第一話 悪ガキ三人
『幻想郷』
日本の人里離れた山奥の辺境の地に存在するとされており、ここには『人間』そしてかつて幻想のモノだと否定された『妖怪』などの人外のものが多く住んでいる秘境である。
幻想郷はとある大妖怪により作られた博麗大結界によって幻想郷外部と遮断されている、そのため外部から幻想郷の存在を確認することは不可能であり、幻想郷内に入ることもできない。同様に幻想郷内部からも外部の様子を確認することはできず、幻想郷から外へ出ることもできない。
このように特殊な環境にある幻想郷では、外の世界とは異なる独自の文明が妖怪たちによって築き上げられていた。
このお話は、そんな幻想郷に暮らす三人の人間達が妖怪達の起こす様々な大異変を解決していく物語である────
『東方夏油伝』
幻想郷の東端にある、景色を一望出来る高台にポツンと一つの古びた神社があった。
『博麗神社』の名を掲げるその神社の居間で少女は暮らしていた。
赤と白の巫女服に身を包み、黒くまっすぐな髪を縫い目入りの大きな赤いリボンで結んだ少女『博麗神社 第13代巫女』『空を飛ぶ程度の能力』を持つ『博麗霊夢』である。
幻想郷の季節も夏に差し掛かる頃、彼女は何をするでも無く、ただただ神社の居間で寝転がりだらだらと時間を過ごしていた。
「境内もだいぶ汚れてきたなぁ...巫女としての仕事だったり境内の掃除もしなきゃならないんだけど、こう暑いとやる気も出ないわ、はぁ.....お賽銭も全然貯まらないし、ていうか『紫』はなんで博麗神社をこんな立地条件最悪の場所に置いたのよ!?結界がどうとか言っていたけど、ご自慢の能力でどうにかしなさいってのよ!これじゃ来る参拝客も来ないわよ!!」
-カラン-
ふと神社の境内に何かが落ちる音が響く、賽銭箱にお賽銭が入れられた音である。その音を聞いた霊夢の行動は早かった、目にも止まらぬスピードで身だしなみを整えた後、立てかけていた箒を手に取り彼女は聖母のような穏やかな顔をして神社の正面玄関まで行き参拝客に挨拶をしに行った。
「おはようございます!足元の悪い中参拝していただきありがとうございます、博麗神社ではおみくじ等も置いておりぜひ.....って」
しかしその聖母のような表情は参拝客を見た途端に崩れる。参拝客の正体を見た霊夢は露骨にがっかりとする。それもしょうがないかもしれない待ちに待った参拝客の正体が自身の『二人の幼馴染み』の一人だったからだ、霊夢は怪訝な表情で『彼』に問いかける。
「あ~新しく参拝客が来たと期待した私が馬鹿だった......で、何の用よ『傑』」
『傑』と呼ばれた、今回博麗神社を参拝しに来た少年。
特徴的な前髪をした彼の名は『夏油傑』人里の一般家庭出身で『妖怪を取り込み使役する程度の能力』を持つ、霊夢の寺子屋時代の幼馴染みの一人でもう十年の付き合いになる。
夏油は霊夢の愚痴に笑って答える。
「久しぶりに会いに来た幼馴染みに対して、その態度は酷いんじゃないかな霊夢?」
「私があんたに気を使うと思った?で、何の用か聞いてんのよ」
「何ただの近況報告さ最近会えてなかったからね、私は元気にやってるよ!って事を伝えに」
「ハイハイ、元気にやってる事はわかったからこれで用事は終わりね、さっさと帰った帰った」
「歓迎されてないようだね、仕方がないこの『一日100個限定!人里名物お肉マシマシ肉マン』10個セットは家で一人で食べるとするか....あ、慧音先生にお裾分けするかな」
「限定肉マン!?まさか帰れなんて冗談じゃないの傑~ささ上がって上がって♪」
(相変わらずだなぁ)
肉マンに心踊らせる霊夢に引っ張られて夏油は神社の居間に上がった。霊夢はすぐに二人用の緑茶を用意し、夏油は食べやすいように肉マンをちゃぶ台にパーティー開けにして準備する。緑茶を置いた霊夢は、いの一番に夏油の用意した肉マンを手に取る。
「これ一度食べてみたかったのよね~、いただきまーす!......ん~♡美味ひい!」
「気に入ってくれて良かったよ、朝から並んだ甲斐があった」
「傑にしては良い仕事するじゃない!よし、明日から毎日持ってきなさい」
「それはちょっと厳しいかな」
「そこを何とかするのよ!あむ........で、何の用よ」
「さっき言った通りさ、近況報告だよ」
「近況報告もなにも、最近異変はないし特に報告するような事なんてないわよ?」
