赤い詐欺   作:ソウクイ

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第1話

 

気付くと彼は生まれ変わっていた。

 

二度めの人生の生まれは…前世で何か悪いことをしたのかと悩まされる様な最底辺な環境、倫理、立場、保護者?全てがアウトなスリーアウト環境、どうにか最悪な環境から何とか逃走したが初めて世間を見て知って、また前世で何か悪いことをしたのかと悩まされる羽目になる。生まれだけでなく世界も最悪かと思わされた。

 

月に人が住み、地球を飛び立つ宇宙船は頻繁にあり、極めつけに宇宙に浮かぶコロニーみたいなモノに人が住んでいる。純粋に未来に転生したのか…それか、前世であったガンダム世界に転生したのかと疑う。彼の見たガンダム作品では人の命がとても儚い。住んでる場所ごと物理的に消滅する事も普通にあり得る世界、暮らすと考えると最悪な部類なガンダム世界なのかと。

 

歴史の年号は知ってるシリーズのどれとも違うが、色々とガンダム世界ぽく思える情報がある。

 

まずこの世界独特の存在。

 

ナチュラルとコーディネイター。

 

大雑把に言えばナチュラルは極自然に産まれた普通の人。コーディネーターは産まれる前に遺伝子に細工をされた所謂、改造人間。ガンダムで言えば強化人間。

 

ガンダムで強化人間と言えば戦争で倫理観が欠落していた時に産み出された産物。なのにコーディネイター(強化人間)はトチ狂ってるのか人類約150億の中で約五億コーディネイターは居る。一応、国際法でコーディネイターを産み出すことを禁止されたりと、この世界でも遺伝子改造は倫理的にアウトだという認識があるのに。

 

倫理的にアウトな上、コーディネイターは能力が平均的に高く能力の高さでナチュラルの芸術、科学、様々な分野の仕事を奪っていく。能力的な格差からナチュラルを見下すコーディネイターは多い。さらにコーディネイターは費用がかかり富裕層しかつくれない。

 

倫理的な忌避感

能力的な軋轢

貧富の差の象徴

 

ガンダムで言えばスペースノイドとアースノイドの関係に+して、能力的にニュータイプとオールドタイプか。

 

ナチュラル、コーディネイター両者の関係が良いわけがない。

 

元から反コーディネイターのテロ行為などニュースに幾つも流れていたが、悪かった関係が致命的に悪化した原因と知られてるのは、ある時を境に猛威を奮った新種のウイルス性風邪。多くの被害が出たが、この風邪に対してコーディネイターがワクチンを完成させた事により終息し、お互いの関係は余計に悪化したと言われていた。

 

ワクチンの開発をしてくれたなら普通なら良くなると思えるが、このウイルス風邪、コーディネイターの犠牲者がほぼ居なかった。コーディネイターは病気に対して抵抗力が強いから発症しなかったとも納得できる。しかし言い換えると病気に強いから必要もなく医療はコーディネイターが遅れている分野だった。なのにワクチンの開発には真っ先に成功…。

 

何で遅れてる分野でいきなり成果を出せたのか。コーディネイターだけ殆ど発症しなかったのは、本当に病気に強いという理由だけなのか?

 

ウイルスそのものをコーディネイターが造ったから、コーディネイターは無事でワクチンも直ぐに出来たと疑惑を持たれる。 元から新種のウイルスが人工的なウイルスだという疑いもあり、さらにこのウイルス発生の少し前に最初のコーディネイターのジョージ・グレンがナチュラルの子供にジョージ・グレンが暗殺されている。報復という動機もあった。

 

陰謀論だが状況的に怪しいことも否定できない。

 

ナチュラルからすればコーディネイターに助けられたでなく攻撃されたという認識になる。コーディネイターからすれば助けたのに恩知らずとなった。

 

