─紅魔館門前
「地下には行かないでください」
門をくぐって館の中に行こうとする夏油に、美鈴が語り掛ける。
美鈴の発言に夏油は疑問を覚える。
「地下?ですか」
「はい、地下は危険ですので......まぁ、主犯であるお嬢様は最上階の部屋に居るので関係無いですけど。地下に続く扉が合っても開かないでくださいね、ましてや入ったりもしないでください」
「..............分かりました」
夏油は美鈴との話を終えると、館の中に入っていく。
玄関ドアを開けて最初に夏油の目に入ったのは、焼け焦げた床に気絶している咲夜の姿だった。
「これは........残穢からして霊夢の仕業か」
夏油は残穢から霊夢が咲夜に勝ったこと。
そして、その後階段を上がって最上階へ向かった事を推察する。
そこで夏油が引っ掛かったのは美鈴の警告の言葉。
(霊夢は上に行ったか....美鈴さんの発言を信じるなら、異変の主犯であるお嬢様とやらは最上階の部屋に居るらしいが、私も上がって霊夢と合流するべきか)
夏油は玄関ホールの周りを見渡し、ふと考える。
(..........地下か、一体何があるんだ?)
美鈴は見謝った、一見物腰柔らかな態度を取る夏油は忠告すれば聞いてくれる人物と思ったのだ。
が、夏油は人里で有名な悪ガキ三人組の一人、行くなと言われれば行ってしまうのが夏油傑と言う人間なのだ。
また、久々の大異変心のどこかで刺激に餓えていた夏油は地下がどうしても気になった。
また、霊夢や魔理沙と言った仲間の存在が夏油の気を緩ませてしまう。
「上には霊夢が行ったし、一応地下の確認をしなきゃね!危ないモノが持ち込まれていたら何とかしなきゃだし、うん異変解決の為に必要な事だねこれは!」(何かあっても霊夢と魔理沙が居れば大丈夫だろう)
好奇心には勝てず、夏油は大量に妖怪を出現させて館を探索させる。
数分後、妖怪の一匹が地下に続く扉を発見する。夏油は妖怪の見つけた扉の前まで行く。
扉はがっちりと閉じられた刑務所を思わせる無愛想な鉄扉で、その明らかに場違いなゴツい扉に夏油は疑問を抱く。
「こんなデカイ鉄扉、一体何が地下にあるんだ...?」
夏油は鉄扉を引いて開ける。
─ギギィィィ─と言う鈍い音と共に鉄扉が開き、扉の奥が見える。
鉄扉の奥は先が見えない程の長い地下階段があった。
「一体どこまで降りるんだ、この階段」
夏油は妖怪で前後を挟み、警戒しながら慎重に階段を降りていく。
数分後、階段の先に鈍い光が見える。
「光...あそこが終点か」
夏油は光の前に到着する。
光の奥には、今度は綺麗な装飾が施された鉄扉が合った。
「また鉄扉.....この奥に危険な何かがあるのか?」
夏油は鉄扉のドアノブに手を掛けて、─ガチャン!─という音と共に扉を開ける。
「誰?」
幼く甘い声が響き、扉を全て開ける前に夏油の手が止まる、いや
声を聞いた夏油は、金縛りに合ったように動けなくなってしまった。
(なん......だ、声? 子供の....でも、この殺気、いや『狂気』か?これは....!!??)
幼い声の主は扉の奥から夏油に語り掛ける。
「う~ん、知らない匂いだね....美鈴でも咲夜でも無い、もしかして.......新しいオモチャ?」
声の感覚が近くなり夏油に緊張が走る。
(っっ!!!!??? 異常だ、この感覚は!?生身の心臓に直接ナイフを突き立てられたような緊張は!!?)
「早く入ってきなよ?遠慮しないで良いから、恥ずかしがらず....ハイッテきてイイよ.....」
扉の隙間から可憐な腕が出てきて、夏油の手を掴む。
夏油は振りほどこうとするが、可憐な腕は見た目に似合わない怪力で夏油の腕を固定する。
「なっ!?」(この力!!?人間じゃない妖怪か!!)
扉の奥の存在は夏油の手を掴んだまま、夏油に語り掛ける。
「フフフフ、何して遊ぶ?隠れんぼ?オママゴト?ソれトモ.....」
(不味い!!!)
危機を感じた夏油は、幼い声が全て言い終わる前に妖怪を出現させて─ドガァァァン!!─と扉ごと部屋を破壊する。
反動で夏油を掴んでいた腕は夏油の腕を離れる。
夏油はその場を反転し階段を掛け上がり、地下に来たことを後悔する。
(大人しく美鈴さんの言うことを聞いておくべきだった!!つい調子に乗ってしまった!!ここに居るヤツは不味いヤツだ!!)