「そう、私が来た理由は正にそれだよ霊夢」
「?」
「霊夢、君最近妖怪退治はしたのかい?巫女の仕事は?」
夏油の質問に霊夢は眉をひそめる。
「はぁ、さっきも言ったけど最近異変も何もないから巫女の仕事のしようが無いのよ」
「妖怪退治はあくまで一例だよ霊夢、人里付近の見回りとか妖怪達の動向の監視とか巫女としての仕事はいっぱいあるだろう?」
「人里の見回りぃ~、それ私じゃなきゃダメなの?どうせあんたが能力使って人里守ってんでしょ、じゃあ私必要無くない?私が見回るよりあんたの能力で見て回った方が確実でしょ」
「それはそうだけど、この時大事なのは『博麗の巫女が里を見て回った』という事実だよ霊夢」
「はぁ~?何それ」
「霊夢、君は『博麗の巫女』という名前の持つ力を理解するべきだ」
「名前の持つ力?」
「そうだ、いいかい霊夢、博麗の巫女の歴史は、500年前妖怪の賢者・八雲紫が「幻と実体の境界」を張った時から始まる。外の世界から切り離されたこの幻想郷で強い力を持つ妖怪から弱い人間達を守り、幻想郷の妖怪と人間のバランスを均一にし抑制する、博麗の巫女はそういった思想の元産み出され、この500年に渡り人々を守り続けてきた、その歴史の積み重ねは人里の人々にとってとても重要な事なんだよ」
「私が長ったらしい説教が嫌いなの知っているでしょ、結論から言いなさいよ」
「つまり、君には人里周りの見回りや妖怪の監視を積極的行って欲しいという事さ。確かに君のいう通り人里は私の能力のもと、常に100体以上の妖怪で守っているが、それよりも博麗の巫女が人里を見守っているという事の方が人々の安心に繋がるのさ、人里の人々にとって博麗の巫女という存在は何物にも変えがたい心の支えなんだよ」
「何で私が一々肩書きを気にして生活しなきゃならないのよ、そんなに博麗の巫女っていう肩書きが大事なら、もうあんたが博麗の巫女やったら?」
「それは無理だよ霊夢、私はあくまで一般人、能力は持っているが血筋的にも私には博麗の巫女を継ぐ権利はない。博麗の巫女という役割はこの幻想郷でただ一人君にしか出来ないことなんだ」
「血筋とか....相変わらずお堅いのよね傑は」
「私は一応君自身の為にも申告しているんだけどね」
「私の為?」
「そう君の為だ、霊夢最後に戦ったのはいつだい?弾幕勝負でもいい」
「最後に戦ったの?えっと..............」
「答えきれない?」
「うっ」
「そんな状態じゃ君の腕も鈍るだろう、もし今大異変が起きたとしたら君は対応できるのかな?」
「は?何私が弱くなったってこと?」
霊夢はちゃぶ台越しに夏油を睨み付ける。
「何を言われるかと思えば.....傑は私に寺子屋時代ボコボコにされたのを忘れちゃったのかしら?」
「君に他人の持っていない才能があるのは認めるよ、でもどんな才能も日々鍛錬して維持、向上させていかねば落ちていくだけだよ霊夢」
「私をそんじょそこらの人達と一緒にしないでくれる?それとも私が本当に弱くなったか......今から確かめる?」
「いいね、せっかくだから確かめようか霊夢。ただし相手は私では無く彼女だ」
「は?誰よ」
「彼女だよ」
夏油が空を指差す、霊夢が夏油の指の先を見ると何やらこっちに向かってくる影が見えた。霊夢が目を細めて見るとそこには確かにもう一人の『幼馴染み』が見えた。
黒い服を身に纏い、金髪にフリルが付いた衣装、黒い大きめの帽子を被り、竹箒に乗って元気いっぱいに手を振って向かってきている少女『普通の魔法使い』『魔法を使う程度の能力』を持つ『霧雨 魔理沙』である。
魔理沙は満面の笑みで神社の境内に降り立つ。
「お!傑じゃーん!!久しぶり!」
「やぁ魔理沙久しいね、霧雨魔法店の調子はどうかな?」
「まぁ良いとは言えねぇが、何とか食っていけてるぜ」
「それは良かった今度お邪魔させて貰うよ」
「おう!高くしとくぜ!!」そこは安くしとくんじゃ...by夏油
楽しそうに話す魔理沙と夏油を尻目に霊夢は頭を抱えていた。
「魔理沙まで来た....ハァ、今日は厄日かしら」
「おいおい、ひさびさに会いに来た幼馴染みにその態度は酷いんじゃねーの霊夢」
「そのセリフはさっき聞いたわ......で、あんたは何の用よ?」
「は?用なんてねぇけど」
「じゃあ何で来たのよあんた」
「ぐーたら駄目巫女を冷やかしにきた」
「帰れ!!!」