そうして両者の関係は致命的となり反コーディネイターの迫害は加速し、相当の数のコーディネイターがナチュラルと離れるためか宇宙の工場コロニー郡、デザイン的に耐久に不安感がある砂時計みたいなプラントに移り住むこになる。プラントは多数の国が資金を出しあってコーディネーターが建造。当然だが持ち主は資金を提供した国で、プラントのコーディネイターの立場は悪く言えば住み込みの労働者か従業員。

 

そんなプラントのコーディネイターが反乱を起こしプラントを乗っ取った。

 

理由はナチュラルの下に居るのが嫌だったとも、プラントのエネルギー施設の破壊等のテロや締め付けなどで我慢出来なくなったとも言われる。プラントのコーディネーターは自治権を要求、当然そんなのが認められるわけがなく乗っ取りの鎮圧が行われる事になる。プラントの本来の持ち主の理事国との紛争が勃発。

 

この紛争で彼にガンダム世界と遂に確信させられる情報があった。

 

MS(モビルスーツ)

ガンダム世界の主力兵器の代名詞

 

プラントが戦争にMSという人型の兵器を出す。 このプラントのMSの外見もザクに似てる。国連の代わりに連合というのが。此処まで知って初代ガンダムを知っていれば連合が連邦、プラントがジオン擬きか。ジオン擬きからザクに見えるMSが出たらガンダム関連の世界と確信しても仕方ない。

 

彼がガンダム世界と確信した後、プラントがジオンみたいなモノだと認識した後。戦争が起きてるのは宇宙で彼は平和な地球に居たが、急ぎ宇宙に逃避した。

 

宇宙が戦場で地球は戦場ではない。普通逃避先として宇宙は可笑しいが…他のガンダム作品をおぼえていれば、地球の方が危険地帯と思うだろう。

 

いや普通にガンダムと関係なく考えても…プラントはコーディネーターの能力とMSで圧勝してるが、ジオンと同じでプラントと連合には国力差が有りすぎる。質だけで物量差で勝つのは厳しい。流石に普通に戦うだけで勝てるともプラントも思わない筈だ。プラントが血のバレンタイン、核で破壊されたユニウスセブンの報復も望んでるという理由もある。ガンダムを知らなくてもプラントは報復と物量差をひっくり返す為に敵の本拠地の地球になにかをする可能性が高いと判断できる。例えば……ジオンのコロニー落としみたいな事を、

コロニー落としはしなかった。

ある意味でもった質が悪いモノを落とした。

 

落としたのはニュートロンジャマー(NJ)

 

 

効果としてはレーダーを阻害する。ジオンで言えばミノフスキー粒子に相当する。いやレーダーへの障害は副作用でしかなく本来の機能は核エネルギーを使えなくすること。

 

この世界の地球では核動力は原子力発電は勿論、自動車に使うぐらいメジャーな動力、コーディネーターにしても狂気的な世界過ぎないだろうか。

 

もしも、そんな核動力が主体の地球上に核動力を止めてしまうNJなんてモノを地球に投下すれば子供でもどうなるかわかる。わかる筈なのにNJが投下される。それも戦ってる国だけでなく地球全域に、プラントに食糧を輸入してる中立国も巻き込んだ。

 

どんな拡散機能なのか少数で地球全土がNJの影響下。投下されたNJは削岩機能もあり地下に埋没。地下に埋没したNJの装置を取り除くのは困難。装置の動力もどうなってるのか時間が経っても拡散が止まらない。地球全土で何時まで続くかわからない主要エネルギーの喪失に陥った。

 

この世界では核が主要な動力。

 

ガソリンが突然使えなくなったと想像すれば良いか。ガソリンが無ければ車も動かない。全てのモノは大抵車、トラック等で運ばれてくる。生活必需品、食料品などが届かない。

 

電気ガス水道も使えなくなるか、発展した文明ではエネルギーは血液、NJ投下後は人体で言えば心臓が止まり血液が止まった状態。血液が止まれば身体は…壊死するしかない。

 

