陰キャの女友達に催眠術をかけられた件について   作:赤砂の

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2話 言いがかり委員長

「悪い、購買でパン買って来るから先行っててくれ」

「分かった」

 

 午前の授業が終わって昼休みになった直後のこと。

家からパンを持ってくるのを忘れてしまった私は、彩奈に先に部室に行くように促して、1人購買の方向に歩き始める。

 

「渡会さん、今ちょっといいかな?」

 

 廊下を歩いていると、後ろからそんな声をかけられた。振り向いたらそこには、ロングの黒髪に黒縁眼鏡、そして右目の下にある泣きぼくろが特徴的で、クラスメイトの名前を殆ど覚えていない私でも知っている人がいた。彼女の名前は冴木夏芽(さえき なつめ)。私の所属する1年A組の学級委員長を務める女だ。

 

 そんな夏目さんが、私みたいな人間に何の用があるのだろうか。

 

「別に良いが……何の用だ?」

「瑠璃川さんのことで少しね」

 

 購買へと続く道を歩き始めた私の隣で、冴木さんも歩く。歩幅的な関係で私の方が歩くのが早い為、彩奈と歩いている時同様に、ペースを落としながら歩く。

 

「彩奈がどうかしたのか?」

「どうかしたというよりも、どうかされているという感じかしら」

「誰にだ?」

 

(彩奈が誰かに何かをされている……もしかして虐めとかか?この前も本屋で不良やら何やらに絡まれたって言ってたし)

 

「あなたよ」

 

 私はその言葉を聞いた瞬間、歩くペースを元に戻して普通に歩き始めた。彩奈が私に何かされてる?一体何を見て、どうしたらそんな結論になるんだよ。

 

「ちょっと待ちなさいよ!」

 

 後ろから肩を掴まれる。

 委員長からのよく分からない言いがかりに少しだけイラっとして青筋を立てる。

 

「彩奈があんたに言ったのか?私に何かされてるって」

 

 赤の他人に私達の関係をどうこう言われる筋合いは無い。

 

「そうじゃないけど、何かされでもしないと渡会さんみたいな不良が瑠璃川さんと一緒にいる訳無いじゃない」

「は?それどういう意味だよ。そもそも私は不良でも何でもないし、彩奈だって自分の意思で私のことを友達って言ってくれてんだ。ふざけるのも大概にしろ!!」

「でも中学では喧嘩しまくってたって聞いたわよ」

「誰から?」

「朝霧君よ。朝霧君って渡会さんと同じ中学だったのよね?」

 

 あの野郎、ふざけたこと言いふらしやがって。私が必要以上に怖がられてんのあいつのせいだったのかよ。

 

「喧嘩は確かにしたことあるな。でもそれは最初は向こうから手を出してきたのをやり返しただけ。つまり正当防衛なんだよ」

「それも信じられないわね。兎に角、瑠璃川さん怖がってるだろうから、ちょっかいかけるのをやめて欲しいってだけ。瑠璃川さんはあなたが周りにいるせいで他のクラスメイトとも交流できてないみたいだし」

「そんなこと……知らねぇよ。私は彩奈の友達だし、離れる気は無い」

 

 確かに考えてみれば彩奈に友達がいないのは、私が近くにいるせいかもしれない。私が離れればきっと彩奈にも沢山の友達が出来るだろう。だけど私は、初めて出来た友達という大切な繋がりを失いたくなかったんだ。

 

 段々と、生徒達の喧騒が大きくなっていく。正面にあるのは目的地である購買。多くの生徒がお昼の食糧を求めてここに集っている。私はこの人混みがあまり好きでは無いので、いつもは家から持ってきているのだが……

 

「っていつまで着いてくんだよ。さっきので会話は終わっただろ」

 

 私は振り返りながら、購買についたのにも関わらずどこか気まずそうに後ろを着いてきていた冴木さんに向かって声を出した。

 

「私も購買でご飯を買うのよ!」

 

 冴木さんの委員長らしさがまるで無い逆ギレ。

 一体何がしたいんだこいつは。とりあえずこんなのはさっさと無視して、早いとこ飯を買って部室に急ごう。

 

 私は並べられたパンやおにぎり、弁当などを見ながら何を食べようか悩む。普段はパンを買い溜めしている為、こういう日は別のを食べてみようかとも思ってしまうし、何にも変えないで普通にパンを食べようかとも思う。どちらも良いが……さて、どうしよう。

 

 彩奈も弁当だし、私も弁当にしようかな。パンやおにぎりに比べると少々割高だが、憧れのおかずの交換なんかも出来るかもしれない。そして私は、唐揚げ弁当を手に取って会計の方へと行こうとしたところで、レジの前で財布を取り出してあたふたしている冴木さんの姿を見つけてしまう。どうやらお金が足りないようだ。

 

(こいつまじで何やってんだ)

 

「それ私が払うから、私のと一緒に会計してくれ」

 

 こんなしょうもないごたごたで長いこと彩奈を待たせてしまうのが申し訳ないので、私がお金をさっさと出すことにした。

 

「えっ……どうして」

「私は彩奈待たせてるから、こんなことで時間取られたくないんだよ」

「あ、ありがとう。お金は後で返「いらん。貸し1つだ」わ、分かったわよ」

 

 会計を終わらせた私は、購買部を出てから後ろを振り向き、冴木さんが買おうとしていた惣菜パンを渡す。

 

「私は不良じゃないし、彩奈とは普通に友達だ。次同じようなことで口出してきたらぶっ飛ばすからな」

 

 冴木さんの返事を聞かずに、彩奈の待つ部室へ向かっていつものペースで歩き始めた。

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