崩れた部屋の中で幼い声が響く。
「ソっか、鬼ごっコがイイんだね」
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─紅魔館大図書館
パチュリーを倒した魔理沙は先へ進もうと、図書館の扉に手を掛ける。
「待ちなさい、ゴホッ」
魔理沙を静止する声が響く、パチュリーだ。
魔理沙は声をかけてきたパチュリーに答える。
「なんだお前、起きたのか」
「そのまま帰る事をオススメするわ、ゲホッ、人間の魔法使い」
「はぁ?何でだよ、ここまで来たのに」
「言ったでしょう、実力不足だって.......私に手こずるようじゃ、レミィには勝てないわよ」
「私に負けた癖に随分偉そうだな、お前」
「事実を言ってるまでよ、今帰るか、レミィに負けて帰るかの違いですもの。だったら今帰るべきじゃない?それが賢いモノの判断よ」
「何で私が負ける前提なんだよ!! たく、そのレミィってヤツがドンだけ強くてもな例え勝率が一%でも、私は戦うぜ!!そんで勝つ!!負けた時は負けた時だ!!」
「.......理解出来ないわ、バカの言うことね」
「あっそ、話は終わりか?じゃあ私は行くぜ」
魔理沙は大図書館から出ようとする。
─ドガァァァァァァァン!!!!!─
─魔理沙の目の前の地面が吹き飛ぶ。
突然の出来事に魔理沙とパチュリーと小悪魔は驚愕する。
「一体何だ!!!!??」
「ひぃぃぃ!?パチュリー様何したんですか!!!?」
「違う、私じゃないわ!!! 地下から!?まさか!!」
爆発の煙幕の中から、エイ妖怪に乗った夏油が飛び出してくる。
魔理沙は煙幕から出てきた夏油に問いかける。
「傑!? お前これどういう事だ!?」
「っっ!!!!! 魔理沙!!!??」
夏油は魔理沙の存在に気付くと目一杯に叫ぶ。
「逃げろ!!!」
「っ!?」
夏油の尋常ならざる態度から、緊急事態なのを察知した魔理沙は近くにいたパチュリーと小悪魔を抱き、箒に股がってその場から飛び立つ。
夏油を追うように煙幕の中から
深紅を基調とした半袖とミニスカートを着用し、深紅の瞳と黄色い髪をした、背中に七色の宝石のような羽を持つ三人の少女達だ。
少女達の姿を見て魔理沙とパチュリーは驚愕する。
「三人共同じ顔!?」
「『フランドール』!!!??地下から脱出したの!!!?」
「あ、
「っ、彼女は『フランドール・スカーレット』....この館の主、『レミリア・スカーレット』の『妹』よ!」
「妹!!??」
フランドールと呼ばれた三人の少女は執拗に夏油を狙う。
「ほらほら早く逃げないと捕まえちゃうよ!!お兄さん!!!」
「くっ!!」
「お兄さん、面白いね!!色んなオモチャを出せて!!こんな人初めてだよ!!!」
三人のフランドールは炎の剣を出現させて、夏油に斬りかかる。
─ガキィィン!!─
夏油は虹龍を自分に巻き付くように出現させて、フランドールの攻撃を防ぐ。
「アハハハ!このドラゴンさん凄く堅いね!!レーヴァテインが効かない!!」
「吹き飛ばせ!!虹龍!!」
─バギィ!!!─
夏油が腕を振って虹龍に指示を飛ばし、虹龍は尻尾を使って三人のフランドールを弾き飛ばす。
その隙に夏油は魔理沙と合流する。
「傑!?大丈夫か!?」
「ああ、なんとかね! それよりも気を付けるんだ魔理沙!あの少女は分身の能力を使ってくる!!」
「分身!!じゃあ、あの三人は偽物か!!」
「いや、逆だ魔理沙、
「何だって!!?」
「既に分身元の一体は地下で私が倒した、が、分身は消えなかった!!このことから彼女はどれが本体か常に選択出来るんだろう、本体が危なくなったら安全な分身を本体に出来る!!」
「成る程、『分身をする程度の能力』、それが
「違うわ!!」
魔理沙の発言をパチュリーが否定する。
「フランの能力はそんな生優しいモノじゃないわ、もっと恐ろしい能力よ」
「恐ろしい能力?」
「っ、魔理沙!来るぞ!!」
夏油と魔理沙めがけてフランドールの放った弾幕が飛んでくる、夏油と魔理沙は本棚を盾にして弾幕をやり過ごす。
本棚越しにもわかるフランドールの弾幕の異常な威力に魔理沙は恐怖する。
「この威力!!!当たっただけで致命的になる威力だぜ!!明らかに弾幕ルールを無視している!!」
「フランにルールなんて概念は無いわ!!!仮といえど家族を悪く言うことは嫌だけど....彼女は気が触れているのよ......逃げることだけに集中しなさい!!」
パチュリーの言葉に急かされて魔理沙はその場から飛び去る。
フランドールの一人が本棚を切り裂いて、飛んでいる二人に迫る。
「アハハハ!!そこの金髪のお姉さんも私と遊びたいんだね!!」
夏油はイカ妖怪を飛ばしてフランドール達を牽制する。
パチュリーが魔理沙の手から離れ、フランドール達の前に立ちはだかる。
