赤い詐欺   作:ソウクイ

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第3話

 

 

ヘリオポリス

 

資源採掘のためにある中立のオーブのコロニー、世界でも有数の技術を持つ国営企業モルゲンレーテ社の施設がある。この施設の中で本来居てはいけない連合が秘密裏に兵器の開発をしていた。

 

新型MSと新型戦艦の開発、連合がヘリオポリスで秘密裏に開発していた5機の試作MSの中の一機機体名はストライク。ヘリオポリス在住の一般人であるキラ・ヤマトがストライクを動かし、ヘリオポリスを強襲したザフトのジンを一機撃退。その後、灰色の待機状態のストライクの足元にはキラと合流した学友の子供たちがいる。そしてその学生たちに銃を向ける作業員服を着た女性がいた。つい先ほどまで気絶していて学生たちが看病していた女性だ。

 

「動かないで」

 

「な、なんで銃を向けるんですか」

 

自分達が助けた作業着の女性から銃を向けられる。意味がわからず学生達が混乱するのも仕方ない。先ず作業服である女性が軍人である事すら認識出来てすらいないか。

 

「この機体は連合の最高機密なの。それを見た貴方達を放置は出来ないのよ」

 

その言葉にようやく彼女が連合の軍人なのだろうと察せられた。

 

相手は一人、非情になれるタイプでもないのか子供に銃を向けるのに罪悪感が顔に出ている。さらに言えば先程まで気絶していて体調も良さそうに見えない。なので学生たちも銃を向けられていても其処まで危険を感じずに抗議も出来た。

 

「へ、ヘリオポリスは中立なんですよ」

 

正しい発言でも、既に襲撃を受けた状況では呑気な主張だ。それと中立だと言えない証拠を自分達が見ている。目の前の女性(連合の兵士)に灰色のMS(連合の新型MS)。

 

「中立なら無関係でいられると思っているの」

 

現実的な意見でもザフトが攻めてきた理由は中立を違反して開発されていた連合の新型MS、巻き込んだ形の連合軍側がこんな言葉を吐けば反発を生む。軍事機密の秘匿が目的としても、他国の軍人が他国の領地で誰に見られてるか解らない場所で丸腰の民間人の子供に銃を向けているのは不味い。彼女もあまり冷静な状態ではないのだろう。

 

冷静でないから気付くのも遅れたのか。

 

「…?」

 

いつの間にか学生達の視線が自分でなく自分の背後に注がれている。何だと眉をしかめる。何かあるのか。少しだけ視界を後ろに向けようとしたがその前に…

 

背後から男の声が聞こえた。

「銃を捨てて手を上げてもらおうか」

 

「なっ!」

 

振り向く前に彼女の背に何か硬いものが当たる。背中に銃を突きつけられてる。女性はそう理解した。

 

「ざ、ザフト…」

 

「もう一度いうが銃を捨てて手を上げてもらおうか」

 

否定しない事に背後の相手がザフトの軍人だと疑念が確信になる。機体を奪いに来たのか。このままだと機体が奪われる。近くには学生しかいない。学生たちはついさっき銃を向けたばかりで味方なんてしてくれる筈もない。

 

彼女は技術士官なのに白兵戦闘も意外にも優秀な成績を持つが、背中に銃を突き付けられ身体能力が高いザフトのコーディネーター相手に体調が悪い今では……抵抗しても命を落とすだけか。

 

カシャ

 

大人しく銃を捨てた。

 

此れからどうなるか考えると嫌な汗も出る。何故撃たなかったのか。女を射つのが嫌だった…というのは楽観論か。尋問するのが目的か捕虜にするのが目的か。相手が下劣だった場合は女として何かをされる可能性すらある…。

 

「さて………暴れられても困るので縛らせてもらう」

 

縛ろうとする動きを背後から感じる。此のままでは拘束される。背後の相手に隙も見いだせず彼女も迂闊に抵抗も出来なかった。

 

背後からロープを巻かれ縛られていく。縛られていき……なにか変だと感じる。縛られていく女性をみて学生組はドンドンと顔を赤くしていく。

 

女性は青少年が見てはいけないR指定必須な感じになっていた。

 

「ちょ!!ちょっと!?なんでこんな縛りかたなのよ!?」

 

