第十一話 青い春 出会い
─紅魔館 庭
どんちゃん騒ぎのお祭りムード、紅魔館の庭は賑わっており、その中心で霊夢と魔理沙は料理にお酒、次々と出されるご馳走達に手を出していた。
「ぷはー!!やっぱ咲夜の出す料理は絶品ねー!!!」
「この『わいん』ってやつも中々イケるぜ!霊夢!!」
「二人共、ほどほどにしなよ?」
爆食い、爆飲みする二人の元に料理をお皿いっぱいに乗せた夏油がやってくる。
「おー傑!!飲んでるぅ?」
「飲んではないけど楽しんでるよ! 咲夜さんの出す料理は絶品だからね」
「宴会は酒を飲まなきゃ始まらないでしょー?」
「ほどほどに嗜むよ、あと霊夢酒臭いよ」
「あ~なんらって~、ヒック!」
「これは長く持ちそうに無いな....」
夏油は料理を口に運びその味を噛み締める、ふと魔理沙が夏油の料理を強奪する。
「あ、それ私の料理だよ魔理沙!?」
「あ~?これは私のだぜ傑!!」
「相変わらずの盗人精神....」
「ケチケチすんな~、アムッ.....ごっ!?詰まった!!傑!!水!水!!」
「急いで口に運ぶからだよ、全く、ちょっと待ってて」
夏油は魔理沙の為に水を取りに行く。
飲み物が置かれてある机に行くと一人の少女と出会う、宝石のような羽を持つ金髪の少女『フランドール・スカーレット』だ。
フランは夏油に気づくと途端に挙動不審になる。
「あ、夏油...さん、こんにちは」
「こんにちはフラン嬢お邪魔してます、何かお飲み物をお探しですか?」
「あ、オレンジジュースを......あの、失礼します!」
「え、あの」
フランは夏油に目も合わせずに、オレンジジュースを持って走って行く。
夏油はフランの態度を不思議に思う。
(うん? もうちょっと明るい子かと思ったけど、パチュリーさん達から聞いているフランさんとだいぶイメージが違うな...)
夏油は水を持つと魔理沙の元へ向かう。
(まあ、フランさんは最近外に出たばかりだし、館の人達以外の人との接し方がわかんないのだろう)
夏油は魔理沙の待つテーブルまで行くと、フランが楽しそうに魔理沙と話す姿を目撃する。
「マリサ!!このトリュフ美味しいよ!!」
「んぐ、本当だ!!うめー!!」
「でしょー!!」
その光景に夏油は言い表せないショックを受ける。
(え、あんな楽しそうに!?私のこと避けたのに!?え、私フランさんに嫌われてる!?)「.....いや、まさかね........魔理沙、水持ってきたよ、その様子だと要らないかもだけど」
「お!ありがとな傑!!」
「あ、夏油さん」
フランは夏油を見ると魔理沙の後ろに隠れてしまう、夏油はフランの行動に驚愕とショックを受ける。
(明らかに今避けられた!?え、私何かした!?)
「あ、マリサ、私料理取ってくるね」
(更に逃げられた!?心当たりが無いから普通にショックなんだが!?)
