悟様、いい加減にしてください   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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ケツとタッパがデカい人がタイプです

禪院家を出た綱時はとある人物に呼び出され、廃ビルに来ていた。

 

 

「久しぶりだね、綱時君」

 

 

「日本に居たんですね、九十九さん」

 

 

長い髪に抜群のプロポーション、10人に聞けば10人が美女と答えるであろう女性。

 

唯一の特級術師、九十九由基。しかし、滅多に任務を受ける事なく常に海外を放浪しており上層部からはある意味五条悟よりも毛嫌いされている。

 

 

「面白い子を見つけてね」

 

 

「へぇ………………」

 

 

九十九が指さした先にはサンドバッグを叩く少年がいた。年齢的に真希と同じくらいだろうか。

 

ただ小学生がサンドバッグを叩いている事自体は特におかしな事は無かった。しかし、異質なのはその音だった。

 

とても小さい体からは考えられないようなドスンという重い音。

 

 

「あの年であそこまでの呪力操作が出来るんですか………………凄いですねあの子」

 

 

「中々面白い術式も持っていてね、今日来てもらったのはあの子の事で頼みがあるんだよ」

 

 

「呪術の指導は僕よりも九十九さんの方が適任でしょ」

 

 

「綱時君に頼みたいのは、呪具の扱いだよ。それと、スパーリングとか手伝って貰えると嬉しいね。先ずは挨拶を済ませようか、葵〜」

 

 

九十九が呼ぶと少年はサンドバッグを叩くのを止め綱時の方へ小走りできた。

 

 

「誰、アンタ?」

 

 

「源綱時っていうんだ。よろしくね、葵君」

 

 

「ふーん、アンタの好きな女のタイプって何?」

 

 

綱時はお前もなのかと内心呆れた。初対面の相手に好きな異性のタイプを聞くのは九十九の挨拶のようなものである。

 

滅多に姿を現さない癖に突然現れたと思いきや異性の好みを聞きに来て厄介な依頼を残していく九十九に綱時はあまり良い印象を持っていなかった。

 

そんな九十九の影響を既に受けているのかと思うと綱時の気は重くなった。

 

 

「既に九十九さんの影響が………………君はあんな大人になっちゃいけない」

 

 

「ちょっと酷くないかい?」

 

 

「胸に手を当ててみてください」

 

 

「生憎心当たりが無いからね。代わりに綱時君が触ってみてくれるかい?なんなら揉みしだいてくれてもいいよ」

 

 

「ぶっ飛ばしますよ?」

 

 

「禪院のとこの娘と婚約するって聞いてたけど、まさか本当にロリコンだったのかい?」

 

 

「マジでぶっ飛ばすぞあんた‼︎」

 

 

少年、東堂葵にとって九十九由基という女性は、自分の退屈を裏返してくれた恩人であり、師匠だ。

 

突然現れた綱時という男の事はよく分からない葵だが、九十九との会話の様子を見るに仲が悪いとかではない事は分かった。

 

それはそれとして、葵には謎の苛立ちがあった。自分の師匠を取られると思ったのか、否。自分の問いにも答えず、勝手に盛り上がっている事に苛立っていた。

 

この男は自分を舐めている。そう感じた瞬間、葵の体は勝手に動いていた。

 

 

「おっと……………いきなりどうしたの?」

 

 

「無視してんじゃねぇよ。舐めてんのか」

 

 

「いや、別に舐めてなんか無いって」

 

 

「やっぱり舐めてんだろ、アンタ‼︎」

 

 

背後から殴りかかるも何事も無かったかのように避けた綱時に自分がボコってきた高校生とは次元が違う事を悟った葵。

 

葵自身、今の自分では綱時には絶対に勝てないというのを本能で感じ取った。しかし、東堂葵にとって勝てる勝てないという事は問題では無い。

 

自分を舐めた事をし、自分が舐められていると思った瞬間から葵の中でゴングは鳴っているのだ。

 

一度ゴングを鳴らしたのなら是が非でもボコる。これが東堂葵の信条だった。

 

 