女性の大事な部分が恥ずかしい感じに強調される縛られ方。亀の甲系の縛り方。戦争だと女性が辱しめられる事は多々ある。あるが…辱しめられるにしてもこれは可笑しい。あと短時間でこんな複雑な縛りかたを背後にいながら実現してるのも可笑しい。

 

「もちろん趣味だよ」

 

「しゅ趣味って言った!!」

 

「助けてくれたのはありがたいですけど何をしてるんですか!!」

 

「冗談だ」

 

「やったら冗談になってないでしょ!」

 

「冗談としてもこんな事を女性にしないでください!!」

 

こんな縛りかたを普通は軍人がするとは思えない。ザフトが真っ当な軍人であるかと言えば微妙だが、それでもザフトでもこんな真似をすると思えない。それに何よりヘリオポリスを襲撃したザフト相手なら子供達は敵意を見せないか?こんな気軽に話すだろうか?

 

つまりは…

 

「あ、あなたザフトでないの!?」

 

足と首しか動かせないが、何とか身体を回し振り向くと其所に居たのは…ほぼ真っ赤な衣装に仮面と変な形のヘルムを被った男。赤い服は軍服にも見えるが…ザフトのエリートは赤い服を着るが、ザフトのエリートの赤服とも違う。こんな軍服を採用してる国は彼女の記憶にない。

 

銃を持ってると思った手には少女アニメに有りそうなオモチャのアイテム、こんな相手に背後をとられてオモチャを突きつけられて、脅されて発禁的に縛られたと言う事実に鳥肌が立つ。小太りの男も後ろにいたが赤い男が濃すぎて視界には入らなかった。

 

「あの、そのオモチャは…」

 

「ああ、さっきそこで拾ったものだ」

 

ポイと捨てられる。プライベートの私物と言われなくて心底良かったと思う。

 

「な、何者なの」

 

女性が聞くと手を顎に乗せて数秒沈黙してから答えた。

 

「ただの通りすがりのサラリーマンだ」

 

「いや貴方、サラリーマンでなくてジャンク屋って言ってましたよね!?」

 

「助けられたんだけど…何だかなぁ」

 

緊迫した状況であるのに緩い空気。話からするとサラリーマンでなくジャンク屋らしい。変な仮面と変なヘルムと赤い服はジャンク屋だから?混乱したままの女性はそう思う。ジャンク屋に風評被害がでていた。

 

「と、とにかく、ありがとうございます。助かりました」

 

「素直にお礼を言いにくいですがありがとうございます…」

 

キラがいい続いて微妙な様子でミリアリアが礼をいう。他の学生も礼を言う。ラルフはお礼が言い終わった後に会話に加わった。

 

「で、どうして銃を向けられてたんです。察するに其方のMSが関係があるんですか……見ちゃ駄目な感じの機体ですよね」

 

「銃を向けられてるから咄嗟に助けたが…まさか君達の方が悪いとかないだろうね?そこのMSを強奪しようとしたとか」

 

ガンダム的に少年がMSを奪う事例が結構あるので聞いてみる。正解なら女性が銃を向けてたのが悪くなくなる。黒に近いグレーな商売のジャンク屋をしてるが流石に完全にアウトな犯罪には手を貸したくなかった。

 

「いやいや!だれがそんな事をしますか!」

 

「俺達はそこの女の人を助けただけですよ」

 

学生達は猛烈に否定した。

 

「其所の人に、そこのMSは連合の重要な機密で見られたからには放置は出来ないみたいな事を言われて、銃を向けられたんです……」

 

本当なのか確認するように縛られた女性をみる。ジッと見ると女性は後ろめたい事があるように目を逸らす。女性の縛られ方があれなので絵面がひどい。

 

「嘘でないようですね。連合のMS…この人は連合の人ですか」

 

誤解が解けたと安心するが、今が大変な状況なのにはかわりない。此れからどうするかの話しになる。学生組みは格好は変だが大人に頼ろうと思う。藁にもすがる気持ちだろうか。

「その、俺達ってこれからどうしたらいいんでしょう……」

 

「どうするも、シェルターに避難した方がいいですね」

 

学生の一人が聞いた

 

「ザフトはもう引き上げて安全なんじゃないですか」

 

シャアがラルフと共に戻ってきた時には、ヘリオポリス内部でザフトらしい機体や人間は見ていない。ヘリオポリスにきた目的が終わったんだろうか?

