俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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一方そのころ ⑧

「だーかーらー、中を調べさせてって言ってるだけでしょー!」

 

「駄目だ! プライバシーの侵害だろう、ここは私の家だ!」

 

≪ふむ……埒が開きませんね、ドレッド≫

 

「全くその通りよ、ロイ……ぐぬぬ、頑固なお坊さんだわ」

 

忍び装束の野良魔法装束に逃げられてから数時間。

当初の目的を忘れかけて街中を探し回っていた私達が、噂の幽霊屋敷についたのはだいぶ日が沈んだころだった。

路肩に車を止め、表の扉からさて入ろうとしてみればこの通りだ。

 

この男性は幽霊屋敷の主だと言い張り、さきほどからずっと中への侵入を拒んでいる。

誰かが住んでいるという情報はなかったはずだが……いや、これほど荒れ切った敷地なら誰かが住んでいるとは考えないか。

 

「何度も言いますけど、この屋敷からは幾度となく怪奇現象の目撃証言があります。 どうか確認の許可を」

 

「知らない、はた迷惑な噂だ。 帰ってくれ!」

 

先程からこれの一点張りだ、何度も魔法局の者であると伝えても頑なに意見を変えない。

何か理由があるのならばこちらも引くしかないが、適当にはぐらかして帰ってくれの一点張り、これで何もないと信じて帰るならこっちがバカだ。

 

「どうする、ロイ。 私は完全にクロと見てるけど」

 

≪短気は駄目ですよ、ドレッド。 このまま強行突破など行おうものなら魔法局のイメージに関わります≫

 

「さっすが私の考えている事は丸わかりね、けどそうなるとどうしたもんかしら……」

 

「さっきから全部聞こえているぞ、まったくさっきの連中と言い魔法少女と言うのはどいつも……」

 

「……さっきの連中?」

 

つい口から零れてしまった愚痴か、はっとした顔で男が口を塞ぐ。

今の言い分からして他の魔法少女が既にこの幽霊屋敷を調べていた? だとすれば……

 

「ねえ、それってもしかして忍者っぽい子だった?」

 

「し、知らん! 覚えていない! 魔法少女だか何だか知らんが子供が警察の真似事なんてするな、良いから帰って……」

 

その時、背後の屋敷からズズゥンと腹にのしかかるような音が響く。

見れば背後の屋敷は地盤が沈んだかのように傾き、ただでさえボロボロだった瓦が何枚か剥がれ落ち始めている。

家が悲鳴を上げるメキメキという音のほかにも、耳をすませば金属同士がぶつかるような甲高い音も聞こえて来た。

 

「……これで何もない、というのは流石に嘘じゃないかしらね」

 

「こ、これは……まさか、さっきの連中が……どうやって……!?」

 

「心当たりもあるみたいね、行くわよロイ! どう見ても事件でしょこれは!」

 

≪もちろんです、これを見過ごすようでは魔法少女失格でしょうね≫

 

すぐそばに停めた車から、シフトレバーを引っこ抜く。

これは車に装着された対魔物用の特殊警棒だ、車が入れないような狭い場所や私が一人で戦う時の武器になる。

ロイも同じように、運転席の肘置きを取り外して組み立て、やや大型のショットガンを装備する。

魔法少女でも反動がキツイ、ほぼロイ専用の銃だ。 当たれば大抵の魔物には風穴を開けられる。

 

「お、おい! 誰が入って良いと……」

 

「クレームは後で魔法局まで! 行くわよ、ロイ!!」

 

そして止める声の男に耳も貸さず、私達は屋敷の中へと駆けだした。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「――――全員避けて!」

 

鎧武者が刀を振るったのは、ソウさんが叫ぶタイミングとほぼ同じだった。

固まった4人に向けて容赦なく振り下ろされた右手の刀、彼女の一言が無ければ硬直した三人はまともに受けていただろう。

弾かれたかのように廊下の端に飛び退く三人、あわや髪の毛を掠めた刃は床板を豆腐の様に切り裂く。

 

