俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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一方そのころ ⑨

ただでさえ傷みが進んでいた柱が、鎧武者と衝突したことでへし折れる。

支えを失った事で縁側部分の屋根が音を立て崩れ、庭地にボロボロと瓦が落ちていく。

だがそんなことなど気にも留めず、鎧武者の軍団は次から次へと湧いて来る。

 

「花子殿、同じように全員くっつけてはいかがでござるか!?」

 

「こんだけ数多いと無理だ! ぶちぬくぞ!!」

 

1体2体磁力を当てた所で無意味、セキさんは目の前の鎧武者を蹴散らしながら道を切り開く。

幸い鎧武者たちは兜さえ外せばジタバタもがきはするものの、それ以上の行動はしないようだ。

 

『セキさーん! 大丈夫っすかー!?』

 

「大丈夫だ、問題ねえ! こいつらてんで弱いッ!!」

 

セキさんの言う通り、鎧武者の動きは統率が取れてなく、なおかつふらついた足取りで折角の刀も狙いがおおざっぱだ。

これなら何人束になろうと、セキさんの相手ではない。 問題があるとすればこの物量か。

 

「おい、お前らも自分の身ぐらいは自分で守れよ! オレ一人だけならどうにでもなるけどよぉ!!」

 

「わわわ分かったわ! 私たちだって魔法しょう……きゃあ!?」

 

そう言っている間にも1体、暴れるセキさんの脇をすり抜け、鎧武者が3人に向かう。

腰に備えた鞘から刀を引き抜き、大きく振りかぶった刀はそのまま吸い込まれるように振り下ろされ――――

 

≪――――お願い、レトロ!≫

 

「任された、うがー」

 

振り下ろされた刀を前に、レトロがその腕を差し出す。

そしてバギンと耳障りな音を立て、衝突した刀は火花を散らして根元からへし折れる。

一回、二回と旋回した刀の切っ先は、そのまま彼女の足元の床板に突き刺さる。

 

「お……おう!? やるじゃねえかロボっぽいの、そっちは任せた!」

 

「よい……しょー」

 

刀を失い、あっけにとられた様子の武者はそのまま力任せに突き飛ばされ、柱の一つを砕きながら中庭へと落下する。

あの硬度と馬鹿力、向こうは彼女に任せておけば問題なさそうだ。 こっちはこっちに集中できる。

 

「“問題:あなた達は何で邪魔をするの”!?」

 

「――――我らが、主を―――――守るため―――――」

 

「主……? こいつらを操ってる奴がこの先にいるってことか!」

 

「なるほどね……やっぱりあんたの予想は正しかったわ、シノバス!」

 

「あぁん? シノバス……?」

 

そう言えば、先ほどからあの忍び装束の魔法少女の姿が見当たらない。

セキさんもああは言いながら背後には常に気を使っていた、逃げ出したのならすぐにわかるはずだ。

まるで煙のように、それこそ忍者のように、彼女はどこに行った?

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

自分の魔法は2人に比べたらちっぽけなものだ。

誰からも見られていない状態で発動すると、その辺の石ころの様に姿を認識されなくなるだけの魔法。

攻撃に巻き込まれれば当たるし、逆にこちらから攻撃しようとすればその時点でバレてしまう。

レトロのような怪力も、アンサーのような特化した能力もない、ただ隠れるだけの能力。

 

「それも今だけは感謝でござるなー!」

 

天井に張り付き、間違っても鎧武者たちに触れないようにかさかさと四足歩行で奥へと進む。

変身時に生成される忍者道具がこれまた中々役に立つ、吸盤のような装備を腕に着けるだけでこの通り壁も天井も思いのままだ。

 

「シノバスー! やっぱりあんたの思った通りー!! この奥に何かあるっぽいわー!!」

 

「アンサー殿! かたじけないでござる……!」

 

半ばほど過ぎた武者の群れ、その向こうからメガホン越しのよく通る声が響く。

始めに現れた半透明の少女、そして押し寄せてきた鎧武者の群れ、我々の行く手を塞ぐならその奥に何かがあるとは大方想像はついていた。

隠したいもの、触れられたくないもの、そんなものがあるなら誰か1人でも辿り着けば何か攻略の糸口がつかめるかもしれない。

 

どこから湧いてくるか分からないがこの物量、まともに相手していては1歩も前に進めない。

出来るのは自分だけだ、辿り着いてどうにか出来ないなら戻って情報を共有すればいい。

まずは何があるか確かめなければ……

 

「ちょっとロイー! なんなのこいつら、さっきはお化けみたいな女の子が出て来たし―!」

 

≪それを確かめるためにこうして奥へ向かっているのでしょう? ほら、また来ますよ≫

 

「……あ、あれは……!?」

 

見えていないとはわかっていながら、思わずさっと頭巾で顔を隠す。

廊下の向こうから同じく鎧武者をちぎっては投げながら現れたのは、あの赤い車で私を追いかけ回してきた気の強そうな魔法少女と、カッコいい銀色の人型ロボットだ。

 

「絶対何か隠しているわ! むしろ隠してなくても暴いてやるわ!!」

 

≪節度は守ってください、一応民家ですからあまり壊しても駄目です≫

 

二人の猛進はすさまじい、湧き出る武者たちを薙ぎ払いながらじわりじわりと進んでいく。

流石本職、私たちよりも数が少ないのに倒すペースが速い。

しかしこの廊下の両端に向かって湧き出すと言う事は、この武者たちは廊下のどこから現れているのだろうか?

 

「……恐らくあそこでござるな」

 

武者たちと戦闘を続けるロボと魔法少女の手前、T字になった廊下の角から武者たちは現れてくる。

つまり発生源はあの先か。

 

「待ってるでござるよ皆! 拙者が情報を持ち帰って見せるでござるー!」

 

かさかさと天井を這い、T字の交差部分まで到達する。

そして数mほどの廊下の先、そこには「こどもべや」と書かれた木の札が引っかかった扉しかなかった。

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