 

……MSを見た

 

ザフトがヘリオポリスに来た目的はどう考えても此処に有るMSだ。このMSを奪いに来たんだろう。シャアは鎮座しているMSをじっくりと見る。MSの頭をしっかりと見て目頭を押さえる。感動なのか悲嘆なのかどちらとも取れる態度だ。

 

「どうみても…」

 

ガンダム…

 

ヘリオポリスをザフトが襲ったのなら、中立を無視して此処でガンダムの開発したのは連合だろう。連合がMS(ガンダム)を秘密裏にヘリオポリスで開発、開発がザフトにバレて襲われたという所か。…嫌なほどにガンダムと思える展開だと思った。

 

「どうみても…?」

 

「うん、あぁ…どうみてもそこのMSがザフトの狙いだと言ったんだよ」

 

めざとく聞いていたミリアリアの問いかけを誤魔化した。

 

「確かにザフトはこのMSを狙ってたみたいでした。あす…ザフトがこれと似た機体を奪っていったんです」

 

キラの証言からMS狙いだという保証がついた。となると…

 

「ザフトの狙いの物が残ってるとなると…」

 

「ま、また来るっていうんですか…このMSを狙って」

 

キラの話だと既に奪われたMSは他にあるようだ。既に奪った機体があるならザフトも引き上げる可能性はあるが、外に連合はいたが、連合軍はMSがない時期の連邦並みにボコスカにされていた。全滅していても可笑しくない様子だった。連合という邪魔がないのにこのMSを残すだろうか?

 

「他に奪ったMSがあるならそれだけで満足して引き返してる可能性もあるが、成果は多い方がいい…私はまた来ると予想するよ」

 

本人は自信があって発言してないが聞いた側はそう思えない。学生たちの表情を見ればザフトがまた来るんだと思ったようだ。

 

「とにかく、ザフトがまた襲ってくる前提で動いた方がいいですよ。襲われなければ取り越し苦労なだけです」

 

学生達は戸惑いながら頷いた。

 

「そう…ですね。なら、直ぐにシェルターに避難した方がいいですね。忠告ありがとうございます。シェルターまで行こう皆」

 

「シェルターって何処に行くんだ。下手な所だと満杯になってるだろ」

 

「この時間帯で人が少ない区画のシェルターが良いんじゃない」

 

「襲撃いつあるか判んないだろ。距離が近いところから回った方が良くないか?」

 

学生たちは何処のシェルターに向かおうか相談する。学生達の方がヘリオポリスに詳しいのでシャアとラルフは会話には入らない。

 

「あの」

 

キラはシャアに声をかけた。

 

「ん?どうしたんだ」

 

「シャアさんって輸送艦を持ってましたよね」

 

「持ってるが」

 

「え、艦があるんですか」

 

シャアが答えると学生組は話を中断してシャアを見る。何人か期待した視線で見ていた。

 

「そ、その艦って…五人ぐらい余分に乗れたりは」

 

「大型なので十分に乗ることはできますよ」

 

ラルフが答えた。

 

「それなら俺達を艦に乗せてくれません」

 

学生の頼みにラルフは困った顔をした。

 

「艦がシェルターより安全とは言えないですよ。それに…」

 

ラルフはどうしようかと言いたげにシャアをみる。艦の持ち主はシャアで決定権はシャアにあった。

 

「別に乗るのは構わないが、ドレンも言ったがシェルターよりも安全とも言えない。艦はザフトが入りそうな港にあるしね。それでも良いなら一緒に行こう」

 

それを聞いて学生たちはどうするか話し合う。シェルターに行こうと言う意見もあるが、艦に乗せてもらいたいという意見もある。

 

「あの…」

 

縛られた女性が声を出す。声に反応して視線をむけ…縛られ方があれなので学生組は直視出来ない。

 

「この縄を外してもらえないですか…」

 

気まずそうに女性はそう言うと学生たちは顔を見合わせた。

 

「また此方を捕まえようとされたら困るのだが」

 

「……捕まえようとなんてしません。そもそも出来ません」

 

銃はシャアが回収している。訓練をした軍人でも銃もなく体調が悪い身で複数人を拘束するなんて普通なら出来るわけがない。だとしても少し前に銃を向けて拘束しようとしておいて解放してもらおうと言うのはむしがいい話だろう。

