えぇぇぇぇ!私がトリコさんの相棒に!?   作:風神・雷神

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昔ボツにしたやつです。

不定期更新です。たまに更新します。


一品目

誰かが言った。

 

全身の肉が、すべて舌の上でとろける霜降り状態の獣がいると。

 

ぷりぷりの身がずっしりつまったオマール海老やタラバガニの身が一年中生る木があると。

 

琥珀色の上質なブランデーが湧き出る泉があると。

 

 

人々は魅せられる!

 

未知なる美味に!!

 

 

世はグルメ時代。

 

未知なる味を探求する時代。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拝啓、親愛なるお母様、お父様。あなた方を残し、先に死に逝く私をお許しください。私は、これからいつ死んでもおかしくない特定危険地域に足を踏み入れるため、この手紙を残します。料理人になると言った私を止めず、陰ながらサポートしてくれたことは、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。直接感謝の言葉を伝えておけば良かったと思っています。私が死んだ後も長生きしてください。二人の幸せを切に願っています。最愛の娘より……。

 

 

 

 

私は揺れる船の中で、これから死んでもおかしくない場所に行くため、手帳に別れの言葉を書き記す。手が震え、書いている字がぐにゃぐにゃになったけど仕方がない。もしかしたら、今回の生物調査が私の最後になるかもしれないからだ。仕事用の手帳が遺書になってしまったがまあいいでしょう。

 

 

書き終えた私はそっと手帳を閉じ、持って来たリュックに手帳を入れると同じタイミングで声がかかる。

 

 

「おい、もうすぐ島に着くぞ。準備しろよ!」

 

「は、はい!」

 

声に答えるように立ち上がり、膝の上に載せていたリュックを背負って声の主がいる船の先頭へ向かう。

 

そこには、不敵な笑みを浮かべ向かっている島を見ている彼の姿があった。

 

そう、彼こそ伝説の美食屋と呼ばれ、世界に約30万種類の食材が存在するが、その2%を発見したと言われる男。

 

美食屋トリコ。

 

 

…なぜ、そんな凄い人と一緒に向かっているかと言うと、話は数日前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ン~~~~~わかってると思うんだけどサァあ。シェフ……」

 

勤務先であるホテルグルメの、如何にも高級そうな絵や机がある会議室で、料理長である私に、おかっぱの髪型とサングラスが特徴的な、IGO事務局長のウーメン梅田さんが飽きれたように聞いてくる。

 

 

「今度のグルメパーリーには各国の首脳を始め、うちの会長も出席するワケよ。白毛のシンデレラ牛のヒレステーキてアンタ……。庶民が飲み会してんじゃないんだからサァ。もっとインパクトが欲しいワケよインパクトが!」

 

 

「い、インパクトですか……。一応うちで用意できる最高のお肉なんですけど……。」

 

インパクトって……。一様そのお肉は、一キロ数万円からの高級品。庶民の私からしたら十分インパクトはあると思うんですけど……。でも、そんなお肉を庶民の飲み会扱い。どれだけの高級品をこの人は用意させようと思ってるのだろうか。庶民の私には到底わからない。

 

そんな無茶難題を出してくるウメーン梅田さんの口から、とんでもない生物の名前が飛び出していた。

 

 

「ガララワニの肉を、出せないの?」

 

 

私の隣で一緒に話を聞いていた、ホテルグルメの総支配人が驚きのあまり声を上げる。

 

「ガ…ララワニ…!?世界最高ランクのワニ肉ですよ!?」

 

私も十分驚いているけど、断言して言える。その食材はうちでは容易できない。

 

何故なら……。

 

「お言葉ですが局長、それは無理な注文です。調理ではなく、食材の調達がです…!」

 

そう。そもそも食材の仕入れが困難なのである。ナイス総支配人!立場が上の人にちゃんと無理だって言ってくれた。私、上の立場の人に断ったりするの苦手だから助かった。例えるなら、職場の上司に、「これお願いね」って言われて渡された書類とか断れず、後で断ればよかったって思いながら、まとめちゃうタイプの人間だから。よかった。

 

「確かに、ガララワニの捕獲レベルは5。戦車を要請してもはたして仕留められるかどうか…」

 

梅田さんは、ン~~と腕を組んで数秒悩むと、考えが決まったのか話し始めた。

 

 

「仕方ないわね…。多少お金はかかるケド…。美食屋に依頼しましょう」

 

その言葉を聞くと、私と隣にいた総支配人は立ち上がる。

 

「ガララワニ級を仕留める美食屋となると……」

 

そう、そんな化け物級を仕留められる人と言えばあの人しか思いつかない。

 

「ト、トリコですか!!」

 

私の問い掛けに梅田さんはソウねと言って静かに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

某湖の岸辺

 

「報酬は──」

 

「キロ単価20万円で500キロの個体なら、1億円で引き取らせて頂きます」

 

いつもコックコートばかり着ていた為、数年ぶりに就活してた時に着ていたスーツに袖を通し、数メートル先で釣りをしている男の問い掛けに言葉を返す。

 

本当なら、別の人が交渉に行ってくれる予定だったが、どうしても失敗したくないオーナーが料理長である私に任せたのだ。なぜ、私を選んだかは概ね、依頼を受けてもらえなそうになった時に、交渉材料として料理の一品や二品作ってご機嫌を取ってほしいなんて意味なのだろう。

