ごすずんとエアちゃんは共に救われるべき   作:ルビコニアンソルトピラー

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武装採掘艦護衛はカットだ621


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 “壁越え”──とうとうその時がやってきた。

 ベイラム側の主戦力はレッドガン部隊のAC。随伴MTはレッドガンから十機、ベイラム本社から四機の総十四機。

 

 ACは二機。

 ダム襲撃の僚機だったG4とG5のタッグだ。

 

 そこに自分──G13レイヴンを加えた、たった三機が戦力の中核となる。

 

 乗機LOADER4は今回、この任務に特化してアセンブルしてある。

 右手は素手(NOT EQUIPPED)。左手はSG-027 ZIMMERMAN(長射程ショットガン)。右肩に同じものを載せ、左肩にはPB-033M ASHMEAD(パイルバンカー)。コア拡張には前回と違い、空間設置型パルス障壁『パルスプロテクション』を載せてある。脚部はタンクを止めて重量逆関節だ。

 

 MTはAC一機につき七機つく。ただし、急遽参加することになったG13には付かない。

 

 G5は社外の人間であるハンドラー・ウォルターの傭兵に「壁越え」の情報を漏らした咎で謹慎処分を受けるところだったが、当の二人が作戦に参加することで帳尻を合わせたことになっている。

 外様の指揮官としてベイラム本社から疎まれているミシガンではなく、叩き上げの副長、G2ナイルが上手くとりなしたそうだ。

 

 目的地点の「壁」まで残り数キロというところで、輸送機からACとMT部隊が投下される。

 鈍重な航空機に乗ったままでは対空砲火で容易に全滅してしまうため、ここからは雪原を機体の足で進んでいくしかない。

 

 『野良犬と二度も同じ現場とはな。話は聞いた。ああまでして「壁越え」に拘る理由は知らねぇが、「壁」を落とすのは俺たちレッドガンだ。野良犬は野良犬らしく、俺たちの食い残しでも漁ってろ』

 

 200メートルほど先行するヘッドブリンガーから通信が届く。

 殺意の籠った声だが、流石に戦場だ。感情を暴走させることなく、視線は遠くに聳える「壁」を真っ直ぐに睨んでいる。

 

 まだACもパイロットも通常巡航モードだというのに、見上げた集中力だ。たとえ「壁」からの超遠距離砲撃が飛んできたとしても躱せるだろう。

 

 だからこそ──()()()()()()()()()が容易に刺さる。

 

 『メインシステム、戦闘モード起動』

 

 COMの機械音声は、自分にしか聞こえない。

 右肩に背負っていたショットガンを右手に装備し、歩行からブースト移動に切り替えて雪上を滑って静かに距離を詰めていく。

 

 前を歩くヘッドブリンガーも、その隣を進むキャノンヘッドも、僚機の一つが敵もいないのに戦闘態勢を取ったことに気付かない。

 

 『この前の借りを返してえのは山々だが、そんなことを言ってる余裕はねえ。お前の吠え面を拝むのはまた今度に──ッ!』 

 

 キャノンヘッドのコアパーツ『天槍』の広く頑強そうな背中に向けて、至近距離から両手のショットガンをぶっ放した。

 ACSが最低限しか稼働していない通常巡行モードで攻撃を喰らうと、ACSは機体の損傷を最小限にしようと全力で計算を行い──容易に処理限界を迎える。

 

 そうなってしまえば、姿勢制御によるダメージコントロールも出来なくなる。

 

 LOADER4の左肩換装ユニットが動き、ショットガンとパイルバンカーの位置を入れ替える。

 そして撃鉄を起こし──炸薬の爆発を用いた驚異的な速度と威力を以て射出された鉄杭が、キャノンヘッドのコアを完膚なきまでに貫いた。

 

 金属擦過音と共に抜かれた杭から、血のようなオイルが垂れる。

 

 完全戦闘向けにリビルドされたヘッドパーツのカメラが死骸のように動かなくなったACを舐め、事前に丹念に計画した通りの位置を貫通していることを確認した。

 

 『テメエ、状況分かってんのか!?』

 『G13! 何をしている!』

 

 無線を通じてイグアスとミシガンが同時に吼える。

 ヘッドパーツのシェードを展開し、ヘッドブリンガーに向けてABを吹かしながら、おや、と思った。今まさに襲い掛かられているイグアスはともかく、指揮所にいるミシガンはもっと罵詈雑言を並べそうなものなのだが、と。

 

 そして──作業のようにヘッドブリンガーを撃破する。

 両手ショットガンにパイルバンカーというアセンブルは、今回初めて使う/最も使い慣れたものだ。この構成で“父”と“友人”をも打倒した。今更、()()()()()イグアスに負けるわけがない。

 

 『野良犬──!!』

 

 MELANDER C3の所定位置にパイルバンカーを撃ち込み、ヘッドブリンガーを機能停止させる。

 

 あとはこちらを取り囲むベイラムのMT十数体と──戦闘音を察知してこちらに近づいてくる解放戦線の部隊を片付けるだけ。

 

 否──「あとは」「だけ」、ではない。

 

 「まずは」、だ。

 

 

 ◇

 

 

 この想定外にも程がある状況でG13──一人の傭兵に吠え立てるほど、G1ミシガンという人間の経験は浅くない。

 彼はG13レイヴンの異常行動に気付いた直後には、端末を叩いて彼の飼い主を呼び出していた。

 

 『……説明してもらおうか、ハンドラー・ウォルター』

 

 通信越しでも熱を感じるほどの怒気を滲ませるミシガンだが、怒鳴りたてはしない。

 部下はともかく、ウォルターを相手にその手の分かりやすい威圧や威厳は不要だった。

 

 『あいつは「レッドガンでは壁を越えられない」と判断したんだ。だが、まさかお前たちも本社に「無理なので諦めて帰ってきました」とは報告できまい』

 

 舐めるな、と吼えたいところだが、ミシガンは口を噤む。

 事実、G4とG5の二名に少数のMT部隊では、「壁」からの多重砲撃と波のように押し寄せるMT、そして隊長機のBAWS四脚MTによる物量で押し潰されていただろう。

 

 ベイラム本社にとって、今回の作戦はミシガンへの嫌がらせか、見せしめだ。作戦の成功に大した拘りはない。でなければ、そもそもこんな少数で突っ込めなどとは言わない。

 

 『ふん。それでどうするつもりだ? ご丁寧にMTまで全滅させた挙句、救助隊のところまで護衛してくれたようだが、お陰で「壁」は完全に態勢を整えたぞ』

 

 ミシガンとウォルターが見つめる観測機からの映像には、MTやACの乗員をウォルターの手配した救助隊のところまで随伴して護衛し、「壁」からの砲撃をパルスプロテクションを展開して防ぐLOADER4──レイヴンの活躍が映っていた。

 

 列を成して歩く人間を流星群のような弾雨から、時にその機体を盾にして守る姿はまるでヒーローだ。

 守っている人間は例外なく彼自身が撃破した機体の搭乗者だったことに目を瞑れば。

 

 『問題ない。あいつの読みが正しければ、だが』

 

 篤い信頼を滲ませるウォルターの言葉に、ミシガンは愉快そうに口角を吊り上げた。

 

 『正しくなかった場合のフォローは貴様の仕事、というわけか。今回の犬は一段と手が焼けるようだな。あのハンドラー・ウォルターが手綱に振り回されている』

 『あぁ。……だが、悪くはない』

 

 

 

 

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