 

「私はそこのMSを艦のある場所まで運ばなければいけないんです。…どうかお願いします」

 

女性は頭を下げる。懇願する様に頭を下げられ、学生組は拘束を外しても良いのではという顔をしていた。

 

「『今は』捕まえる気はないと言う意味じゃないかな?君の証言を聞いて連合軍が後から我々を捕まえないと言う保証は?」

 

学生たちはギョッとし女性は言葉に詰まった。

 

仮にそんな事はしないと言ったとしても、捕まえようとした自分の保証を信じて貰うのは…捕まえると思うなら彼等にとって女性の存在は不都合だ。向こうには銃があり女性は動けない。そしてこんな状況では軍人の女性の死人が出ても……

「ドレン、カッターナイフを持っていたろ貸してくれ」

 

「ラルフです。どうぞ…」

 

ラルフも躊躇なく業務用らしい太いカッターナイフを渡して、シャアは女性の拘束を切って外す。学生も女性も驚いていた。

 

「どういうつもりですか…」

 

自由になったのに女性は困惑した様子をみせる。話の流れからいって拘束を外されるどころか命の危険も感じていたのに…。

 

「いや、考えてみればMSの姿を見ただけなら軍も態々逮捕しようとはしないと思ってね」

 

「ヘリオポリスに該当者は何れだけ居るかと考えればですね」

 

シャアの言葉にラルフが続けた。

 

此処は市街地も近い。MSを避難する前に目撃した人間が居ないと考える方があり得ない。見ただけなら捕まえるなら対象の範囲が広すぎる。ザフトにMSを奪われたのに、見られたぐらいで捕まえる必要もないだろう

 

「見られたぐらいで機密を気にする必要も…ん?」

 

「どうしたんですか」

 

自分でいっていて違和感を感じた。

 

「………こんな状況で見たという理由だけで拘束しようとするのか?」

 

「そういえば…」

 

彼女は機密らしいMSの確保を急いでしなければいけない。そんな時に一人で学生五人も見られたというだけで捕えようとするだろうか?MSの確保を優先するんじゃないか。緊急事態に混乱してたとしても違和感がある。何かMSを外から見た以外の要因が…。

 

ガンダムと考えると…

 

「いや何でもない。君が捕まえるつもりが無いならそれで問題ない」

 

面倒な予感を感じ聞かないでおこうとした。

 

「そこの少年が問題なんです」

 

女性はそれを察したかのようにキラを見ながら発言した。

 

「ボクが、ですか?」

 

理解してないような反応、女性の方がその反応に逆に驚いていた。

 

「……なんで驚くの。自分が何をしたのか判ってないの」

 

「あの、キラはいったい何を…」

 

女性は呆れながら話した。

 

「彼はね…このMSを動かしたの。それだけじゃなくて」

 

キラが少し前に機密の工場にいて、自分と一緒にMSに乗り込んで、ジンと対峙、マリューが初めに動かしてたが途中からキラがMSを操作していたと…その時に自分は気絶していて不明だが無事にこうしてられる所を考えると状況的に、ジンの撃退か撃破もしたと……

 

「………そうなんですか?」

 

ラルフはひきつった顔で学生達に聞いた。

 

「え!?いえ!キラがそのMSから降りてくるのは見ましたけど…ザフトのMSをどうしたのかは…キラどうなんだ」

 

「…う、うん、その人の言うことは間違ってなくて、襲ってきたザフトの機体を撃退した…」

 

なんと言うのか。本人はとんでもない事をした自覚があまり無い様子か。女性は益々呆れた視線を向けている。襲撃されたコロニーでド素人がガンダムを動かす。敵の撃退もした。

 

初代ガンダムみたいな状況か。ガンダムもどきなMSを操縦してる辺りキラが主人公かと疑惑が。なんでそんな主人公疑惑の相手と意図せず交流を持っていたんだとシャアは自分の運勢が怖くなる。

 

「言い忘れましたが彼は戦闘中に…MSのOSの書き換えも一瞬でおこなったんです」

 

「…はい?」

 

OSとは脳の機能の様なものだ。巨大なロボットを動かす脳の作りが簡単なわけがない。相当に複雑なプログラムになる。それを戦闘の間に書き換える?ラルフたちもキラにOS開発で協力してもらってるのでコーディネーターの中でも能力が高いことは察していたが。察していたが…

