俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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エマージェンシー・ゴルドロス ④

――――数秒の停止、そして弾かれたようにコルトは大きく飛び退いて俺から距離を取る。

目の前の事態に理解がようやく追いついたらしい、俺が本当に血も涙もない怪物なら今の隙に死んでいたかもな。

 

「っ……驚いた、本当に驚いたヨおにーさん。 まさかおにーさん自身が魔法少女だとはネ」

 

「魔法を常識で考えるなって言ったのはどこの誰だっけ、まあこの姿に関しては俺も不本意なんだけど」

 

「あはっ! そっかぁ、おにーさんも人が悪いねー……じゃあこっちも、変わろっか」

 

拳銃を投げ捨てるとコルトはぬいぐるみの腸に手を突っ込む。

やっぱりか、恐らくあれがコルトの“杖”。

 

「――――Scramble!」

 

ぬいぐるみから手を引き抜くと、綿の代わりに金色の粒子が吹きあがり、一瞬でコルトの姿を覆い尽くす。

吹きあがる粒子は次第に勢いを無くし、現れたコルトの衣装はきらびやかなゴスロリから一変、

機能美を追求したようなミリタリージャケットにイヤーマフ、腰のベルトには大量のポケットと恐らく杖と思われるぬいぐるみを括りつけている。

 

「なるほど、それがお前の魔法少女の姿か」

 

「ソダヨ、可愛げはないケド。 地獄の猟犬“ゴルドロス”、ただいま惨状!!」

 

なんだろう、イントネーションがおかしい気がする。

ともかくこれで立場は対等だ。

 

「なあコルト、お前の言い分だとこれで俺も化け物の仲間入りかい?」

 

「ソダネ、残念だケド」

 

「ああそうかい」

 

予想通り話し合いでの解決は望めないようだ。

しかたない、ここは当初の予定通り……

 

「河原でグーの殴り合い、で行くしかなさそうだ!」

 

「HAHA! 夕焼けが無いのが残念だネ!」

 

蹴り上げた石を箒に変えると同時にコルトも再度ぬいぐるみへ手を突っ込む。

先ほど投げ捨てたハンドガンの代わりに取り出したのは身の丈以上はあるんじゃないかと思えるような巨大な砲身。

 

 

「――――ガトリングの雨、避けれるものならドーゾッ!!」

 

「ありかよンなもん!!」

 

唸りを上げる弾倉からはじき出される弾丸が鉛の雨となって襲い掛かる。

すんでのところで橋桁の影に飛び込み、その軌跡を追うように弾丸がすり抜けていく。

2~3発ほどはためくマフラーに風穴を開けたところを見るに、どうやら魔力を持つ相手にも通用するもののようだ。

 

《どうなってんですか! 明らかにぬいぐるみの体積越えてんじゃないですか!?》

 

「俺が聞きたい! そういうの暴くのがお前の仕事だろ!」

 

《分からんですよそんなん! 勝手に役割決めつけないでくださーい!》

 

喧嘩している間に逃がさんと言わんばかりに橋桁へ銃弾が撃ち込まれ続ける。

ガガガガと音を立てて削れる橋桁、あのバカは橋ごとぶっ壊す気か?

 

「自首するなら今のうちダヨ! そもそもなんでおにーさんはそんなに嫌がるカナ!?」

 

「うっせ、中身が男だからだよ馬鹿!!」

 

「Ah-……そっか、でも見つけたからには見逃すわけにはいかないナー」

 

小悪魔っぽい笑い声が聞こえるが所業は悪魔のそれだ。

すると、いきなり橋桁に叩きつけられる雨音が鳴りやんだ。

 

《弾切れですかね、チャンスですよマスター!》

 

「いや、多分違う……!」

 

嫌な予感が走り、反射的に橋桁を飛び出す。

変わらぬ位置で待ち構えるコルトが握っているものは既にガトリングなどではなかった。

それは先ほどの砲身よりはやけに細い、代わりに先端がひし形に膨らんだ棒だ。

手元には引鉄がついたそれを担いで、コルトはサイト越しにこちらへ狙いを定めていた。

 

「RPG、いっくヨー!!」

 

「バカやろうお前バカ!!」

 

RPG、別名ロケットランチャー。

戦車を吹き飛ばすようなロケット弾を射出するトンデモ武器。

 

街から離れているとはいえこんなところでぶっ放せばどうなるか。

時すでに遅し、引鉄を引かれて放たれたそれはまっすぐにこちらへ飛来してくる。

 

避ければ橋に直撃、受ければひとたまりもない、この状況は覚えがある。

 

「――――クモの時と同じだなッ!!」

 

後ろに飛んで衝突の威力に堪えながらロケット弾を受け止める。

当然ながら受けきれるような威力じゃない、軽い体はロケット弾の推進力に負け、浮き上がる。

それでも手は離さない。 砂利の上を跳ね、橋桁に叩きつけられた時にはロケット弾は完全に箒へ形を変えていた。

 

