─紅魔館の建っていた場所
紅い瓦礫の山から夏油が顔を出す。
「ふぅ、何とか無事だったな」
夏油はその場で指を鳴らす。
すると、夏油の周りから瓦礫を押し退けて五体の妖怪が顔を出す、妖怪はそれぞれ腕の中に美鈴、咲夜、パチュリー、小悪魔、魔理沙を抱えていた。
「大丈夫でしたか?皆さん」
「ええ、何とか」
「夏油さんの妖怪が盾になってくれたので」
「ゲホッ、ゲホッ、もう動けない....」
「しっかりしてくださーい!パチュリー様~!!」
「ふぅ、久々だぜ100%マスパ」
「お疲れ、魔理沙」
「おう!って、傑お前の方は大丈夫なのかぜ!?」
と、夏油達から少し離れた場所で─ボコン!─瓦礫がはね上がり、霊夢とレミリアがすすだらけになって出てくる。
「いきなり何なのよ!!」
「嘘ぉぉぉ!!!!私の紅魔館が!!?」
霊夢とレミリアは周りを見渡して、夏油達の集まりを見つける。
「傑に魔理沙!!ちょっとどういうこ─!? 傑!!肩が!?」
霊夢は夏油の重症を見ると血相を変えて、夏油に駆け寄る。
「こんなっ!? 大丈夫なの? 魔理沙も!」
「私は大丈夫だぜ」
「私の方はちょっとヤバいかな...右肩もそうだが、腹に一発喰らってね、呪力でガードはしたが内臓を少しやったかも...」
「弾幕ルールはどうしたのよ!!っ、あいつらにやられたの!?」
「いや、彼女達は協力者だ....むしろ助けてくれたよ」
霊夢と夏油が話している横で、レミリアもパチュリーの元まで駆け寄る。
「パチェ何があったの?」
「それは─」
─ボコン!!─
紅い瓦礫を押し退けて、右半身が崩壊したボロボロのフランが出てくる。
レミリアはフランの姿を見て驚愕する。
「!! フラン!何故貴女が!?その傷は!!??」
「私達は暴走したフランと戦っていたのよ、レミィ」
パチュリーの説明を聞いて、レミリアはフランに駆け寄る。
「フラン!フラン!しっかりして!!」
「ハァ、ハァ、お姉様...??」
「フラン、こんな怪我をして!! 何で外に出たの!外に出たら駄目だって──」
─ガシィ!!─
フランは何とか形を保っている左手でレミリアの首を締める。
「かぁ、ハッ...ふ、フラン...!!」
「久しぶりぃ...!ハァ、ハァ、400年ぶり?アハハ、ちょっと待っててよ....ゲホッ、あの前髪と金髪魔法使い殺したら、次はお姉様と
「っ、フラン....」
「お止めください、妹様!!」
咲夜と美鈴がレミリアとフランに向かって駆け出す。
「待ちなさい!咲夜、美鈴!」
「!」
レミリア本人が咲夜と美鈴を止める。
「これは......私の問題よ...」
「! お嬢様...!!」
咲夜と美鈴はその場で足を止める。
霊夢、魔理沙、夏油の三人はレミリアとフランの鮮烈なやり取りを見て困惑していた。
「何がなんだかワケわかんないわ...」
「あいつら姉妹だろ?何であんなにいがみ合ってんだ?」
「こちらが思っているより、複雑な事情があるみたいだね」
夏油はレミリアとフランに心配するような眼差しを向ける。
レミリアはフランの腕を掴んで話しかける。
「フラン この手を離しなさい そんな体で無理をしちゃ..!!」
「私に指図すんの?」
─ブオンッ!!!!─
フランはレミリアを無造作に投げつけ、瓦礫の山に放り込む。
「あぐっ!!! フラン...」
「ゼェ、ゼェ、あんま、イラつかせないでよ.....うっかり殺しちゃうかもじゃん」
「......そんな体で動けば、先に死ぬのはあなたよフラン」
「だから何!!?文句あんの!!!??私のことなんかどうでもいいくせに!!!!??!!!」
「!!」
─スパッ─
レミリアは自分の手首を切って血を溢れさせると、フランに手首を向けて歩み寄る。
「私の血よ、これを飲めば早く傷が治るわ...傷を癒して、もうじっとしていてフラン」
「........? は?」
「もう十分でしょう、これ以上 自分を傷─」
─バキィ!!!!!─
フランの鉄拳がレミリアの顔面に刺さりレミリアは吹っ飛ばされる。
