ギアが一晩でやってくれたらしいバズール現象抑制装置を引っ提げて、ボクたち6人はモンスターひしめくプラネテューヌ市街を駆け抜けている。
ボクがデバイスの高速情報処理モードを使ってモンスターの現在位置とかを全部アンリさんに渡していることでスムーズに移動できている。ひとえにこれも反対側で暴れてくれているブランさんたちのおかげだ。合流地点はプラネタワーとなっている。
作戦の概要はこうだ。まず、ブランさんたち守護女神三人がプラネテューヌの端っこから大暴れしてまっすぐプラネタワーに向かう。ボクたちはマホを連れてなるはやで反対側からプラネタワーを目指す。ギアいわく、国のバリアシステムのプログラムに制御装置の固有振動数を組み込めばいいということだから、人が住める環境にするにはプラネタワーに向かうことが勝利条件らしい。昔家族で見た映画の赤い大地を元に戻す作業のシーンを思い出すね。
とはいえ行軍は滑らかには進まない。
「バズール現象!?Nギアが検知するよりも速いなんて……!」
「迂回する?いや突っ切る!まずはプラネタワーに着くよ!」
いくら大多数が向こうに行ってくれているとはいえ、入り組んだ市街地でモンスターと鉢合わせすると迂回路も限定されてしまう。あれだけ大きい建物なら交通の便はさぞよさそうだけれども、それでも並び立つビルを壊して進むなんて現実的じゃない以上、退くか進むかの判断を繰り返すしかない。
「夕……アンタこういう状況に慣れすぎてない?」
「いろんな旅を経験してるからね……!」
検知していたモンスターを蒼陽で沈め、進んでいく。
「やっぱり、バズール現象は人為的に起こせるようね……!」
「しかも位置がいやらしい……ボクが敵だとしてもここに置きたいんだから、ボクたちの動きは筒抜けだろうね」
「つまり……敵はプラネタワーにいるってことね」
「……行こう!プラネテューヌを奪還するために!」
プラネタワーへの突入は成功した。ブランさんたちも合流して階段を上がっていく。途中でよくわからない空間に放り込まれるも、全部突破してきた。そして、最上階にたどり着く。
とんでもない高層にいるからか、地上にいた時よりも風が強い。
「……来たか、ネプギア。待ちわびたぞ、だが……貴様への復讐のために蘇ったかいがあったというものだ」
プラネタワーの最上階にいたのは、想定通りマジェコンヌだった。狙いはギアのようだ。
「マジェコンヌ……ッ!プラネテューヌを、返してもらいます!」
「ふん、これを見ても同じようなことが言えるかな?」
そういうマジェコンヌは立ち位置をずらすと、その背後からカプセルと、カプセルの中に入っているネプテューヌさんが見えた。
「お姉ちゃん……?」
最悪だ。シンプルに、最悪だ。マジェコンヌなら迷いなくこのカプセルを壊して無抵抗のネプテューヌさんの身体を貫いたりするだろう。カプセルの強度がどれぐらいかはわからないけど、それでも下手に動けばよくない方向に物事が進むのは想像に難くない。
「お姉ちゃんを、どうするつもり……!?」
「決まっているだろう、貴様の前で命を奪うのだ」
「ッ……やめてっ……!」
ギアが一歩前に進むのを制止する。
「ギア、落ち着いて。まずは状況の把握。まず、あいつを倒せばいい。でもすぐにはできないのはわかるよね。だからまずはあのカプセルを奪うことからスタートだよ。女神の耐久性はわからないけど、そんな簡単にはやられないとみて良いよ」
「夕ちゃん……」
「ふん、作戦会議か?大方このカプセルを奪うことを考えているだろうが、この距離では私が動いた方が早いぞ?」
「そうだね、だから今は何もしないよ。今は、ね」
雷銀式炸薬弾を装填したグロウ-Cをマジェコンヌに向ける。これは所詮牽制用。マジェコンヌ相手なら爆発で目くらまし程度にはなるだろうけど……それでも距離がある分不利。
「食えんやつだ、だが……っ!?」
ボクの考えでは奴がカプセルに対して何かのアクションをした瞬間に撃てばほんの一瞬だけでも対応させる時間を稼げる。この中で一番速いノワールさんがカプセルを奪取すればそのまま戦闘に移行できる、それが計画だった。だけど、完全に想定してない一手がマジェコンヌを襲う。
「この瞬間を待っていました!シーリィ、行きますよ!」
灰色の女神がマジェコンヌへ攻撃を仕掛ける。この一手を生かして全員で前進、カプセルを回収する。
「よし……マホ、カプセル開けられるか調べておいて」
「りょ……りょ!」
「これで心置きなく戦えるわね……」
ボク以外のみんなは女神化してマジェコンヌと相対する。数の有利はこちらにあるが……やけに余裕なマジェコンヌの様子は気色悪い。