 

この人が…トリコさん…。

 

青い髪に岩に腰掛け、金属の棒を持ち、湖に太いロープのようなものを垂らして、釣りをしているように思える。

 

もし釣りをしているとしたら、どれだけ大きい魚を釣ろうとしてるんだろうか。

 

私の答えを聞くと、横に置いてあるクーラーボックスから、食材やお酒を取り出しものの数秒で食べ終えたと思えば、葉巻樹の枝を指パッチンで火をつけ吸うと、後ろにいる私に振り向く。

 

急に後ろを向いたトリコさんと目が合い、こちらをジッと見てくる。

 

凄い、指パッチンで火がつくなんて……。って、違う。今それどころじゃない。だ、大丈夫。失礼のないように家でホコリ被ってたホテルグルメの入社時に来てたスーツを引っ張り出してきたんだから。大丈夫なはずだよね……。

 

それに、依頼を受けてくれないと凄い困るから、最悪ホテルの料理食べ放題という切り札を使うことになるかもしれない。何としても受けて貰わないと。

 

へ、返答は…。

 

「・・・ん?何だ?……誰だ、お前?」

 

今まで私の存在に今気づいて無かったの!?嘘でしょ。

 

てか、今さっきまで会話してたのに全然内容聞いてなかったんですか…。

 

私みたいな、三流料理人は眼中に無いと言いたいんですかね。

 

トリコさんは本当に聞いていなかったらしく、もう一度今話したことや今回利用するお客様はIGOのお偉いさんだと伝える。

 

今回、一般のお客さんじゃないから、簡単には断れることはない……はず。

 

そんな心配しなくても良かったと思うぐらいに話は進み、生け捕りで最初の報酬の倍払えば、依頼を受けてくれると言ってくれた。

 

ああ、よかった。なんか生け捕りで報酬倍になっちゃったけど仕方ない。後で、総支配人に連絡入れないと。

 

依頼を受けてくれると聞いて、胸に手を当て深く息を吐いて安堵する。

 

「よ、よかったぁ」

 

安堵する私を背にトリコさんは、座っていた岩から立ち上がると、私は彼の体格に驚く。

 

座っていたから、わからなかったけど、この人…身長たっか……。

 

まず、身長が2メートルは軽く超えているのが分かった。私の身長では彼のお腹ほどしか届かない。一般的な男性の平均身長が170cmだから、余裕に平均を超えていた。一体どんな生活すれば、そんな体になるのだろうか。

 

身長もそうだが、体格にも驚かされる。

 

…腕の太さ…私のウエストぐらいあるんじゃないかな……。足なんてまるで丸太。ほんとにこの人は、私と同じ人間なんですかね…。

 

「お、きたか!?」

 

トリコさんがそう言って竿を引くと、湖から水しぶきと共に巨大な魚が飛び上がってきた。

 

ザ、ザリガニフィッシュ!しかも特大サイズ!?

 

釣りあげられた巨大魚に驚いていると、今度は空から巨大な鳥が魚を狙って鷲掴みにする。

 

そんなことは、お構いなしにトリコさんは掴んできた鳥ごと地面に叩きつけてしまった。

 

「嘘でしょ……」

 

なんて力業。

 

に、人間業じゃない……。

 

関心していると教えてもらったんですが、今使っていた小型のクジラも一本釣りできる程の耐久力を持ったお手製の釣り竿を、ガララワニは割り箸の様にへし折ってしまうらしい。

 

さ、さようでございますか…。

 

そんな恐ろしい生物を今回相手にする。

 

そんな事実が、私の心の中にある疑問を浮かべる。

 

私は基本厨房でしか食材を見たことが無かった。そんな危険とは程遠い環境で料理人として勤めてきた。野生で生きる食材を生で見たことが無い。

 

……このままでいいのだろうか。

 

私の中にそんな疑問が生まれた。

 

一流の料理人を目指してるのに、食材のこと知らないままでいいのかな……。

 

ふと浮かんだ疑問に悩んでいると、トリコさんが使っていた釣り竿を渡してきた。

 

「ほらよ、お前も釣るか?」

 

「ふぇ!!あ、どうも……って、コレ重いんですけど!?」

 

急に渡されたから受け取っちゃったけど、なんで私まで釣りする流れになってるんですか。まさか、依頼受けたんだから付き合えってこと。しかも、メチャクチャ重いし。全然、持ち上がらないんですけど…。

 

ん?ちょっと待って…。

 

確か、トリコさんが持っていた釣り竿は確か一本だったはず、どうしてトリコさんと私が一本ずつ持ってるんでしょうか。

 

一本だった釣り竿が二本に。意味が分かると怖い話と思ってしまうが、話はもっと単純であった。

 

ま、まさか…。

 

「あの……。まさか、釣り竿折っちゃったんですか?あのガララワニも簡単にへし折っちゃうこの竿」

 

「そうだけど?てか、お前名前何てんだ?」

 

私はこの位当然と言いたげな彼に、頬を引きつらせ笑う事しか出来なかったです。

 

「あはは…私、小雪って言います…」

 

本当に同じ人間とは思えないよ……。

 

思えばこれが、トリコさんと初めての出会いでした……。

 

 

 

 

 

 

 

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