─紅魔館最上階
月明かりの差すこの部屋で二つの弾幕が衝突していた。
相対するは、永遠に幼き月『レミリア・スカーレット』、楽園の素敵な巫女『博麗霊夢』
「大人しく霧を消しなさい!ガキんちょ!!!」
「ガキ!? 私はこれでも500歳よ!!」
「あっそ、じゃあババアの方が良かったかしら?」
「舐めた口を!!」
レミリアは懐からスペルカードを取り出し、霊夢も袖からスペルカードを取り出す。
二人は同時に、霊力と魔力をカードに込めて叫ぶ。
『紅符「スカーレットシュート」 !!!』
『霊符「夢想封印」!!!』
レミリアの真っ赤な弾幕と霊夢の四色の光弾が衝突する。
─紅魔館大図書館
本棚に囲まれるこの場所で、もう一つの決戦が行われていた。
夏油と三人に分身したフランによる弾幕ルール無しの正真正銘の殺し合いだ。
夏油は赤い三節棍を、三人のフラン達は炎の剣を手に持ち、にらみ合う。
─パキッ─本棚の軋む音と共に戦いの火蓋は切られる。
一人のフラン(以後:フラン1)が夏油に右手を向ける、夏油はすぐさま妖怪を自分の前に出現させる。
フランが手を握ると同時に妖怪は爆ぜて消滅する。
爆発と同時に、残り二人のフラン(以後:フラン2とフラン3)が夏油に斬りかかる。
─ガキィィィン!!─夏油は三節棍を操作し、二人の斬撃を同時に受け止める。
夏油は斬撃を受け止めたまま、三節棍を巧みに操作して片方のフランの剣いなして体制を崩す、その隙に蹴りを喰らわせフラン2を吹き飛ばす、更に、三節棍をフラン3の剣に巻き付けて固定すると、剣を持っているフラン3ごと投げ飛ばす。
フラン1も炎の剣で夏油に攻撃をする。
夏油は再び三節棍で攻撃を防御し、素早く足払いをしてフラン1の体制を崩し、そのまま三節棍に呪力を込めてフラン1を殴り飛ばす。
本棚の影で戦闘を見ていたパチュリーは、フランを格闘戦で圧倒する夏油に驚きを隠せなかった。
「まさか、フラン相手にあそこまでするなんて....」
「へへ、すげぇだろ! 傑はアレで趣味は格闘技だからな、弾幕ルールを元に戦うようになってから近接戦闘はしなくなったけど、近接戦闘をしたなら妖怪含めたって間違いなく幻想郷トップクラスの実力者なんだぜ!」
魔理沙の誇らしげな顔を見て、パチュリーは一抹の希望を夏油に感じる。
三人のフランはがむしゃらに夏油に攻撃し、夏油はそれらを全て捌く。
フラン3が夏油に向けて剣を凪払い、夏油はしゃがむ事で剣を避ける、フラン3の凪払った剣の先にはフラン1が立っており炎の剣はフラン1の右腕を斬り飛ばしてしまう。
「いったぁぁぁ!! 気をつけてよね!!」
「そこに立っているのが悪いんでしょ!!」
喧嘩するフラン1とフラン3を狙って夏油は三節棍を振るう、二人は避けきれず殴り飛ばされる。
フラン2が距離を取り右手を夏油に向ける、夏油は妖怪を盾にして破壊の能力を防御する。
夏油の妖怪による防御にフラン2は顔を歪ませる。
間髪を入れず、二人のフランが夏油を挟み込んで攻撃する、夏油は飛び上がり攻撃を避けると本棚を蹴り、上から三節棍で一人のフラン3を叩きつけ、そのまま反転しもう一人のフラン1も殴り飛ばす。
フラン2が後ろから攻撃を仕掛けるが、夏油はまるで見えてるかのように避けて、そのまま背負い投げの要領でフランを投げ飛ばす。
フラン3が夏油に向かって弾幕を撃ち、夏油はそれを三節棍で打ち消す。
フラン達は夏油に憎悪の目線を向ける。
「ハァ、ハァ、流石にムカついてきた、てかもっと気をつけて攻撃しなさいよ!!当たるでしょ!!」
「それは貴女もでしょ!!」
「本当......邪魔しないで!!!」
三人の喧嘩を夏油は静かに眺める。
「......君達はもうちょっと落ち着きを持った方が良いんじゃないかな?」
「「「あんたは黙ってて!!!」」」
三人のフランが同時に右手を夏油に向ける、夏油は落ち着いて三方向に妖怪を出現させて防御し。
次の瞬間、夏油の妖怪達は爆散する。
「君の能力は危険だけど、私を破壊するには練度が足りなかったね、フラン嬢」
「...舐めた口を!!!」
フラン達は三方向から同時に夏油に斬りかかり、夏油は三節棍の三つの棍棒部分で全ての斬撃を受け止める。
「君は卓越した身体能力を持っているが、些か感情的すぎる、それじゃどんな攻撃も当たらないよ」