フランは激怒しながらレミリアに怒鳴りつける。
「憐れみのつもり!?馬鹿にしないでよ!!!」
「違うわ!私は姉として貴女を!!」
「っっっ!!!!??姉!!?今更!!」
フランはレミリアの胸ぐらを掴み首を締める。
そしてフランはどこか悲しげな顔をしてレミリアに詰め寄る。
「400年!!私を地下に追いやって、のけ者にして!!一度だって会いに来なかったくせに!!!」
「っ、それは...」
フランは強引に レミリアを空中へ投げ飛ばすと、レーヴァテインを出現させる。
「もういい、決めた....あんたから殺す!!」
「! 待ちなさいフラン!!」
「やぁぁぁぁぁぁ!!!」
フランはレーヴァテインを手にレミリアに切りかかり、レミリアも紅き槍『グングニル』を出現させフランの攻撃を防ぐ。
「そんな状態で私に勝てると思ってるの?」
「うるさいなぁ、大人しく壊れなよ!!!」
「私はあなたを思っていってるのよ!!フラン!!」
「今さらお姉ちゃん面して!!!」
フランはグングニルを押し切ってレミリアを吹き飛ばし、レーヴァテインをレミリアに向けて叫ぶ。
「私を思って?笑わせないでよ、400年間...私がどんな思いでいたか...知りもしないくせに!!!」
フランはレーヴァテインを構えてレミリアに突っ込む。
レミリアはフランを見つめながら呟く。
「そうよ、私はあなたじゃないから、あなたの本当の思いは知らない....だけどもうあなたから....逃げたくないから!!!」
レミリアはグングニルを構えてフランを迎え撃つ。
「やぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「受け止めるわ!!フラン!!」
二人の武器が交わる瞬間
レミリアがグングニルを消す。
─フランの凶刃がレミリアを貫く。
予想外の事態にフランを含むその場にいた全員が驚愕する。
「「「お嬢様!!!!??!!」」」
「レミィ....あなた」
「あいつ.....わざと武器を消したわね」
「おいおい、大丈夫なのか!?」
「いや、あの炎の剣を諸に喰らうのはいくら妖怪でも....!!」
貫かれたレミリアはそのまま優しくフランを抱く。
フランは突然の事態に思考が追い付かなかった、レミリアは血反吐を吐きながらもフランに優しく語りかける。
「痛くもないわ...ゴフッ、これくらい....あなたが今まで感じた痛みに比べれば...」
「.....何で...?」
「この異変を始める時に決めたの.....もうあなたのすべてから逃げないって...495年前、初めてあなたの能力を見たあの日、私は弱かった.....実の妹なのにたった一人の家族なのに....怖くなってあなたから逃げてしまった」
「.........」
「ずっと知っていた、あなたがどんな思いでいたか....歩み寄ろうと思った、でもあなたから逃げたという負い目を感じて今更何が出きるんだって、言い訳をして...あなたからも負い目を感じる私からもずっと逃げていた...」
「........」
レミリアは大粒の涙を流し、フランの頬にも一筋の涙がながれていた。
「今まで何も、何もしてやれなかった...!! 怖かったろうに、つらかったろうに、何も!!ずっと酷い姉だった!!!本当にごめんなさい...フラン」
「.......お姉様」
「でももう大丈夫よ、
「....っ」
「....だからもう泣かないで...フラン」
「お姉様!!!!」
レミリアはレーヴァテインを抜くとそのまま地面に落下する。
レミリアの元に紅魔館メンバー全員が駆け寄る。
「お嬢様!!気をしっかり!!」
「妹様と外に出るんじゃ無かったんですか!!お嬢様!!!」
パチュリーは血に濡れるレミリアを見て顔を青ざめる。
「不味いわね...このままだと...!」
パチュリーの隣にフランが降り立つ、フランは呆然としながらパチュリーに問いかける。
「パチェ....お姉様、壊れたの?」