 

シャアはやっぱ主人公だろコイツという目線をキラに向ける。主人公で無ければ何だと言うのか。

 

「工場に居たことも怪しいですし。MSを操縦してMSのOSを直ぐに書き換えられたことを考えると、事前に相当に詳しい情報を知っていたと思うのは当然だと思いませんか……ザフトとは思いませんが」

 

オーブ、又は他の国か、企業スパイの類いと思われたのだろうか。そして学生組も関係者や協力者などと思われたということか。それは拘束しようとする。

 

「たしかにそれが事実なら…客観的に見たらキラくんが怪しいことは否定できないですね」

 

「ち、違います!僕は……」

 

自分でも怪しいことは否定できないのかキラ少年の顔色が悪い。女性はその反応にスパイの類いには見えないとは思うが、現実的に操縦してOSを変えれた理由がスパイの他に考えられない。シャアは怪しい事は否定しないがキラを擁護した。

 

「彼がMSのOSを書き換えられた理由はスパイ等が理由ではないだろう」

 

「……何でそういえるんですか」

 

怪しい人間の保証なんてなんの意味もないという言葉が顔に滲み出ている。

 

「実は私は集めたジャンク品からリペアしたMSを所持していてね」

 

「リペアしたMSですか…」

 

彼はジャンク屋らしい。戦場後から兵器も捕っていくジャンク屋なら、戦場後に残ったジンの残骸を集めてリペアするのも可能、MSをリペアした目も的使うためか売るためと普通に考えられる。所持しているのも別に可笑しい話でないと思えた。だからどうしたと女性は言いたげだ。

 

「そのジンの元のOSではダメだったから、新しく動かすOS造りに彼には協力してもらっていた」

 

MSがあるならOS作りが必要な事は嫌な程にわかる。今のOSではコーディネーターしかマトモに動かせない。自分達もナチュラルでも動かせるOSを作ろうとして居たからこそOSの重要さは判る。だから民間人にOS作りを頼んでいた…それがキラ…だからその経験を元にMSのOSも変えられた?話に無理がある。

 

「……ストライク、このMSのOSを直ぐに変えれたのはその経験を生かしたと言いたいんですか?」

 

そんな経験程度で民間人の少年がOSを一瞬で完成させたなんて納得できるわけがない。

 

「彼がスパイの様な真似をすると思えない。それ以外に考えられない」

 

シャアは追加でこう言った

 

「そもそも、もし彼がスパイの類いなら今君が無事なのが可笑しくなる。話からして逆に君はキラくんに助けられた立場だろう」

 

「それは…そうですね」

 

確かにそうだ。もしキラがスパイとしても助けられた事は事実。ここでキラを捕まえようとするのは恩知らず。シャアは畳み掛けるように言う

 

「だいたい君は彼を捕まえる事よりやるべきことが有るのではないのかな?」

 

たしかにある。

MSを直ぐに運ばなければいけない。

 

怪しいが…機密に触れて動かしたが、MSを護ることよりも優先すべき事でもない。キラの事は今のどさくさ紛れになら誤魔化す事はできる。女性は葛藤した表情を見せた後に溜め息をはいた。

 

「…はぁ…そうですね……では、私は急いでMSを運ばないといけないので……それでは」

 

女性は諦めた顔をしガンダムにしか見えないMSに向かう。どうやらキラの事を放置することに決めたようだ。学生たちはホッと息を吐く。シャアだけは女性はMSに乗り込もうとするのを見て安心は出来なかった。

 

これまで初代のガンダムに似たような事が起きている。初代ガンダムだと民間人がガンダムに乗り込み戦闘をしザクを破壊してコロニーが壊れている。民間人のキラがガンダムにしか見えない機体に乗ってMSを撃破したらしい。こうなると次にあるのは…ガンダムが戦闘をしてコロニーを破壊する?女性がガンダム(危険物)を動かそうとしてる。いや主人公疑惑のあるキラが乗らないなら大丈夫なのか?