「地下へ戻りなさいフラン!!貴女は
「相変わらずパチェはうるさいなぁ!!!!!」
三人のフランはパチュリーに弾幕を集中させる。
パチュリーは複数の魔法壁を出すことでフランの攻撃を防ぐ。
フランドールはパチュリーに迫りながら語り掛ける。
「せっかく出たんだから!!400年ぶりに!!!丁度良い機会だからね!!!!私は今日から自由になる!!!」
「っっ!!! フラン....!!」
三人のフランは夏油の弾幕をくぐり抜けてパチュリーに迫る。
しかし、星型の弾幕がフランの行き先を塞ぐ、魔理沙の放った弾幕だ
「おいおい!どういう事情があるか知らねぇけど、暴れるのはそこまでにしな!!!」
「こんな弾幕!!!」
フラン達は炎の剣を振るい、夏油と魔理沙の弾幕を蒸発させる。
パチュリーは魔法壁越しに水魔法を発動させる。
「これで大人しくしなさい!!フラン!!」
パチュリーの本から雨雲が出現し、三人のフランの周りに雨を降らせる。
夏油と魔理沙はパチュリーの行動を疑問に思う。
「おい、雨なんて意味あんのかよ!!」
「大有りよ、フランは『吸血鬼』! 日光と流水が弱点なのよ!!」
「成る程、流れる雨で動きを封じるのか!!」
フラン達は周りに降り続ける雨を冷めた目で見る。
「こんなんで私を封じれると思ってるの?パチェ」
「っ、地下室に戻りなさいフラン!!」
「それは嫌だって言ってるでしょ!!!」
三人のフランは炎の剣を合わせて、巨大な炎の大剣を作り出し、それを振るう事で雨雲を全て凪払う。
フランは雨の檻から脱出し、パチュリーに迫る。
「どうしたの?魔力の出力が落ちてるよパチェ!!!!」
「く、まだっ!? ガホッ、ゲホッ!!」
パチュリーは魔理沙との戦闘で受けたダメージが後を引き、フランの攻撃に対応する余裕は無かった。
フランの凶刃がパチュリーに迫る。
が、ギリギリのところで夏油がパチュリーを抱き抱えて、フランの攻撃を避ける。
「ゲホッ、あなだ...」
「大丈夫ですか?.....えっと」
「パチュリーよ、ゴホッ」
「パチュリーさん」
「逃がさないよ!!」
フランはパチュリーを抱える夏油に右手を向ける。
それを見たパチュリーが夏油に向かって叫ぶ。
「不味いわ!!!何でも良いから盾にして!!!!!」
夏油はパチュリーの警告を聞き、虹龍を夏油を守るように配置する。
フランは狂気の笑みを浮かべて呟く。
『キュっとして.....ドカーン』
瞬間、虹龍が内側から爆発する。
この現象に夏油は唖然とする。
「虹龍が、一撃!?」
「これがフランの能力よ」
パチュリーが青い顔をしながら呟く。
「右手を向けた先にある物体の『目』というモノを掴み、握り潰すことで対象を硬度関係なく破壊する、物も人も妖怪も全てを破壊する『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』!!!」
「それはまた厄介な能力を.....」
飛んでる夏油に魔理沙と小悪魔が合流する。
「傑!!また危ないマネを!!」
「パチュリー様大丈夫ですか!!」
「魔理沙!それよりも作戦を思い付いた!!」
夏油の発言にパチュリーと魔理沙は驚く。
「作戦!?本当か傑!!」
「この状況で嘘は言わない!!!それよりも魔理沙!!!作戦の説明の為にも一旦
「分かったぜ!!!」
「そこの
「はい!喜んで!!!」
夏油はパチュリーを小悪魔に預ける。
夏油と魔理沙は向かってくるフランに向き合う。
「私が妖怪を出す、妖怪が祓われたら一撃頼むよ!!」
「任せろ!!」
夏油はフラン達に向けて鎧武者を顕現させる、鎧武者はフランに向かって攻撃する。
「イヒッ、でっかくて良いね!!コワしがいがある!!!」
─ズバァァァァァアン!!!!─
フラン達は鎧武者の剣を粉々に砕いて、二人が両手両足を切断し、最後の一人が脳天から鎧武者を真っ二つに切り裂く。
魔理沙はミニ八卦炉をフラン達に向けて叫ぶ。
『喰らいな!!!恋符「マスタースパーク」!!!!!!』
「ワッ、眩し─」
七色のレーザーが三人のフランを包み込み─ドォォォォォォン!!─と轟音を立てて大爆発する。
夏油と魔理沙はこの隙にパチュリーと小悪魔を連れて、本棚の影に隠れる。
「それで、ゲホッ、作戦ってヤツは何?」
「簡単な作戦ですよ、説明の前にパチュリーさん一つ良いですか?」
「何よ?」
「貴女が万全の状態なら、彼女を雨の檻に完全に閉じ込められますか?」
「.......万全なら...いや、それでもあそこまで力を発揮したフラン相手じゃ数十秒止めるのが精一杯ね」
(フラン...それが彼女の名前か)「いや十分です、ではパチュリーさん、今の状態から万全、もしくは万全近くの状態まで回復するには、どれくらいの時間が必要ですか?」
「最低十五分はかかるわね」
「! 分かったぜ傑!!