「まぁまぁ二人共落ち着いて、せっかく喧嘩するなら弾幕勝負といかないかい?」
「お!それ良いな傑!暇だったし、霊夢一戦やろうぜ!!」
「ちょっと、まだ私はやるとは行ってないわよ」
「あれ逃げるのか?霊夢?」
「........逃げるなんて一言もいってないわよ」
「そうこなくっちゃな!!今日こそお前に勝つぜ霊夢!!」
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霊夢はお祓い棒と御札、魔理沙はマジックアイテムと竹箒を両手に持って向かい合う。その間で夏油がルールの確認を行う。
「使えるスペルカードは三枚まで、先に被弾した方の負け、弾幕が掠めるのはOKとする。両者異論は?」
「無いわ」
「無いぜ」
「よし、両者空へ」
夏油の掛け声と共に霊夢はそのまま、魔理沙は竹箒に跨がって空を飛ぶ。それを確認した夏油は二人を見上げながら宣誓する。
「弾幕勝負、始め!!」
夏油の宣誓と同時に魔理沙が動く。
「ハッ!先手必勝!!食らえ霊夢!!」
魔理沙は自分の周りに無数の星形の物体を作りだし霊夢に向かって突撃させる。霊夢は涼しい顔をして魔理沙の作り出した星形の弾幕を避ける。それを見た魔理沙は追加でレーザーも放つ、が、それも霊夢はすべて避けきる。
「ちっ、簡単にはやらせてくれねぇな!!」
「当たり前でしょ!!」
霊夢は魔理沙の弾幕を掻い潜りながら、手に持っている御札を自分の周りに展開する。
「さぁ反撃よ」
霊夢は無数の御札を飛ばして弾幕を展開する。霊夢と魔理沙の両者の弾幕がぶつかり合い神秘的な光景を写し出す。だか当人達はそんな景色は気にも止めず互いに真っ直ぐ相手を見つめていた。
(くそ、やっぱ霊夢の弾幕は凄いな避けるのが大変だぜ、だが何より一番凄いのは霊夢の空間認識能力だな、こっちの弾幕が当たる気がしねぇ)
(見ていてわかる、魔理沙のヤツ私の記憶より強い!特に空中飛行の精度が格段に上がっているわね.....でも弾幕には穴があるわ、ある決まったタイミングで弾幕に穴が開く時がある、そのタイミングで穴を通って弾幕を抜け、魔理沙の真後ろまで回ってスペルで一撃!!)
「まだまだ行くぜ霊夢!!」
魔理沙は更に弾幕の量を増やし霊夢に迫る、対する霊夢は虎視眈々と魔理沙の弾幕に穴が開くタイミングを待っていた。
そしてタイミングは来た!
(見えた!このタイミング!!この弾幕の穴を私の最高速度でブチ抜く!!)
「!」
目にも止まらぬ速さで霊夢は弾幕を抜けて魔理沙の後ろに回り込み、『すでにミニ八卦炉を霊夢に構えていた魔理沙』と対峙する。
「気付いてくれるって信じていたぜ、私が
(ハメられた!!?)
霊夢が悟ると同時に魔理沙はミニ八卦炉に魔力を込めて、力強く叫ぶ。
『恋符「マスタースパーク」!!!!』
瞬間、幻想郷の空に七色に光る閃光が走った。その衝撃波は凄まじく、境内の草木は台風が直撃したのかと錯覚するほどに揺さぶられ、落ち葉は全て境外にふっ飛んで行った。
光が収まりその閃光を放った本人魔理沙はというと、不満気な顔で境内にある木を見下ろす。
「くっそ~、今ので仕留めきったと思ったのに....慣れない事はあまりするもんじゃないな」
魔理沙の愚痴と同時に境内にある木から汚れきった霊夢が顔を出す。赤と白の巫女服は一部に穴が開き泥で汚れきっていた。霊夢は服や髪に付いた木の枝を払うと魔理沙を睨み付ける。
「罠とはね、考えるじゃないの、脳筋魔法使いのくせに」
「だろ~、つかなんて反射神経してんだよ、ゼロ距離マスタースパークを避けられるなんて思わなかったぜ」
「避けるのに必死で姿勢制御ミスって木に突っ込む事になったけどね.....この借りは返すわよ」
「へっ、返してみろよ霊夢!!」
霊夢と魔理沙はふたたび弾幕を展開し、空を縦横無尽に飛び回る。
夏油はその様子を神社の居間から観察し、戦況を分析していた。
(うん、魔理沙の攻撃が効いてるね....あえて弾幕に穴を作り霊夢を誘導、しっかり近づけさせてゼロ距離マスタースパーク、最後の一撃こそ避けられたものの、罠にハマったという霊夢の精神的動揺はかなりデカイ。そして何より目を見張るのは魔理沙自身の成長幅!!飛行精度・弾幕、両方において今の霊夢に勝るとも劣らず.......このまま行けば魔理沙に勝負は傾くが......どうする霊夢?)