地球のエネルギー事情は破滅、経済の混乱、物流が止まり食料不足で飢餓からの餓死の発生、医療機関の麻痺、それだけでなくレーダーも駄目になり民間旅客機は多数墜落。それが地球全土、特にプラントの敵でもなかった国も、友好関係の中立国も、地上に住んでたコーディネーターも、全てを巻き込み地獄を産み出した。

 

経済的な損失は莫大、死者も億の桁。

プラント数千万人の為に犠牲になる。

 

彼の元の世界で言えばテロリストがアメリカと戦争をするのに、無差別に総ての国に核を撃ち込むような事をした様な状態か。

 

世界人口の何割かを殺し経済の建て直しとなると何れだけ掛かるか。プラントは一部の例外はあるが地上の総ての国から深く憎悪されたろう。因みにプラント住民の認識ではこのNJは人道的な報復らしい。

 

それでもプラントと連合との戦争に中立になる国はある。国益が理由か連合に敵意があるのか。プラント側に立つ国によりプラントに食料などの輸出もある。しかし国益が理由で心情的な意味でプラントに友好国がいるとも思えない。元々コーディネーターが嫌いなナチュラルは勿論、地球に居る同じコーディネーターもNジャ(マーの地獄に巻き込まれた当事者。多かれ少なかれ被害は有った筈でプラントに友好的になるとは思えない。下手するとナチュラルより地球のコーディネーターの方がプラントを恨んでても不思議はない。

 

ほぼ全ての人類に喧嘩を売ったプラント、それでも戦争から凡そ一年。戦争はプラント側が押している形で続いている。このままプラントが勝つとも思える勢いはあるが、連合がそのまま負けるだろうか。

 

今の世界の情勢はそれで彼の話に戻ろう。

 

戦争から一年、巻き込まれる前に地球から上手く逃れた彼からすれば戦争は他人事、宇宙に退避した彼は戦争に"まだ"巻き込まれてはいなかった。

 

現在彼が居るのはオーブの資源衛星ヘリオポリス。

 

オーブはコーディネーターも国民として居る中立を宣言している国家。此まで中立であるヘリオポリス周辺は平和そのもの……ガンダム世界では中立の方が下手したら危険な場所

 

ガンダムと思わなくても、プラントは地上の全てに影響するニュートロンジャマーをぶちこんだジオン擬き国家、ガンダムのジオンに思えるプラント……連合もどう動くか……もしもの時は離れようと決めている。身軽な立場なので逃げるのに問題もない。

 

彼の職業はジャンク屋。

 

宇宙に漂うジャンク回収、良くいって廃品回収、悪く言えば盗掘と同じ様なアウトローな商売、彼としては裏に近い職に成りたかったわけでもないが、まともな生まれでない彼にはマトモな職の選択肢は無かった。

 

軍人には成れる可能性はあった。幸か不幸か強い軍人になる素養は"非常"にあったが、戦場で活躍したいという欲求もない。貴重な自由な時間も捨てたくない。何よりも戦争がありそうなガンダム世界。そう考え軍人は避けた。実際にプラントと戦争が起きたので避けた選択は間違ってない。

 

ジャンク屋として彼が何をしてるかと言うと普通には仕事をしてない。生活のためにジャンクを集める傍らでMSを作ろうとしている。折角自由に生きるなら何かしたい。どうせなら常識に囚われず好きにしたい。ガンダム世界と言えばMSだと思いプラントがMSを表に出す前から造ろうとしていたのだ。

 

プラントのMSが活躍する今のご時世ならMSは売れる商品だが、儲けが狙いでなく趣味が主体。彼の"姿を見れば趣味人だと一目でわかるだろう"。

 

類は友を呼ぶのかそんな彼の趣味に理解を示しMS開発協力をする者が何人もいる。MS開発の協力者と会うためにヘリオポリスに来ていた。

 

ヘリオポリスの宇宙港、資源コロニーだけあり船の出入りは多い。行き来する多数の船、一隻の大型の輸送艦が入る。船体にはジャンク屋連合のマークがある。ジャンク屋連合の船は何処の国だろうと受け入れないといけない特権がある。ジャンク屋はどんだけ政治力があるのか。