「ハハハ!何だ傑!!その顔ウケるw」
「私、フランさんに何かしたか?」
「フランの態度は気にしないでゲトー」
悩む夏油の背後にレミリアとパチュリーが現れる。
「レミリア嬢、パチュリーさんまで...気にしなくて良いとは?」
「それについてはゆっくり話したいわ........咲夜!」
レミリアの呼び掛けと同時にレミリアの横に綺麗な状態のテーブルと椅子が3つが出現する。
レミリアとパチュリーは椅子に座り、レミリアは夏油に座るよう催促する、夏油は素直に椅子に座りレミリアに話しかける。
「私、フラン嬢に何かしましたかね、心当たりが無くて...」
「気にしないで貴方は何も.....いや、むしろ何かしすぎたからこうなっているのかしら」
「はあ?」
レミリアは夏油用にグラスを一つ出してワインを注ぐ、その間にパチュリーが夏油に話しかける。
「そうね、簡単に言えばフランは貴方に負い目を感じてるのよ」
「負い目ですか?」
「そう.....本当、似た者姉妹よね」
パチュリーはレミリアをチラッと見る。
レミリアはとぼける仕草をして、夏油に向き直る。
「まあ、パチェの言っていることが正しいわ、これはつい昨日の会話だけれど」
────────────────────────────
「お姉様、明日の宴会についてだけど」
「どうしたの?不安そうな顔して?」
「あのゲトーさんって人も来るんだよね?」
「もちろん招待してるわよ、彼は私たちの恩人だからね....それがどうかしたの?」
「私、あの人とどう接すればいいんだろう....」
「どうって、普段どうりでいいのよ、霊夢や魔理沙と同じように接してあげればそれで十分よ」
「レイムやマリサと同じように.......でもやっぱり申し訳ないって言うか、あの人は私を助けてくれたけど、私は傷つけただけで何も返せていないのに.....普通に接するなんて」
「何かお返しをしてあげたいって考えてるなら、なおさら普段通りに接してあげなさい、普通に接して仲良くなればそれが自然と恩返しにもつながるわ」
「でも......」
────────────────────────────
「私からも気にしないでって言ってるけど、あの子変なところで頑固だからね」
「そんなことが.....」
レミリアと夏油は困った顔をして、ワインを口に運ぶ。
「まあでも別にあなたが嫌いって話ではないのよ、魔理沙と仲がいいのも、この2週間魔理沙がちょくちょく博麗神社に遊びに来て仲良くなったってだけだから...」
「私も2週間のうちに博麗神社に顔を出すべきでしたね」
「しょうがないことよ、あなたは傷の治療があったし」
「ま、嫌われてないってことが分かっただけ良かったです」
夏油がレミリアとパチュリーと談義する所を、フランは遠くから見つめていた。
「結局逃げちゃった、あーもうどうすればいいんだろう!!どうせだったらゲトーさんもレイムみたいにぐーたらだったらいくらか接しやすいのに!!」
「あら、フラン悩み事?」
悩むフランの元に霊夢が酒を片手に話しかける。
「あ、レイム.......別にレイムには関係ないよ」
「あらそう?でもせっかくの宴会なんだからシケた顔しないの!!」
「....... ねえレイム、ゲトーさんってどういう人なの?」
「んあ、傑?どうって.......優等生の皮をかぶったアホってとこかしらね、昔から」
「嘘だぁ、レイムと違ってゲトーさんは良い人だよ?」
「うるさいわね一々、言っとくけど傑をただの良い人って思ってんならそれは間違いだからね、あいつあれで結構迷惑なやつなんだから」
「そうなの?」
「本当よ、初対面の時なんか大変だったんだから」
霊夢はそう言って夏油達との出会いを思い返す。
────────────────────────────
─10年前 人里 寺子屋前
ここに一人の女性が一人の少女を連れてきていた。
「ホントに行かなきゃだめなの~?」
「紫様の命だ、それに力だけでは博麗の巫女は勤まらんぞ」
赤と白の巫女服に身をつつむ少女、幼き日の博麗霊夢は寺子屋の門の前で面倒臭そうにする。
そんな霊夢を隣に立って注意するのは、ゆったりとした長袖ロングスカートの服に青い前掛けのような服を被せている金髪ショートボブの女性『八雲藍』だ。
藍が霊夢の態度を注意していると、寺子屋の門が開き中から今と変わらない姿の慧音が出てくる。
「お久しぶりです藍さん、そちらが例の?」