「ゲホッ……! やっぱり、ただの武器なのに効きやがる……!」

 

「大丈夫だよ、そんな玩具直撃したぐらいじゃ魔法少女は死なないカラ。 でもなるほど、それがブルームスターの魔法だネ」

 

見上げた先でコルトは既に次弾をぬいぐるみから取り出していた。

このまま矢継ぎ早に撃ち込まれ続ければジリ貧。

 

「―――って訳にはいかない!!」

 

箒を逆に掴み、槍投げの要領で投げつけると穂先から炎を噴き上げて射出される。

ロケット弾としての特性か、さきほどの意趣返しとばかりに一直線にコルトへと飛来する。

 

「What!?」

 

だがコルトも即座に次弾を装填したロケットランチャーで箒を迎撃、空中で爆風を吹き上げながら互いの弾は相殺される、流石の反応速度だ。

 

「ひっどいナおにーさん! 当たったらただ事じゃないヨ!?」

 

「どうした、こんな玩具じゃ死なねえんだろ!」

 

この隙に一気に距離を詰める、至近距離なら得物の違いでこちらが有利だ。

向こうもそれは理解しているはず、こちらが距離を詰めると同時にベルトポケットに手を突っ込む。

 

「そうはいかないヨ! テディ!」

 

ポケットから細かい小石の様なものを無造作に掴み取ると、そのままぬいぐるみに手を突っ込んだ。

おそらくあれがぬいぐるみから銃器を取り出すための仕組み……

 

《マスター、あれ全部魔石です! うわぁあんなにたくさん……》

 

「私の魔法は“対価の魔法”! 魔石を通貨にあらゆるものを引き出せる!」

 

コルトは引き抜いた腕に掴んだものをばら撒くように投げつける。

それは小さなパイナップルのような――――

 

《近づいちゃ駄目ですマスター、手榴弾です!!》

 

「That's right! その両手でどれだけ防げるカナ!?」

 

――――小石を1つ、袖から落として踏みつける。

瞬間、踏みつけた石が箒に変成し、俺の体を前方へ押し出した。

 

「What's!?」

 

加速した体は一息に手榴弾地帯を潜り抜け、遅れて炸裂した爆風が更にこの背を押す。

そのまま速度に任せコルトへ衝突すれば、2人の体は砂利の上を盛大に転がった。

 

「いっっタ~~~……! や、やるネおにーさん……!」

 

「いでで……そっちこそ遠慮なくかましやがって……」

 

爆風に当てられ連日の戦闘で癒え切ってない傷が疼く。

本調子には程遠い、昨日今日やったような燃えるキックや空を飛ぶような真似は出来ない。

だがそれでも、やらなければならない事がある。

 

「やるならもっと全力で来いよ、ゴルドロス。 俺一人倒せねえで何が化け物だ!」

 

「……言うネ、ブルームスター」

 

コルトはまた魔石が詰まったポケットに手を突っ込む。

取り出したのは先程よりも大粒の魔石、あれが通貨というならばより価値のあるもので、より質のいい物を取り出せるという事だ。

 

「いいヨ、その妄言を認めてあげル。 ここから先、最後までこらえたらネ」

 

「……かかってこいよ、女の子」

 

コルトはぬいぐるから新たに取り出されたバカげたサイズのライフルを片手で軽々と振るう。

兵器に明るくない俺でも分かる、あんな常識外れの大きさを持つ武器なんて1つしか思い浮かばない。

 

「アンチ・マテリアル・ライフル、受け止められるものならドーゾ!!」

 

「無理言うな馬鹿!!」

 

本来は戦車の狙撃に使うようなトンデモ銃、受け止めようとした日には両手が吹き飛ぶ。

この至近距離でありながらコルトの狙いは正確だ、近づけばライフルでぶん殴られ、離れれば銃口が吸い付くように向けられる。

 

だが俺相手に長物は選択ミスだ、距離を詰めてライフルの銃身を掴んでしまえば……

 

「――――残念だけど、箒には出来ないヨ」

 

「な……グアっ!?」

 

コルトの忠告通り、握った銃身は一向に箒に変わらない。

予想外の出来事に生まれた隙に、コルトは開いた片手でぬいぐるみから引き抜いたマシンガンを乱射する。

 

腹部に叩きつけられる熱い痛みと焦げるような臭い。

たまらずライフルから手を離した瞬間に膝蹴りをお見舞いされて吹っ飛ばされる。

 

「なんとなく分かってきタ、おにーさんの魔法は魔力の濃いものを変えられないヨ。 連戦で疲れた状態ならナオサラ」

 

流血はない、マシンガンを喰らってこれか、丈夫な体で助かった。

しかし無事を喜ぶ暇もない、コルトはこちらの反撃を許す間もなくライフルを再度構える。

 

「あとでドクターに治してもらうヨ、ちょっと死にかけテ」

 

――――無情に引鉄が引かれ、重く低い発砲音がどこまでも木霊した。

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