悟様、いい加減にしてください 作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)
甚爾との戦いでの疲労や消耗が激しく、綱時が目を覚ますのに一週間という時間が経過した。
この日は悟が、事後報告を兼ねた見舞いにきていた。
星漿体護衛任務は、天内が殺された事で失敗に終わった。
表向きはこのように処理されているが、事実は違う。
綱時と甚爾の戦いが終わり、暫くしてから反転術式を会得し復活した悟によって、甚爾は捕縛された。
その時、悟と甚爾の間で縛りが発生した。天内の同化拒否が上層部に知れ渡ると天内の身が危ないという事で、表向きは甚爾を襲撃者として暗殺された事にしようとしたのだ。
謎の襲撃者として責任を押し付ける代わりに、一定の生活費と仕事の斡旋をするという事になった。
それに追加で数年すれば禪院に売られる息子の生活の保証が条件となった。
以上の事を起きた直後に悟から聞かされ頭が混乱しそうになる綱時。
「という訳で、あのゴリラの子供は術式持ち、しかも十種影法術だった。禪院に売られても碌な事にならないだろうから禪院に話つけてきました」
「起き抜けに情報量が多すぎるんですけが…………それにしても、相伝持ちですか。当主になる前に扇様か直哉様に殺されるんでしょうね」
まだ目が覚めて1日と経っていない人間に話す情報の量と濃さでは無いが、五条悟という人間と付き合っていく上でこの程度はよくある事でいちいちリアクションしていては身が持たない。綱時の先代源当主は度重なる無茶振りでストレスが積み重なり、胃潰瘍となった事がある。
先代の教訓を活かし、キャピッという効果音が聞こえるウインクを決める悟をスルーする綱時。
「そ。それに、もう1人女の子がいたけど一般人だったからね。綱時が起きてたなら仲介頼んで、もうちょっと丸く収めるつもりだったんだけど…………まぁ、しょうがないよね」
「貴方、マジで何してきたんだ」
「ゴリラと恵君連れて禪院のじーさんとお話してきた」
お話とは名ばかりの脅迫に綱時はため息を吐かずにはいられなかった。
悟だけなら直毘人も強く出る事が出来ただろう。しかし、甚爾までいるのなら従わざるを得ない。
甚爾は禪院を出る際に禪院家で暴れ回り壊滅寸前まで追い込んでいる。
下手に刺激して甚爾に暴れ回り、悟が加勢すれば禪院家は地図から跡形も無く消えてしまう。
余計な被害を出さない為にも直毘人は悟の提案を泣く泣く受け入れる羽目になったのだと推察する綱時。
「それで?甚爾さんは今何してんですか?」
「源経由で紹介した運送会社で働いてるよ。あと非常勤だけど高専で体術も教えてもらう予定。まぁこっちは暫く上の目があるから無理だけどおいおいって感じ」
「あの人の持ってた呪具と呪霊は?」
「呪霊は傑が取り込んだけど、呪具は高専の忌庫に放り込んであるよ。上には報告してないから動けるようになったら源の蔵にでもしまっとけ」
襲撃に使われたという呪具の報告をせず、平気で懐に仕舞わせようとする悟に呆れる綱時だが、無料で特級呪具が確定で二つも貰えるのなら儲けものと納得する。
「盤星教は潰れたし、天内は黒井さんと普通に暮らしてるよ。もう二度と呪術に関わることも無いさ」
「そうですか、それは良かった」
「それはそうと…………………綱時めっちゃ強くなったね」
サングラスを外しながら綱時を見つめる悟。悟の六眼はあらゆるものを見通す。
悟は綱時も自分と同じく呪力の核心に迫ったと核心したのだ。
「確かに今の悟様と戦ってみたいですけど、リハビリ終わった後でも良いですか?」
「いや、辞めとこう。今の綱時と戦うならこっちもマジで殺すつもりじゃないと俺が死ぬ」
六眼は見通した。綱時のうちに眠る存在を認知したのだ。軽く見ただけだと言うのに、悟は自身の背中に冷や汗が伝うのを感じた。
「童子切安綱の事、悟様は知ってたんですか?」
「それに関してはマジで知らなかった。多分上の連中で知ってる奴は居ない。一般的に童子切安綱は歴史的価値と込められてる呪力量がヤバいってぐらいな認識だからな」
童子切安綱は特級呪具として登録されているが、それは歴史的価値と込められた呪力の凄まじさからの評価だ。
何かしらの術式が刻まれていると言われていたが、誰一人扱える者が現れなかった。その為、一応特級ではあるが、一級に格下げしようなどいった声もあった。
しかし、綱時がどういう理屈か不明だが、源頼光を呼び寄せた。
「やっぱり、僕が源だからでしょうか」
