洞窟からの帰還した日の翌日、マホが倒れた。
薄手の格好だったのと、洞窟と外の温度差で身体が参ってしまったらしい。さらに聞くとことによると何かしらの作業を徹夜でやってたり朝食を食べてなかったりしてたらしいのでそりゃそうなるだろうというのがボクの感想。
今重要なのはそんなマホを病院に送って、次の依頼である『外出自粛に応じない住民の説得』に向かってるさなかにマホが追い付いてきたことである。なんで?
マホ曰くお医者さんからもらった薬がめちゃくちゃに効いたというのが言い分だが、そんな急に効くものなんてあるわけないだろう。ボクは今すぐにでも病院に戻ることを勧めたけれど、実際のバイタルデータには何も異常がないんだから……余計におかしく感じる。
「マホちゃん、何かあったら教えてね」
「えぇ。マホちゃんの体調を最優先にして向かいましょう」
ギアとベールさんはそれを受け入れてもなおマホの様子を心配するプランを組み込んだ。
「あるくの、ゆっくりでいいよ?」
「そうそう!治りたてもなんたらって言うし!」
ロムちゃんラムちゃんはそんなマホの両サイドで歩調を合わせて歩いていく。
だけどボクにだけはこのどうしようもない違和感がぬぐえない。どこからどう見てもマホなのに、まるでマホじゃないような、そんな気がしてならない……
──なんて思考は、目的地に着いたらすっ飛んで行ってしまった。
「鉱山……!鉱山だ……!」
昨日もそうだったけれど、やはりラステイションは質のいい鉱石がよく採れる……!今回は鉱山だから金属を主に掘り当てているわけだけれども、鉄鉱石や銅鉱石などの金属光沢はもうそれだけでご飯が進むよね!
「ゆうちゃん、おめめキラキラしてるね」
「当たり前だよ!ボクちょっと見学とかお手伝いとかできないか聞いてくる!」
「えぇ!?」
ボクは奥の方へ進み、最初の方こそ鉱山夫の人にあしらわれたりもしたけど、手伝ったり鉱石についての知識とかでいろいろコミュニケーションをとって正式に仕事を手伝わせてもらうことになった。趣味を仕事にするって、もしかしてこんなに楽しかったりするの……!?
それからというもののちょくちょく仕事中にギアたちが来てはここから避難するように声をかけていたけど、ボクがいるから大丈夫でしょ~なんて言ったり、仲間たちの輝いてる目とか見てたら避難どころじゃないよね。なんて言ったりとかして鉱山の仕事に集中してた、してたんだけど……ボクとしたことがあと少しで本筋を忘れるところだった。
だから鉱山近くの仮眠室で鳴った警報に感謝したよね。いや、不謹慎なんだけどさ。
「アラームにしちゃけたたましいなお嬢、交代の時間か?」
「そういうわけじゃないみたい。モンスターが来る……!」
「なんだって……!?」
「さすがにこの量はまずいか、ちっ!」
「お嬢ッ!?」
仮眠室から駆け出して鉱山の奥に向かう。幸いこの時間は誰も働いていないから見られる心配もないが、せっかく掘った鉱脈への道とかをモンスターに蹂躙されて落盤とかなんて起きたらボクがいる意味なんてないだろう。
「教会に連絡して!ボクはモンスターから坑道を守るッ!」
「んなぁ!?」
「とっとと避難所に行って!」
それだけ言ってボクは坑道へ向かう。もうある程度の数のモンスターは見えるもんだから少し焦る。グロウ-Cを撃つことも考えたけどこの数では焼け石に水だ。蒼陽の銃剣モードは……外した時が怖い。なら、ためらってる場合じゃない。
「変身ッ!」
女神化し、コンバットフォルムになると同時に刀身が短めの刀を構築する。ちょっと前にたくさんクエストをやったぶんおそらくシェアの量は問題ない。けど、この数を相手取るには無駄は極力減らすに限る……!