「っっ!!バカにして!!」
「....そういう所さ、フラン嬢」
夏油は足の影からタコの妖怪を出現させて、三人のフランを拘束する。
フラン達は直ぐにタコ妖怪を切り裂き脱出する。が、脱出した瞬間、夏油の操る三節棍がフラン2の顔面に直撃する。
残り二人のフランが夏油に猛攻を仕掛け、夏油は三節棍で応戦する。
「動きに感情が乗って直線的すぎる、自分をコントロールできなきゃ、勝てるものも勝てなくなるよ、フラン嬢!」
夏油はフラン達の猛攻をくぐり抜けて、一人のフラン1に三節棍で突きを喰らわせ、フラン3には回し蹴りを喰らわせる。
フラン2が上から炎の剣で攻撃を仕掛けるが、夏油はヒラリと回って避けると、そのまま回転の勢いを乗せてフラン2の脇腹に三節棍を叩きつける。
フラン2は口から血を吹き出して、本棚に突っ込む。
ぶっ飛ぶフランを見て、夏油は考える。
(睨んだ通り、彼女は身体能力こそ高いが直情的で動きが読みやすい、破壊の能力も手持ちの妖怪で十分対処できる、ノルマの時間まで後、十分弱、何とか耐えきれそうだ)
本棚の瓦礫を投げ飛ばしてフランが起き上がる。
フラン達は夏油を睨みながら一ヶ所に集まる。
「フゥー........なんか
「私が最初に行く」
「じゃあ、私がその次」
フラン達は一列に並び、先頭に立つフラン1は炎の剣を逆手に持ちかえる。
(! 構えが変わった?)
夏油は警戒を強めて構える。
フラン達が静かに呼吸を整え、三人の呼吸がピタリと一致する。
瞬間、先頭のフラン1が夏油に向かって駆け出す。
夏油はフラン1めがけて三節棍を振る。
先頭のフラン1が三節棍を払う、と同時にフラン1の背中からフラン2が飛び出して炎の剣で夏油に斬りかかる。
夏油はフラン2の下にスライディングする事で炎の剣を避けるが、その先で既にフラン3が夏油目掛けて剣を振るっていた。
夏油は自分の下に妖怪を出現させて、あえて自分を吹き飛ばしさせ上空へ行き避ける。
「あれ、うまく行かなかったね」
「でもあと一歩だったよ」
「もう一回行こう」
フラン達は再び一列に並び上空へ逃げた夏油を追う。
フラン達の動きを見て夏油は確信する。
(彼女、戦い方を学んでいるのか!!)
フラン1は夏油向かって突きを繰り出す。
夏油はエイ妖怪を出現させて空を飛ぶことで、フラン1の突きを回避する。
フラン2とフラン3は弾幕で夏油を追撃する。
夏油は弾幕を三節棍で打ち消しながらフランに突っ込む。
「! 向かってくるんだね!!」
「近づかなきゃ、君たちを倒せないんでね」
フラン1が再び夏油めがけて突きを繰り出し、夏油は突きをエイ妖怪からジャンプする事で回避しフラン1に膝蹴りを喰らわせると、フラン1を踏み台にしフラン2を飛び越えて、フラン3めがけて三節棍を振いフラン3を殴り飛ばす、そして丁度回り込んできたエイ妖怪に乗り、後ろからフラン2を三節棍で殴り飛ばす。
三人を吹き飛ばした夏油は、エイ妖怪から降りて地面に降り立つ。
吹き飛ばされたフラン達は再び一ヶ所に集まり話し合う。
「うーん、上手く行かないね」
「ムカつくケド近接戦はあっちが上だね」
「じゃあ、~~ってのはどお?」
「.......問答は、終わりかい?」
夏油の問いに、フラン達は再び一列に並んで戦闘体制を取ることで答える。
夏油も戦闘体制を取り、両者に緊張が走る。
先に動き出したのはフランだった、フラン1による三度目の突き攻撃を夏油は三節棍でいなすと、炎の剣を振り下ろさんとするフラン2と対峙する、夏油は三節棍で防御体制に入り、フラン2はそれを確認すると炎の剣を消して夏油に抱き付く。
フラン2の行動に夏油は驚く。
(どういうつもりだ? 目隠し?いや、にしては違和感が....)
ふと、夏油はフラン3の魔力が
(この魔力の
それは人間には絶対に真似出来ない、妖怪ならではの作戦
『「レーヴァテイン」はぁ!!!!こう使う!!!』
フラン3は夏油めがけて、魔力を込めたレーヴァテインを投擲し、フラン2ごと夏油を貫く。
フラン2は土手っ腹を、夏油は右肩を抉られ、更にフラン2から吹き出した血が夏油の視界を覆う。
「うぐぅっ!!!??!」(分身ごと!?しかも吹き出た血で目潰しを!ここまで計算したのか!?)
