並列世界の放浪者   作:Feldelt

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第六話 突入

アイエフさん曰く、ベールさんは教会に引きこもる際に直接外界とやり取りできる秘密の抜け道を用意していたらしい。少し前まではふんだんに活用していたであろうその抜け道を、今ボクたちは通っている。

 

暗く煤けた手入れされていない道を。

 

「それにしても……暗い」

「まぁ、何かいてもおかしくないくらいには暗いわね」

「何かって何!?」

 

とはいえ……7人で通っていると話題には尽きず、虹色の蜘蛛にユニが叫喚してるところをマホが撮ってたりとか、その蜘蛛を巣に返すロムちゃんがラムちゃんにすごいと言われてるとか、ボクもボクで転がってる石の様子から地質を予想したりとかしてたら意外とすんなり目的地であるベールさんの部屋に到着した。

 

「っと、ごめんよロムちゃんラムちゃん」

「ふぇ……?」

「ゆう!?ちょっと何するのよ!」

 

まず真っ先に目に入ったのはおおよそ子供には見せられないイラストの数々。だからボクは真っ先にロムちゃんラムちゃんを上着の中に入れるように抱きよせる。全く……向こうのベールさんに慣れてるとはいえさすがにはばかられる……というか、気持ち悪さまで感じる。人のイラストが多いせいか、まるで『見られて』いるような、そんな気持ち悪さが。

 

「なんかこう……ザ・ソロ充というか、その……」

「いくら自室とはいえ、限度がある気もするよ」

「確かに、ロムラムにはあまり見せられたものじゃないわね」

「でも、当のベールさんは全く気付いてないみたいです」

 

ギアの視線の先には、マジフォンの画面を見ては動かないベールさん。ちょくちょく操作しては何かしらの文章を打ち込んでるのを嬉々として言語化している。盛大な独り言だ。

 

「なんというか、痛々しく感じるというか……」

「様子がおかしいのかな……?」

「ベールさん、怖いよぉ……」

 

どうにもこうにも、やはり様子がおかしいと言わざるを得ない。

原因は……さっき見た『家守こもり』だろう。ギアが話をつけようとしたが大音量で流される配信の反応からベールさんは気絶までしてしまう。何かしらの音響による遠隔攻撃……?にしてはボクたちが無事なのは説明がつかない。

 

「気絶しちゃった……!?」

「まずいわね……教員も来てるだろうし、とりあえず脱出するわよ、ついてきなさい」

 

突入した結果、すぐ脱出することになったわけだけど……なんだろう、この違和感は。出来すぎているというか、偶然なのか……?

 

 


 

 

「まぁ、ベール様が無事でよかったわ」

「あれを無事と言うのは、いささか無理があるよ……」

 

とはいえ、調べるべきところはいくつか絞れた。やはり……

 

「あの」

「どったのぎあちー?」

「あのね?気のせいかもしれないんだけど……私がベールさんに話したとき、Vtuberさんが割って入ったような気がして……」

「あー!それあーしも思ったー!」

「とはいえ、それは無理があるわよ。相手はネットの向こうで配信しているんだから……タイミングがかみ合ったとしか考えられないわ」

「……本当にそうかな?」

 

本当にタイミングがかみ合っただけだろうか。何かしらの方法でこちらの動向を見ていたとしたら?

あの部屋で感じた気持ち悪さはリーンボックスに入った時に感じたものに近い。

 

「たしかに、あーしなら簡単にあの部屋にあるカメラを使って部屋の中を見ることはできるけど……」

「だろうね。マホと同じようにあの部屋のカメラを使ってボクたちの様子を見ていたとしたら辻褄はあう。だからやっぱり、『家守こもり』を調べ上げて白日の下にさらすしかないね」

「一理あるわね。私もその線で調べてみるわ」

「あーしもあーしもー、ぎあちーはどうする?」

 

決まっていく今後の方針。ギアは街の人から情報を集めていくことを選んだ。なら、もう一度高速情報処理モードを起動してみんつぶの情報を洗っていく。

 

「それじゃあ……さらっと調べていきますか」

 

 


 

 

とは言ったものの……ギアがだいぶお人よしのせいか本来の目的である『家守こもり』の正体について調べるより、街の人が出してるクエストを片っ端から片づけるのを優先していて……ボクもクエストハンターなんて呼ばれてる時期が長かったせいかノリノリでギアを手伝っちゃって……

 

「で、本来の目的を忘れてお手伝いに奔走していたと」

「うぅ……」

「まぁ、いいわ。乗り掛かった舟かどうかわからないけど、最後の依頼が『家守こもり』宛の荷物なんだから」

「一挙両得ってわけだね」

「だぶるちゃんす……!」

 

指定されたポイントは郊外だけれども……地図検索にかけたらダンジョンらしき場所に一致している。見られていることも考慮すると、罠である可能性も捨てきれない。まぁ、幸いボクもクエストのおかげかシェアが回復してある程度は変身状態を維持できる量は集まっているし、罠だとしても手がかりが向こうからやってきたのなら踏み込むに限る。

 

「それじゃあ、行こうか」




次回、第七話「突撃、隣の……?」

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