並列世界の放浪者   作:Feldelt

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第十六話 露呈

プラネテューヌ奪還から数週間。ボクはプラネテューヌに舞い込むクエスト依頼を片っ端から片づけていた。

ギアとマホ、アンリさんはルウィーへのバズール現象抑制装置の設置に、ネプテューヌさんは舞い込んでくる書類仕事をこなしている。イストワールさんが目を丸くして逆に具合悪そうにしていたけれど、ボクの知ってるネプテューヌさんと同じくらいおちゃらけているのに真面目に仕事をやっていてびっくりしていた。

それでボクにどうしてクエスト達成依頼が来てるのかといえば、ネプテューヌさんが仕事をしてるのとプラネテューヌの教員さんもなかなかすぐには戻ってこれずということで人手不足がその第一の要因。第二の要因としてはボクも女神である以上シェアが必要なためである。プラネテューヌのシェアを取り戻すついでにちょっとだけもらい受けることを条件に、ここ数週間はギアたちと別行動でひたすらクエストを達成していたのだった。

 

そして現在、ルウィーとの国境近くで討伐クエストを終わらせたところで、上空を移動する一人と一機を視界の端に収めたのだった。

 

「あれは、灰色の女神……!」

 

今ならシェアがある。だけど、このまま追ったら気取られるのは必至。何を目的にしてるのを探るなら、ギリギリまで気配を消して追うに限る。幸いこの前の奪還作戦の時に解析でシェアのパターンは掴んでる。どの方向に進んだのかはある程度わかるから……陸路で追おう。まずは討伐の報告を送るところから……

 

 


 

 

できる限り急いで灰色の女神に追いついたとき、状況は全く分からなかった。地面を掘った形跡と、埋め込まれた機械が少し見えている。武器を持っているアンリさんを抑えるギア。その先には灰色の女神がいる。アンリさんが灰色の女神を攻撃……だめだ全く分からない。

 

「ねぇ、いろいろ知ってるなら教えてよ!」

 

マホが一歩踏み出して灰色の女神をとっ掴もうとする。

 

「やめろ、私に触れるな!」

 

その瞬間だった。

 

「タワーが、崩れて……人が、あぁぁぁ!?」

 

うわごとを言った後に頭を抱えてマホが苦しみだした。もう見ていられない。

 

「マホ!」

「マホちゃん!?」

 

まずはマホに駆け寄って、ギアもアンリさんも駆け寄る。ボクはすぐに灰色の女神の方を見て、驚いた。何かしらの精神攻撃かと思ったが、違う。そう言い切れるのは灰色の女神もまた激しい頭痛に襲われている様子だったからだ。だがそれだけじゃない。こんな状況でバズール現象まで発生してきた。シェアはある、あるけど……灰色の女神の前では手札は切りたくない。

 

「これ、いままでのバズール現象とは違う……抑制装置が機能していない……!?」

「んなっ……じゃあ、これは何……!?」

 

増えていくモンスター、撤退していくシーリィと灰色の女神。そして、頭痛にもだえ苦しむマホ。撤退してくれたのは気が楽になったが、マホが動けない以上、そして戦えるのがギアとボクだけな以上、撤退戦も厳しい。けれどやるしかない。

 

「夕ちゃん!」

「やるよギア。アンリさんはマホを連れて街まで行って!引きずってでも!」

 

そう言ってボクが女神化しようとしたタイミングで氷塊が後ろから飛んでくる。

 

「これは……!」

「お礼なら後で聞くわよ、あんたたち!」

「ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃん!」

「いいタイミング……!行けるよッ!」

 

完璧なタイミングで女神候補生の3人が駆けつけてきてくれた。これなら温存しながらでも戦える。というか……

 

「夕ちゃんはアンリちゃんたちをお願い!」

「……了解ッ!」

 

ボクたちの横を駆け抜けていったモンスターを蒼陽で撃ち落とし、マホとアンリさんの護衛につく。女神化して運んでもいいけど、一人だけしか運べない以上アンリさんが危険になってしまう。このままのほうがいい。

 

「道は作るよ、行こう!」

 

健闘を祈るよ、みんな……!