 

 

「あれ、あの人戻ってきた」

 

何故か女性がガンダム(不吉な象徴)にしか見えないMSから降りてくる。そして此方に気まずそうに戻ってきた。

 

「どうしたんです」

 

ラルフがMSから降りてきた女性にきいた。

 

「その…バッテリー切れで動かないの……」

 

バッテリーで動くMS。実は可笑しくない。この世界の主力エネルギーは核エネルギーだったが、ニュートロンジャマーのせいで核動力が使えず、プラント自身も新しい動力が用意が出来なかったのかジンもバッテリーが動力。ガンダムなら新しい特別な動力でも付いてると思ったが違ったようだ。バッテリーの事を思い出すと、初代ガンダムでコロニーを破壊したのは核が動力のザクのエンジンを破壊したから、この世界のMSの動力的にエンジンを壊してもそんな大爆発は起きないと安心できた。

 

バッテリー切れで動かない。そんな都合よくバッテリーを早急になんとかする手段なんてないだろう。となると女性が何故気まずそうなのか……

 

「…あのごめんなさい。出来ればMSを動かす協力をして貰えないかしら…すぐ近くにトレーラーとクレーンがあるからそんなに時間は掛からないと思うから」

 

図々しいとおもいながらも1人では無理なので女性は頼んだ。

 

「…俺は良いですよ。ザフトが狙うこのMSがヘリオポリスにある方が不味そうですし。ヘリオポリスから外に持ってく手伝いならします」

 

「…そういう理由なら俺も手伝う」

 

「…お、俺だけシェルターに避難するのもあれだし手伝うよ」

 

「学生さんたちだけ協力させるのもあれです。私も協力しましょう」

 

学生達とラルフは協力すらつもりのようだ。シャアは手伝うとは言わなかったが、キラたちがトラックを探しに行く間、留守番として残りガンダムにしか見えないMSを眺めた。

 

「通りますから気をつけて下さい」

 

本当に近くにあったのか直ぐにトレーラーとクレーンが来る。トレーラーに何か積み荷を乗せていたが、積み荷を下ろしてMSを乗せるんだと思い気にしなかった。

 

作業を始めると思った瞬間。

爆音がした。

 

「あ、あれ!またMSがコロニーに!」

 

爆発した場所を見ると二機の機体が見えた。

 

ジンと少し違うMSが一機のポットを装備したメビウスを追ってる。メビウス・ゼロというメビウスに有線のガンバレルを装備したMSとも戦える連合のMA、コロニーの中で戦闘をしていた。

 

素人目線でもどちらも高い操縦技術があるのがわかる。二機はコロニー内部でドッグファイトを繰り広げている。コロニーが壊れるのを気にしてないのか。特にジンと少し違うMSの方がコロニーの中だという遠慮が全く見えない。性質が悪い相手だとわかる。…シャアはどちらも不愉快だと感じると同時に…自分の感じた感覚に困惑した。

 

「い、急いで!」

 

彼は行われてる戦闘に集中して女性や学生達が何をしてるか見てない。トレーラーにMSを乗せてると思っていた。

 

彼からみてガンダムにしかみえない機体はストライクと言って、ヘリオポリスで開発されていた五機の試作機の中で一番簡素に見える機体。五機の機体は全て別で五機の試作機には一機を除いて其々特色や長所が存在した。

 

ストライクだけの特色は装備換装。

 

試作機の中では最後の型番だからか力の入れ具合も強く三種類も換装装備があり、其々の換装パーツにバッテリーも備えられているので、ストライクだけが直ぐにバッテリー補充が可能、何で他の機体もバッテリーだけでも換装式にしなかったか判らない有用な特色。

 

その換装するパーツが直ぐ近くにありトレーラーで運べる状態だったのは不幸か。学生とラルフが何でか協力し、彼が気付かない内にストライクに換装パーツは装備されていた。

 

「……何で起動してるんだ」

 

彼が気付いたのは起動した音で、起動した証に灰色からカラフルになるストライクの姿をみて、色が完全に主人公のガンダムの色合いだと思う。色合いまで完全に主役のガンダムになった姿に動揺もあるが、それそれ以上に…持ってる装備にゾッとした。

 

装備してるのはランチャーパック、戦艦の主砲以上のビームが射てる砲撃タイプのパーツ。ストライクの三種類の換装装備の中で唯一コロニー内部で戦闘をするのに論外な装備。コロニーの外壁をぶち抜きそうな極太の砲を構えるストライク。メビウスを援護しようとしてるのか。コロニーの中心の軸、大黒柱に見える重要そうな所に砲身が向いていた。

 

 

 

 

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