並列世界の放浪者   作:Feldelt

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第四話 悪魔の残影

モンスターの大群を処理したのち、全員へとへとになりながら拠点に戻る。

道中でロムちゃんが謎のディスクの破片を回収したなんて話も聞きながら、とりあえず休もうなんて言って細かい話は明日しよう……ということで迎えた新しい朝。

 

「皆さん、昨日はお疲れさまでした。拠点にも被害はなく、住民の皆さんも無事です。ですが……」

「ですが?イストワールさん、懸念があるの?」

「はい。一つ不安なことがあります」

「私とあんりーが調べて分かったことなんだけど、昨日のバズール現象が発生した位置、前にぎあちーたちがバズエンサーを倒した場所にほぼ一致するんだよね」

「それって、どういう……」

 

アンリさん曰く、バズール現象は同じ座標では連続して発生することはなかった。でも昨日はそれが起きた。観測していた情報とは違うイレギュラー……それが不安要素。ボクの考えが当たってるのなら、このバズール現象は恣意的な可能性が高い。誰かが、何かがボクたちを狙っている。

 

「確かに不安ね……」

「まぁでも悪いことばかりじゃないよ!えーっと、なんだっけあんりー……」

「はぁ、内容を覚えてなかったのね……まぁいいわ。今回ネプギア達が頑張ってくれたおかげで、ついに次元の異常振動を初めて観測できたわ」

「異常振動……空間震とは違うんだ」

「あれはガチもんの災害だから比べらんないよー!ゆーゆーもボケるんだねー!」

「簡単に説明すると、次元がバズール現象に対して抵抗する際に起きる現象ね。今回その周波数を特定できたからこれからはある程度バズール現象の発生を予測できるようになるわ。それに、ゆくゆくはバズール現象の発生そのものを抑えられるようになるかもしれない、本当に大きな一歩よ」

 

昨日の切羽詰まった状況からは考えられないくらい希望的な話だ。

けれど、今必要なのはそういう希望なのかもしれない。

 

 


 

 

翌朝。拠点の掃除をしていたボクは見るからに寝不足そうなギアを見る。

 

「おはよ、ギア。寝不足?」

「おはよう、夕ちゃん。昨日はマホちゃんが寝かせてくれなくて……」

「さいですか……」

「そんな遠い目をしないで!?お姉ちゃんのことを聞かれたからいっぱい話しただけだから!」

「……そっか」

「ところで、いーすんさんはどこにいるか知ってる?お話ししたいことがあって……」

「お話?……なるほどね」

「ふぇ?」

 

決意に満ちたギアの目は、プルやノワールさん、お父さんやお母さんが同じように何かをすると決めた目をしていた。

 

「イストワールさんはたぶん一番広い部屋にいるよ、ボクも手伝うから」

「夕ちゃん……うん!」

 

ギアの話はこうだ。協力してプラネテューヌを取り戻す。現在プラネテューヌはバズール現象の発生頻度が高くモンスターの巣窟で到底人が接近できるような場所ではない。だから、各国にも協力を要請すると。

 

「私は賛成よ。少なくとも、ルウィーは全面的に協力する」

「ラステイションに話をつけるならアタシも必要でしょ?」

 

幸い、反発はなかった。いや、リーンボックスは候補生がいないからまだ何も聞いていないが……それでも、プラネテューヌ奪還の一歩はここに踏み出された。

 

 


 

 

出発前夜。

月を眺めて思考を整理する。

 

リーンボックスに向かうことになったとはいえ、状況が読めないというのは本当に怖い。お父さんなら多分、情報を収集できない時点でリーンボックス行きを嫌がる気がする。想定しうる最悪の範囲が広すぎるから。お母さんなら、我先にといって全部把握してくると思う。すべてが未知だから。

 

けれど、ボクはどちらでもない。お父さんみたいに常人離れした思考演算もなければお母さんのように全てを無視した把握もない。ボクにあるのはまだ満足に使えない女神の権能と、石集めで培った観察力から広がる思考能力。

リーンボックスに行けば分かることだろう、今どうなっているかなんてことは。

 

横に結んだ髪をほどき、夜風に髪を預ける。

目標があるのなら、そこに向かって進むだけ。たとえそこにどんな障害があったとしても。

 

「乗り掛かった船だよ、最後まで協力するさ」

 

上着を翻し、拠点に戻る。

静かな夜は、訪れる嵐の前触れのように感じた。

 




次回、第五話「雄大なる大地を踏みしめて」

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