MAD(完結)   作:稗田之蛙

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 ……『貴女が一緒に走る夢を諦めたからです』、ッテ?

 

 ははーん、オトナのくせにずいぶん乙女チックな物言いをするんだね。で? それが答えだっていうのサ。それだったらワタシのせいって事になるんだけど。ちょーっと酷くナイ?

 

 ……ま、でもなるほど。

 その事を考慮に入れてワタシも与太話を語ってみるとするヨ。

 

 ともかくワタシが妹を巻き戻してなかったらさ、そもそも妹が不合格になるなんて事はなかったんだろうしサ。

 つまり――そうだね。ソッチの言を信じるなら、たぶん――ワタシが一緒に走るのを諦めなければよかったんだっけ?

 

 

 

「なぁに、ラウディーお姉ちゃん」

 

 そうなれば、ワタシは始業式まで時間が巻き戻るんだろうサ。トレセン学園目指すのやめる、って言い出す直前にね。

 ワオ、おとくだね? まだまだ華の12歳を楽しめるわけさ。この目覚まし時計、ほんと便利だねぇ。もう一つくれない? だめ?

 

 ……話が逸れたね。

「お姉ちゃん、ヤッパリ、エナーとトレセン学園に行きたいなって……」

 ワタシは妹に対してハッキリそういうべきだったんだろうね。

「もちろん……そうだね。双子のウマ娘だって走る事を証明する為に、一緒に行こう?」

 妹はさ、そう言ってワタシに笑いかけてくれたんだ。やっぱ、ワタシだけかと思ったけど妹も気にしてたのかもしれないね。

 

 ま、中身の無い話は続くものさ。

 ワタシとお父さんは、さっきも言った通りあんまり仲良くなかった。ウマが合わない。

 どーにも相性悪くてね――いや、決して悪いお父さんじゃないんだ。なに不自由なくワタシ達の事養ってくれるし、たぶん、妹はお父さん似だったんだろうね……生真面目すぎて、ワタシにはちょっと合わないかな……。

 

「トレセン学園に入学するつもりか」

「うん、そりゃー、エナーと一緒にトレセン学園入学するのが夢だからさー?」

 ワタシはある日、お父さんにそう話しかけられたんだ。ワタシはバカだけど、受験勉強を疎かにした事なんて一度もなかった。

「……やめておけ、お前には向いてない」

 ひどい父親だと思わな―い? 娘の夢を破砕しようとするなんてさー。シュレッダーも真っ青ダヨ☆

 

 そのまま殴りかからなかったのは、たぶん、お母さんや妹がお父さんの事を尊敬してたからなんだろう。

 ワタシもさ、お父さんの事が嫌いじゃなかった。

「やってみないと分からないって」

「……お前が合格すると思ってるのか?」

 そう言われてワタシは言い淀んだね。こうも頭ごなしに娘の夢を否定するもんか、って。それでも二児の父親かよー。もう少し、こう言い方あるジャン?

「うん……ま、やってみないと分かんないかな……」

 ワタシはそんな当たり障りのない答えを返しタサ。そんで、まぁ、机の方に向き直ってノーダメージな素振り。キイテマセンヨー。

「もしお前が不合格でも、後悔はしないか?」

「ちょっと、なんでそんな言い方――」

「二人一緒に合格するのが理想か? ならなおさらだ。片方不合格だったとして、それでどうするんだ?」

 ワタシは、そこでようやく気付いたんだ。

「妹が合格して、お前が不合格だったとして。それでどうする?」

「……それは」

「もしそうだとしても、片割れの不合格を糧に励んでくれなければ話にならん」

「……」

 ワタシはどう答えたらいいんだろう、ッテネ。まるで「お前には全く期待してない」って、そんな言い方に感じた。

「……分かったヨ」

 ドウセ、お父さんは不出来なワタシになんて期待しなかったんだろうね。ソリャー、自分似の頭の良い妹がいて、そっちに期待したくなる気持ちは分かるけどサ。

 

「……」

 ワタシはさ、そのお父さんの言い草が気に食わなかったんだ。だからこう言ってやったよ。

「じゃーあー」

「ワタシがエナーよりいい点とったら、文句ないんだね?」

 そんな小馬鹿にした言い方したらさ、流石に怒るかな? って思ったんだけど……まーったく動じてなかったナァ! あの人ったら!! 

 でもま、二年近くもやり直したらさすがにアタシだって頭もよくなってるわけだよ――ナンタッテ、そん時は14歳くらいになってるワケじゃん? ワオ! 14歳の、頼れるお姉ちゃん!! カッコイイネ!

 

「……そうか。そこまで言い切れるなら、いい」

 お父さんはそれだけ言って、また部屋に引きこもっちゃったよ。なーんか納得いかなそうな顔してたけど……ま、どうでもいいか!

 ひどい父親の態度にいちいち拘っててもしょうがないじゃん? アンタもそう思わない? それにさ――受験の時の話だけどね……。

「お姉ちゃん!」

 エナーは正門の前で待ってくれてたんだヨ。で、ワタシを見つけると走り出してたネ。もうさ、ワタシを見つけた時のあの子の顔ったらサ! もうキラキラしまくっててさ。一緒に受験受けられる事がさ、楽しみミタイで~……!

