俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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それぞれの戦果 ⑨

「――――せやから、一芝居打ってほしいんよ」

 

「芝居って……俺にかぁ?」

 

「せやせや。 ……ゴルドロスはんに一皮むけてもらうために、な」

 

そう言ってにっとはにかんで見せるロウゼキ。

何となくその笑顔に警戒して、思わず一歩後ずさってしまう。

 

「……一芝居って言うが、なんでだ? 言いにくい話だけど魔法少女は他にもいるだろ、なんでゴルドロスにばかりそこまで気を掛ける?」

 

「んー、せやなぁ。 まずはそこから話そか、そもそもゴルドロスはんの魔法についてどこまで知っとる?」

 

「えっと……魔石を使って釣り合う価値のある物品を引き出す魔法?」

 

「ならその品物の出所については?」

 

それについては首を横に振る、ゴルドロスが腰に下げるぬいぐるみから出てくることは知っているがそれ以上は何もわからない。

明らかにぬいぐるみの体積を超えた品々が引っ張り出されてはいるが、そこについては“魔法だから”という理由で深く考えてはいなかった。

 

「あれな、調べてみたら面白い実験報告があったんよ。 一度X線やらなんやらで取り出す過程を覗きこんでみるなんて実験が」

 

「それで、結果はどうだったんだ?」

 

「なんとなぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んよ」

 

「……うん? なんで?」

 

「うふふ、もちろん実験前にぬいぐるみに何も入ってない事は確認してたよ? けどなぁ、幾ら計測器を確かめてみても“初めからそこにあった”と言う事しか分からんかった」

 

「??? えっと、つまりどういうことだ?」

 

「魔法が常識外なのはいつもの事やけど、この結果は興味深い仮説を見せてくれてなぁ。 あのぬいぐるみの中にはどっちも入っとるんよ」

 

そういってロウゼキは人差し指をぴんと立てて見せる。

偉くもったいづけてくれる、つまりはその仮説とやらも相応のものと言う事か。

 

「……あの子の魔法は因果律に干渉しとる、取り出したいものをあらかじめ“ぬいぐるみの中にあった”って事にしとるんよ」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

《マスターもサディストですねー、楽しんでやってません?》

 

「馬鹿言え、気分が良いもんじゃねえよ。 それなりの理由で言い訳したってな」

 

羽箒の上から、腰までの高さの海水に浸かったゴルドロスの姿を見下す。

水面に沈んだ腕じゃどう頑張ったって1アクション遅れる、そのラグも踏まえて銃撃を躱せる距離を保ちながら。

 

「いい加減降参しろよ、お前じゃ俺に勝てない。 分かってんだろ?」

 

あえてゴルドロスの気を逆撫でする言葉を選んで、浴びせ掛ける。

気分が悪い、全部ぶちまけて台無しにしてやりたい。 けどそれは駄目だ。

 

魔法少女の力は心の力、感情の力。 この危機的状況の高ぶりで何も引き出せないようならゴルドロスという魔法少女の先はない。

因果律への干渉、そんな難しいものはよく分からないがとんでもない力だって事は分かる。

ゴルドロスの力にはまだ底がある、それを今引き出せないってなら――――

 

「――――お前はここまでだよ、ゴルドロス」

 

「――――――――……」

 

水中に沈んだゴルドロスの腕がピクリと動いた、と同時に箒を操って距離を取る。

予想通り、水面から飛び出した銃口が俺の頬を掠めた。

 

……? 思ったより、弾速が()()

 

「……分かってるヨ、分かってるんだヨそんな事ォ! 私の力が劣ってるなんて、言われなくても分かってる!!」

 

「ハッ、だったらどうする! 尻尾を巻いて逃げ帰って、ロウゼキでも誰でも代わりに連れてきたらどうだ!?」

 

「うるっさい!! そんなんじゃ間に合わないヨ、1人で暴走してここまで来た! 私しかいない、私にしかできない!!」

 

叫びながらも矢継ぎ早に放たれる銃弾の雨を、羽箒を操って躱す。

狙いも大雑把な雑な弾幕、掻い潜る事は難しいものではない。

 

「サムライガールみたいな速さも無い、シルヴァーガールみたいな技も無い! ブルームスターみたいに、強くない!!」

 

「だったらなんでお前がここに居る! ここに居るのはお前だけだ、お前が戦うしかないんだよ! お前にもわかってるはずだ、だから何かを期待してここに来たんだろう!?」

 

「うるさああああああああああああああああああい!!!」

 

両手に握った2丁のサブマシンガンから吐き出される数百発の弾丸、だがそれも当たらなければ全部無意味だ。

そして考えなしに振り回せばまたすぐに弾切れだ、さっきの感覚からして残り3秒……2……1……

 

撃ち切った、と思い油断した次の瞬間。 一発の銃弾が羽箒を弾いた。

 

「っ……!?」

 

「引っかかった――――ネッ!!」

 

銃弾によってへし折られ、飛行能力を失った箒が一気に高度を落とす。

その上に放り投げられたのはワイヤーで組まれた巨大な投網、本職顔負けの投擲術で投げられたそれは頭上の逃げ場を覆い尽くす。

ならばとゴルドロスの方を見れば、片手に残したサブマシンガンを油断なくこちらへと向けている。

 

「……なるほど」

 

撃ち尽くしたのは2丁のうち片方だけ、もう1丁の銃は遅れて撃ち始めた分まだ残弾に余裕があったのか。

勝手に2丁とも撃ち尽くしたと思い込んだ俺の落ち度……いや、わざと激昂したように見せてそう錯覚するように誘導したのか。

 

「だけどまぁこのまま黙ってやられてられねえよなぁ!!」

 

≪BURNING STAKE!!≫

 

上にも横にも逃げず、俺は落下するまま熱された脚を海面に叩きつけた。

噴き上げる蒸気と水柱が砂塵と同じような目くらましを作り、ゴルドロスからの視界から外れる。

そしてすかさず新たな羽箒を生成し、網が落ちるより早く水中に潜り込んでから一気に距離を離す。

 

逃げる俺の背中に、幾つかのくぐもった爆発音が聞こえてくる。

こちらの姿が見えないから手榴弾を使った広範囲の攻撃に切り替えて来たか、目くらましに安心して横方向に逃げていたら巻き込まれていた。

 

《な、何かゴルドロスちゃんの動き、だんだんと良くなってませんか!?》

 

「ああ、将来が怖いな……!」

 

爆発も収まり、十分に距離を離したところで浮上する。

土砂降りのように降り注ぐ海水の中でゴルドロスの姿を探すがどこにもいない、逃げたか?

 

『モッキュ、モッキュゥ!!』

 

……いや、ただ逃げた訳じゃない。

その鳴き声を聞いて振り返れば、砂浜の上まで退避したゴルドロスが依然として戦意を保ってこちらを睨みつけていた。

 

「……さっきの手榴弾は俺への牽制と、不利な海中から移動して()()()と合流するまでの時間稼ぎか。 考えるなぁ」

 

「だったら、どうするヨ?」

 

「面白い、俺にも見せてくれよ。 あの東京で使ったお前とバンクの力って奴をさ!」

 

そうだ、ここまではいい。 だがここまでの事ならわざわざ下手な芝居を打つ必要はなかった。

問題はこの先……ゴルドロスが、バンクの持つ力を引き出せるかどうかだ。

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