「まだ壊れてはないわ.....でもこのままじゃ」
「........そっか」
「........貴女は悪くないわフラン、レミィはあえて貴女の剣を受けた、受けることで貴女から...自分から許して貰おうとしたのよ」
「.......なにそれ」
「そうね.....本当....バカよね」
フランとパチュリーが落ち込む中、咲夜と美鈴はレミリアの傷を塞ぎながら、必死にレミリアを生かそうとしていた。
「パチュリー様まだ諦めないでください!!!まだ何か手が!!」
「無いわ、予備の輸血パックもさっきの爆発で全て蒸発しただろうし、あったとしてもこれだけの傷を塞ぐには血と肉...両方が必要よ、それも新鮮なね....そんなものを用意する時間はもうレミィには....無いわ」
「っ!! 私の血肉をお嬢様に与えれば!!!」
「咲夜さん何を言ってるんですか!?」
「お嬢様を生かすためなら私は死んでも構いません!!だから!!」
「無駄よ、たとえあなたと美鈴と私の血肉を与えてもレミィは回復しきれない、それだけフランの攻撃は重いのよ」
「っ!......そんな」
「........」
霊夢、魔理沙、夏油の3人は紅魔館メンバーのやり取りをただ見ているしかできなかった。
「大変なことになったわね....主犯が味方に刺されるなんて」
「これで異変解決ってなっても後味悪いぜ...」
「そうだね、魔理沙」
「? どうした傑」
ふと、夏油が紅魔館メンバーの元に歩み寄る。
「すみません お聞きしたいことが...」
「夏油さん、今それどころじゃ!!」
「レミリアさん?で良いですよね、 彼女に必要な血肉って妖怪でもいいですか?」
「? まぁ、レミィは妖怪の血も普通に飲んで....!!」
「いいんですね」
「まさか、夏油さん貴方!!」
「そのまさかですよ、私の今所持している8866体の妖怪のうち、200体をレミリア嬢に100体をフラン嬢に与えます、それでも回復に足りなかったら言ってください二人あわせて1000体までは出しますから」
「! 良いんですか!?」
「勿論」
夏油は影から大量の妖怪たちを出して、紅魔館メンバーの前に用意する。
「何で貴方がそこまで」
「元より作戦でこうするつもりでしたからね、魔理沙のマスタースパークで弱ったフラン嬢を妖怪で回復させることで、パチュリーさんのフラン嬢を殺したくないという思いを守るつもりでしたから、そこにレミリア嬢が増えただけです」
「ちょっと傑!!」
霊夢と魔理沙が夏油に駆け寄る。
「なんで敵を気にかかるのよ!」
「まあそう言うな霊夢、確かに彼女たちは異変を起こした加害者だ、確かに悪いことをしたが彼女たちなりに何か考えがあったのは 見てわかるだろう、それに一度共闘したからわかる、彼女たちは根っからの悪人じゃない」
「でもねぇ....」
「まぁ、良いんじゃね霊夢」
「魔理沙まで!」
「霊夢も薄々わかってんだろ?こいつらは大丈夫だって!多分何とかなるぜ!!!」
「........うーん」
「紫さんが言ってただろ?『幻想郷は全てを受け入れる』って、大丈夫さ霊夢」
「でも.....」
霊夢は夏油の右肩を見て不機嫌な顔をする。
夏油は霊夢と相談しながら妖怪を捌いてレミリアに与えている咲夜達を見る。
ふと、フランが夏油の用意した妖怪に手をつけていないことに気づき、夏油はフランの元に行く。
「......食べないのかい?傷を治したいだろう?」
「......悪いよ」
「気にしなくて良いよ、100体くらい無くなったって私は困らないから」
「それでも、私はお兄さんを傷付け過ぎたよ....」
「......フラン嬢は偉いね」
「え?」
夏油はしゃがんでフランと目線を合わせると、笑って語りかける。
「私のことお姉さんのことをしっかり反省している、フラン嬢は知らないかもしれないけど反省するって難しいことなんだよ」
「そうなの?」
「言っても反省しない奴は山ほどいるからね、私もそういう奴らに日々手を焼いてるから分かる........そうやって深く反省できる君なら、次の段階にも行ける」