「魔理沙正解!!但し一つ違う点がある、時間を稼ぐのは私達じゃなく『私』だ」
夏油の発言に魔理沙とパチュリーは驚愕し、パチュリーは夏油に物申す。
「ちょっと待ちなさい!一人で?出来るわけ無いわ!!能力だって見たでしょう!!?」
「確かに彼女の能力は凶悪だが穴もある能力だ、彼女の破壊の能力はあくまで『右手の先にあるモノの破壊』、術式の対象を自由に選択出来ない、例え右手を向けられても彼女が右手を握る前に、自分と彼女の右手の間に何か『モノ』を挟めば術式の対象はその『モノ』に移る、でしょうパチュリーさん」
(あの一瞬でそこまで!?)「......えぇ、そうよ」
「だったら、能力でいくらでも身代わりを出せる私が時間稼ぎに行くのは合理的でしょう」
「ち、ちょっと待て傑?! 私はどうすんだよ?」
「魔理沙、君はトドメ役だ。君は
「!? おまっ、それって」
「弾幕ルールは気にするな殺す気で行かなきゃ、殺されるのは私達だ」
夏油と魔理沙の話にパチュリーが割って入る。
「あなた達待ちなさい!! フランを殺すって話しなら乗れないわ!!」
「あくまで殺す気で行くだけです!本当に殺すつもりはありません。それに一度は完全に彼女の足を止めなければ、彼女の暴走の被害は私達だけでは収まらなくなる......それともここで一緒に殺されて、今の彼女を自由にしますか?」
「っ.....」
「それじゃ、作戦通りにお願いします.......私は時間稼ぎに行きます」
夏油は本棚の影から出ようとする。
魔理沙が夏油の手を掴む。
「魔理沙?」
「一言だ、傑」
「?」
「死ぬなよ」
「もちろん」
夏油は本棚の影から飛び出す。
三人のフランはバラバラにした鎧武者の身体の上で夏油達を探していた。
「皆何処に行ったのかな?」
「これじゃ鬼ごっこじゃなくて、かくれんぼだよ」
「私はかくれんぼでも良いけどね~、おっ!」
ふと、一人のフランが本棚の影から出てきた夏油を見つける。
「お兄さん見ーっけ、ウフフ次はどんなオモチャを出してくれるの?私が全部壊してあげるよ!!」
「すまないが私の妖怪は無限には出せないからね、ここからは....」
夏油の背後に一つの影が出来、影の中から芋虫のような妖怪(以後:芋虫妖怪)が顔を覗かせる。
夏油は芋虫妖怪の口から赤い三節棍を取り出し、戦闘態勢を取る。
「直に叩かせてもらうよ、フラン嬢」
「へぇ、簡単には壊れないでねお兄さん」
─夏油、最大の決戦が始まる!!
霊夢「はぁ~、時間が足りなーい!何で時間ってこんな早く経つのよ!!」
魔理沙「時間が足りないって、霊夢は普段寝てるだけじゃん」
霊夢「うっさいわよ魔理沙」
夏油「まぁ、その悩みはわかるよ、時間は何時だって待ってはくれないからね」
魔理沙「寝てる時間減らせば良いんじゃねぇの?」
次回『第七話 紅霧異変 悪魔凶乱』
霊夢「私はそんな寝てないわよ!!」