 

停泊した艦から二人の男が出てきた。

 

片方はこの世界に転生した彼、ジャンク屋をしながらMSが戦争の主力のこんな御時世に、趣味でMSを作ろうと世間の空気ガン無視した変人。"姿からも変人さは良くわかる"。

 

「ドレン、機体の方には問題はなかったのか?」

 

タブレットPCを持った作業着のそこら辺に居そうな特に特徴のない小太りの男性、名はドレン、でなくラルフ・タクマル。日系人の血を引くジャンク屋の技術者、MS開発を為の協力者の一人であり、同時に彼の相棒の様な立場である。

 

ラルフは溜め息を吐いた。

 

「だからラルフですってば。機体の状態ですが、前よりはマシですが…貴方の操縦は無茶なんです。折角整備したばかりなのにもうガタが出てますよ。やはり機体が貴方の操縦にはついていけてませんね」

 

「そうか、なるべく心掛けてるんだが……さらに性能を上げないとダメか」

 

「別に性能向上を目指す必要はないのでは?私達が理想とする子(MS)はある程度動ければ高い性能なんて必要ないですよね」

 

「折角理想のMSを造るのにポンコツというのも嫌だろう?」

 

「今の段階でもポンコツでありませんよ」

 

「私の様な素人の操縦についてこれないならポンコツの範囲だろう」

 

「貴方が素人なら他が素人以下ですよ……まぁ…しかし、性能が良いモノを造るのは技術者として興味あります。初めの機体は貴方専用なんですし貴方の要望は成るべく叶えたいとも思いますし。造るのに反対はしません。…ですとどうします?…さらに性能を上げるとなると、ソフトの変更だけでは不足ですね…ハードの改造はこれ以上は無茶ですし……根本的に変えないと」

 

「まぁそれも含めて教授の所に相談に行こう」

 

ラルフは嫌そうな顔をしている。

 

「…貴方も来るんですか………着いてくるのは良いんですが…いいんですが…一人で大丈夫ですよ?来るだけ意味ないですよ?」

 

終始嫌そうな顔と声、言葉に出して無いだけで露骨に思いを伝えていた。

「待っているのも暇だし行かせてもらう」

 

彼はまるで察しなかった。

いや察した上で無視してないか?

 

「えー…はい」

 

ラルフは頭が痛いと言いたげに顔を振るが彼は気にしない。港から出てラルフと共にヘリオポリスにいる自分達のMSに関わっている教授の居るガレッジに向かう。

 

其処は学校がある所で当然ながら学生達がいる。彼は【特異な外見】で学生たちに注目されるが特に気にせず歩く。学生達は彼から離れるように歩いている。ラルフも彼から離れて歩いている。知り合いと思われない距離感か。

 

「うわぁ…(なにあの格好)」

 

「(げ、離れましょうよ)」

 

五人ほどの学生の集団がまた前から来る。学生たちは彼を見て他の学生達のように関わらないように避けようとする…と思えたが…

 

「あ、ドレンさん」

 

「「「(!?)」」」

 

ラルフに学生達のなかにいた一人の少年が自分から近づく、一緒にいた学生たちは驚いている。少年は腐女子に人気そうな声と外見。声を掛けられたのはラルフ。学生ばかりのこんな所に居るのが可笑しい中年。離れて歩いても普通に怪しい人扱いだった。

 

「………」

 

少年はラルフだけでなく特徴的な見掛けの彼とも知り合いである。自分の名前が呼ばれてない事を気にしているのかジッと見られる少年。

 

少年はそれに気付いて笑いながらスミマセンとばかりに手を向け挨拶をした。どうやら意図的に無視したわけでも無いようだ。普通なら無視するだろう。良い子のようだ。

 

「ドレンでなくラルフですよキラくん」

 

「どうでしたテスト」

 

「…無視ですか。まぁ新しいosのお陰でテストは良好でしたよ。機体に掛かる負荷が二割ほど減りました。まぁそれでもテスト後にまたガタが出ましたが」

 

