並列世界の放浪者   作:Feldelt

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第十二話 殻

「昨日の今日で今度は暴動か……」

 

昨日の浴びたシャワーは格別だった……仮眠室じゃないふかふかの布団で眠れたのもよかった……それはそれはもうぐっすり眠れたもんだから少しくらい疲れは残っててもいいとは思ってたんだけど……目覚めが暴動の音なら気分は最悪になる。クソ面倒なこと起こしやがってよ……

 

「おはようみんな……とりあえず……ノワールさんは?」

「おはようございますわ夕ちゃん。ノワールなら今は暴動の相手をしておりますわよ」

「だと思った……」

 

カバンから非常食用のエネルギーゼリーとネプビタンを取り出して胃に流し込む。ひとまずはこれでいいとして、状況はよくなさそうだ。

 

「あぁそうだ。結局ユニって見つかったの?」

「見つかったも何も、ゆにちー、ずっと部屋に閉じこもったままだよ。あーしが色々いっても聞く耳持たず~って感じ」

「なるほどね……ボクたちはどうする?」

「どうする?って……ノワールさんは『何もしなくていい』って言ってたよ。でも……」

 

何かしたいのはギアの考えだろう。でも……正直この問題はギアでは解決できない。国の長である、守護女神であるノワールさんじゃないと……

 

「解決方法は思いつくけど、お父さんのやったことだからなぁ……ボツだね」

「ボツなんかい、ゆーゆーのお父さん何したのさ」

「女神に反発する人間の粛清」

「うげ、冗談だよねゆーゆー、ブラックジョークも言うんだ……」

「うんうん、冗談だよ」

 

本当にそんなことをしたせいでボクの次元はあんな感じだったんだけど……お父さんはどうしてそんなことをしたんだ本当に……というか、ボクの次元では知らない人がいない『審判の悪魔』がお父さんだって話をしたお母さんこそ何を考えていたんだ……

 

「鉱山にいた時休憩時間にみんつぶ見てたけど、退屈しのぎにもならなかったし……何もしないでいい、か……」

「でも、昨日鉱山の親方さんに話したんだ。ノワールさんとお話してみたらどうですかって」

「そうなの?じゃああの様子なら、親方は来ると思うよ。退屈なこの暴動を終わらせてくれると思う。って……これはユニの投稿か。……ふふっ」

「ゆうちゃん……?」

「最近のユニちゃんのつぶやきはおもしろくないわよ?」

「いや、だいぶ面白いよ。ちょっとまえにマホが言ってたけど、ネットで言い争いはするもんじゃないって話ガン無視してるんだもん」

「ほんとだ。うへぇ、ゆにちー正体隠してるんだからレスバはやめとけって~」

 

とはいえ……ボクとしては退屈しのぎ程度でしかない。何もしなくていいと言われ、現に何かする方がよくないこんな状況はもはや残された手段は二度寝くらいなものだろうと思った矢先、外の騒ぎが静かになっていく。

 

「しずかに、なった……?」

「先ほど親方さんが現れましてノワールと話しておりましたわ。ノワールも対話の姿勢を見せましたし、いましばらくは大丈夫かと」

「さすが親方」

「みんつぶの方もゆにちーのつぶやきがめーっちゃバズってるよ!っぱ正体バレって激熱展開って感じ!」

 

それじゃあみんつぶ上ではもう公式マークとか欲しくなっちゃうでしょみたいな話をしていたら、また警報音が鳴る。

 

「わ、バズール現象だよ!」

「多いな……場所は?」

「街のすぐ近くだよ!」

「みんな!」

 

場所の特定と同時にもうみんな教会を飛び出していった。退屈じゃなくなるのはいいけど、こんな形なのは嫌かなぁ!

 

 


 

 

「とんでもない量だね……」

 

紅月と蒼陽を振り回しながらモンスターの波をかき分けて進んでいく。あらかたバズエンサーの場所はわかっているのに、最後のこの大波だけは乗り切れない。

 

「ここで捌いてるとはいえ、街の方は……!」

 

現地で合流したノワールさんとともに進んでいるのに、一向に進んだという感覚がしない。

 

「ねぇ、やっぱりこのバズール現象おかしいよ!モンスターの量が尋常じゃない!」

 

通信機からマホの声が聞こえてくる。焦らせてくれるな……でも、ひっ迫しているのも事実。

女神化するのも手だけど……いやだめだ。信頼を捨てかねない行動は状況を打開できてもあり得ない。なら……

 

「エクスポート……!」

 

紅月を大剣に変化させてモンスターの攻撃を防ぎながら、蒼陽を銃剣モードにすることでロムちゃんラムちゃんの弾幕を手助けする。それでもだめだ。一手足りない。

 

「バズエンサーは目の前にいるのに……!」

 

そんな焦りか、ノワールさんの位置が少し、ほんの少し浮く。ほんの一瞬だけ完全な死角が生まれる。そんな一瞬にたまたまモンスターの攻撃がかみ合った。

 

「ノワールさん!」

「しまっ……!」

 

誰もがみんな自分の周りの敵で手一杯だ。そんな状況で、一本の光条がモンスターを貫いた。

 

「お姉ちゃん!」

 

声と同時に散弾が目の前のモンスターを薙いでいく。一手、増えた……!