一方、空ではさながら一流のレースのようなチェイスが行われていた。霊夢が逃げて魔理沙が追いかける、魔理沙の張る弾幕から霊夢が必死に逃げる形だ。
(くそ、私が逃げに徹しなければいけないなんて!?)
(この勝負行ける!!霊夢に勝てる!!!)
魔理沙は弾幕の量を増やし霊夢を追い詰める、もうさっきのような穴は無い完璧な弾幕である。霊夢も負けじと弾幕を張るが圧倒的に魔理沙が有利だった。
(私が負ける!?魔理沙に?そんなこと....!!)
霊夢は弾幕を避けながら考える。
(くっ、認めるわよ傑....確かに私は鈍ったかもね)
「でもこの勝負には勝つ!!!!!」
そう叫んで霊夢はその場で反転して魔理沙に向き合う、チャンスに思った魔理沙はダメ押しと言わんばかりに弾幕を増やす、それを見た霊夢は慌てることなく片手に『一枚のカードを握る』。
「スペルカードの一枚をこんな事で使わなきゃいけないなんてね」
霊夢がカードに霊力を込めるとカードが輝き『術式が作動する』。
『夢符「二重結界」!!』
術式の作動と共に霊夢を中心に2つの結界が生成され、結界から無数の御札が発射され周りの弾幕を全て消し飛ばす。しかもそれだけに止まらず魔理沙の弾幕を消した御札は魔理沙本人にも向かって飛んでいく。
「うっそだろ!!?」
魔理沙は何とか回避するが御札の一つが竹箒を掠める。その様子を見た霊夢は不敵な笑みを浮かべるのだった。魔理沙は冷や汗をかきながら霊夢に問いかける。
「何だよ急に強くなりやがって」
「気合いを入れ直したのよ、もうさっきみたいなチャンスは来ないから、覚悟しなさい魔理沙」
「チャンスはまた作る、勝つのは私だぜ!」
魔理沙が宣誓した瞬間、さっきの御札達が魔理沙の足元で魔方陣を作り、魔理沙は驚愕する。
「は?おまっ!?」
「出し惜しみはしないわ!!!」
霊夢は叫びながら新たなカードを掲げる。
『夢符「封魔陣」!!!』
瞬間、魔方陣から光柱が立ち上る。魔理沙は咄嗟に避けるが完全には避けきれず穂先に火がつき竹箒が燃え上がる。
「おわっ!?アッチい!!」
「まだまだ行くわよ!!」
霊夢は勢い良く飛び上がり魔理沙の上方向に移動して、弾幕を展開し追撃する。ここで追う方と逃げる方の構図が逆転する。魔理沙は火を消火しながら弾幕を必死に避ける。
「ちょちょちょちょ!!ちょっとタンマ!!!」
「待たないわよ!!!」
霊夢の踏襲に魔理沙は大慌てで逃げる。が、魔理沙もやられっぱなしでは無い。
すでに次の手を考えていた。
(ちっきしょーバカスカ打ってきやがって、ナメんなよ!!)
魔理沙すすだらけになりながら消火の終わった竹箒の穂先にミニ八卦炉を取り付ける。
「弾幕をスペルでぶっ飛ばすなんて事は、私も考えてたんだよ!!食らえ!!本日二発目!!!」
『恋符「マスタースパーク」!!!』
箒の穂先から発射されたマスタースパークは魔理沙を追っていた御札を全て焼き払い、さらに魔理沙はマスタースパークを凪払いながら方向転換をして真っ直ぐ霊夢に向かって飛んでいった!!
「やっぱ色々考えるよりこっちのが私らしいぜ!!!」
(マスタースパークの反動を利用して突っ込んでくる!?)