「まだ駄目ですかぁ」

 

「ええこの人の操縦が更に乱暴に成りましてね」

 

「私はそんな乱暴にしてる気はないんだが」

 

「あーまた操縦技術が上がったんですね。新しいOSを用意してますが、此からも上がるならソフトだけじゃなくてハード自体何とかしないと…改造ではキツいですよね?」

 

「私たちも話してました。やはり素体から変えないとダメですか……」

 

「あのちょっと、話中にスミマセン……き、キラ知り合いなのか」

 

学生の集団の中で何となく幸が薄そうな眼鏡の男子がキラに訊ねる。知り合いの前に「こんなのと」と言う副音声が聞こえる。そんな副音声が聞こえた瞬間ラルフ(小太りオッサン)と彼(外見が特異)はお互いを見た。

 

「え、うん、教授から紹介されて知り合った人たちで…その……ちょっと特殊なモノを造っててボクも協力をしてるんだ」

 

「教授から紹介…?」

 

「協力って、キラ何か危ない事をしてない!?」

 

「み、ミリアリア失礼だよ」

 

「あはは危なくなんて、うーん、危なくなんて、少しは危ない…のかな?」

 

「え、キラ、ヤバイのか?」

 

「キラに何の協力をさせてるんですか!」

 

キラの曖昧な返答に危険な事をさせてると思い少女が彼に問い詰める。友人の事がなければ関わりたくないだろう相手に、彼は苦笑しながら誤解だと言うように手を振った。

 

「いやいや、危なくないよ。ただMSの内部プログラム、OS開発で協力をして貰ってるだけだよ」

 

「も、MS?」

 

学生組はお互いに顔を見合わせた。

 

「あの、MSってプラントが戦争で使ってる奴…ですよね?」

 

「なら兵器の開発協力って事じゃ…」

 

「ぐ、軍の人なんですか。キラに兵器の開発をさせてるんですか!?」

 

MSは今まさに戦争の兵器として使われてる兵器、そんなMSの開発と考えれば、学生組は友人が兵器開発に協力してるのかと慌てた。

 

「はは私は軍人じゃない。民間人だよ」

 

「……民間人…それ…軍服のような感じが…」

 

ミリアリアは彼の服装を見ながらそう言うと、

他がなに言ってるの?みたいな反応をした。

 

彼の服装はガンダム世界のある軍人の軍服(コスプレ)。なので彼は軍人と誤解をされて失礼だとは思わない。彼は軍人だと認識されるのも仕方ないと思う。ラルフは笑いながらフォロー?をした。

 

「いやいや、君、こんな可笑しな格好をした軍人さんが居るわけないでしょう。何処の国にもこんな軍服はありませんよ」

 

「うん、そうだよ。制服だけじゃなくてヘルムとか仮面を見てよ」

 

そのキラとラルフの発言に彼の格好を改めて直視する。軍服にも見える服装、しかし赤いという派手な色合いに、彼の被った特徴的な角のあるヘルム。目を隠す仮面?

 

「た…たしかに、あ、あははは、私なに言ってるんだろ。軍の人ならそんな変、えー特徴的な格好をしませんよね。疑ってごめんなさい」

 

「全くミリアリアは何を言ってるんだよ」

 

「うん、どう考えても軍人じゃないですよね」

 

学生たちは彼が軍人ではないことは全員が簡単に信じられたようだ。服装をみて信じられてしまったようだ。彼は誤解を解くためとはいえ失礼な言い方をしたラルフとキラを見ている。二人は視線を逸らした。とにかく軍人で無いと納得されて空気は幾分か軽くなった。

 

「軍人でないなら貴方たちは…MSをなんで作るんです」

 

「あぁ造っていると言ってもMSのリサイクル品だよ」

 

「…リサイクルって、出来るんですか」

 

「私達はジャンク屋だからMSの部品を集める事はできる」

 

「ジャンク屋ですか…」

 

あまり好意的な反応でないか?

