俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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クソッタレな神様へ ③

スピネの弾丸は厄介だ。

本来なら魔法少女の肌に弾丸なんて通らない、見た目こそすべすべの柔肌だがその実並の鋼鉄よりも強靭なのだから。

魔力の無い攻撃はもちろん、魔力付きでもゴルドロスの機関銃程度なら「ものすごく痛い」程度で済む。

当たり所が悪ければ悶絶・気絶まで至るとはいえスプラッタな事態にはならない、だがスピネの弾丸は肉を貫く。

銃弾へ直に魔力を込めて放つ特性上の都合か、多量の魔力を注げばただの鉛玉が魔法少女をも殺す銀の弾丸へ変貌だ。

だからこそ奴が乱射ではなく、一発の弾丸を引き絞った時には警戒していた。

だがマウントを取られたとなると流石に警戒も何もない、そこにあるのは下手な防御を貫通する凶器が飛んでくるぞという事実だけ。

 

そこら中にある石ころやコンクリ片、下手をすれば鉄筋だろうとアウトだろう。

だが“これ”ならどうだ?

 

「――――な、に……()ぁ!?」

 

「はは、助かったぜラピリス……!」

 

赤い柄を握る腕が痺れる、頭を狙うという宣言通り素直に撃ってくれたのは助かった。 

なにせ俺が掴み上げたのは刀、初めの攻防でラピリスが弾き飛ばされた二刀の片側だ。

あちらこちらを転がっている間にいつの間にか手元に届くまで近づいていたのか、この細い面積で良く受け止めてくれたものだ。

 

「嘗めんなよ、そう何発も防げ……あっづ!?」

 

再度弾丸に魔力を込め始めたスピネの腕へ、刀身から吹きあがった炎が巻き付いた。

虚を突かれたスピネは反射的に飛び退いてしまい、結果的に俺の拘束が解かれ、二人の距離が開いた。

ラピリスめ、口では文句を言っておきながらいいフォローをしてくれるじゃないか。 

というか本人が握っていなくても使えたのか。

 

「くっ……無事ですか、ブルームスター!?」

 

「ああ、なんとか……そっちも苦戦してんな」

 

後ろへ後退した俺の背に、同じく黒騎士の膂力に押し負けたラピリスがぶつかってくる。

見れば黒騎士の体表に浅い刀傷こそついているが、相変わらず大したダメージは負っていない。

それどころかその刀傷さえ見る見るうちに塞がっている、一体どうすれば倒せるんだあいつは。

 

「どれほど強くても魔物に変わりはありません、必ず体内に核となる魔石はあるはず……」

 

「それを見つけて抉り出せば倒せるってか、骨が折れる話だ」

 

ただでさえ堅い肉体に鎧なんていらないと思っていたが、なるほどあれはあたりまえだが急所を隠す目的か。

ならば核となる魔石はあの鎧の下、だが分かったところでどうやってあの鎧を剥がせばいいんだ。

 

「ラピリス、ほら刀。 さっきは助かったよ」

 

「はい? 何の話――――」

 

『――――どこを見ている』

 

直感に従ってラピリスの腕を掴んで飛び退き、文字通りの横槍を躱す。

だが咄嗟とはいえ跳躍は悪手、身動きの取れない空中じゃ次は躱せない。

 

「ブルーム、刀を! 早く!!」

 

「ああ!!」

 

ラピリスに急かされ、握っていた赤い刀を投げ渡す。

即座に双刀を変形させ、変えた大剣を盾にしてスピネの追撃を防ぐ。

不味い、仕方ないとはいえ挟撃される形になってしまった。 右から飛んでくる弾丸を防いだところで、今度は左から2人揃って串刺しだ。

 

「ブルーム、そちらは任せました!」

 

「ああもう、無茶を言う!!」

 

≪BURNING STAKE!!≫

 

残りの魔力を振り絞り、好機を逃さず飛んで来た槍に蹴りをブチ当てる。

突き出された切っ先と拮抗する脚に嫌な痛みが走るが、知った事か。

もしや弾き返すほどの余力もないが、ほんの僅かに軌道をずらす事は出来た。

2人纏めて串刺しになるかと思われたその鋭利な切っ先は、腹を貫く代わりに俺の肩口へと突き刺さった。

 

