「あぁ、そうさ! 俺の相棒だ。俺、遊城十代。お前は?」
「光井拓真。で、こっちが……」
『ヒータだ。へぇ……珍しいな。生意気に見えるのかお前』
生意気って……
「まぁな。けど、凄いなこの精霊、しゃべってるぜ!」
「凄いのかどうか分からないけど、でも凄く……」
横暴で我儘だよって言ったらこの場で蹴られるよね……
ん、そう言えば。
「遊城君はもしかして、HEROデッキを使うのかな?」
「ん、あぁそうさ! 俺はHEROデッキ使いだぜ。後、十代でいいぜ」
なるほどじゃあ、入試の時にヒータが言っていたのは彼だったのか。
『拓、決めたぜ。今日はこいつとデュエルだ』
「え? どうしたの?」
『なんでもだ。十代とか言ったな。いいだろ?』
ヒータは勝手に話を進めていく。どこまでも勝手気ままな精霊で困るよ……
「ん? いいぜ。デュエリストなら売られたデュエル。受けない理由は無いからな!」
「いいんだ……」
当の本人である僕が置いてけぼりをくう流れとなった。
◆
「「デュエル!」」
「先攻は俺だ! ドロー! よし、早速行くぜ! 俺は手札から魔法カード《融合》
を発動! 手札の《E・HEROフェザーマン》と《E・HEROバースレディ》を融合し、
マイフェイバリット・モンスター! 《E・HEROフレイム・ウィングマン》を召喚!」
E・HEROフレイム・ウィングマン
ATK2100/DFE1200
やはり彼はHEROデッキ使い。HEROとは、融合を多彩に使いこなしてのビートダウンを
得意とするテーマ群のひとつだ。僕の記憶だと、さらに融合の他にマスクチェンジしたり
アライブしてバブルマン並べてオーバーレイしたりしてるけど……
十代君のデッキは融合が軸というか、メインみたいだ。けど純正と言えど油断は出来ない。
手札からポンポン上級が飛んでくるしね。
『いきなりでっけぇのが来たな。ビビんなよ?』
「うん。けど……」
いきなり一ターン目での切り札の召喚。それは牽制の一手としては有効だろう。けど、
その一方では手の内を明かしているも同義……十代君はそれほどまでに自信があるのだろうか?
「俺はターンエンドだぜ」
「よし、僕のターンだ。ドロー」
手札にフレイム・ウィングマンを倒せるコンボはないか。
『拓。ここは地味にダメ取って様子見するしかねぇぞ』
「うん、分かった。魔法カード《ファイアー・ソウル》を発動。このカードはカードを
デッキから1枚ドローして、さらにデッキから炎族モンスターを1枚墓地に送って、
その攻撃力の半分のダメージを君に与える!」
「何ッ!」
「まずはカードをドローして、デッキから《ヴォルカニック・クイーン》を墓地に送る。
そして、君に1250LPダメージを与える!」
ソリッド・ヴィジョンの炎が十代君を包む。
「うわぁあああッ! く、やるな!」
遊城十代:2750LP
「僕はモンスターを裏側守備表示でセットして、リバースカードを2枚伏せてエンドだ」
「今度はこっちだぜ。俺のターン。ドロー! 行くぜ、《E・HEROワイルドマン》を
攻撃表示で召喚するぜ!」
E・HEROワイルドマン
ATK1500/DFE1600
アイツは確か罠が効かない効果を持っていたはず。厄介だな……
「行くぜ! まずはワイルドマンで裏側モンスターに攻撃だ! ワイルド・スラッシュ!」
襲い掛かるワイルドマンによって、カード状態のセットモンスターに迫る。だが、
「伏せていた、速攻魔法発動! 《月の書》! この効果でワイルドマンを裏側守備表示に
変更するよ! 罠が効かなくても、これなら効果あるだろう?」
「やるな! なら次はフレイム・ウィングマンで攻撃だ! フレイム・シュート!」
今度は竜の頭の形をした腕の先から炎が噴出し、セットモンスターに迫る。アイツの効果は
破壊したモンスターの攻撃力の分相手にダメージを与える効果を持っていたはず。
「くッ……」
光井拓真:2500LP
破壊されたのは《稲荷火》なので僕はその分の攻撃力のダメージを負う。
「俺はカードを一枚セットしてターンエンドだぜ」
単純に強い……彼がなんで一番下のクラスのオシリス・レッドなのか不思議でならない。
『なに、ぼさっとしてんだ。こっちも攻めんぞ!』
「う、うん。僕のターン! ドロー!」
攻めるって言っても僕のデッキは押せ押せなデッキじゃないし……どうしよう。
“これ”の召喚にはまだ墓地が少ないし、かといって無為にモンスターを並べれば
フレイム・ウィングマンに餌を上げるようなものだし。
『拓、
「えッ!? まぁ、出来るけど……いいの? 怒らない?」
『馬鹿野郎。今大事なのは勝つことだ。いいか―――――私ら2人で勝つんだよ』
「2人で?」
なんだろう、この王道的な展開は? ヒータどうしちゃったんだろう……
ううん。ヒータが勝つつもりで本気なら、それに答えるのが僕の使命だ!