「貰ったぜ霊夢!!!」
魔理沙は星形の弾幕を展開し霊夢に攻撃する。魔理沙の急な方向転換に霊夢は対応出来ずに魔理沙の弾幕に直撃する。
──瞬間、霊夢の身体が弾ける。
弾けた霊夢の身体は無数の御札となり魔理沙に張り付き拘束する。魔理沙は驚愕しながら拘束を振りほどこうとする。
「あぁ!!これは!?」
もがく魔理沙の背後に霊夢が現れる。
「罠にハマったのはあなたね魔理沙あんたなら最後、馬鹿正直に突っ込んで来ると思ったわ」
「れ、霊夢」
「ま、あんたもかなり強くなったじゃない、最初の罠もよく考えられてたし、そこは誉めてやるわ」
「避けきったヤツに言われてもな......自信失くすぜ」
「そう気を落とさないの、この勝負は私にとっても良い教訓になったわ....ありがと魔理沙」
霊夢はそう言って御札を一枚魔理沙に当てると拘束を解く。
弾幕勝負 勝者 博麗霊夢
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博麗神社に降り立った二人を夏油は笑顔で迎える。
「いやー、惜しかったね魔理沙あと一歩だったよ」
「最初に攻めきれなかった時点で私の負けだったよ」
「それでも魔理沙にとって今回の勝負は収穫が多かったんじゃないかな?最初に張った罠もとても良かったしね。あの罠は魔理沙が考えたのかい?」
「いや、私の友人の魔法使いに少しは頭を使え~って言われてな。さっきの罠はそいつと二人で考えたぜ」
「なるほど......で、霊夢はどうだった?」
「私?」
「少しは自分の衰えが理解できたんじゃない?」
「.......まぁ少しね、本当に少しよ!!!」
「うん、それでよし」
─グウゥゥゥ─
丁度、夏油と霊夢の問答が終わると同時に魔理沙の腹の虫が鳴く。
「あ、いやー一戦やったら腹減っちまったぜ」
「ふふ、私が肉マンを買ってきてるから皆で食べよう」
「お!良いな早速食べようぜ!!」
神社の居間に移動しようとする魔理沙を霊夢が掴んで静止させる。
「あんたそんな汚れた状態で食べる気?全身すすだらけじゃない、私達も食べるんだから風呂にでも入って綺麗にしなきゃ」
「え~良いじゃねぇか霊夢ぅ、それに私着替えもってきてないぜ?」
「私の貸してあげるから」
霊夢に浴場へ引きづられて行く魔理沙を夏油は見送り、二人に呼び掛ける。
「私は魔理沙の分のお茶を用意するからゆっくりしておいで」
「そうさせて貰うわ」
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「「「かんぱーい!!」」」
三人はちゃぶ台を囲み湯飲みを掲げる、雰囲気はさながら飲み会だ。
三人は各々肉マンを手に取り談笑する。
「うおっ!?この肉厚、もしかして里限定のヤツか傑!!」
「その通りさ、朝の六時から二時間並んで買ったんだよ」
「二時間!?でもこの旨さは並ぶ価値ありだぜ」
「本当よ、あ~この肉マンが毎日食べれたらなー」チラッ
「そう期待を込めた眼差しを送ってもらっても困るよ霊夢」
「ほふへはほふやっへあふまふのひふふひは?」
「魔理沙、あんたはまず口の中の肉マンを飲み込みなさい、汚いわよ」
「ゴクン!!!そういやこうやって三人集まるのいつぶりだっけ?」
「私の記憶では最後に集まったのは、私の元服祝いの時以来かな」
「じゃあ一年くらい経っているって事か....時間が経つのは早ぇな、寺子屋でバカやってたのが昨日の事みたいだぜ。あ、寺子屋と言えば傑って里の自警団と掛け持ちで寺子屋の教師もやってるんだって?」
「教師と言えるほどのものじゃないよ、あくまで慧音先生の手伝いさ」
「はへー、教師なんてあんた良く出来るわね傑。今の生徒と言えばあのうるさい氷妖精とかでしょ?私なら到底無理だわ」
「そう言うな霊夢、確かに手のかかる子達だけど皆良い子達だよ。少なくとも二人より」
「はぁ~?魔理沙はともかく私は優等生だったんですけどー」
「はぁ!?霊夢のが問題児だったろ!!慧音の授業ほとんど寝てたじゃねぇか!!」
「でも試験は毎回満点だったわよ?」
「くっ、それ言われると何も言い返せねぇ」
三人は肉マンを頬張りながらひさびさの昔話に花を咲かせた。
時間も過ぎ、昼頃にさしかかると夏油と魔理沙は帰る準備を始めた。
「いやーでも三人集まるとやっぱ楽しいな!!」
「たまには、こうやって集まるのも悪くないね」