 

ジャンク屋をアウトローな職業かゴミ拾いと蔑んでるのか。それか今の回収するジャンク品は戦争で出た残骸だからか。学生のそんな様子に大人二人とも当然だと思ってるのか不快そうな様子は見せなかった。

 

「ジャンク屋の人が何でMSを、売るんですか……変なことに使われないですか」

 

MSを使った違法行為、海賊行為など危ないことを想像してるようだ。

 

「うん、変な事には……うん、少なくとも戦闘に使わせるつもりではないよ。彼に作ってもらってるOSも戦闘用じゃない」

 

変な事という部分には言葉を濁しこういった

 

「戦闘には使わないんです…ならなんに?」

 

「普通にジャンク品を集めるときの作業用じゃない?MSって本当は作業用にできたそうだし」

 

学生の出した真っ当な予想に彼は首を振った。

 

「え、違うんですか」

 

「…じゃあなんですか」

 

学生は本当は戦闘に使うのではと疑った視線を向けた。

 

「観賞用だよ」

 

「……はい?」

 

「観賞用」

 

「う、うーーーーん…もう一度、いいですか」

 

「観賞用」

 

ラルフとキラ以外の全員がなにいってんだこいつみたいな視線を向けた。

 

「観賞用…観賞用て、観賞する用?」

 

「観賞用って…熱帯魚みたいに見たりするだけ?」

 

「それであってるよ」

 

「…棚に飾る人形、フィギュアみたいなかんじですか」

 

「そうだよ」

 

「あぁ!小さいサイズのMSを作るんですね!こう膝半分ぐらいしかないぐらいの!」

 

プラモデルみたいなモノを想像してるようだ。

 

「それならOS造りを頼まないよ。プラントのMSと同じサイズぐらいだ」

 

それだとビルぐらいのサイズになる。

個人の観賞用?

 

「「「「????」」」」

 

常識的な脳では理解できない

 

「あ、OS。OSって動かすためのモノですよね!動かすなら観賞用じゃないですよね!」

 

貴方は嘘をついてる!とばかりに指を突きつける。

 

「動く所も見たいだろ。それと動くなら良く動いてくれた方が見映えが良い」

 

アッサリと返答が来た。

 

性能は不明でリペアとしても今まさに使われてる現役の最新兵器がMS。作成目的が観賞用。まだ兵器として作ると言われた方が常識がある。友人のキラの方を見るが否定しない。嘘だと思いたいがこんな意味不明な嘘をつく理由はあるか?嘘なら普通に作業用と言っておけばいい。

 

「う、売るつもりで作ってないんですか…」

 

「いや売るよ。観賞用として求める同士達にね」

 

「は、そんな同士が何人もいるんですか??」

 

「居るよ。理想のMSを買いたいとMS開発の協力もしてくれている」

 

趣味の世界の広さに学生たちは戦慄。学生たちは疑惑の眼差しでキラをみる。趣味の世界の産物になるMS、そんなMSのOS造りをしてるキラは……

 

「ぼ、ボクは違うよ!?教授からの紹介で協力してるだけで!」

 

キラは自分は無実だという。

 

「観賞用て…MSって……あ!!軍事兵器ですし観賞用で戦闘に使うつもりがなくても造るの不味くないですか!」

 

「そうよね!他にもえー…ほら!MSなんて造ってたら国に無理矢理に奪われるって事があったりするかもしれませんし!」

 

開発の中断の説得をしようとしているのか。身の安全を心配してるのか、それか観賞用のMSという意味不明な存在の誕生を阻止しようとしているのか。

 

「ジャンク屋なら個人でMSを持っててもそう反応はされないだろう。それとほぼ個人で造るMSに国が興味を持つとか無いよ。殆どプラントのジンという機体をリペアしただけのMSだしね」

 

「………」

 

機体に関与しているキラが何か言いたげだ。

 

「何かなキラくん」

 

「いえ…なんでもないです。話を戻しますが今回のがダメだったみたいですが、なにか改良して欲しいてんはありましたか」

 