「そら!ガラ空きだよ、お兄さん!!」
フラン1が夏油に炎の剣で攻撃を仕掛け、夏油はフラン1の声のする方へ三節棍を防御に回す。
が、フラン1は炎の剣を消す。
瞬間、夏油の身体に突き刺さったのは炎の剣ではなく...
─バゴォ!!!!─
「ブガァ!!!!??!」
フラン1渾身の
フランに殴られた夏油は吹き飛ばされて、本棚に突っ込む。
それを確認したフラン達は素直に喜ぶ。
「やったー!!二撃も!!」
「分身ごと
「まぁ、この作戦あと一回しか出来ないからねー、困った」
「まぁ、良いんじゃない?どうせもう動けないデショ」
消滅していくフラン2を尻目に、フラン1とフラン3は夏油の吹き飛んで行った方を見る。
夏油は瓦礫の中で抉れた右肩を抑える。
(ここに来て予想以上のダメージを..!!右肩が!!)
血が滝のように流れる右肩を見て夏油は考える。
(目標時間まで後五分弱....耐えきれるか!?)
「傑!!」
血濡れの夏油に魔理沙が本棚の影から出てきて駆け寄る。
「何やってる魔理沙!君はパチュリーさんを守るんだ!!」
「でも、傑、お前っ!!」
「私は大丈夫だ...」
「っ、傑」
魔理沙は唇を噛み締めながら本棚の影に戻る、夏油はそれを見送ると、夏油は何とか立ち上がり左手で三節棍を持つ。
フラフラの夏油をフラン達は笑う。
「アッハッハッハ!!倒れそうだよお兄さん!!」
「限界じゃないの?お兄さん!!!」
(くそっ、こうなったら『極ノ番』の使用も考えるべきか!!)
二人のフランは夏油に真っ直ぐ突っ込む。
夏油は三節棍を振るってフランを迎え撃つ、が、三節棍はあっさりフランの炎の剣に弾き飛ばされる。
「くそっ!?」
「「あなたが、コンティニュー出来ないのさ!!」」
フランの凶刃が夏油に迫る。
(こうなったら!!)「
瞬間、
「! これは!」
「いきなり─」
フランの頭上に光が発生する。
『華符「セラギネラ9」!!』
『メイド秘技「操りドール」!!』
七色の弾幕と無数のナイフが降ってくる。
フランは頭上を向くと狂喜の笑みを浮かべる。
「ハハハ!!良いねぇ!!盛り上がってきたよ!!」
「貴女達も私と遊びたかったんだね!!!」
二人のフランは炎の剣で弾幕とナイフを防いで、技を放った張本人達を見据える。
「私も遊びたかったよ!!!咲夜!!美鈴!!!」
技を放った張本人達十六夜咲夜と紅美鈴は、いつの間にかフランの射程外に移動した夏油を守るように立っていた。
「大丈夫ですか!夏油さん!!」
「美鈴さん!!」
「目が覚めたら、随分大変なことになってるわね....妹様が出ているなんて」
「あなたは?」
「十六夜咲夜よ、さっきはギリギリ助けられて良かったわ」
咲夜は何処からともなく包帯を取り出し、夏油の右肩を応急措置する。
「貴女が助けてくれたんですか?一体どうやって?」
「私は時を操れるのよ、時間を止めただけ...何も特別な事はしてないわ」
(時を操るって...よく霊夢は勝てたな)「ありがとうございます、咲夜さん」
「それよりも夏油さん、状況を教えてください」
「はい、今は作戦中で....」
夏油は咲夜と美鈴に作戦内容を話す。
「妹様を痛め付ける所には納得できないけど....特に最後の攻撃の部分......今の妹様を放っておくのはもっと危険ね」
「出来る限りですが、時間稼ぎ私達も手伝います!!」
「ありがとうございます、咲夜さん!美鈴さん!」
フラン達は話し合いを終えた三人に近づく。
「話し合いは終わった?」
「咲夜も美鈴も一緒に遊ぼ!!」
近づくフランを見ながら、夏油は妖怪を出現させ、咲夜はナイフを持って、美鈴は拳法の構えを取って、戦闘体制を取る。
「君を止める、フラン嬢」
「ご無礼を、妹様」
「止まってください!!妹様!!」
─共同戦線!!開始!!!
霊夢「久々に小屋を漁ったら、失くしたとばかり思っていた古いお祓い棒が見つかったのよ!!」
魔理沙「奇遇だな、私もついこの前、失くしたマジックアイテム見つけてよ!」
夏油「そういうのって忘れた頃に出てくるよね、私もよく失くしたと思っていた物が妖怪の口から出てくることがあるよ!」
次回『第八話 紅霧異変 共同戦線』
霊夢「それはあんただけよ、傑」
魔理沙「だぜ」