「じゃあさ今度三人で飲み会しようぜ!人里で!!」
「あらそれは良いわね、すき焼きでも囲んで一杯パーっとやりたいわ。傑の奢りで」
「えっ?」
「だろ!!じゃあ来週の週末はどうだ?私の店の定休日だしパーっとやろぜ、傑の奢りで!」
「あ、私の奢りなのは確定なんだね」
「お前この中で一番の金持ちだから当たり前だろ?....っと、もう時間だし私はもう行くぜ」
魔理沙は竹箒に跨がり空に浮かび上がる、魔理沙は霊夢と夏油に向き直る。
「じゃこの続きはまた今度な!」
「帰り道気をつけるんだよ魔理沙!」
「おう!じゃあなー!!!」
そう言って魔理沙は空を飛び博麗神社を後にする。魔理沙を見送った夏油は側にエイのような妖怪(以後:エイ妖怪)を召還しその上に座る。
「それじゃ私も午後の寺子屋の授業に出なきゃだから、おいとまさせて貰うよ」
「ええ、次は肉マン20個お願いね」
「まぁ、できるだけ努力するよ」
夏油は霊夢との問答を終わらせると、エイ妖怪の背中を軽く叩く。それが合図となりエイ妖怪は夏油を乗せて空を飛んだ。
二人を見送った霊夢は軽く伸びをして博麗神社を改めて見る。
(博麗の巫女......ねぇ)
「本当、面倒なものを引き継いだわ.........暇だし掃除するか」
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博麗神社から飛んで数分、夏油の前に一つの集落が現れる。幻想郷において唯一人が住む場所『人里』である。
夏油は人里の東門の前でエイ妖怪を収納し地上に降り立つ、そこに丁度門番をしていた自警団の一人が夏油に挨拶をする。
「こんにちは夏油さん!!」
「こんにちは、門番お疲れ」
夏油は門番に軽く会釈すると門を通り里に入る、夏油の眼前に活気溢れる里が写し出される。
幻想郷が外の世界から切り離されて500年、里は今でも古きよき日本の姿をしていた。
人里の繁華街を夏油は歩いて行く。
「ほらほら安いよ安いよ~!!!あ、夏油さんお疲れ様です」
「ああ、お疲れ!」
「夏油さん!お帰りなさい!どうです?今から一杯しません?」
「これから授業に出なきゃだから遠慮するよ」
道行く人々皆が夏油に挨拶をする。その様子はさながらスーパースターとそのファン達、と言った所だ、それだけ夏油は人里で絶大な人気を博していた。だがこれにはちゃんと理由がある。理由は簡単、夏油が里の英雄だからだ。
夏油は元服後、里を守る自警団に入隊、自警団はそれまで主に人を襲う妖怪を相手にするので死者、行方不明者、がそれなりに出る仕事だったが、夏油の入隊後死者、行方不明者がめっきり減ったのだ。夏油が自警団一人一人に自分の取り込んだ妖怪を宛がったからである。夏油の宛がった妖怪達は隊員達と協力し人里を守っている、なので隊員一人一人の戦力が上がり、もしもの時は妖怪をおとりに逃げれば良いので隊員の生存率がぐんと上がったのだ。その事から夏油は、里の人間達からとても信頼と尊敬を受けており夏油本人の物腰柔らかな態度も相まって夏油人気は止まることを知らなかった。自警団からも階級の二段上の給与を貰っている。
夏油が里の人達と話していると、丁度近くの弁当屋から長く青のメッシュが入った銀髪をし頭には頂に赤いリボンをつけ、珍妙な形の青い帽子を乗せ、胸元が大きく開き、上下が一体になって胸元に赤いリボンをつけた服を着て、幾重にも重なった白のレースがついているスカートを履く女性。寺子屋で教師を勤める『歴史を食べる(隠す)程度の能力』を持つ半人半妖怪『上白沢慧音』が出てくる。
慧音は夏油を見つけると話しかけに行く。
「やぁ、夏油!相変わらずの人気だな」
「慧音先生、ええありがたいことに。先生は昼食を買いに?」
「ああ弁当は忙しくて用意出来なくてな」
夏油と慧音はそのまま並んで寺子屋に向かう。
「それで、霊夢はどうだった?元気にしていたか?」
「そうですね、昔と変わらずぐーたらしてましたよ」
「なんだと?全くあいつは.......もう少し博麗の巫女の自覚をだな.....」
「全くですよね本当に......まぁ、喝は入れて来たので多分大丈夫ですよ。あ、そういえば魔理沙も来ましてね、ひさびさに三人で騒ぎましたよ」
「魔理沙もか!ふっ、思い出すなお前ら悪ガキ三人組」
「悪ガキ三人組って、私は二人と違って優等生だったでしょ」