 

「行ける……!遅いよユニ、完璧なタイミング……!」

 

紅月と蒼陽を短剣に戻し、モンスターを捌いていく。どうやらユニは女神への協力を申し出た住民たちとともにこの戦場にやってきたようだった。なら、数のことまで考える必要はもうなくなったか。

 

「ギア!一気に行って!」

「うん!」

「後ろはラムちゃんたちにまかせなさい!」

 

バズエンサーに対して進むギア。だが、そんなギアの行く手を阻むものがいた。

 

「ッ!」

 

振り下ろされた剣をかわし、ギアはバズエンサーへの道を閉ざされる。

 

「鎧の騎士……?まるでバズエンサーを守っているような……」

「じゃあ敵じゃない。とっとと片づけるわよ!」

 

言うが早いかノワールさんは鎧の騎士との戦闘に入る。あいつ、強いぞ……モンスターの処理もしながらバズエンサーも逃がさないようにしつつ、ギアとノワールさんの援護もしながら奴の動きを制限できるように陽動も仕掛けて……

 

「やることが……やることが多い!」

 

姿勢を低くして一気に突っ込む構えを取る。とりあえずモンスターの波は後ろで止まっているのなら……!

 

「ベールさん後ろ任せます!《音速たる隠密の痛撃(ソニック・スニーク・ストライク)》ッ!」

 

バズエンサーに迫って鎧の騎士の動きを鈍くさせたほうがいいという判断。事実、ボクの突出っで奴はバズエンサーを守るような位置取りをしてギアの攻撃を防ぎきれなかった。

 

「いける……!」

 

大剣モードにした紅月を騎士にぶつけ、即座に短剣に戻したあと銃剣モードの蒼陽でバズエンサーを狙う。それを剣で防がせてその上からノワールさんが斬りかかる。剣を引き戻しながらボクへの蹴りも入れつつ騎士は立ち回るが、ギアの一閃までは防ぎきれない。ボクたちが防ぎきらせない。

 

「ここまでか……だが時間は稼がせてもらった。さらばだ」

 

後ろのモンスターも数えられるほどになった頃合いで鎧の騎士は引いていく。あいつまだ余力残してるな……

 

「待ちなさい!」

「追わなくていいわ、まずはバズエンサーよ!」

 

目標が引いたと見るやすぐに修正してノワールさんはバズエンサーを斬る。ユニもすぐに切り替えてバズエンサーを撃つ。こうして、バズエンサーまで撃破してこのバズール現象は幕を下ろしたのだった。

 

──そのはずだった。

 

 

「……よかった、こちらのシェアはまだ回収されてなかったみたいですね」

 

見慣れない、でも確実に女神だとわかる少女がかつてボクたちが戦ったシーリィとともに現れた。

 

「ッ!」

「ラステイションの女神候補生。あなたが生み出したシェアを……回収させてもらいます」

 

くそ、もう動けない……昨日も今日もめちゃくちゃな戦闘してるしそれ以前で鉱山で働いていた時の筋肉痛もあってもう無理だ……

ほかのみんなも動けていない。ということは、もはや誰も抵抗できない。

 

「きゃぁぁぁぁ!?」

 

つまり、なすすべもなくユニからシェアを回収されるということ。

 

「では、また会いましょう。守護女神、女神候補生の皆さん」

 

 


 

 

後日譚、というか今回のオチ。

全身筋肉痛を引きずりながらプラネテューヌ付近の拠点に戻ることにした。ラステイションで聞いたユニの容態は本当にシェアエネルギーを抜かれただけらしいというのが本人談。つまり、あの灰色の女神はボクと……成長の女神(グロウスハート)と似たような力を持っているということ。厄介だなぁ……と思うと同時に、もしその力をフルで使ってきたなら、対応できるのはボクしかいないということだ。

つまり、筋肉痛なんてとっとと治してクエストに行こうということである。

 

「……とりあえずストレッチしないとなぁ……」

 

そういえば、マホは昨日まで寝込んでたって言ってたな……じゃあ、あのマホは誰だ?

 




次回、第十三話「本命」

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