「分かったよ。行くよ十代君!」
「お、なんか分からないけど……よっしゃかかってこい!」
ノリがいい十代君は乗ってくれた。彼はいい人に違いない。
「僕は、《火霊使いヒータ》を攻撃表示で召喚! そして速攻魔法カード
《エネミーコントローラー》を発動! 二つ目の効果で、僕はヒータを生贄に十代君
のフィールドのフレイム・ウィングマンのコントロールをこのターン得る!」
「何だって!?」
『後は頼んだぜ?』
「うん。任せて……勝つから」
『ったりまえだ』
ヒータが墓地へ送られ、僕の場にフレイム・ウィングマンが来る。
「行くよ! フレイム・ウィングマンでセットされたワイルドマンに攻撃だ!
フレイム・シュートッ!」
「く……」
ワイルドマンが破壊される。
「そして、ワイルドマンの攻撃力1500分のダメージが君に与えられる!」
「うわぁああああッ!」
遊城十代:2500LP
「僕はカードを一枚セットしてターンエンドだ。この時、フレイム・ウィングマンは君の元へ戻る」
「なかなか面白い手だったぜ。それじゃあ俺のターンだ! ドロー! 行くぜ!
《E・HEROスパークマン》を召喚! ダイレクト・アタックだッ! スパーク・フラッシュッ!」
「ぐぅ……」
スパークマンの攻撃が僕に決まり、LPが削れる。
光井拓真:900LP
「行けッ! フレイム・ウィングマンッ! フレイム・シュートッ!」
「それは通さないよッ! 永続罠発動ッ! 《拷問車輪》ッ!」
「ご、《拷問車輪》ッ!?」
「この効果で、フレイム・ウィングマンを選択。選択されたモンスターは攻撃と
表示形式の変更を行えない! さらに、君のスタンバイフェイズ毎に500LPダメージ
を与えることが出来る!」
拷問具のついた車輪装置にフレイム・ウィングマンが捕らわれる。
うわ……凄い絵図らだ……。
「マジか。俺はターンエンドだぜ」
「僕のターンだ! ドロー!」
どうする。十代君の場には攻撃可能なスパークマンがいる。けど、僕の今の手札じゃ
スパークマンにすら勝てない。《拷問車輪》によるバーンダメージ勝利を狙っても
あと5ターンは待たないとならない。どう考えてもその前にダメージレースで負ける。
でもやるしかないよね。約束したし。
この状態から十代君に勝つには、どうにかして墓地に後二枚モンスターを送らないと。
「僕は魔法カード《強欲な壺》を発動するよ! カードを2枚ドロー!
さらに《UFOタートル》を守備表示で召喚!」
ここまではいいんだけど、どうしよう。まず、十代君のフレイム・ウィングマンは
攻撃できないからこの際無視でいい。もし、《拷問車輪》を破壊してきて攻撃して来たら
それはそれでもうどうしようもない。問題は彼の手札に《融合》のカードと素材が一組
ほど揃っているのかという点だ。ある程度の攻撃なら《UFOタートル》で防げるけど、
もし融合されたら終わる。とくに、《E・HEROサンダージャイアント》とか無理な状況だ。
僕のLPは900。UFOタートルで後続を呼んでも、融合されたら物量で押されて終わる。
けど、そんなことでビビってたらキリが無い。ここは臆せずに攻める!
「行くよッ! 僕はタートルでスパークマンに攻撃だッ!」
ここは融合体のフレイム・ウィングマンじゃなく、素材のスパークマンを攻撃。
十代君の手札にクレイマンと融合があったら、融合されてしまうだろうしね。
「攻撃力の低いモンスターでッ!? げ、迎撃しろスパークマン!」
スパークマンがタートルの体当たりに合わせ、迎撃の体制を作る。だが、
「速攻魔法発動! 《収縮》! スパークマンの攻撃力を半分にするよ!」
スパークマンATK1600→ATK800
「それが狙いか! くッ」
《収縮》の効果で縮んだスパークマンが、タートルにはねられて爆ぜる。
このタートル。機械族だから攻撃されたら痛いだろうな……まるで車に撥ねられた
ような感じだろう。ん……頭になにか引っかかるな。
遊城十代:1900LP
「僕はターン終了だ」
「なかなか面白くなってきたぜ。俺のターンだ! ドロー!」
「この時、《拷問車輪》の効果で君に500ダメージを与える!」
遊城十代:1400LP
「厄介だな。俺は、《E・HEROクレイマン》を守備表示で召喚してターンエンドだ」
十代君はクレイマンを握っていたみたいだ。読みがあってて良かった……
もしスパークマンを残していたら融合されていたかもしれないし。
よし、ここから―――――反撃だ!
『うす、ヒータ様だ! 今回から次回予告ってな感じでやっていくぜ!
精霊が見える遊城十代。拓は十代に苦戦しまくりで結構やばい状況だ。
私も墓地に逝っちまったしな。けど、なんか拓真の野郎には秘策があるみてぇだな。
こっから反撃だ! 約束したんだから、勝てよな?
次回、「TURN4 秘策の炎霊神パイロレクス!」
肉まん食って待ちやがれ!』