「寝言は寝て言え夏油。お前ら三人は私の教師人生でも特に手のかかった子供達だよ」
夏油と慧音が話していると目的地の寺子屋に着く。夏油は寺子屋の玄関を通ると教室に入る。
夏油が教室に入ると、青い服装に氷の羽根を持ち、薄めの水色のウェーブがかかったセミショートヘアーの髪型した青い瞳の少女『冷気を操る程度の能力』を持つ『氷の妖精』『チルノ』がいち早く出迎える。
「お~おはよう!!前髪先生!」
「今はこんにちはだよチルノ、それに傑先生か夏油先生と呼びなさいと何度も言ってるだろう」
「え~前髪先生のが良いって!!分かりやすいし!」
チルノと夏油が話している所に、白のシャツに青い服を着用する、緑の髪を左側頭部をサイドテールにまとめて黄色いリボンをつけた少女『大妖精』がやってくる。
「も~夏油先生困ってるよチルノちゃん」
「前髪先生って名前に慣れちゃったもん」
「もぅ!夏油先生うちのチルノちゃんがすみません」
「いや良いよ、大妖精は相変わらず良い子だね」
ふと夏油の後ろに夏油に噛みつこうとする闇が現れる。
白黒の洋服を身につけ、ロングスカートを履いた黄髪の髪をボブにした少女『闇を操る程度の能力』を持つ妖怪『ルーミア』である。
夏油はルーミアの噛みつきを察して、自分とルーミアの間に妖怪を挟むことで噛みつきを防御する。
「あむっ!...ムグムグ....これ人間じゃないぞ~」
「はぁ、ルーミア....なにも言わずいきなり人間に噛みついちゃダメだと、前注意したろ?」
「そーなのかー」
「そーなのだー」
夏油とルーミアの問答中にルーミアの後から二人の少女が教室に入ってくる。
燕尾状に分かれたマントを羽織り白シャツに紺のキュロットパンツを履いた、ショートヘアカットの緑色の髪の少女『蟲を操る程度の能力』を持つ妖怪『リグル・ナイトバグ』
雀のようなシックな茶色をしたジャンパースカートを履き、曲線のラインにそって紫のリボンが多数あしらわれている服を着る、桃色髪の少女『歌で人を狂わせる程度の能力』を持つ妖怪『ミスティア・ローレライ』この二人だ。
二人は教師に入ると夏油に挨拶をする。
「こんにちは夏油先生!今日も良い前髪してるね!」
「それは皮肉じゃないだろうね?リグル」
「夏油先生こんにちは!今度屋台に出す料理試食して貰って良いですか?」
「やぁ、ミスティア私で良ければ是非」
チルノ、大妖精、ルーミア、リグル、ミスティア、この教室で勉強する五人が全員集まった。
チルノはそれを確認すると全員に声をかける。
「よし、ルーミアもリグルもミスちーも揃ったし昼飯にしよう!!」
チルノの掛け声と一緒に五人は教室の中心に集まり、それぞれ用意した弁当を広げて皆で談笑しながら食べ始める。夏油はその様子を静かに見守っていた。
三十分もすれば皆食べ終わり寺子屋の昼休憩も終わった。夏油は食べ終わったのを確認すると五人に呼び掛ける。
「さぁ、昼休憩は終わりだよ!全員席に着いて!」
夏油の呼び掛けに答えて五人はそれぞれの席に座る。しばらくすると教室に慧音が本を持って入ってくる。
「よし、この時間は国語だ!今から紙を渡すから全員名前を書けよ!夏油先生紙を配って下さい」
「わかりました」
夏油は慧音の用意した紙を手に取り配って行く、その間慧音は黒板に用意した本のあらすじを書く。
ふと、夏油の手が止まった。
慧音はそれに気付き夏油に問いかける。
「どうしました夏油先生?」
「慧音先生、五人を安全な場所へ...里の人達をできるだけ東門寄りに避難させて下さい....西の方角で妖怪が数体殺されました」
「!? わかった!!」
────────────────────────────
同時刻、人里の西門から一人の自警団隊員があわてて里に入ってくる。隊員はそのまま力一杯叫んだ。
「化け猿だ!!!!でけぇ化け猿が襲ってきっ」
─ドゴォォォン!!!!!─
瞬間、隊員の入ってきた西門が爆発する。爆煙から十メートルはあろう化け猿が顔を出す。
里は一気にパニック状態になった。
「妖怪だ!!入ってきやがった!?」
「皆逃げろ!!!」
化け猿は逃げ惑う里の人々を襲おうと、大岩のような腕を振り上げる。
「駄目だ!!避けきれねぇ!!!」
化け猿は人々に向けて拳を振り下ろす。
─その腕を虹色に輝く龍が食いちぎる。
ぎゃあぁあああぁ!!!!!!!!???!!?!!