 

 


 

 

10分は歩いただろうか。追ってくるモンスターを倒しながら街の方へ向かい、もうそろそろ見える頃合いになってきた。

 

「痛い、痛い痛い……!」

「顔に斜めに傷が入ったような痛み方してるね……」

 

マホの頭痛は止まる気配が全くない。けれど、もうここまでくれば大丈夫だ。

 

「……アンリさん、ボクはギアの援護に戻るよ」

「えぇ、わかったわ夕。ありがとう」

 

こくりと頷いて戦場に戻るために二人に背を向けて走り始める。少し走った後だろうか。後ろからマホはボクを追い越して走っていった。

 

「え……?」

 

同時に通信。アンリさんからだ。

 

「夕!ごめんなさい、マホを見なかった!?あの子、いきなりそっちの方に走って行っちゃって、私、見失っちゃって……!」

「今ボクの横を走っていったよ、すぐ追いかけるね!」

 

走る。なんだ、この感覚は。ほんの一瞬だけ、全身に鳥肌が立った。力があふれているような……違う。あふれ出て漏れ出た力に触れたような、そんな感覚。

 

「何が、起きる……!」

 

増えてくるはずのモンスターも全く見えない、マホが倒したというの……!?だったら今までのはなんだったんだ、道化……それとも本質……!?

 

「マホ!」

 

戦場に追いついたとき、マホはバズエンサーと思しき大型モンスターを両断していた。本当に、どうなっている……!

 

「あぁ、止まらない……頭の痛みが止まらない!何が原因なの!?バズール現象じゃないならなんだって言うの!?」

 

そんなものはこっちが聞きたい。だが、バズエンサーを両断した火力もあって変なことをするとこっちにまでその力が向きかねない。挙句、マホは自分が設置した基地局を壊そうとする。滅裂だ。

 

「マホちゃん!落ち着いて!それはマホちゃんが作ったものだよ!」

「邪魔しないで!こいつが……マジフォンが集めたシェアを一度に吸収してるんだ!だから!」

「ッ!」

 

マジフォンが集めたシェアを吸収……?それはいい。だのに、なんで人間であるはずのマホに強い影響が出てる……?まさか、まさか……!いやでもそれはおかしい、おかしいけど……それしか辻褄が合わない。

 

「邪魔するなら……誰だろうと容赦しない!」

「マホちゃん……!」

「もう説得できそうにないわネプギア!構えなさい!」

「気絶させてでも、取り押さえる……!」

「待って……!」

 

友人に刃を向けることをためらうギアを横目に、ボクは女神化して刀を構築、峰に返して戦闘に入る。

 

「じゃ、まぁ!」

「ッ!」

 

マホの持ってる武器はシールド?そこからビーム刃が出るタイプか……!

 

「なら……!」

 

スティングビットを展開、手加減なんかしたらこっちがやられる、そんな気しかしない!

 

「ちょっとくらいケガするけど、いいよね。答えは聞いてない!」

「わたしたちも……」

「ごめんねマホちゃん!ええい!」

 

6基のスティングビットと両サイドからの氷塊。シールド一個で防げるものではないが、縦横にビームを放ってそれを迎撃してくる。このビーム……、この戦い方……どこかで……!

 

「痛い、痛い……!わたしは、お姉ちゃんのために頑張ってきたのに……!頑張っても、お姉ちゃんは戻ってこなかった……!なんでこんな目に遭うの……!あとどれくらい頑張ればいいの……ッ!」

「マホちゃん……」

「ぼーっとしないのネプギア!動かないとやられるわよ!」

 

マホの動きは戦闘に慣れているそれではない。でも、確実に力がマホのキャパシティを上回っている。だからとっとと仕留めてあげないと……!

 

「私は、予備じゃない……!お姉ちゃんの予備なんかじゃない!」

 

悲痛な叫びだ。だから、本当に早めに終わらせないといけない。

 

「……ちょっと痛いよ。我慢して」

「夕ちゃん……!?」

 

大剣を構築し、真っすぐにマホを見る。一撃で沈めてあげたほうが、もう、お互い苦しくなくて済むでしょ。

 

「待って……!」

「邪魔、しないでよ……!」

 

ギアの制止とマホの攻撃。全てボクには届かない。踏み出して、マホを両断する勢いで放つ……!

 

「《緋一文字・紅椿》ッ!」

「ッ!」

 

大剣の横薙ぎをマホはシールドで防ぐも、衝撃は止められない。全部壊す勢いで、大剣を振りぬきマホを木に叩きつける。

 

「そのままじっとしてて、その方が、痛くないでしょ」

「マホちゃん……!」

 

女神化を解除する。アンリさんに連絡……見つかったけど、ボロボロの状態だったってことにしておこう。今ここで起きた出来事は、隠しておいた方がいい。

 

「……夕」

「ユニ、ボクは先に戻ってるよ。気になることが山ほどありすぎるし、それに……今は……」

「わかったわ。本当はアンタにも話したいことがあるんだけど……後になりそうね」

「うん、ありがとうユニ。助かった」

 

そうしてボクはプラネテューヌ側の道へ進むことにした。いくら灰色の女神がイストワールさんの情報にないとはいっても、これ以上はよくわからない。だから、わかりそうな人に聞くしかない。そう思って、夜道を歩くことにした。




次回、第十七話「胎動」

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