「ほ、本物ねー! 本物よねー!!」

 

「おおお落ち着くでござるアンサー殿! こういう時は落ち着いてひっひっふー……」

 

≪いいから落ち着きなさいそこの阿呆2人!≫

 

「あっちは大丈夫そうね~」

 

『そう、っすかね……』

 

まあこの状況でわちゃわちゃやれる余裕があるなら心配はいらないか、3人から視線を外して改めてソウさんが鎧武者の方へと向き直る。

やはりというか、鎧武者が持つ刀……というよりも鎧など全身から薄っすらと沸き立つ魔力の波動を感じる。

ナイフと同じだ、魔法少女とてあれに斬られれば血も噴き出すし死にもする、本物よりも脆いインスタント(わたしたち)なら尚更だ。

 

『おうカメ公、オレに代われ! ポン刀相手なら負けてらんねえ!』

 

「そうね、お任せするわ~」

 

携帯を取り出し、赤いボタンを押下すると青色掛かっていたドレスの色が抜け落ち、赤い稲光と共にドレスの上に新たな模様を描き出す。

燃えるような色合いで統一された特攻服、いつの間にか額に巻きつけられた鉢金の尾をぎゅっと引き締めれば、そこに居るのは強気に口角を釣り上げる赤髪の少女だ。

 

「ッシャオラァ!! オレが相手だ鎧野郎、かかってきやがれ!!」

 

「――――――愚か、也」

 

「しゃ、喋ったでござる!?」

 

「それにこっちもまたあの赤いのに変わったぁ!」

 

「だぁーうるせえな! 黙ってろ……よッ!!」

 

セキさんが剣のような形に帯電した携帯を振るい、武者の持つ二振りの刀をぶつかり合う。

散る火花、ギリギリと音を立てて鎬を削る電撃と鉄、互いの力はほぼ互角か。

 

『おう、苦戦しとるな。 変わったろかぁ?』

 

「はっ、馬鹿言うなよ金ぴか! それにもう終わってら!」

 

鍔ぜり合ったまま、セキさんが鎧武者を蹴り飛ばす。

するとその衝撃で相手の刀が、腕が、兜が、ガチリガチリとくっついて武者はあっという間に体育座りのような格好となって転がった。

 

「おおー、やるじゃないの赤い人!」

 

「へっ! 相性が悪かったな、んな鉄まみれなら負ける気がしねえ。 その顔拝ませてもらうぜ!」

 

『ちょっとセキさん、加減頼むっすよ!』

 

身動きが取れない鎧武者に向かい、セキさんが軽く得物を振るう。

カンっと軽い音を立てて弾き飛ばされる兜、しかし……その下にはあるべき首と頭は存在しなかった。

 

「……は、ははは花子殿? さささ流石に首を刎ねるのはやり過ぎではないでござるか!?」

 

「ち、ちげぇって! よく見ろ、こいつぁ鎧だけだ! 中身なんてどこにもねえ!」

 

セキさんが鎧を転がし、首があるべき部分を3人に見せる。

そこにはあるべき肉体はなく、がらんどうの闇が覗き込める。

 

「大方なんかの魔法で動かしてんだろ、歯ごたえのねえ奴だと思ったぜ」

 

「な、なぁんだ……お化けじゃなかったのね」

 

「ああそうだよ、ンでもってほっとするのはまだ早ぇな」

 

「へっ?」

 

セキさんが視線を向ける先、長い廊下の向こうからはガシャンガシャンと鉄がぶつかり合う音が聞こえてくる。

それは今もなお足元で暴れる鎧と似た音で、しかし聞こえてくる音の数は圧倒的に多い。

 

「今のは挨拶だったみてえだな、お前らも死にたくなかったら手貸せよ?」

 

「「ひ、ひええええええええええ!?!!!!?」」

 

廊下の闇を抜けて現れたのは、大量の鎧武者たちだった。

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