また不定期ですが更新していきます!
本来ボクはこの次元とは無関係だ。だけど、目にしてしまった危機を見ないふりはできない。だから、ボクはしばらくこの次元で戦うことを選んだ。……本調子ではないんだけどね。
ボクが女神グロウスハートとして国を興す……なんてことをぼちぼち考えながらも、ボク自身が固定の信仰、シェアを必要としない女神なのもあってその必要はないなーなんて思っていて、ふいにプルに会いに行きたくなったからちょっとクエストをかたっぱしからクリアしつついろんな石を集めて保管して……空間に漂うシェアを拝借して次元移動の準備をする。
グロウスハートのプロセッサユニットは演算処理機器であり、同時にシェアエナジーを取り込んだり保管したり、有形無形に変換するコンバータでもある。だから信仰同調といった技も使えるんだけど……このおかげで固定のシェアが必要ないのだ。女神への信仰心が存在する限り、ボクは力を使える。
「さて、これくらいあればいいか……」
次元移動門を展開する。何回かやったこともあって慣れたものだから今回もまたプルと話してイストワールさんの愚痴を聞いてそれから……なんて思っていた。
「あれ……?」
次元移動門を抜けた先はプラネテューヌに設定していたはず。なのに、どうにも空間のシェア量が薄い。まずった、向こうでまたアクシデントが起こっているのならこの事態は想定できた。なのにボクはシェアはあるだろうと思って結構ごっそり使っちゃった……!
「まずは状況把握をしないといけないし、女神化できないのなら霞と紅月、蒼陽も装備して……」
落ち着け。想定外だとしてもプルに会えればなんとかなる。だからまずは街に向かえばいい。
──そう思った矢先、近くで物音、そしてモンスターの声が聞こえる。
「まずい、バズール現象だ!」
「こんなときに……っ!」
気づいたときには駆け出していた。霊装「霞」を起動し、二本の短剣を構えてモンスターの群体を見据える。
「取り巻き6,ボス1ってところか……!」
ボクは女神化しなくても戦える。それはお父さんとお母さんが教えてくれたことだし、今までの経験からも身体にしみついている。だから、正面の人間しか見ていなかったモンスターたちは瞬殺できた。
「なっ……」
「助かったのか……?」
そんな声に反応する余裕はなかった。倒したら数は減るはずだがモンスターの数は増えている。厄介だな、増えているのはたぶんあの歪みのせい、その歪みに近いのがボスっぽいでかいやつだと思うと……あれを倒さないと無限に出てくる。
「今のうちに屋内へ向かいましょう、そこのお方、あの大きいモンスターを倒すことができればモンスターは増えません!今はこれしか助言できませんが……頃合いを見てあなたも逃げてください!」
「……!……了解、イストワールさん」
「えっ……?」
この会話だけでもわかったことがある。ここはプルのいる次元じゃない。イストワールさんがボクを見間違えるはずがないから。だけどあのイストワールさんはボクのことを知らなかった。なら、本来ボクが行くはずだった次元じゃないことがわかる。そして、空間のシェア量が少なかったり、イストワールさんが教会の外に出て職員の人と何かしているということはよっぽどな緊急事態だ。
「《
だからボクは手っ取り早く目の前のデカブツを倒すことを選んだ。
「エクスポート……《緋一文字・紅椿》ッ!!」
モンスターを生み出していた歪みが閉じていく。取り巻きの残党も処理してイストワールさんのほうへ駆ける。今は情報が欲しい。この次元を蝕んでいる異常の情報が。
モンスターを倒したあと、イストワールさんと合流したボクは自己紹介と状況の説明をしてもらいながらこの次元の現状について考えていた。ボクがプルと会う前のボクの次元の状況と似ているけど……女神の加護がなくなるとこうも酷い状況になるのかと思った。ボクの次元にしろプルの次元にしろ、ボクの旅の行動範囲はだいたい女神の加護があった場所だったからね……
次に、ボクのことを話した。この状況だとボクが女神であることは隠したほうがいい。だから、次元の旅をしてることと、次元移動が今できなくなっていることを話した。あとはボクの次元のこと、ネプギアさんしか女神がいなかった時の経験も少し話して……目的地に着いた。
その後は怒涛で、またモンスターがでてきたもんだから片付けて、ネプギアさんはまるでコールドスリープをしていたかのような感覚だしボクはボクでモンスターの攻撃からカプセルやら教会の人やらを守りながら戦ってるから被弾は増えるしでいろいろ大変だったけど……今は無事に拠点のシャワールームにいる。
「……ふぅ……」
ネプギアさんたちはイストワールさんから現状の説明を受けているところだろう。
「……ボクもこの先どうしようかは考えないとだけど……」
服を着てイストワールさんのところへ向かう。部屋の中ではどんな話があったのだろうか。大方ボクの聞いた話とだいたい一緒の流れなんだろうけど……
「……そん、な……」
ボクが部屋に入って聞こえてきた第一声は茫然としたようなネプギアさんの声だった。イストワールさんにブランさんもいる。ということは……
「ネプギア……」
「……教えてください、ブランさん。お姉ちゃんはいまどこにいるんですか!?」
「ネプテューヌは…………」
「ッ……!」
現実を受け入れないようにしている。ネプギアさんのお姉さん、ネプテューヌさんがいないという現実に耐えられない。……ボクの知っているネプギアさんよりも、甘さも青さも、幼さすら感じる目の前のネプギアさんを、ボクは自分自身でも気づかないくらい冷たい目で見ていたようだった。
「教えてください、お姉ちゃんは今どこにいるの!?誰か教えて……誰でもいいからぁッ!!」
「……いないよ」
ぼそり、ボクは呟く。視線は全てボクに集まる。
「ネプギアさん、非情なようだけど、誰も言わないならボクが言う。少なくとも、今この次元にはいない」
膝を折って真っすぐ、潤む目に合わせてボクは言い放つ。
「うっ……うぅ……うわぁぁぁん!!」
部屋の奥へネプギアさんは駆けていく。見送るようにボクはゆっくり立ち上がり、集まった視線の強さに気づく。
「アンタ……その言い方はないんじゃない!?」
「そーよ!ネプギアがかわいそうって思わないの!?」
「ネプギアちゃん、ないてた……」
「……でも、これからのことを考えるためにはいつまでも縋ってちゃだめだ。ボクはそう思う」
ボクの次元のネプギアさんは、お姉さんがいないことをいつも悲しんでいた。お姉さんを斬ったお父さんを憎んでいた。それでも、国のために、世界のためにネプギアさんは頑張っていた。……ボクの知っているネプギアさんがそうだから、今この次元のネプギアさんにそれを押し付けてしまったのかもしれない。それでも……このままでは止まってしまうから。
「……イストワール、この子は……?」
「彼女は、ネプギアさんたちを救出する際にお手伝いいただいた方です」
「ボクは夕、凍月夕。今は……次元の旅人、かな」
これが、ボクがこの次元で繰り広げる戦いの第一歩。
次回、「第二話 廃墟の町にて」
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