 

 ……本当にさ。あの顔、忘れられない。

 

「お姉ちゃん、受験票持った? ハンカチは? 忘れ物ない?」

「うへ~……エナーがママみたいダヨ」

「だって心配だもん! お姉ちゃんったら調子に乗る時あるし!」

「ネーヨ。ワタシは天才だからサ~」

 そんなバカな事を言ってさ、妹に叱られながら一緒に正門をくぐってたネ。ま、実際天才だったんだけどネ。14歳のお姉ちゃんですから?

 

 そうさ、ワタシが勉学についちゃ不安無いと仮定してさ――脚も早いし。これはもう余裕だと思ったね! 今度こそ、二人で一緒に合格できると思ってたんだ。

「お姉ちゃん」

「ナニ?」

 エナーが耳元で囁いてきたんだ。

「……頑張ってね」

 エナーはさ、不安だったのかな。ワタシが不合格になるんじゃないかって、思ってんのかな?

「ハハ! 言われなくても!」

 そんなイトシイ妹の肩をポンと叩いて、笑いかけた。

「お姉ちゃん……」

「ウン?」

「……私、受験しないんだ」

 

 

 

 ウン、イヤ……チョットマッテテ……なんでこうなるか今考えてるから。

 

 

 ……アァ、ソウダ。ソウダ。

 思いついたヨ。そう、タッタ今、思い出した。

「なんで、そんな事いうの?」

 ワタシは混乱して、それで思わず、こう聞いてた。エナーってばさ、ちょっと困った顔しながらサ。

「えっと……受験料とか……色々かかるし……」

 妹ってさ、なんかいっつも自分の事より他人の事ばっかり気にするっていうかサ。まぁそういうトコが好きなんだケド!

 でも……そんな気遣わなくてもいーのにネ? ほら、えぇっと、お金ならお父さんがたくさん、稼いできてくれてる!!

 

 だから、えっと……ウン、だからそういう話になるのはおかしいんだ。

「なんで!!!! お父さんやお母さんはエナーがトレセン学園に行くのは賛成だったじゃん!!! ナンデ!?!!」

「お姉ちゃん」

 ワタシはさ、そんな事言われると思ってなくて。とにかく理由を知りたいって思ってて。で、それを問い詰めてたワケサ。

「私だって……本当は一緒に行きたいよ」

「だったらなんで?」

 そしたらさ、妹はこう答えたのサ。

「……えっと、もし片方が落ちて、片方が受かったら……どう思う?」

「私達どっちも受かるさ!! 模擬は完璧だったでしょ!? お姉ちゃんの方が得点上ですらあったでしょッッッッ!!!!!」

「そういう事じゃなくて……」

 

 あれ、おかしいな……おかしい……なんだか話がグチャグチャになってるね……?

 

 

「もしお姉ちゃんが合格して、私が不合格だったら……私、立ち直れないと思う」

「あ、えっと……」

 あー、そっか。ワタシは混乱してたから。そっかー。ようやく思い出したよ。

「そう、ダネ。確かに……それは……」

 そうだヨ、そうだよね。だってさ、二人とも一緒に、ずっとずっと。それこそ小学一年生の時から「トレセンいこうね!」って六年間頑張ってきたもんね。

「だから、お姉ちゃんガンバッテね」

 ……イヤイヤイヤ、やっぱりさー。ワタシは納得できなかった。だって、そう、8年間だっけ? ーーまぁたぶんそんくらいなんじゃないの。妹とさ、一緒に頑張ってきたじゃん。二人でトレセン学園目指そうって、ずっとずっと言い続けてたじゃん。だから、それじゃあ、意味ないんだよ。

 

 ワタシさ、その時に貰った目覚まし時計を持ち出して、まーた歩道橋に走ったんだよ。

「お姉ちゃん!」

 たぶんね、そんな呼びかけもあるんじゃないかって思う。

 まー☆ 全部仕切り直せばいいじゃん。なんたって、ワタシには超スーパーウルトラすごい不思議な道具が手元にある! いくらでもシコウはやり直せるもの。

 

 

 

 そう思ってね。また、fly high。fly high。

 ま、そんなハイテンションな話さ。そうでもないとやってられないよね? ウン。こんな話を他人にしてるだなんて……気が狂ってると自分でも思うよ。

 

 そーんな事はどうでもいいんだよ。最終的にゃあ、ハッピーエンディングが待ち受けてるはずだもの!!

 

 ところでさ、さっきみたいに一言教えてもらうと、たぶん、きっとこのシコウはまとまると思う。

 なんだって妹はさー、受験しなかったんだろうね? だってさ、お父さんもお母さんもさ、妹の事大好きでさ。「憧れのトレセン学園の受験を受けさせない!」なんてするはずがないんだ。

 これは、なにかきっと大事件があったに違いないと思うんだけどね? どう思う?

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  • 「貴女は父親と向き合うべきです」
  • 「貴女は現実と向き合うべきです」
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