「次の段階?」
「反省を踏まえて、先に進むことさ....君は今回の出来事を糧に先に進む事が出来る強さがある。私はそんな君を応援したいんだ、これはその気持ちさ、受け取ってくれないかい?」
「っ」
「受け取りなさい、フラン」
「!」
落ち込むフランに一つの声がかけられる、意識が回復したレミリアの声だ。
レミリアは横たわったままフランを見つめて語りかける。
「他人の親切をないがしろにしてはダメよ...」
「っ!.....本当に良いの、お兄さん?」
「勿論!」
フランは夏油の出した妖怪を口一杯に入れて頬張る。
みるみるうちにフランの傷は治り、一分もすれば元の姿に戻ってしまう。
元に戻ったフランを見て夏油は思う。
(憑き物が落ちたような顔)「心なしかさっきより可愛く見えるよ」
─カン!─
夏油の頭に霊夢のお祓い棒が落ちる。
「何キモいこと言ってんのよ傑、まさかあんな小さい子が好みとか言うんじゃないでしょうね」
「まさか、それよりも君の意見はどうなったんだい霊夢?」
「......まぁ、これからのこいつら次第よ」
「そっか」
しばらく待つとレミリアも体を再生し終わる。
レミリアは起き上がると夏油に向き直り深くお辞儀をする。
「この度は我々姉妹を助けてくれたこと、本当に感謝いたしますわ、是非名前を教えてくださらない?」
「夏油傑です」
「ゲトー、良い名前ですわ、ご存知かと思いますが、私の名前は『レミリアスカーレット』以後よろしく、このご恩は忘れません、近いうちに必ずお礼をしに行きますわ」
レミリアの言葉と同時に紅魔館メンバー全員が夏油に頭を下げる。
流石に夏油も恐縮する。
「いいえ、私はできることをやっただけですので頭をおあげください!レミリア嬢!」
「あら、そうですか?ならここまでにしましょう」
レミリアが顔を上げると紅魔館メンバーも顔を上げる。
姿勢を正したレミリアに霊夢が話しかける。
「何か色々あったけど、さっさと霧を消しなさいよ」
「え?嫌よ」
「「「え?」」」
レミリアの発言に霊夢、魔理沙、夏油は驚く。
三人の反応にレミリアはキョトンとする。
「助けてくれたのは恩を感じているけど、それはそれ、これはこれ、でしょ?」
「だっから助けたくなかったのよ!!もう!!」
レミリアの発言に霊夢は盛大にキレ散らかす。
レミリアはそんな霊夢に笑って話しかける。
「当たり前でしょう?私達の弾幕勝負だって決着ついて無かったし」
「いやどう見てもスペルが発動してれば私の勝ちだったでしょ!!」
「あらそうかしら?誰かその場面を見た人いるかしら?」
「こんのクソガキがぁぁぁ!!」
「フフ、だから...」
レミリアはフランを抱き寄せて霊夢達に宣誓する。
「二対二の弾幕勝負を申し込むわ!私とフランのコンビに勝てたら霧を消してあげる!!」
「ちょ!?お姉様!!」
「はぁ~?」
(成る程、そういう事か)
夏油はレミリアの意図を汲み取ると、笑顔で霊夢と魔理沙の方を向く。
「受けて上げたらどうだい?霊夢、魔理沙」
「はぁ!?ちょっと傑!」
「問題無いだろう?勝てば良いんだから。あ、もしかして負けるのが怖いのかい?霊夢」
「別にそんなんじゃないわよ! あーもう、こうなったらやってやるわ、勝つわよ魔理沙!!」
「おう、私は何時でも準備万端だぜ!!」
はしゃぐ霊夢と魔理沙を見て夏油は心の中でエールを送る。
(霊夢に魔理沙、レミリアさんもフランさんも目一杯楽しんでおいで)
─紅霧異変 最終決戦始まる!!
レミリア「咲夜、食後の紅茶を頂戴」
咲夜「すみません、茶葉を切らしていまして」
レミリア「あら珍しいわね、うーん、なら久々にコーヒーでも頂こうかしら、味は咲夜に任せるわ」
咲夜「かしこまりました....こちらコーヒーです」
レミリア「う~ん、口当たりの優しい感じ...これはカプチーノね!」
次回『第十話 紅霧異変 終幕』
咲夜「お嬢様、そちらカフェラテでございます」