並列世界の放浪者   作:Feldelt

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第三話 歪みの先にあるもの

バズール現象の解析。そのためのデータの観測。

その集めたデータをアンリさんが入力して解析している。

その間にボクがすることはシャワーを浴びることと、日常の会話を楽しむこと。

 

「……夕、アンタさっきあんまり戦ってるようには見えなかったけど?」

「ボクの出る幕じゃなかっただけだよ、君たち四人でだいたい事足りてたじゃないか。それに……」

「それに?」

「見定めたかったってのもあるかな、みんなの力を」

 

実際、この四人の連携は想像を超えていた。言葉が必要最小限にとどめられた、まるで後ろにも目がついているかのようなよどみのない連携は、素直に凄いと思った。

 

「ずいぶん余裕そうな言い回しね……それで?見定めた結果はどうだったのよ」

「威嚇する猫のような顔をしないでよ、ユニ。結果はボクの想定以上。このままなら、君たちは現状を打破することができる。そう信じられるくらいの力を感じた。ボクは旅人だからね、連携なんてなかなか取れないから羨ましいとも思うよ」

「ふぅん?ま、いいわ。アタシたちにかかればあんなモンスター、ちょちょいのちょいだってことわかったでしょ?」

「そうだね」

 

ツンケンしてるなぁって思ったけれど、その言葉の中に含まれてる感情は敵意よりも信頼、ギアたちへのそれが強く出ていたように感じる。多分だけどね。

やや満足げな背中のユニの背中を見送って、ボクは外に出る。風で髪が揺れて、その風で揺れる葉っぱの音と、その音をかき消すような警報音が聞こえる。

 

「何事ッ!?」

「わかりません、ですが確実に、拠点周辺にてバズール現象が発生!」

「まるでここを狙ったかのような配置……意図した何かがあるっていうの?だとしたらそれは……思った以上に厄介なことだよ……ッ!」

 

拠点に戻る時間が惜しいから通信端末で状況を確認する。さっき戦ってた場所に近いが……配置が嫌らしい。起伏や距離が絶妙で手分けしないと数の暴力で押し切られてしまう危険性がある。

 

「先行する、敵の数は減らさないと……!」

 

何かがおかしい、そうボクは感じてバズール現象が発生した方向へ向かう。そこにいたのは軽く見積もって100体くらいのモンスターの大群。一匹一匹は大したことなくても、この量は捌き切るのは女神化なしではボクでも厳しい。それにだからといって女神化するのはあらぬ誤解を生んでしまう可能性があるからできないしそもそもまだボクの中で女神化時の権能を使えるほどのシェアがない。

 

「やれることをやるだけ、か……」

 

ふぅ、と息を吐く。二本の短剣、紅月と蒼陽で迎え撃つのがボクにとっての最善策。ギアたちが来るのを待っていたら押し負ける。なら……!

 

「行くよっ!」

 

 


 

 

モンスターの大群に突っ込んだ結果、ボクを無視してモンスターは進んでいった。その過程で軽く30体は撃破したけど、たぶん減らした分だけ増えている。バズエンサーも移動していることを考えると、この突出は結果として悪手だったのかもしれない。でも、かといって放っておくわけにもいかず、厄介な現状としか言いようがない。

 

「背中からたたくのがいい気もするけど、モンスターの動きがおかしすぎる……まるで統制がとられたかのような意思のある動きは……何かが裏で操っているとしか思えない。でもそんなことが可能なの?モンスターを操るだなんて……」

 

思考の連鎖は止まらない。今ある情報が少なすぎる。けれど、バズール現象が任意の場所に、任意のタイミングで起こせるとしたら?だとしたら、ボクなら……お父さんならきっと、このモンスターの波を陽動に使うはず。

 

「狙いが拠点だったのなら……!」

 

返す踵が後一瞬遅かったら巻き込まれていた。そんな爆発が起こったのはその時だった。

 

「ッ……!?」

 

態勢を立て直したボクが見たのは機械。見るからに敵意むき出しな機械。これが本命だというのなら……好都合、ギアたちがあの波を処理してる間に片づけるほうがいい。ただこれも陽動の可能性がある……二重の陽動、なんてそんな手間をかけるほど重要なことが拠点の襲撃だとするなら割に合わない、陽動の線は薄れた?わからない。わからないけど……

 

「今はこいつを片付けないといけない。100秒限定の本気で行くよ……ッ!」

 

女神化し、空を駆けると同時に6基のスティングビット……お父さんの黒切羽をベースに刺突に特化したボク専用の遠隔操作端末を放つ。

 

機械の外装は硬くても脆くせざるをえない関節に攻撃を集中すればいい。それに……っ!

 

「ボクはまだ短期決戦しかできないからね……ッ!」

 

構築で刀を生成、装備する。剣ではなく刀なのは切れ味に特化するため。何度も打ち合うことができないのなら、一撃で決めるほうがいい……!

 

「そこッ!」

 

ビットで作った一つの隙から機械の右腕を斬り飛ばす。即座に二基のビットを機械の中に突っ込ませ、後ろから機械の首に当たる部分を両断する。

 

「ここまで……っ!」

 

空中で女神化が解除され、慣性でボクは前進するもどうにか着地をする。最後に銃剣モードにした蒼陽で一発ビームを撃ち込み、機械は爆発する。

 

『夕ちゃん!』

「ギア、そっちは?こっちは大物を片付けたところ」

『こっちはたくさんのモンスターを倒し切ったところだよ!』

「反対側からは襲われてない?」

『反対側……?ううん、発生したバズール現象は全部止めたよ』

「そう、ならいいいけど……」

『……?』

「まぁいいや。了解、ボクも戻るよ」

『待って夕ちゃん!今さっき夕ちゃんが向かった方向で観測されたことのないエネルギー反応があったの!』

「それがボクが倒した大物だったんじゃないかな」

『そう、なるのかな?アンリちゃんがデータをまとめてくれてるから一応確認してって!』

「了解」

 

通信を切る。

 

「……仕方ないとはいえ、まずったなぁ……」

 

拠点へ戻る道を進む。どう言い訳するか考えながら。

 

 


 

 

「ほう……あの小娘、まさか女神だとはな……なら、次はお前も巻き込んでやる。ネプギア……お前はまだ、絶望の物語の序章を歩んでるにすぎない……」

 

 

 

 

 

 




次回、第四話「悪魔の残影」

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