「スティングビット……!」
6基のスティングビットを雑魚散らしに使いながら、大物と思われる奴に対しては刀で応戦する。けど、情報が足りない。完全な位置把握ができてないからそれができるコンプリートフォルムに変える……いやだめだ。変えるにしても少しの隙と、変えた後のシェアの消費量を無視できなくなる。それにコンプリートフォルムで解析を回しながら戦うとなると、警報につられてやってくるギアたちに絶対感知されてしまう。それは……避けたい。
「考えられる余裕はないか、だったらスティングビットのうち二つを情報取るようにして……っと!」
それだと手数が足りなくなるから雑魚を処理するのが間に合わなくなる?今でこそ押し寄せてくるモンスターを捌き切れてはいるものの、ジリ貧なのには変わりない。けれど、捌き切ることの方が優先だ。警報で予測された範囲なら、外の方とバズエンサーはギアたちが何とかしてくれるはず。なら、それを信じて目の前の雑魚を蹴散らすほうがいい。
「
コンプリートフォルムになり、解析を回す。敵の位置と量がわかるようになれば、結果的には無駄は減ったと考えてもいいことに気づいたのは、敵が増えなくなった頃合いだった。
「これで終わり……ッ!」
最後の大物を両断して撃破を確認する。女神化を解除して来てるはずのギアたちと合流を……っと、電話だ。
「もしもし?」
「もしもし夕ちゃん!?そっちは大丈夫!?」
「大丈夫~、とは言いにくいなぁ~……働きづめだったせいか、身体が重いよ……」
「え、えぇっと……」
「鉱山夫のみんなは避難所に向かったよ、坑道に来てたモンスターは全部片づけておいた。バズエンサーはそっちが倒したの?助かったよ、結構ぎりぎりでさ」
「怪我はしてない?」
「うん。あー、見えた見えた。合流するよ」
坑道から出るとギアたちが見えた。親方と何かしらの会話もしている。
「親方」
「小娘か。……世話になった」
「……道とか、柱とか、ちょっと壊れちゃいました。ごめんなさい」
頭を下げる。戦闘終了後に少しだけ確認したけど、柱に傷が入ったり壁が少しへこんだり、ほんのちょっと、でも確実に被害は出てしまった。
「頭を上げろ、小娘。……礼を言う」
「ありがとう親方。お世話になりました」
これで、一件落着……とはならなかった。
鳴り響くアラート。鳴動する地面。
「なに、この揺れ……!」
「これ、バズール現象!?」
「そんな!バズエンサーを倒せば一通り大丈夫なはずでは!?」
「つまり新手ってこと……場所は!?」
「うん、って……ここ、鉱山夫のみんなの避難所のすぐ近くじゃん!」
まずい!ここから避難所は少し距離がある。ギアたちと合流しなければ同化解放でギリギリ間に合う距離だけど、今からじゃそれでも間に合わない……!
「行かなきゃ……!」
「今から行って間に合う距離ではありませんわ!」
「それでもボクは行くよ!でしょ、ギア!」
「うん!」
無理やり重い身体を奮い立たせて全速力で走る。流れ星が見えたが願い事なんてしてられる余裕はない。ただ、みんなを守るために走るんだ……!
「ごふっ、がはっ……ぜぇはぁ、みんなは!?」
後先考えずに衝動だけで走ってたせいかもしこの状態で戦闘に入ってたらと思うと危なかった。危なくなかったのはもうすでに先客が全てを終わらせていたからだ。
「ノワールさん!」
「ネプギア!?あなたたち、どうして……っ」
「ノワールさん!?」
片膝をついて動けないボクの後に追いついてやってきたギアを認識するや否や、女神化が解けて気絶するノワールさん。それほどまでフルパワーで戦った……にしてもおかしい。あのノワールさんがそんな無茶苦茶な戦い方なんてしないはずだ。なら……くそ、酸欠で頭痛い……
「ノワール、あなた…………そうですのね」
「ベールさん?」
「ひとまずは、教会に戻りますわよ。わたくしたちも、休みが必要ですわ」
「そうですね……」
ようやく落ち着かせた呼吸とともに立ち上がり、後ろを振り返るとへろへろの3人がいた。
「もう、無理……」
「つかれた~!」
「いき、くるしい……」
戻るよ。なんてすぐには言い出せず、少しの休息を経てボクたちは教会に戻ることにした。
次回、「殻」
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