シーリィを追った先は工場だった。現在も稼働している。
機械兵を作るのは将来的にとシーリィは言っていたけど、じゃあ今は……?
そう思って生産ラインを見ていくとそこにはマジフォンがあった。
そこから先は怒涛だった。消えゆく家守こもり、接続と解析をしてサルベージをするマホ。
「もう誰も、あーしの前では死なせないっ!」
なんて言いながら早口でコードを解析して、まるでスーパーコーディネーターがOSを書き換えるかのようにキーボードを叩いていった。結果として家守こもりのサルベージはうまくいったらしく、ベールさんのPCに移植されデータの学習を再びするということで今に至る。
「まぁ、一件落着ならそれでいいか」
AIの経験データが根こそぎ消えていた、ということは人間とコミュニケーションを取ろうとした以前のデータと、『家守こもり』として活動していたデータが消えたということである。ベールさんがもう一度学習させたデータは後者のみなら、今後は『家守こもり』としてとしか学習できないようになっているということに他ならない。そもそも、機械兵の生産工場になる前に工場自体からAIのデータは消えているわけだから、結果としては最もいいものだろう。
ギアはベールさんとの協力も取り付けたみたいだし、本当に願ったり叶ったりだろう。
あとは、シーリィについてだけが目下の謎か。これもアイエフさんが調べてくれるって言ってたし、今ボクたちにできることは次の目的地に移動することくらいか。
「アンリちゃん、次の目的地はどこ?」
「皆さんにはこれからラステイションに向かってもらおうと考えています」
「了解、それじゃあ行こうか」
「えぇ、そうね……」
妙に歯切れが悪いユニが気になったけれども、ギアの掲げるプラネテューヌ奪還は早ければ早いほどいい。手遅れになる前に。
「ラステイション到着……静かすぎるね」
「えぇ、工場の音が聞こえないなんて、こんなの初めて」
ボクの記憶、向こうのラステイションでも工場の音がひっきりなしに聞こえていた。執務室での会話がちょくちょく遮られるくらいには。それをノワールさんは笑って自慢していたっけ。もっともそれはボクの記憶であって、ここの次元のノワールさんではない。
「まずは教会に行きましょう」
ギアの声に頷き、歩みを進める。道中、ベールさんはギアにネプテューヌさんが消えた日のことを話していた。ノワールさんがそのことを悔やんでいることも。だからきっと大丈夫だと背中を押していた。
幸いラステイション教会の教員もボクたちにすぐ気づいたらしく、すぐにノワールさんとの面会ができた。とんとん拍子だ。ベールさんの言う通り、うまくいくだろう。そう思っていた。
「……悪いけど、力は貸せないわ」
仕事をしながらノワールさんはギアの嘆願、プラネテューヌ奪還への協力を却下する。ノワールさんの言い分はこうだ。ラステイションの状況は安定している。だけれども、油断はできない。国家の維持安定のために、他にさくリソースがないと。至極まっとうな、為政者として真っ当な答えだ。ボクの知るノワールさんも、もしかしたらこう答えるかもしれないと、そう思うこともできた。
だけど、決定的な違いが一つあった。
「お姉ちゃんの……バカッ!大っ嫌いっ!!」
それが妹の存在。確かに、久しぶりに会ったのにおかえりも言ってくれないなんて、悲しいよ。ボクが帰ってきたとき、お父さんとお母さんが言ってくれなかったらなんて想像すると、今のユニの気持ちはよくわかる。
「ユニちゃん!?ノワールさん、追いかけなくていいんですか!?」
「……今はあの子のわがままに付き合ってられないわ」
はぁ、とため息が出る。
追いかけてくるよとベールさんに言って部屋から出る。ほんと、そういうところあるよね。
おいおいマホから聞いた話だと、ユニが部屋を飛び出したあと、あからさまに動揺していたんだとか。
……不器用だなぁ、ほんと。なんて、ボクの知ってるノワールさんじゃないのに妙な納得感を覚えたのは、ボクの胸の内だけにしまっておこう。
次回、第十話「理想と現実」
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