獣の咆哮が人里に響く、痛みにのたうち回る妖怪の前に彼は降り立つ。
逃げる人達は一斉に彼の名前を叫んだ。
「「「「夏油さん!!!」」」」
「危なかった、皆さん早く避難を!!」
「「「は、はい!!!」」」
夏油の呼び掛けに答え人達は東門の方角に避難する。化け猿は自分の腕を噛みきった龍とそれを従える夏油を威嚇する。夏油はそんなこと意に返さず余裕の表情を崩さない。
「ふむ、図体はデカイが頭は小さいようだね、弾幕ルールも理解してなく見える.....ま、知っていたらここまで派手に里の襲撃はしないか」
化け猿は片腕で夏油を襲うが、夏油はそれを難なく避ける。
「ここまでしたんだ、君はここで祓う!虹龍!!」
夏油が虹龍と呼んだ虹色の龍は真っ直ぐ化け猿へ突撃していく、化け猿はそれを迎え撃ち虹龍に殴るが、逆に殴った化け猿の手がへし折れてしまう。
「虹龍は幻想郷の中でも指折りの固さを持つんだ、下手に攻撃すると自分が怪我するよ」
虹龍は突進を止めずにもう一本の腕も食いちぎる。痛みに咆哮しながら化け猿は虹龍を振り切り夏油に噛みつこうと走り出した。
が、それを無数の御札が止める。
それを見た夏油は笑みを浮かべながら空に浮かぶ彼女を見る。
「速かったじゃないか霊夢」
「まあね、事が起これば来るわよ......一応博麗の巫女だし」
「フフ、何はともあれ助かったよ」
そこにさらにもう一人化け猿の前に少女が降り立つ、普通の魔法使い魔理沙だ。
「里の方からすげぇ音がしたから急いで来たけど大丈夫だったか傑」
「ああ、少なくとも死者は出していない、皆避難させた、被害と言えば西門と家がいくつか吹き飛んだくらいかな」
「じゃあ良かったぜ」
「ちょっと二人とも話はそこまでにして」
霊夢の発言と同時に化け猿の拘束が解かれる。その様子をみた魔理沙は夏油と霊夢に質問する。
「こいつ知能はないのか?」
「無いね、頭は猿並み....いやそれ以下かも」
「弾幕ルールを理解してる素振りは無いしね.....こいつは退治対象よ」
「完全に祓いきらないでくれよ?後で取り込む、あの図体は使い時がありそうだ」
「ま、何でもいいけどさっさと退治しようぜ!!!」
魔理沙はミニ八卦炉を持ち、霊夢はお祓い棒と御札を構え、夏油は大量の妖怪を召還する。
今の状況に魔理沙は笑みを浮かべる。
「三人で暴れんのは久々だな!!」
「あんま物は壊さないでくれよ魔理沙?」
話し合う夏油と魔理沙を霊夢が注意する。
「無駄話しない!!!行くわよ二人共!!!」
「「応!!」」
そうして三人は化け猿に突っ込んでいく。
──この物語は霊夢、魔理沙、夏油、の三人がこの幻想郷を様々な脅威から守る物語である。
霊夢「傑あんた自警団と寺子屋の教師を兼任してるのよね?もしかして給与も二つ貰ってんの?」
夏油「一応、自警団分と教師分貰ってるよ」
魔理沙「どんくらい貰ってんだ?」
夏油「ざっと~~~位だよ」
魔理沙「ブフゥッ!!!!?!!!!!??」
霊夢「はあ!!!!???貰いすぎでしょ!!!なっ、ちょっと傑!!給与半分置いていきなさい!!」
夏油「ちょ、博麗の巫女ともあろうものが追い剥ぎの真似事とは!?って、霊夢止めるんだ!!ポケットには何も入ってないぞ!!止めろまさぐるな!!」
次回『第二話 紅霧異変 始まり』
霊夢「本当に何も入ってないとは」
夏油「もうお婿に行けない」