「あえて言えばもっとキツめの設定でも良いかな」

 

「……今でも元のジンのOSより負担相当に上がってるのに、あのドレンさん、テストで本当に大丈夫だったんですか。MSにガタが来るまで動かしたそうですが、Gで身体は」

 

「ラルフです。肉体的なダメージとか有るように見えます?」

 

「無い…ですね。この人って本当にナチュラルなんですよね……コーディネーターでも可笑しい気がしますが」

 

「…一応ナチュラルなんですよ」

 

学生たちは何なのか判らない。ただキラがドン引きしてるのは珍しいと思う。彼にまだ聞きたいことはあるが……グループでリーダーぽい少年、トールが時計を見て慌てた表情を見せた。

 

「キラ、時間」

 

「え、あ、もう時間か」

 

「スミマセン、予定があるんでこれで失礼しますね」

 

「此方こそ足止めした様ですみません。あぁキラくん、テスト結果はキラくんのPCに送っておきます」

 

「解りましたドレンさん。あ、パターンを変えたOSのデータを既に送ってあるので確認して見てください……その中に今のよりキツめのも一応あります、使う予定無いと思ってましたが」

 

「ええわかりました。ではまた今度…あとラルフです。なんで二人は頑なにドレンとしようとするんです」

 

 

 

 

 

 

別れた後の学生組みは目的地に向かいながら話をする。話題は先程会った人物の事しかない。キラには聞きたいことがある。しかしどういう聞き方をすれば良いのか困った。

 

「え、えーーと、話した感じ悪い人じゃない感じだったわね…その二人とも」

 

「一人は…普通ぽい人だったけど、いや普通ぽいから際立ってたと言うのか」

 

遠回しに何かをキラに伝えようとするがキラが答えてくれない。

 

「もう片方はなんというか…随分と特徴的な格好の人だったわよね!キラどうしてあんな格好してたのか聞いてない」

 

もう仕方なくミリアリアが突っ込んだ。

 

赤い軍服にも見える服に目元を隠す仮面に真ん中に角みたいな飾りの付いたヘルメット

 

「趣味らしいよ」

 

キラは答えた。

理解できて理解できない答えだった

 

「趣味なの……」

 

「うん」

 

「……趣味……そうなんだ」

 

趣味なら何にも言えない。せめて正体を隠してるとかそういうのであって欲しかった。

MSを観賞用に造ろうとしてる辺りも含めて本当にあれな人なんだなと思った。

 

「趣味かー…あの服は買ったのか自分で作ったのかちょっと聞きたかったな」

 

「「ぶふっ!!自分でって」」

 

笑う学生達、仮面とヘルムを付けた大人が裁縫してる光景でも浮かんだのか。

 

「ふふふふ…もう」

 

「そ、そういやなんで誰も本人が居る時に格好について聞かなかったんだよ」

 

「それは聞けないでしょ…」

 

「トールも聞いてないから同じだろ」

 

「格好もだけどあの人達の名前もきいてなかったな」

 

「片方はドレンさんだろうけどもう片方は?」

 

キラは隠すことでもないので普通に答えた。

 

「あの人の名前はシャア・アズナブルさんだよ」

 

当然偽名である。

 

 

 

それから数時間後、無事に教授と会談してから船に帰りシャアと名乗る赤い人はラルフと宇宙に出た輸送船の中。赤いMSにキラから送られたOSを入力していた。

 

ジンに良く似ていたが細部が違う。

各所のバーニアの数や、特に違うのは足が太いことか。それと色。

 

彼は趣味の一貫としてザクに似せて改装していている。赤い色にしたのは勿論シャアを名乗ったからだ。…ピンク色ではない。

 

「エラーは無し。オールクリア、無事にキラくんの新しいOSのインストール完了しました」

 

ラルフは今日の仕事は終わりだとばかりに伸びをしている。本来なら今日は此れ以降は何の予定もなかったが…

 

「どの程度の物かテストしようか」

 