「お邪魔しています慧音さん、ええ、こちらがこれからお世話になる事になる博麗霊夢です、ほら、挨拶しなさい!」
「霊夢よ」
「よろしくね霊夢ちゃん、私は上白沢慧音、仲良くしてくれたら嬉しいな」
慧音は霊夢に握手を求めるが、霊夢はそれを冷めた目付きで見て横を素通りする。
「あっそ、じゃあ私先行くから」
「え、ちょ」
「コラ!待ちなさい霊夢!失礼だぞ!!」
霊夢は藍の静止を聞かずにそのまま寺子屋の教室に入っていく。
藍は霊夢の態度に頭を抱える。
「すいません、わがままなやつで」
「いえいえ!お気になさらず、あれぐらいが普通ですよ!」
「これから色々迷惑をかけるだろうが、よろしく頼む」
「任せてください!藍さん!」
藍は慧音に軽く会釈すると空を飛んで帰って行く。
藍を見送りながら慧音は考える。
(とはいえ、なかなか気難しい子が来たな)
霊夢は教室の席に着くとつまらなさそうに外を見ていた。
(日々の修行だけでもつまんないのに、さらに寺子屋なんて...憂鬱だわ)
「や、君もしかして博麗の巫女かい?」
「あ?」
そんな霊夢に声をかけられる、霊夢が声の方を見ると、浴衣に身をつつんだ特徴的な前髪をした少年、幼き日の夏油傑がいた。
(変な前髪.....)「あんた誰?」
「私は夏油傑、寺子屋を右の方に行った蕎麦屋の息子なんだけど、君、その服もしかして博麗の巫女の服じゃない?」
「そうだけど?だって私が博麗の巫女だもの」
「やっぱりだ!!」
夏油は霊夢の手を取り顔を近付ける。
霊夢は夏油の突然の行動に驚く。
「ちょ、何なのよ!?」
「私、博麗の巫女の大ファンなんだ!!本屋で博麗の巫女伝説を読んでからずっと憧れなんだよ!嬉しいな本物に会えるなんて!」
「あーもう鬱陶しいから手を離しなさい!!」
霊夢は夏油の手を振りほどくと夏油を睨み付ける、夏油はそんな霊夢の目線なんて気にせずに陽気な笑顔を霊夢に向ける。
「なあ、やっぱり修行はしてるのかい?本に書いてあった夢想封印ってやつはもう打てるのかい!!」
「あああ!!鬱陶しいやつね!!!」
「なあ、もっと博麗の巫女について教えてくれよ!!」
夏油が霊夢に詰め寄っていると、教室のドアが─ガラリ─と開き一人の少女入ってくる、黒い服を身に纏った金髪の少女、幼き日の霧雨魔理沙だ。
魔理沙は夏油と霊夢を発見すると二人に駆け寄る。
「よ!!お前らが私と同じクラスの奴か?」
「そうだよ」
「また変な奴が来た...」
「わはー!! 私は霧雨魔理沙だぜ!!よろしくな!!!」
「私は夏油傑、よろしく魔理沙」
「傑か!よろしくな!お前は?」
「......霊夢よ」
「霊夢か!よろしく!!」
魔理沙は二人にハイタッチを求め夏油はハイタッチに答え、霊夢はそれを理解出来ない顔で見る、魔理沙は変わらず霊夢からもハイタッチを求める。
「は?いや何それ」
「? 何って、ハイタッチだけど」
「え、なんか意味あんの?」
「ん~、特に無いぜ!!」
「意味解んないんだけど...なんで私とあんたがそれをする必要があんのよ」
「だって私たち友達になるだろ? これはその一歩だぜ!!」
「あ、私も霊夢と友達になりたいかな!」
「っ、ふざけないで!!」
霊夢が突然怒鳴り魔理沙と夏油はビックリして静まり返る、霊夢は冷たい口調で二人に語りかける。
「先に言っとくけど、私はあんたらと仲良くするつもりないから、 ここに来たのだって紫に言われて藍に無理やり連れてこられただけだし」
「「.......」」
「だから私にあんま関わんないで、うざいだけだから」
霊夢が語り終えると慧音が教室に入ってくる。
「とりあえずこのクラスはこれで全員だな、よし!みんな席に着いてくれ」
慧音の呼び掛けに答えて夏油と魔理沙は自分の用意された席に座る。
霊夢は頬杖をついて再び外を見つめる。
(つまんない.......なんでこんなところに来なくちゃいけないんだろう、誰かと群れようなんて思ってないのに)
「........」
夏油はそんな霊夢の様子を静かに見つめていた。
─青い春への第一歩は険悪なムードの中踏み出された。
霊夢「いやーメイドってやつは素晴らしいわね!!掃除に洗濯に料理!!ゴロゴロしてるだけで全てが出来る!!」
咲夜「ここまでこき使われるとは、いくら恩人とは言え...」
霊夢「ほらほら!もっと料理出しなさいよ咲夜!!」
咲夜「我慢よ咲夜!!紅魔館が立つまでの我慢....!!」
次回『第十二話 青い春 鬱陶しい奴ら』
霊夢「咲夜早くー!!」
咲夜「あ、駄目だキレそう」