「エフツーピー、来い。灰色の女神はお前に任せる」
「言われなくても、あれは俺の獲物だ」
前に会敵した鎧の騎士が灰色の女神と戦うらしい。なら……ボクたちはマジェコンヌに集中できる。
「マホ、ボクは流れ弾の処理に集中するからマホはそのカプセルの解除に集中して。機材とかマホはボクが守るよ」
「うん……ゆーゆー、お願い!」
こうして、女神対マジェコンヌの決戦の火蓋が切って落とされた。
とはいえ、ボクを除いても7対1。余裕のある戦いができているように見える。
「キャリブレーション取りつつCPGを再設定、メタパラメーターは……?」
マホは必死にカプセルを開けようとしつつも全く開く気配はない。流れ弾を捌きつつもボクは冷静に戦場を眺めることができていた。やっぱり、何かおかしい。
「ここまでの人数有利だっていうのに押し切れない、それにマジェコンヌからは余裕すら感じる……ここに弾を撃ち込める余裕が……」
奥の方では灰色の女神とシーリィがコンビで鎧の騎士と戦っているが……鎧の騎士は前戦った時よりも動きに精彩を欠いている。灰色の女神のほうは何かを狙っているような動きだ。そもそもなんでここに来たんだ?マジェコンヌが狙いのような動きも見せていたし……
「ッ……!」
紅月を大剣モードにしてラムの氷弾を防ぐ。マジェコンヌの動きはまだ余裕そうだ。流れ弾でこっちを狙うような動きも見せてきているということは、油断したら真っ先にこのカプセルを狙ってくる可能性も脳裏によぎらせている。こんな賢しい戦い方は、まるでお父さんのような動きだ。
だからだろうか、こちらは連携はとれているのに少しぎこちない。
「どうした女神ども、動きが固いぞ?」
「そういう割には、テメェも随分傷だらけだな!」
「果たしてそうかな?」
ブランさんの一撃を避けた先のマジェコンヌにユニの射撃が当たる。が、被弾してるのに傷が治っていく。
「傷が治っていく……!?」
「残念だったな、私は不死身だ」
「面倒……!」
マホにボクも戦場に行くことを伝え、前に出る。護衛はいったんロムちゃんラムちゃんに任せて、より短時間で高いダメージを出したほうがいいことをみんなに伝える。
「面白い考えだな小娘。やってみろ」
「そんなハッタリ、効かないよ……!」
戦闘再開。霊装・霞の効果で機動力が上がってるボクは紅月と蒼陽を構えてノワールさん、ベールさんとともに突っ込む。回避方向は全部潰してる、迎撃するならそれすらも迎撃してまずは一撃入れる……!
「ふん……!」
先に到達したノワールさんの斬撃を防ぎベールさんの方向へいなすマジェコンヌの隙を狙って銃剣モードにした蒼陽で斬る。斬ったそばから回復されるがギアがボクに続いて同じ場所を斬る。
「残念だったな、回復が甘いなんてことはない」
「ッ!」
すかさず距離をとり、魔弾を避ける。こいつ、やっぱりボクの知ってるマジェコンヌとはわけが違う!回復能力を抜きにしても、戦闘センスが段違いだ。
「マジェコンヌのくせに……!」
「なかなかどうして、やりますわね」
与えた傷は回復していく、けれど、そのたびに発光するクリスタルがある。ならば……!
「黒いクリスタルに、シェアエネルギーが集まっている……!?」
「それで傷を治しているってこと!?」
「女神でもねぇのにそんなことできるわけがねぇ!」
皆も気づいたようだ。そしてこの距離、この位置からなら、狙える……ッ!
「そこッ!」
「なっ……貴様ァ!」
マジェコンヌの手にあったクリスタルを上空にはじく。が、速度に振り切ったボクは防御態勢を取れない。
「ッ……!」
「夕ちゃんッ!」
おそらくは人体を貫通できるほどの威力があるであろう魔弾が、ボクの左胸の近くから放たれる。回避も間に合わない。
「忌々しい……だが、小娘は消し飛ばさせてもらったぞ」
「そんな……ッ!」
弾かれた黒いクリスタルが地面にカランコロンと音を立てて落ちる。同時に、上空から6基の針のような武器がマジェコンヌを襲った。
「なんだこれは、ちぃ……っ!?」
クリスタルの落下位置から引きはがすようにその針は動き続け、同時に灰色の女神がクリスタルへ向かって動き出す。それはマジェコンヌも同じ。だからボクはそのマジェコンヌの前に姿を現す。
「
「貴様ッ……女神だと……ッ!」
刀で袈裟斬りにすると同時に女神化が解除されてボクの姿が元に戻る。
「そう、教えてあげるよ。ボクは夕。凍月夕」
《
次回、第十五話「復活」
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