「え、早速試したいんですか。明日でも良いのでは」

もう既に今日は仕事は終わったと思っている様子か。仕事終わりに残業を言われたような気分だろうか。

 

「すまないが今すぐやろう………少し前から何だかモヤモヤした嫌な気分がしてね。MSの操縦をして気分を晴らしたいんだ」

 

シャアの様子は何処か可笑しい。普段は飄々とした彼がピリピリと苛立っているようにみえる。まるで戦場の中に居るような緊迫感……ラルフは背筋が寒くなるような思いを味わった。

 

「ま、まぁ今日は他に予定もありませんから良いですが…テストは前と同じ所ですか?」

 

「あぁ同じ所で比べた方が違いが判りやすい」

 

「艦を出します」

 

ラルフはシャアの緊迫した様子に押されるように急いで艦を出発させる。出発した艦はヘリオポリスを出て少し遠い場所にある岩礁地帯まで移動。艦は岩礁地帯の手前で停泊した。大型の艦は勿論、人と同じ様に動けるMSでも手狭、どう見てもテストに適していない場所だ。

 

『予定のポイントに着きました』

 

「ドレン、ハッチを開けてくれ」

 

ついて即座に急かすようにこう言うシャアにラルフはらしくないと思う。何時もは出る前に軽口を言ったりするのに、何か焦りのようなものを感じた。ラルフは何も感じないが、シャアの感性は、ザワつく様な気分は落ち着く所か更に高まっていて直ぐにでも飛び出したかった。

 

『ラルフです。わかりました…我慢の限界のようですし直ぐに開ける準備をします。OSのお陰で前よりピーキーな仕様になってるので壊さないでくださいよ。ナチュラル詐欺な貴方には無用な心配かもしれませんが…各部の閉鎖確認、ハッチ開きます』

 

「酷い言われよう。では出る」

 

艦の後部のハッチが開く。ジャンクから産み出された赤いMSが動きだす。艦のハッチに乗り出すMS、シャアと名乗る彼はMSと共に宇宙に出た。

 

MSは挙動を確かめる様に反復して動いたあと、そのまま高速でデブり地帯に入っていく。小回りの効くMSでも自殺志願としか思えない。

 

衝突する!!と思えたが、赤いMSは密集したデブりを避けていく。MSの死角のデブリすら避けている。 完璧に避けている。まるで人体の様にMSを精密に動かし。さらにMSのモニターで見えない障害物までも避けて動く。操縦技術では説明がつかない。空間認識はどうなってるのか。目に見えないモノまで見えてるのだろうか。

 

そんな見事を越えて異質な操縦をしている本人は…

『なんだ…いったい…気分が悪い』

 

不快そうに吐き捨てていた。

 

MSを操縦する時は何時もは全てから解放されるような爽快感があるのに、感じる不快感が消えない。むしろ不快感が増してるような感覚がする。この不快感が何でなのか自分でも判らない。意識しないという事も出来ない。不思議とこの不快感は無視してはダメなものの様に感じられた。

 

そしてテスト開始から暫くしてレーダーにノイズが走り出す。MSの動きを見ていたラルフが先ずレーダーの様子に気が付いた。

 

『ん、待ってください。レーダーの様子が……』

 

『故障か?古いものだから仕方ない。……いや此方のレーダーの反応も可笑しいな』

 

『…不良品でも2つ同時に壊れるなんて事はないでしょう……となると』

 

二人は沈黙した。

 

『…ニュートロンジャマーかな』

 

『でしょうね…いきなり電波障害なんて起きる場所でもないですし………近くで戦闘が行われてるんでしょうか?』

 

(なるほど…戦闘か、ならこの感覚…)

 

戦場が近くに有ると想定すると、暫く前からシャアを名乗る彼の感じていた不快な感覚もわかる。感じていたモノを理解できてしまう。いや思い出したと言うべきか。なるべくならもう無縁で居たかったモノだ。

 

 

(……人が死んでいく感覚か…)

 

 

 

 

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