「本来宿って居なかった筈の魂が僅かな縁を伝ってきた。それで綱時との間にパイプを作った。下手したら呪物認定されても可笑しくない代物だよ」
頼光が現れる兆候が無かった訳では無い。綱時を除く数代の源家当主達が童子切安綱に拒絶反応を示され使用出来ないという事があった。
一族の間で使用不可な呪具とされていた時、綱時が童子切安綱を抜刀してみせたのだ。
扱うことの出来ないとされていた童子切安綱の抜刀を成し遂げた事を認められて綱時は源の当主となった。
「頼光公は綱時の事、自分の息子って言ったんだよね?血縁が条件なら綱時だけが使えるってのは違うな……………………ま、頼光公の力を暴走させるようなら、俺が殺さなきゃいけなくなるから頑張ってくれよ」
「ですね。あの人の力を制御出来るようにしてかないと」
「それにしても、年の離れた嫁に加えて時空越えてきた母って面白いな。ロリコンでマザコンとかお前の性癖戦国時代かよ」
ロリコン、年下好き、そういった言葉は綱時にとって禁句である。
ロリコンと揶揄い訓練という名目で喧嘩を売る悟とナチュラルに煽る夏油、その喧嘩を買う綱時という構図は高専では日常茶飯事である。
「恥ずかしげも無く待ち受けをグラビアアイドルにしてるスケベが五条家の当主ってマジですか」
「あ?別に井上和香、良いだろうが」
「別にいいですけど、そこで井上和香ってのが童貞臭いですよね。それはそれとして、夏油先輩とデキてるって本当です?直哉様から聞きました」
「お前いい加減にしろよ………………」
「先に喧嘩打ったのはそっちでしょうが。やりますか?相手になりますよ。その無駄に整った顔に黒閃決めてやりますよ」
一触即発の空気、通常であればこの間に入る者は居ない。居るとすれば夏油くらいなものだがこの場には居ない。
「ま、病み上がりの奴ボコっても楽しくないからな。それはそれとして、何処で知ったか知らんけど九十九さんが今回の件の功績って事で一級に推薦したみたいだぞ」
九十九、フルネームは九十九由基。唯一の特級術師なのだが、滅多に任務を受ける事なく海外を渡り歩いている為高専関係者からはろくでなしと言われている。
しかし、何かしら処罰をしようにも実力は本物で手を出せば返り討ちに遭うのは目に見えている為上層部は手が出せない。
「マジですか……………」
「嫌そうじゃん。俺九十九さんと会った事ないからよく知らないけど、そんな嫌な人なの?」
「正直、直哉様といる方がマシですよ。煩かったら無視すればいいし、鬱陶しくなっても訓練って事でボコれば良いだけですし。九十九さんは本当に面倒くさいんですよ」
「へぇ〜」
「やたら複雑な呪具をアホみたいな量発注してくくる癖にやっぱり要らないとか言って入金だけして連絡断つし、突然現れたかと思えば厄介ごとを押し付けてくるし‼︎今回の推薦も貸し一つみたいなこと言って面倒くさいこと押し付けてくるに違いないんです‼︎」
「まぁ…………その……………なんか、ごめん」
悟すら思わず謝罪する程の剣幕で憤慨する綱時。
綱時に多少無茶振りしてる自覚はある悟だが、ここまで怒る事は滅多に無い為少し圧されてしまったのだ。
「別に悟様は良いんですよ。もう言っても無駄だし、九十九さんの無茶振りに比べたらマシですし‼︎」
「そんな嫌いなら推薦蹴れば良いじゃん」
「別に九十九さん自体は嫌いじゃありません。基本ドブカスな人格しかいない術師の中でも比較的マシな人格してますし。ただ、本当に厄介ごと押し付けるのだけは止めて欲しい‼︎なんか話してたらムカついてきたんでちょっと身体動かしてきます」
「お、おう。病み上がりだから無茶はすんなよ」
「それでは、失礼します‼︎」
ベッドから飛び跳ねるように降り、ズカズカと病室を出て行く綱時を見送る悟だった。
「離してください‼︎身体を、身体を動かさせてください‼︎」
「いや、君今日目が覚めたばっかりでしょ‼︎」
「気持ちは分かるが、大人しく病室に戻るんだ‼︎」
「この子力強すぎる‼︎一週間も寝込んでた人間の力じゃないって‼︎応援を呼んでくれ‼︎」
帰ろうと病院を出ようとしたら、警備員と医師数名に組みつかれ病室に連れ戻されるのに抵抗する綱時がいた。
「はぁ……………普段からちゃんとストレス発散しとけよ」
悟はため息を吐きながら、綱時に近づき、警備員や医師達にバレないように首筋に手刀を入れて綱時を気絶させた。
医師達は何故か急に大人しくなった綱時に困惑したが、悟に会釈すると綱時を担いで病院へ戻っていった。
最近の呪術廻戦がやべぇんだ。コレからの展開予想出来なくて面白い。
僕の最推しは東堂で九十九や、真希、秤などが好きです。皆さんはどうなんですかね?