「ヅぁ……!!」

 

「ブルーム!?」

 

『味方を庇ったか……だがっ!!』

 

肩から槍を引き抜くよりも早く、黒騎士は獲物ごと俺を全力で地面へと叩きつけようと持ち上げる。

だが地面と激突する直前、割って入ったラピリスが俺を受け止め、一緒になって押し潰された。

 

「ぐっ……無事ですか、ブルーム!?」

 

「ゲホッ……! なんとか……!」

 

押し潰された状態から力任せに大剣を振り回し、強引に騎士の大槍を弾き飛ばすラピリス。

しっかりと踏ん張りを効かせた片足からは鮮血が滲み出ているじゃないか、無茶をする。

 

「ブルーム、どうしてあの黒い力を使わないんですか!? 出し惜しみしている場合じゃないでしょう!」

 

「使わないんじゃない、使えないんだ! お前と戦った時の様なセーフティは効かない、一度変身すればお前を巻き込んで燃やしちまう!」

 

「だから……っ゛……使わないと!?」

 

ああそうだ、俺はあの力を使いこなせていない。 味方を巻き込む可能性がある以上、今あの力に頼るわけにはいかないんだ。

ラピリスが振り向きざまに大剣を構え、反対側から飛んで来たスピネの銃弾を防ぐ。

振り向きざま、つまり向き合う形になったラピリスと目が合った。

ああ、今俺はとても情けない顔をしているんだろう。

 

 

スピネが次の弾丸を込めるよりも早く、怒りに瞳を燃やしたラピリスに胸ぐらを掴まれた。

 

「――――見くびるなッ!! 魔法少女になったあの日から手傷多傷は覚悟の上! それとも貴女如きの力で私がどうにかなると思っているんですか!?」

 

「…………う、ん?」

 

大気を震わせるほどの怒気に(騎士含め)その場の全員が死闘も忘れて固まってしまう。

な、なんで? なんで怒ってるの?

 

「魔法少女の力はお守りじゃないんですよ、使う時に使わなければ意味はない! その判断も出来ないんですか貴女は!!」

 

「だ、だってさ……」

 

「だっても勝手も切手もない! 第一ですね……ふんっ!!」

 

「なに……グエッ!」

 

大きく息を吸い込んだラピリスが唐突に頭突きをかます。

な、ナンデ? 頭突きナンデ?

 

「……誰かを守るために振るう力なら、それが私を傷つけるはずがないでしょう」

 

「む、無茶苦茶だ……」

 

「いいえ、これは信用です。 喧嘩ばかりの付き合いですがあなたの力は買っているんですよ、私」

 

胸ぐらを掴んでいた腕を離し、代わりにラピリスは俺の両手を包み込むように握りしめる。

両手から伝わる体温は火傷しそうなほどに熱い。

 

「それと私まだ貴女と心中したくありません、状況を打開するために使っていただかないと実に困る」

 

「お前台無しだぞお前!」

 

「……はっ! だ、だからイチャついてんじゃないぞおまえらぁ!!」

 

「「断じてイチャついてない!!」」

 

正気に戻った騎士とスピネが、同時に左右から射撃と槍を撃ち放つ。

ラピリスじゃ両面の攻撃は防げない、どちらかを迎撃するための出力が必要だ。

 

《選択肢はないようですよ、マスター!》

 

「ああ、最悪だ……本っ当に最悪だ!」

 

≪――――Warning!!≫

 

焦燥感を煽る警告音と共に、二度と聞きたくなかった待機音声が響く。

俺が今あの黒い力を使わなければ2人揃ってくたばるだけだ、それだけは避けなくちゃいけない。

だからまあ、実に不本意だがまたこれに頼らないといけないわけだ。

 

……ああ嫌だ、今度は誰が俺の事を忘れているのかな。

 

 

≪…………OK、GOOD LUCK≫

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