俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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狼藉 ①

「ぐ、偶然だから……」

 

「偶然で勝てる相手ではありません、あなたの実力ですよ詩織さん」

 

「ねえねえ、私もだヨ? 私も協力したから勝てたんだからネ?」

 

「勝負は時の運ともいいます、まぐれでつかんだ勝利に浮かれてはいけませんよコルト」

 

「対応に差があり過ぎるんじゃないカナぁ!?」

 

「元気だなー、三人とも」

 

風呂と食事を済ませ、チャンピョンと別れた後、アオも魔法少女シルヴァの勝利を聞いたらしい。

内容としてはシルヴァとゴルドロス、それと他数名の魔法少女達が絡んだ乱戦の中でようやく一発当たったらしいが、それでもロウゼキ本人からOKサインを貰えたようだ。

 

それでも頬にかすり傷1つ、

 

「おめでとう詩織ちゃん、あとついでにコルトも」

 

「ちょっとおにーさん、次いでってどういう事カナ!?」

 

「はっはっは、悪い悪い。 2人で掴んだ勝利なんだよな」

 

「ちょっとコルト、お兄さんは病み上がりなんですから無理させないでくださいよ」

 

そう、三人ともこの部屋に集まって来たのはどうやら俺の心配をしてのことらしい。

俺が腰かけるベッドの横にある棚、その上に置かれたスポーツ飲料と卵がゆも三人が持ってきてくれたものだ。

しかし体調が悪い事は話していないはずだけど、アオはどうして分かったんだろうか。

 

「で、詩織ちゃんはこれからどうするんだ? 試験自体はクリアしたんだろ」

 

「ま、まだ葵ちゃんたちが残ってるから……この島に残って、いいと……言われましたっ」

 

「ありがたい話ですね、シルヴァの後方支援は頼もしいですから」

 

「私は? ねえ私はどうなのカナ?」

 

「さて、お兄さんの邪魔になりますからそろそろお開きにしましょうか」

 

「ちょっとー!」

 

対応こそ塩っ辛いが、アオはコルトの実力は認めている。

ただバンクとの連携が未知数なのでコメントをつけにくいだけだろう、先を行かれた嫉妬や焦りもあるかもしれないが。

 

「私もモタモタしていられませんね……良いですかお兄さん、安静にしていてくださいよ」

 

「分かった分かった、さっき優子さんからも同じ事言われたよ」

 

「再三言っておかないとすぐに無茶するのは知っていますので、仕事も無いんですから休んでください。 良いですね?」

 

「はいはい、一晩休んで治しますとも」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

《……で、結局葵ちゃんたちの忠告も聞かずに夜遊びですか》

 

「七篠陽彩は夜遊びしてないから良いんだよ」

 

《うっわ屁理屈ー! もう、調子が悪そうならさっさと切り上げますからね》

 

ブルームスターの姿で立つのは、既に周囲はとっぷりと闇に沈んだ海辺。

頭の中で飽きれたような声を漏らしながらも付き合ってくれる相棒には感謝だ。

ここに来てから皆、目まぐるしい成長を遂げている。 当然俺も負けてはいられない。

 

《だからって一人で素振りってのはちょっと非効率的じゃないですかね、しっかり休んで明日に備えては?》

 

「何もしないとそれこそ身体が鈍るだろ、多少でも動かした方が良い」

 

ただでさえ手足のリーチや重心の感覚が違う体だ、常に感覚を慣らしておかないといざという時に反応が遅れる。

簡単な素振りと運動、それだけでも毎日繰り返すだけでだいぶ違う。

 

《羽箒の使い方も大分習熟しましたよねー、魔力の消費もほぼ最適化されてますよ》

 

「まあこいつには何度も助けられたからな、唯一の飛び道具だし」

 

掌で取りまわしたり、数m浮かして周囲を旋回させているのはいつもよく使う羽箒だ。

使い始めたばかりの頃は乗ったまま愚直に直進させるような使い方しかできなかったが、扱いに慣れてきた今では便利な飛び道具兼乗り物だ。

 

「……そういえば、飛行能力って結構稀少らしいな」

 

《あー、そうらしいですね。 葵ちゃんは風で無理やり体を浮かせているだけですし、東北(うち)だと後はシルヴァちゃんぐらいですか?》

 

ふとロウゼキの話を思い出す、思い返せば純粋に飛ぶ能力を持った魔法少女は確かに少ない。

機動力だけで考えるならドレッドハートなども高いが、それでも飛べるという利点は今までの戦闘で助けられたシーンも多い。

 

「せやなぁ、あとはチャンピョンはんも飛べるで」

 

「あー、そう言えば東京でそんな事やってた……うっひゃあ!?」

 

「うふふ、こんばんはぁ」

 

気が付けば、耳元距離まで接近していたロウゼキが内緒話をするかのように囁く。

そのまま耳に生暖かい息を吹きかけられ、思わず変な声が飛び出してしまった。

反射的に距離を取り、おそらく真っ赤になっているであろう顔で睨みつけると相も変わらないにっくきロウゼキが立っていた。

 

「なんやぁ、ブルームはんって耳弱いん? うふふ、ええこと知ったったー♪」

 

「おまおまお前ェ! なんだ、何しに来た! おちょくりにか!?」

 

「まあ、それも5割ぐらい?」

 

「半分あるじゃねえか!!」

 

両耳をしっかりと手でガードし、対面した悪魔の顔を睨みつける。

この程度の防御などロウゼキにとっては障子の紙同然だろうが、それでも一切抵抗の意思を見せないというのも癪だ。

 

「なんやぁ、傷心気味に海歩いとったらブルームはんの姿があるんやもん。 それはもう声の一つも掛けたなるわ」

 

「傷心ねえ……シルヴァにやられたってのがそこまでショックだったか?」

 

「うふふ、まあ……それなりになぁ」

 

「……?」

 

茶化している、という訳でもどうやらないらしい。

自分で決めた事とは言え、ぺーぺーの魔法少女に一杯食わされたことがそこまで傷ついたのか?

 

「……なぁ、ブルームはん。 このあとちょっと時間あるか?」

 

「まあ、それなりには」

 

「それは重畳、せやったら少し……話に付き合ってもろてええかなぁ?」

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