(賢い子だな……………相手の動きを予想しながら戦闘をちゃんと組み立ててる。ワンパターンにならないよう工夫もしてる)

 

 

葵は何とか綱時を殴ろうと拳を振るうが掠る事もなく空を切る。

 

普通の拳打が当たらないのならば、と呪力を練る葵。九十九から教わっていたのは呪力を練るという事だけであり、操作そのものはまだ習っていなかった。

 

しかし、目の前の綱時を殴るには今の自分では追いつくどころか、背中すら見えない。

 

練った呪力を全身に流しつつ、拳と足を重点的に呪力を集める。

 

 

(まだ粗いけど…………呪力操作も出来てる。この子…………凄いな)

 

 

「行くぞ、オッサン」

 

 

「僕まだ16なんだけど。お兄さんとかでしょ普通」

 

 

「俺からしたらオッサンなんだよ‼︎」

 

 

ぶんぶんと振り回していた拳も、よりスマートにより鋭くなっていく。しかし、だからといって綱時に葵の攻撃が当たる事はない。

 

綱時はチラリと横目で九十九の方を見る。すると、九十九は笑顔でサムズアップしていた。

 

 

「スレンダーな人よりもグラマラスな方が好きだね」

 

 

「は?」

 

 

「好みだよ。聞いてきただろ?」

 

 

「グラマラスってなんだよ。訳わかんねぇよ、日本語使え」

 

 

「君に分かるよう言うとお尻も胸も大きな人って事だよ」

 

 

そう言うと綱時は葵の腕を掴み、合気道の容量で葵を一回転させる。余りにも突然の事で呆気に取られる葵の額に人差し指を当てる。

 

 

「これからよろしくね、葵君」

 

 

この言葉を最後に葵の視界は暗転した。その刹那、葵は確かに感じた。綱時もまた、自分の退屈を裏返してくれる存在である事を。

 

 

「という事で、時々で良いから葵には体術を教えてやってほしい。注文した呪具はあるかい?」

 

 

「それは勿論引き受けますよ。それはそれとして、あの注文複雑過ぎて、ウチの職人だけじゃ手が足りなかったから外部の人雇ったりして大変だったんですよ」

 

 

そう言いながら綱時は大きな木箱を二つ呼び寄せる。片方には壱と書かれた札が貼ってあり、もう片方には弍と書かれた札が貼ってある。

 

 

「武具は弐の方に一通り入ってるんで。壱の組み立て手順とかは中に入れてあるのでご自分でお願いします」

 

 

「オッケー、オッケー。報酬は予定してた金額よりも多めに振り込んでおくから」

 

 

「そうして貰えると助かります。外部の職人さん、腕は良かったんですけどめっちゃ高くて困ってたんですよ」

 

 

そんな雑談をしていると綱時の携帯が鳴った。九十九に断りを入れて電話に出ると掛けてきたのは悟だった。

 

 

『俺と傑の分の旅行用荷物持って空港まで来てよ。あ、お前の分もちゃんと用意しろよ。遅れたらマジビンタな』

 

 

悟はそれだけ言い残すと綱時は大きくため息を吐く。

 

 

「今のは五条悟だね?って事は星奨体の護衛中だね」

 

 

「何がどうなって星奨体と沖縄に行く事になるんですか…………………それじゃ、悟様が呼んでるるので僕はこれで失礼します」

 

 

「綱時君、その任務…………気をつけて挑むんだよ」

 

 

「分かりましたよ、それじゃ」

 

 

綱時は電話を掛けながら廃ビルを出た。チャーター機の用意や荷物の準備などを手配するように連絡を入れてていた。

 

一通り連絡を入れ終えた綱時は、全速力で走り出した。悟のマジビンタが嫌とかではなく、九十九の忠告が気がかりとなっていた。

 

普段は気さくに接してくる九十九が真面目なトーンで気をつけろと言ってきたのだ。呪術界の頂点たる天元絡みの任務である事とは別に危険な何かが迫っているような気がした綱時だった。

 




単行本読み返してるけど秤先輩のバトルめちゃくちゃおもろい
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