俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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一方そのころ ⑤

「ここがあの幽霊のハウスね!」

 

「まあ推定そうだって話っすね」

 

「では、壊す」

 

「壊しちゃ駄目でござるよレトロ殿! 笹雪ー! しっかり手綱握っていてほしいでござるー!!」

 

それからやいのやいの言い合いながら、結局のところやって来たのは夕方ぐらいの時間になっての事だった。

距離も遠い分時間が掛かった、橙色の夕日に照らされた屋敷は実に雰囲気がある。

 

3人に見せられた資料通り、江戸時代の風情が今でもなお残る武家屋敷。

昔は立派な建物だったのだろう、だが今となっては屋根の瓦は所々欠け、窓は割れ、生い茂った蔦がボロボロの壁を這いまわっている。

幽霊屋敷、まさにその表現が正しいだろう。 夏場の肝試しにはピッタリかもしれない。

 

「……しかもよりによってこんな雰囲気たっぷりの時刻に到着なんてツいているっすねー」

 

「逢魔が時ね、妖怪やお化けに遭遇しやすい時間って言われてるわ」

 

「どうして言うでござる! どうして今そういう事を言うでござるか!!」

 

≪心の準備はしてきたつもりなんだけどねー……≫

 

レトロの耳にくっついたヘッドホンのような機械から操縦者である笹雪の声が響く。

その通り、分かってはいたが実際に目の前にあるとやはり足が竦むのがある。

 

「……じ、じゃあ今日の調査はこの辺って所で」

 

「待つでござる」

 

「何一つ調査進んでないっすよ」

 

『紫陽、結構怖がりよね』

 

「ちちちち違うわよそういう事じゃないわよさささ早く中入りましょ幽霊なんて何のそのよ!」

 

自分含めた3人の視線に射られ、やや涙目のアンサーが扉に手を掛ける。

木で組まれた簡素なくぐり戸、子供の腕には重すぎる扉だが、魔法少女なら難なく開くことだろう。

しかし、幾ら押しても引いても扉はうんともすんとも言わなかった。

 

「……鍵が掛かっているわ!」

 

「まあそりゃそうでござるね……」

 

「廃墟でも不良や変な人に入られたら面倒っすからねー」

 

さてどうするか、廃墟と言っても流石に叩き壊して惜し通るわけにもいかない。

屋敷をぐるりと囲む塀には子供一人潜れそうなほころびも無い、いっそ飛び越えるなどと考えていると、不意に音を立ててくぐり戸が開かれた。

 

「うわったったぁ!? 開いたぁ!」

 

「……何者かね、君達は?」

 

まさか開くとは思わず、扉にもたれ掛かっていたアンサーが開かれた弾みに扉の向こうへと倒れ込む。

その中から現れたのは作務衣に身を包んだ坊主頭の男性、頬はやせこけ目の下にはクマも見える。

倒れ込んだアンサーを見つめる薄暗い瞳はまるで本物の幽霊のようで不気味だ。

 

「あ、あたた……わわわ! 誰!?」

 

「ここに住んでいるものだが、むしろ私の方が君達について聞きたい」

 

「す、住んでるでござるか!? こんなところに!?」

 

「こら、失礼っすよ!」

 

男の格好は不気味な雰囲気こそあるが、それでも身ぎれいだ。

勝手に居住者を名乗っている浮浪者ではない、と思う。

 

「だ、だってこんなボロボロで……」

 

「……外観に関しては耳が痛いな、無頓着なもので殆ど庭の手入れが出来ていない」

 

「そんなレベルではない、と思う」

 

男の言い分を否定するレトロの声に、アンサーとシノバスがうんうんと頷く。

すると男は気まずそうに私達から視線を外してみせた、少なくとも何かは隠しているように思える。

 

「私達は幽霊屋敷の噂を確かめに来ましたっす、失礼ですが何か知っているようなことは?」

 

「何もないな、すまないが帰ってくれないか」

 

「ああそう、それなら()()を変えるわ」

 

取り付く島もない、するとアンサーは手に持ったメガホンを口の前に構えて大きく息を吸い込んだ。

 

「“問題:あなたは何かを隠している?”」

 

「―――――ああ、その通りだ……っ!?」

 

アンサーに質問に対し、男がポロリと口を零した。

いや、無理矢理吐かされたのか。 はっとした男の顔から口から零れた言葉が不本意であることは分かる。

 

「やっぱり、今のは彼女の魔法っすか?」

 

「そうでござる、アンサー殿の魔法はあのメガホンを通して問いかけられた“問題”にうっかり答えてしまうというもの……おやつのつまみ食いなどすぐにばれてしまうでござる」

 

「とても、脅威」

 

≪まあ、魔法少女が相手だとぐぐっと我慢すれば耐えきれるんだけどね≫

 

いや、使い方1つ間違えれば本当に恐ろしい魔法ではないか。

私も先ほどまでの小屋で一度喰らったが、不意打ちなら魔法少女でも簡単に抵抗できるものじゃない。

それに、彼女の魔法を使えば錠剤の出所もすぐに……

 

「……そうか、君達が噂の量産型魔法少女と言う奴か? 親御さんはどこだ、一つ話をしないとな」

 

「え゛っ? いやあのちょっと親を呼ぶのはあのその……」

 

「じ、自分も親はちょっとっす……」

 

子供にとって親を呼ばれるというの乃は最大最強の脅威だ、自分の場合はほぼ家出同然に飛び出したものだから余計に困る。

 

「それとも魔法局の方が適任か。 君達、そこで待ってなさい。 今電話で……」

 

「シノバス!」

 

「了解でござるー!!」

 

アンサーの合図と同時に、シノバスが手に持った煙玉を地面にたたきつける。

モクモクと沸き立つ煙に紛れ、一目散に逃げる魔法少女4名。 

……しかし、真っ直ぐ逃げれば済む問題だと思ったのだが煙玉は必要だったのだろうか?

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ……! おのれぇ、やってくれるわねあの坊さん……!」

 

「ま、まさか先住民がいるとは思わなかったでござるな……!」

 

「壊せば……」

 

「壊しちゃ駄目っすからね?」

 

一通り逃げた先、一度屋敷から離れた物陰で一息つく。

なんというかこのレトロという魔法少女(?)は発想が物騒だ、操縦者である少女とは似ても似つかない。

 

「でも私の問題に答えたって事は間違いない、あいつは何かを隠しているわ。 幽霊に関わる何かをね」

 

≪けど今のでだいぶ警戒されてしまったわ、もう一回見つかったら今度こそ魔法局のお世話になるかも≫

 

「それはないとは思うっすね、相手も何か隠しているなら後ろめたいことがあるって事っす」

 

ただでさえ噂になっている幽霊屋敷、隠しごとがあるなら魔法局を呼ぶようなリスクは向こうも犯したくはないはずだ。

そう、魔法局に発覚すると不味いような何かが。

 

「でも真正面から行って素直に通してくれるとは思えないけど……」

 

「何言ってんすか、素直に正面から通る必要はないっすよ」

 

「と、言うと?」

 

 

「……犯罪上等、夜中にこっそり忍び込んで確かめてみるっす」

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